西住しほの妹、その名はりほ   作:G大佐

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この小説を投稿して、約1ヶ月。まさかこんなに沢山の方々に読んでいただけるとは思いもしませんでした。本当に、感謝しかありません。

前半は、少し賛否両論となるシーンがあります。


真・りほの戦い

 大洗戦車道チームの乗る船が、到着したらしい。だがスタッフ控え室では、騒ぎが絶えていなかった。

 

「おいおいおい……! 何なんだよこの編成!」

 

 ミチコが、他のスタッフから渡された大学選抜チームの編成を見て声を荒げる。

 

「センチュリオンとT-28重戦車がそれぞれ1両ずつ、チャーフィー3両、パーシング24両は分かる。でも……」

 

 ユキが、眉間に皺を寄せる。残りの1両が問題なのだ。

 

「カール自走臼砲を入れるなんて何考えてやがる! あれはオープントップだから、戦車道の対象外のはずだ!」

 

 他のスタッフが顔をしかめる中、アイコだけは顔を青くしていた。

 

「まさか、そんな……」

「……リーダー。何か知ってるのか?」

 

 りほがいち早く気付き、アイコに問いかける。アイコは一度俯くと、意を決した表情で真実を告げた。

 

「あれは……私が改造したものだ」

『『『なにっ!?』』』

 

 スタッフ一同が驚く。まさか、こんな身近に反則とも言える車両を改造した人物がいるとは思わなかった。

 

「リーダー! どういうことだ!」

 

 カナエがアイコの胸倉を掴んで持ち上げる。

 

「言い訳にしか聞こえないかもしれないが、私もこのような形で使われるとは思わなかった」

 

 アイコの口から語られたのは、以下のことだった。

 オープントップの車両も戦車道に使えないかという話を、文科省から持ちかけられたこと。その一環で、誰も使わずにいたカール自走臼砲の改造も引き受けたそうだ。

 

「本当に、申し訳ない……」

 

 アイコが深く頭を下げる。最初は彼女を睨んでいたスタッフ達も、その態度に戸惑っていた。責めるのは簡単だが、だからと言って編成から外すことは、もう出来ないのだ。

 

「……リーダー。カールの弱点はどこだ」

「りほ?」

「ハヤブサ隊のリーダーが、頭を下げんじゃねえ。昔のあんたは、どんな奴にも不敵な笑みを絶やさなかったぜ」

 

 その言葉に少しだけ目を見開くアイコ。クスリと笑みをこぼすと、かつての目つきになる。

 

「カールの脅威は、その大口径だ。狙うとしたらそこだろう。改造したのは、乗員が剥き出しになる部分と自動装填システムだけだ」

「……うしっ! いけるぞテメエら!」

 

 笑顔を見せるりほに、スタッフだけでなく4人も驚く。

 カール自走臼砲は、600ミリの砲弾を飛ばすのだ。なぜ笑ってられるのか。

 

「りほ。いくら何でも無理がある。砲口の中を狙うというのは、言うのは簡単でも実践するのは難しい」

「あんたの言う通りさ、ユキ。でもね、だからこそだよ」

「……? 理由が分からない」

 

 首を傾げるユキに、りほは苦笑する。彼女は冷静に分析をする分、不可能な事は不可能とバッサリと言ってのける女だ。

 そんな彼女も、何であれ理由を教えれば納得してくれる。

 

「あんた達は忘れちまったのかい? 黒森峰での戦いを。大洗の子達は、あのマウスを撃破したんだよ!」

『『『………………あぁぁぁっ!?』』』

 

 思い出したように声が大きくなる一同。アイコも、ミチコも、ユキもカナエも、あの戦いをテレビや観客席で見ていたのだ。

 

「あの子達なら、アタシたちが予想もしないような、奇想天外なアイデアで乗り越えられる! そうだろう?」

 

 りほの言葉に、多くの人間が頷く。そうだ。だからこそ大洗女子学園は優勝できたじゃないか。彼女たちなら、カールだろうがラーテだろうが撃破できるはずだ!

 スタッフ達の中から、不安という物は無くなっていた。今あるのは、自分たちに与えられた任務を果たすという心のみ。

 

「班長。そろそろ、各チームの隊長同士が挨拶する。私たちの指示を頼む」

 

 アイコの言葉に、ユキ、カナエ、ミチコが頷く。それを見てりほは、その役割を発表する。

 

「ユキとカナエは、撃破された戦車と乗組員の回収班をサポートしてくれ! 特殊カーボンで安全とはいえ、激しい横転で打撲とかしててもおかしくない。場合によっては応急手当も頼むよ!」

「了解」

「任せな! そう言うのは大の得意だぜ!」

 

 ユキが頷き、カナエは左腕をグルグルと回してから力こぶを作る。

 

「ミチコ! あんたは飲み物の配布を頼む! 一時的に雨が降る予報だが、今日は気温が高い! 熱中症予防のためにも、観客やスタッフ、回収された生徒の様子を常に見といてくれ!」

「任されたよ! 大勢のサンダース生徒を相手にしてきたホットドッグ屋をなめるなってんだ!」

 

 ミチコはニコッと笑みを浮かべ、頼もしい言葉で返事をする。

 

「リーダーはアタシと同じ整備班だけど、カール自走臼砲が撃破されたら、回収と整備に向かってくれないかい?」

「喜んで引き受けるよ。あれを改造した以上、最後まで責任取らないとね」

 

 アイコは、目をそらすことも俯くことも無く返事する。

 すると……

 

 

「待ったぁー!!」

 

 

 りほにとって聞きなれた、もう一人の姪の声が聞こえた。スタッフ達が、何事かと外へ出る。

 

「お、おぉ……!」

 

 その光景に声を漏らしたのは誰だったか。

 

 黒森峰が

 サンダースが

 プラウダが

 聖グロリアーナが

 アンツィオが

 継続が

 知波単が

 

 強豪と謳われている隊長と副隊長、そして戦車たちがやって来たのだ!

 

「はい……分かりました。大学選抜チームの隊長が、大洗女子学園の増援を認めたぞ!」

『『『よっしゃあぁぁぁ!!』』』

「さっそく、知波単学園の待機する戦車16両を回収せよとのご命令だ! お前ら! 準備は良いかぁ!」

『『『おうっ!』』』

 

 りほの掛け声に、この場にいる人間たちが威勢良く吠える。

 

「お前らぁ! いくぞぉぉぉぉ!」

『『『おぉぉぉぉぉぉぉっ!!』』』

 

 その雄たけびは、この場にいる者たちを奮い立たせるには、十分すぎるものだった。

 




ありがとうございました。

次回で劇場版は最後、つまり最終回の予定です。
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