それが、1ヶ月とはいえここまで読んでくださる方がいた事に、感謝感激です。本当にありがとうございました!
フェリー『さんふらわあ』。大学選抜チームとの戦いを終えた大洗女子学園戦車道チームは、そこで戦いの疲れを癒していた。
しかし、隊長であるみほは船内を歩いていた。あんこうチームの優花里、沙織、麻子、華も一緒である。
「りほお姉ちゃん、どこ行ったんだろう……」
「確かに、班長殿は乗船したんですよね?」
「うん。戦車を搬入するときに一緒に乗ったはずなんだけど……」
ハヤブサ隊のメンバーは、試合が終わった後それぞれ違う帰路を取った。カナエは黒森峰の飛行船『グラーフ・ツェッペリン号』に、ミチコはサンダースの『スーパーギャラクシー』に、ユキはプラウダの船に乗って帰っていった。アイコだけは各地を放浪するとのことで、バイクで去っていった。
そしてりほはと言うと、みほたちと共に、この『さんふらわあ』に乗ったのだ。みほは今回の件についてお礼を言いたかった為、こうして探している。しかし見つからない。
「戦車と一緒に乗ったのなら、そこで整備してるんじゃないか?」
麻子が場所を推察する。確かに、『りほ=戦車の整備』というイメージがある。しかし、沙織がそれを否定した。
「うーん、レオポンさんチームにメールで聞いてみたけど、居ないって」
「それなら、お風呂じゃないでしょうか? きっと班長さんも今日の汗を流していると思いますよ」
今度は華が推察する。大破状態と化したⅣ号戦車を、りほは直してくれたのだ。その時はりほだけでなく、他のハヤブサ隊のメンバーや連盟スタッフも汗だくだったのを覚えている。
華の言葉にみほ達は頷くと、大浴場へと向かった。
大浴場へ着くかと思われたその時、声をかけられた。
「あ、西住隊長!」
「西住さん達も、お風呂かにゃ?」
声をかけたのはアヒルさんチームの磯辺 典子。その隣にはアリクイさんチームの「ねこにゃー」こと猫田もいた。二人は風呂から上がったからなのか、髪がしっとりとしている。
「えっと、りほお姉ちゃ……班長さんを探しているんですけど……」
「班長さんですか? それなら、私たちが上がろうとした時に、お風呂に入ってきましたよ?」
「さすがです、五十鈴殿。当たっていましたよ!」
「でも、ボクが見たときには首にタオル巻いてたにゃ。多分、もう上がってると思うにゃ……」
「やれやれ、すれ違いになったか」
「ねこにゃーさん、班長さんはどこに行きましたか?」
「えっと、確か就寝スペースの方かな……。ウサギさんチームの人たちが居るところだったと思うにゃ」
「みぽりん、行ってみようよ! まだ寝てないかも!」
「い、良いのかな……。もう寝てるかもしれないよ……」
沙織の提案に、みほは戸惑う。就寝スペースに向かったということは、すでに寝てる可能性もあるのだ。さすがに寝てるのを邪魔するわけにはいかない。
「それなら、寝てるかどうか見に行くだけでも良いのではないでしょうか?」
「華さん……」
「もしお休み中だったのであれば、明日改めてお礼を言いましょう」
「優花里さん……」
「少しは、我が儘になっても良いと思う。私は五十鈴さんの意見に賛成だ」
「麻子さん……」
みほは目を閉じて、一瞬だけ考える。そして決めた。
「うん。……行ってみよう」
就寝スペースへ向かうと、ウサギさんチームの6人が寝ていた。穏やかな寝息を立てて眠るその姿に、ホッコリさせられる。
そんな就寝スペースの端に、一人の女性が眠っていた。
「あ、班長殿です」
「一足遅かったか……」
麻子の言う通り、りほは既に寝ていた。
「班長さんって、イメージ通りというか何というか……」
「雑魚寝って言うんでしょうか、寝相が凄いですね……」
沙織と華が彼女の寝相に苦笑いしていた。りほの今の姿は、シャツが捲れてヘソが見えている。タオルケットは申し訳程度に被さっていて、時々ボリボリと無防備な腹を掻いている。イビキをかいて無いとは言え、その姿はまるでオッサンだ。
「もう、りほお姉ちゃんったら……。相変わらず寝相だけは残念なんだから……」
困ったような顔でりほのシャツを正し、タオルケットを掛け直す。手慣れた様子を感じさせるあたり、家ではよくある光景なのだろう。
「でも、私たちがこうして勝てたのは、ダージリンさん達だけじゃなくて、班長さん達の助けもあったからなんだよね」
「サンダースに預けてる間に、班長殿が整備してくれたそうですしね」
「戦いが終わっても、班長さん達のおかげですっかり元通りですからね」
「私たちは、周りの人たちに助けられてばかりだな」
あんこうチームを始めとした大洗女子学園の戦車道チームは、りほに対して感謝の念が尽きない。沙織たちは、静かに寝ている彼女に、静かに頭を下げた。
「本当にありがとう、りほお姉ちゃん……」
みほが頭をそっと撫でる。彼女からすれば、幼い頃から母や父と共に面倒を見てくれた叔母。派遣整備士としての仕事で忙しいだろうに、大洗の戦車たちを修理・整備して、時には模擬戦や訓練のアドバイスもしてくれた。
今回の戦いは特に忙しかったはずだ。59両もの戦車の整備を、他のスタッフたちに指示を与えつつやってのけたのだから。
「明日、改めてお礼を言うね? 本当に……お疲れ様」
最後にりほの頭を一撫ですると、みほ達は退室した。
りほは寝ている。だが、みほ達の言葉が届いたのか、その口元は優しい笑みを浮かべていた。
これにて、『西住しほの妹、その名はりほ』は一旦完結になります。
はい、「一旦」です。詳しくは活動報告にてお知らせします。