-森林北部-
シフゾウ達と別れてから30分が過ぎた。時間が経つ程に、皆に不安が募る。
光太郎「ニホニホ、アルバニーアダーの匂い分かる?」
ニホ「………向こうの方! 変な匂いもする…」
ルペラ「まさか…光太郎様、急ぎましょう!」
ニホンオオカミが先導し、アルバニーアダーの匂いがする方へ向かう。
ニホ「この辺りだと思うんだけど…」
ルペラ「……まさか、アレですか…?」
ルペラが指差す先には、大樹の様な何かが唸っていた。
ニホ「アルバニーアダー…今行くからね!」
光太郎「ちょっ、ニホニホ!?」
-森林?部-
霧深い森の中、一本の大樹がニホンオオカミ達を待ち構えていた。
ニホ「ハァ…ハァ……アルバニーアダー!」
光太郎「待って、不用意に近づくのは…」
光太郎の言葉を聞き終わる前に、ニホンオオカミはセルリアンに向かって行った。
ボス「危険! 危険! コノ辺リニハ、セルリアン由来ノ ガス ガ撒カレテイルヨ。」
ルペラ「それはどういう…」
ニホ「このぉ…アルバニーアダーを返…せ……」
だんだんと意識が薄れ、助走の勢いを殺しきれずに躓き倒れるニホンオオカミ。
-?-
ニホ「んぅ…ここ…どこ?」
ニホンオオカミが辺りを見回すと、さっきまで自分が倒そうとしていたセルリアンも、助けようとしていたアルバニーアダーも、光太郎・ルペラも居なかった。
ニホ「みんな…どこなの? 誰か…居ないの?」
不安に駆られるニホンオオカミ。
ニホ(あの時の光太郎も、こんな気持ちだったのかな…)
ふと、光太郎と出会った時の事が頭を過ぎる。
そんなニホンオオカミが、背後に何かの気配を感じた。それは、懐かしさを感じるものだった。
ニホ「…みんな………居るの?」
ニホンオオカミが気配のする方を振り向くと、何匹もの"ニホンオオカミ"が居た。
ニホ「……そっか…」
ニホンオオカミは、一匹のニホンオオカミへ近付くと、ゆっくりと頭を撫でた。
ニホ「…これが太平風土記に載ってた、偽りの楽園ってヤツなんだね…」
ニホンオオカミはゆっくり立ち上がると、一匹一匹に目を合わせた。
ニホ「……例え幻でも…あなた達に逢えて本当に良かった。 ありがとう。」
ニホンオオカミはゆっくり目を閉じ、光太郎やルペラの元へ戻りたい。と強く願った。
「…ホニ………ニホニ……ニホニホ!」
ニホ「…光太郎?」
二人は、セルリアンから少し離れた茂みに居た。
ニホ「ルペラは?」
光太郎「…セルリアンと戦ってる…」
ニホ「そうなの!? 早く助けに行こう!」
光太郎「…ニホニホ、大丈夫なの?」
ニホ「私なら…全然大丈夫だから! さ、行こ!」
-セルリアン付近-
セルリアンの根が届かない上空から、光太郎達の方へ攻撃が向かない様、セルリアンを攻撃しつつ誘導するルペラ。しかし、その体力は周囲に漂うセルリアン由来の花粉で、少しずつだが確実に削られていた。
ルペラ「……そろそろ…時間切れですかね………ふふっ…ゴマバラワシ様が沢山見えますよ……」
光太郎「ルペラ!! お待たせ!!」
ルペラ「あぁ…光太郎様………」
ニホ「ルペラはちょっと休んでて!」
ルペラ「ありがとうございます…二人とも、ご武運を………」
何とか体勢を立て直して着地するルペラ、それを確認した瞬間、光太郎・ニホンオオカミは行動を開始した。
どうやらセルリアンの花粉は、時間が経つにつれ効果が薄れるらしい。
今のところ、数分間だけなら大丈夫そうだ。
ニホ「私はアルバニーアダーを引っ剥がしてくる! もしアルバニーアダーを剥がせたら、アルバニーアダーは光太郎に任せるよ!」
光太郎「分かった!」
光太郎の返事を書き終える前に、ニホンオオカミはアルバニーアダーの方へ向かった。
アルバニーアダーの全身に絡み付いたツタを引き千切り、アルバニーアダーが怪我をしない程度に力尽くで引き剥がした。
ニホ「光太郎! アルバニーアダー助けた!」
光太郎にアルバニーアダーを引き取ってもらうと、光が溢れ出た眼でセルリアンを捉えた。
ニホ「セルリアン…アンタのお陰で良いもの見れたよ……お礼にさ、今ここで…楽にしてあげるよ!」
アルバニーアダーを引き剥がした跡に向かって飛び込むニホンオオカミ、どうやら、内部から破壊するらしい。…相当頭に来ていたようだ。
始めは内部からの衝撃に耐えられずに暴れていたセルリアンが、次第に動きが悪くなっていった。
内部から破壊され、セルリアンの体が枯れた植物の様に朽ちていった。
鈍い光を放ちながら崩れ落ちるセルリアンの中で、ニホンオオカミが満足そうにセルリアンの核を握りしめていた。
-森を抜けて…-
幸いな事にアルバニーアダーは救出後、すぐに立てるまでに回復した。
アンインに夕陽が差し込み、辺りを紅く染めていた。
無事、アルバニーアダーを救出出来た割には重い雰囲気が立ち込め、沈黙が続いていた。
アルバニーアダー「………なぁ…何で俺を助けた…? あのままほっといてくれりゃ、俺はあいつらと…」
ニホ「それは…アルバニーアダーに生きててほしかったから…」
アルバニーアダー「…は? 俺が死のうが何しようが、アンタらには関係無いだろうが…」
ニホ「……関係あるよ!」
アルバニーアダー「何だよ…仲間だからか? 俺の仲間はあいつらだけなんだよ!」
ニホ「…じゃあさ、何で仲間の気持ちを考えてあげないの?」
アルバニーアダー「どういう事だよ…」
ニホ「あなたの仲間は、あなたに生きててほしかったから…絶対に生きててほしかったから……」
アルバニーアダー「…それで、死んだって訳か…? 何でだよ…意味なんてない…結局辛いだけじゃねぇか……」
ニホ「意味はあるよ…私は、意味無く死んじゃった人なんて居ないって信じてる…あなたも、色んなフレンズと会って色々と感じて…それだけでも意味があるんじゃ無いかな…」
アルバニーアダー「…俺にとっては全部辛いんだよ! こんなに苦しむなら…いっそあいつらにも会わなければ……」
ニホ「……………バカ…」
アルバニーアダー「…今何つった? え?」
ニホ「バカバカバカバカバカ!!!」
光太郎「ちょっニホニホ…」
ルペラ「光太郎様、ここは彼女に任せましょう。」
ニホ「もっと自分を大事にしてよ! そりゃ大切な人が死んじゃったら悲しいよ、辛いよ! けど、その人達が命を懸けて護ったあなた自身を、自分で傷つけてどうするの!? お願い…………うぅ……みんなで仲良くしてたいよぉぉ!!! あぁ…ぁ……」
泣き崩れた。あのニホンオオカミが。泣き続けた。
アルバニーアダー「……分かったよ…俺が悪かった………だからそんな泣くなって、な?」
ニホ「…もう…自分を傷つけない…?」
アルバニーアダー「しないしない…まぁ…今思うと、あんなの俺様らしく無いからなぁ…」
ニホ「うん……ありがと…」
アルバニーアダー「…あそこまで本気で言ってくれたのは、あいつら以来だな…」
ニホ「そっか……あのさ……お友達になってくれない?」
アルバニーアダー「んぁ…唐突だな…でもまぁ、友達…か。 良いかもな。」
ニホ「本当? やったー! 光太郎!ルペラ!私、友達が増えたよ!」
-アンインアリア、出口付近-
ルペラ「光太郎様、シフゾウ様にアルバニーアダー様のこと、伝えてきましたよ。 どうやらあの後、シフゾウ様達は他のフレンズにも協力を仰いでいたようで、そのフレンズ達にアルバニーアダー様が見つかったことを報告してまわっているそうですよ。」
光太郎「ありがと、ルペラ。ごめんね、わざわざ伝えにいってもらっちゃって…」
ルペラ「大丈夫ですよ、この辺りの地形を把握する、良い機会にもなりましたしね。」
光太郎「なら良かったよ。」
ボス「モウ直グ日ガ暮レルカラ、ソロソロ出発シヨウカ。今夜ハ移動シナガラ夜ヲ過ゴスヨ。」
ニホ「そっか…アルバニーアダー、また会えるよね?」
アルバニーアダー「どうせ、このパークん中だし。どっかしらで会えるだろ。」
ニホ「じゃあ……またね。絶対だよ!」
アルバニーアダー「あぁ…そん時を楽しみにしてるからな!」
光太郎達はバスに乗り込み、アンインエリアをあとにした。
薄暗い夕闇の中、バスを見送ったアルバニーアダーはただ、空を見ていた。
アルバニーアダー「……ったく、こんな湿っぽいのは俺様らしく無いっちゅーの…」
?「あの…」
?「ここの事、教えてくれないかな…?」
アルバニーアダー「誰だ? まぁ、俺様に任せと……け…?」