ニホ「誰か! 誰か助けて!! このままじゃ…」
雨が強くなり、どんどん二人の体温を奪っていく。
ニホ「やっぱり、私が何とかするしか…」
?「随分と酷い傷ですね。直ぐに私の屋敷に連れてきて下さい。 そこでなら、ある程度の処置が出来ます。」
ニホ「え…いいの?」
ニホンオオカミの視線の先には、翼を持った黒いフレンズが立っていた。
-同時刻、森林内-
止まない雨の中、血に塗れながら、木に力無く寄りかかり座り込むルペラの姿があった。
膝を抱え、嗚咽していた。
ルペラ「……こんな事になるなら…始めから光太郎様に会わなければ……あの時、黙ってセルリアンに食べられていたら……」
その時、自身をかつてのアルバニーアダーと重ねていた、ただ、自嘲するしかなかった。
ルペラ「……もう、いっそのこと…ここで…」
?「その
-屋敷-
ニホンオオカミの居た場所からバスで約15分。
ラッキービーストがいち早く救急箱を持って来たお陰で、バス内で応急処置をする事が出来た。
光太郎「んぅ……ん…っ……」
ニホ「光太郎!? ねぇ! 光太郎が起きたよ!!」
?「そうですか。あぁ、あまり急に起き上がっては…」
光太郎「どこっ……痛っ……」
?「起き上がってはいけませんよ。 と、言おうとしたんですがね…」
光太郎「すみません……えと…あなたは?」
?「私はハシブトガラスでございます。」
光太郎「ハシブトガラスさん…ですか? この傷を治してくれたの…」
ハシブト「私というよりは、ラッキービーストとコアラが主に治療していました。」
コアラ「あ、どうもー、私がコアラですー。」
光太郎「あの…ありがとうございます。 …ニホニホ、ルペラはどこ?」
場の空気が凍りつく。
ニホ「それは……あの…」
ハシブト「…セルリアンに襲われた貴方を助けようとしたあまり、逆に貴方を傷付けてしまい、自身を追い詰めて…」
光太郎「そんな……早く見つけないと。雨も降ってる…きっと寒いよ…風邪引いちゃうよ… 俺、行ってくる。」
ニホ「ダメだよ! そんな体じゃ…」
光太郎「けど、ルペラを早く見つけないと…後悔したくないんだよ、今、動かなきゃ…失ってからじゃ遅いんだよ…」
ニホ「それはそうだけど……私だって…!」
ハシブト「お二人とも、落ち着いてください。 今の彼女は、一人ではありません。 あのお方が側にいます。」
ニホ「あのお方…?」
-森林内-
ルペラの前に立つそのフレンズは、ハシブトガラスの様な姿をしていた。だが、その瞳は紅く、スカートからは3本目の脚が生えていた。
?「何故、そこまで自身を責めるのか。余に聞かせてはくれぬか?」
そのフレンズはルペラへ近づき、頭の翼でルペラの頭上を覆った。
ルペラ「……私は、大切な…本当に大切な人を、この手で傷つけてしまいました… 始めは、ただ助けたい一心でした。しかし……私は、力に溺れました。」
ルペラは、拳を握りしめた。ただ、自分に対してしかぶつける事の出来ない怒りを込めて。
?「…何故、力に溺れたと考えている?」
ルペラ「…分かりません…」
?「………始めは、大切な者への思いだったものが、いつしか怒りや怨み、憎しみに変わった…とでも言ったところか?」
ルペラ「おそらく……」
?「…しかし、どうしてそこまで負の感情が湧き出た?」
ルペラ「二度と…あの人を失いたく無かったんです……目の前で奪われたくなかった……それなのに…」
?「………その方は、これからどうしたいんだ?」
ルペラ「……このまま、ここで消えたいです。」
?「…大切な者の元へ帰りたいとは思わぬのか?」
ルペラ「…私には……光太郎様の元へ帰る資格はありませんよ…」
?「光太郎といったか…その者が、その方の大切な者なのだな。」
ルペラ「えぇ、光太郎様は本当に優しくて、時々おかしな事を言いだしますが…ニホンオオカミさんも…」
?「…その方、とても楽しそうだな。」
ルペラ「えぇ、毎日が楽しかったんですよ。色んな所を冒険して、危ない目に遭いつつも、たくさんの出会いがあって…」
?「それでも、その者達の元へ帰らぬ理由は?」
ルペラ「…もし、もう一度力に溺れてしまって、ニホンオオカミさんや光太郎様を傷付けるような事があったらと思うと…怖くて……」
?「そうか…では、その力の意味…与えられた理由を考えてみてはどうだろう。」
ルペラ「…あなたは、私の力の意味を知っているのですか?」
?「いや、結論から言うと余にも分からん。考える事で力と向き合う事ができるのではないかと思ってな。 それは、直ぐに出来る事ではないだろう。 だが、真摯に向き合う事ができれば、その方はきっと、大きな成長を遂げる。」
ルペラ「力と向き合う……」
そのフレンズは、ルペラの首に掛けられた御守りに触れた。
すると、その御守りは赤く光り始め、そこから段々と青い光へと変わっていった。
ルペラ「…これは?」
?「一種のおまじないと考えてよい。……余は、その方の未来が、明るいものであると信じているぞ。」
そのフレンズは、その場から立ち去ろうとしていた。
ルペラ「あ、あの! お名前は…?」
?「余の名はヤタガラス。 かつて人間は、余の事を太陽の化身とも呼んでいた。」
ルペラ「ヤタガラス様…ありがとうございました。 私、もう少し考えてみます…」
ヤタガラス「そうか……では、さらばだ。」
眩しい光に包まれ、ヤタガラスは消えてしまった。
いつの間にか、雨が止んでいた。