アルバニーアダーと別れ、サンカイエリアの中心へ向かうバス。
砂漠の夜は寒く、バスの車内も冷え込んでいた。
月光に照らされる中、バスの車内では光太郎達が眠りについていた。ただ一人を除いて…
ニホ「……はぁ……」
窓枠に肘を突き、ぼんやりと月を眺めていた。
いつもの様な明るい表情はそこに無く、むしろどこか悲しげな表情だった。
ルペラ「…ニホンオオカミ様?」
ニホ「ルペラ? …ごめん、起こしちゃったかな…」
ルペラは、ニホンオオカミに寄り添う様にした。
ルペラ「いえ、どうせなら夜風も感じていようと思いまして……先程の事が、気掛かりですか?」
ニホ「……うん。 あの時は勢いで色々言っちゃったけど、アルバニーアダーを傷つけちゃってないかな… 私、アルバニーアダーに酷い事言っちゃった…」
ルペラ「………確かに、責め立てる様な言い方にはなっていましたね…」
ニホ「だよね……私がもっと、気持ちを伝えるのがうまければ…」
ルペラ「…ですが、あの時ニホンオオカミ様が何も言わなかったら、私もアルバニーアダー様に一言二言、言っていたかもしれません…」
ニホ「ルペラも…?」
ルペラ「えぇ、折角与えられた命、それを投げ出そうとするのは…私には贅沢に思えてしまうので。」
ニホ「…ルペラ……辛い事、思い出させちゃった…?」
ルペラ「いえ、私は変えられない過去よりも、今この瞬間に出来る事を考えている…そうしたいんです。 だから今、私に出来るのは…」
ルペラは、ニホンオオカミを背から優しく抱いた。
ルペラ「今、私に出来るのは、あなたの心の支えになる事…私では不十分だとは思いますが…」
ニホ「…そんな事ない…私、嬉しいよ……?」
ルペラ「ニホンオオカミ様…あなたはもう、独りではありません…辛い事があったら、私達を頼ってください…」
ニホ「…ルペラ…ありがと………んぅ…あったかい…」
ルペラ「アルバニーアダー様も、あなたの言葉に…ぬくもりを感じた、と思いますよ。あなたの、心の底からの言葉に…」
ニホ「ぬくもり…?」
ルペラ「えぇ、優しさや誰かを想う気持ち…一言では言い表し難いのですが、そういった…愛の生み出したもの…ですかね。」
ニホ「そっか…じゃあ、今私が感じてるのもルペラからの…ぬくもり…?」
ルペラ「…そうかも、しれませんね。」
ニホ「ルペラ……居なくならないでね…絶対だよ…?」
ルペラ「唐突ですね…もしかして、この感覚が癖になってしまいましたか?」
ニホ「それもそうだけど…私、ルペラとずっと一緒に居たい…光太郎と、ルペラと私…みんなで一緒に居たい。」
ルペラ「私も、そうしたいです…永遠に……」
ニホ「ねぇ…ルペラ?」
ルペラ「何でしょう?」
ニホ「…月、綺麗だね。」
ルペラ「……えぇ、とても…」
-サンカイエリア中心部、朝-
朝日が昇り、地上を明るく照らし始めた頃、バスはサンカイエリアの中央付近を通っていた。
光太郎「…このエリア、こんなに建物少なかったっけ…?」
光太郎が、まだパークの職員だった頃…パークセントラル等に比べたら建物の数は少なかった。だが、少なくとも管理局が点々と建ってはいた筈。
ニホ「ねぇ、アレなんだろ?」
ニホンオオカミが指差す先には、一本の岩の様なものが刺さっていた。その形は、まるでクワガタの大顎の様だった。
ルペラ「セルリアンの一部…でしょうか?」
光太郎「うぅん…ラッキー、アレってセルリアン?」
ラッキービーストは、何やら電子音を鳴らし始めた。岩の様な何かと、セルリアンの特徴とを照らし合わせているのだろうか。
ボス「…アレハ、セルリアンノ一部ダネ。タダ、カナリ結晶化画進ンデイルカラ、アソコカラ セルリアン ガ生マレル可能性ハ低イヨ。」
光太郎「なら、ひとまず安心ってとこかな。」
ルペラ「…ニホンオオカミさん、向こうに見えるのはフレンズでしょうか?」
ニホ「多分…フレンズだね。うん?」
ルペラ「どうかなさいましたか?」
ニホ「今…何て呼んだ…?」
ルペラ「…ニホンオオカミ"さん"ですよ♪」
ニホ「それって…」
ルペラ「この様な、距離の縮め方も有りかと思いましてね。」
ニホ「ルペラ…やったぁぁっ!!」
光太郎「…良いなぁ…俺もそうやって呼んでほしいなぁ…」
光太郎は、自身の出せる最大限の甘ったるい声を出した。
ルペラ「そうですか?……光太郎…さん?」
光太郎「…」
光太郎は思った。 今、自分の感じている幸せを世界中にばら撒けば、世界がとてつもなく平和になる。
そして、ルペラの新しいあだ名を考え始めた。…が、結局はルペラが一番だった。
だんだんと、目の前が明るくなって行く。天へ還る時が来たのだ。
光太郎「我が生涯に、一片の悔いな……!」
?「なのなー!!!」
光太郎は現実に引き戻された。
ニホ「元気だね! 名前は?」
?「サイガ! サイガなのな!」
ルペラ「サイガ様、この辺りに建物ってありますか?」
サイガ「たて…もの……あっ、もしかしたらあるのなー!」
サイガの案内で、光太郎達は地下施設へたどり着いた。
-地下施設-
サイガ「ここなのなー!」
光太郎「………んぁ、ここって…」
どうやら、地下シェルターらしい。
ニホ「ここ…広いねぇ…」
ルペラ「…暗いですね……」
光太郎「ラッキー、ここの照明ってまだ使える?」
ボス「試シテミルネ…」
パァン!!
何かが破裂する様な音が聞こえた。
ニホ「ボス…大丈夫なの?」
大体、この様な場合は悪い予感が的中する。いつだってそうだ。期待は外れるのに、嫌な予感ばかり当たる。
気付いた時には遅かった。
シェルターの扉は殆ど閉まっていた。