けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。   作:ヒトアマゾン

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Ep.17「瞳の輝き」

さっきまでの雨がウソの様な天気、晴れ。

 

雨上がりの空から射す日の光に照らされる中、ルペラは立ち上がり、涙を拭った。

 

ルペラ「……このままでは…いけませんよね。」

 

ルペラは歩き始めた。光太郎やニホンオオカミの元へ向かうか、そのまま流離いの旅をするのか。とにかく、何かしらの行動を起こしたかった。

 

周囲は木々が多く、風が吹くと枝や葉の揺れる音がするが、場所によっては川のせせらぎが聞こえる。

 

今、ルペラのいる場所では東の方から聞こえる。

 

 

 

?「う〜うぅ〜!

 

 

何か聞こえた。せせらぎと同じく東の方からだ。

 

 

?「う〜う〜…うぅ…誰か……誰かぁ!!」

 

 

今度ははっきり聴こえた。悲鳴だ。

 

 

 

-小川の辺-

 

 

そこには、黒い円盤の様なセルリアンににじり寄られる、両生類系のフレンズが居た。腰が抜けているのか、動こうにも動けなくなっていた。

 

恐怖に顔を歪め、涙を流している。

 

 

セルリアンの体から鋏のような器官が生え、フレンズの首筋に迫る。

 

?「誰か……あぅ……あ…」

 

 

迫るセルリアンの恐怖から死を覚悟したのか、強く目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

…いつまで経っても、その瞬間は訪れない。

 

ただ一度だけ、何かが砕ける音がした。

 

 

恐る恐る目を開けると、さっきまで自分を殺めようとしていたセルリアンが、翼を持ったフレンズの貫手で貫かれていた。

 

 

 

?「……ぇ…???」

 

 

 

セルリアンの体は次第に崩れ、セルリアンを倒したフレンズは深く息を吐いた。

 

 

 

ルペラ「…お怪我はありませんか?」

 

?「あぅ……ひゃぃ……」

 

ルペラ「立てますか?」

 

ルペラは少し屈んで、その両生類のフレンズの手を取った。

 

?「あ……ありがとうございまちゅ……」

 

ルペラ「…それでは、私はこれで……」

 

?「あ、お姉ちゃん…血が出てるでちゅよ!」

 

ルペラ「血…これなら大丈夫で……えっ、お姉ちゃっ…!?」

 

?「それに…ちょっと元気ない感じでちゅ…サイレンを助けてくれたお礼をしたいでちゅ!」

 

自らのことをサイレンと呼ぶフレンズは、ルペラの手を引いて駆け出した。

 

 

 

-小川-

 

 

ルペラ「…ここは?」

 

?「サイレンのお気に入りの場所でちゅよ。お水がとっても綺麗で、水草もいっぱいで…」

 

ルペラ「確かに…景色も良いですし……とても素敵な場所ですね。…そういえば、自己紹介がまだでしたね。 グアダルーペカラカラのルペラです。」

 

?「あっ! ドワーフサイレンでちゅ!」

 

ルペラ「宜しくお願いします、ドワーフサイレン様。」

 

サイレン「…様!? ついに…サイレンを大人として見てくれるフレンズと逢えたでちゅ…」

 

ルペラ(…私の事をお姉さんと呼んだフレンズも、あなたが初ですよ…)

 

サイレン「…あっ、血を拭いておいた方が良いでちゅね。」

 

ドワーフサイレンは川の水で手を濡らし、ルペラの顔に付いた血を指で拭った。なお、爪先立ちに加え腕を目一杯伸ばして、やっと届いた模様。

 

サイレン「んーっ! あっ…! 伸びちゃった…」

 

指で拭おうとするも、水気を取り戻した血が指の動きに沿ってうっすらと伸びていた。

 

サイレン「ご、ごめんなしゃい…!」

 

ルペラ「……ふっ…ふふっ…」

 

サイレン「ど、どうしたんでちゅか?」

 

ルペラ「すみません、忙しない様子が何だか……私の家族みたいで…」

 

サイレン「家族……」

 

 

-屋敷-

 

 

ハシブト「…成る程、みなさん、とても仲が良かったんですね…」

 

ニホ「そうなの! だから…心配なの……」

 

光太郎「ルペラ……」

 

コアラ「…泣かないでくださいー…ほら、パップ食べてくださいー…」

 

光太郎「…ありがとうございます、コアラさん……ん? パップ…?」

 

 

 

 

?「ハシブトガラスちゃぁん! 大変なのぉ!」

 

屋敷の扉から、一人のフレンズが飛び込んできた。

 

ハシブト「あら、オオサンショウウオさん。どうかしたのですか?」

 

ショウ「ドワーフサイレンちゃんが、何処にも見当たらないの…」

 

ハシブト「そうでしたか…取り敢えず落ち着いてください。まずはいつ頃から…」

 

 

外から岩が砕ける様な音が聞こえた。

 

 

ハシブト「一体何が!?」

 

ハシブトガラスが慌てて外へ出ると、粉々に砕け散った岩、そして空にはクラゲの様な見た目をしたセルリアンがいた。

 

ニホンオオカミが、ハシブトガラスの後を追って外に出たが、その表情からは恐怖が強く感じ取れた。

 

ニホ「どうして……なんでこのセルリアンが居るの…? ルペラが倒したはずなのに!!」

 

 

セルリアンの本体から滴る液体が、岩の破片に垂れた。すると、白い煙を上げながらみるみる内に岩が溶けていった。

 

 

ボス「注意!注意! アノ液体カラ、ペプシン等ノ成分ガ検出!」

 

 

ハシブト「ぺぷし…? と、取り敢えず危険なんですね…」

 

ハシブトガラスとニホンオオカミは、光太郎達の居る屋敷を背に、セルリアンと対峙した。

 

セルリアンの触手の内の二本が、形を変えて鋏状になった。

 

ニホ「…どうするの? このままじゃ光太郎達があぶないよ…」

 

ハシブト「そうですね…私は空から攻めます。ニホンオオカミさんは触手と液体に注意しつつ、セルリアンを攻撃してください。そのまま屋敷から少しでも引き離しましょう。」

 

ニホ「…………わかった!」

 

 

 

セルリアンの誘導作戦が始まった。

始めは、狙い通り屋敷から離れた場所へ少しずつだが移動させる事が出来た。

しかし、その作戦内容に気づいたのか気まぐれか、セルリアンは再び屋敷の方へ向かった。

 

 

ニホ「なんでぇ! 折角ここまでやったのにぃ!!」

 

ハシブト「…まずいです、あの速さでは直ぐに屋敷に着いてしまいます!」

 

ニホ「それだけは絶対ダメッ! もぉぉ! 止まれェェセルリアンァァァァッ!!!」

 

 

セルリアンは止まる訳も無く、屋敷に向かって触手を伸ばしていた。

 

 

その触手が屋敷に辿り着く瞬間、触手が千切れ、宙を舞っていた。

 

 

 

「…嫌な気配がしたと思えば、またアナタですか……」

 

 

一人のフレンズが、セルリアンの目の前に立っていた。

 

 

ニホ「……あれって…」

 

 

そのフレンズは、ニホンオオカミの良く知る相手だった。

 

 

「…光太郎様には、絶対に触れさせませんよ…」

 

 

 

ニホ「…ルペラ!!」

 

 

 

ルペラ「…ニホンオオカミさん……お久し振りですね。数時間振りですけど…」

 

ニホ「ルペラ! 怪我は大丈夫なの? 風邪引いてない!?」

 

ルペラ「えぇ、私は何とか。 それよりも、今はこのセルリアンを…!」

 

ニホ「そうだよね…ルペラ、また一緒に戦えて嬉しいよ!」

 

ルペラ「……今、この瞬間の喜びを噛み締めましょう?」

 

 

 

 

 

 

ハシブト「私も居るんですが…」

 

ニホ「あっ…ごめん……」

 

ハシブト「あ、いえ……あっ、来ますよ…!」

 

 

岩を砕き、木をなぎ倒し、三人のフレンズに迫るセルリアン。

 

 

ルペラ「…今の私に、後退はありません…あるのはただ、制圧前進のみ…!」

 

ニホ「今度こそ守りきろう、今のルペラなら…きっと大丈夫だから!」

 

ハシブト「セルリアン…これ以上は誰も傷つけさせませんよ!」

 

 

 

野生解放。今この場で決着をつけるべく、全身に力を込めた。

 

ルペラの胸元の御守りが、青く輝く。

 

 

ルペラとハシブトガラスは触手を躱しつつ、その触手に向かって羽を撃っていた。

 

触手を使ってフレンズ達に対抗していたセルリアンだったが、次第に動きが鈍っていく。

 

セルリアンの触手は、ルペラ達の放った羽によって地面へ打ち付けられていた。

 

 

あと少しで、トドメをさせる。そう思っていた。しかし、さっきまで青く輝いていた御守りが、赤く点滅し始めた。

 

ニホ「ルペラ、大丈夫!? 何かピコピコなってるよ!?」

 

ルペラ「…そろそろ、決着をつけないとなりませんね……」

 

ルペラの身体から、輝きがより一層強く放たれた。

 

ハシブト「あまり無茶はしないでくださいね…」

 

 

 

ニホンオオカミが先陣を切った。

 

一気にセルリアンとの間合いを詰め、渾身の力で腕を振り上げた。

セルリアンの体を抉り、その勢いのままセルリアンの石を空高く弾き出した。

 

それを追うかの様に、セルリアンの体からは触手が生え、石を取り戻そうとしている。

 

 

ハシブト「させませんよぉ…! 行きましょう、ルペラさん!」

 

ルペラ「えぇ、これで終わらせましょう!」

 

 

ハシブトガラスとルペラは石に向かって飛び立ち、同時に石を蹴り上げた。

 

 

その瞬間、セルリアンの触手がしなやかさを失い、そのまま砕けていった。

 

 

 

 

 

-屋敷-

 

 

戦いを終えた三人が帰ると、そこにはソワソワしているドワーフサイレンと側で疑問符を浮かべるオオサンショウウオ、そして半ベソの光太郎とそれを宥めるコアラが待っていた。

 

 

光太郎「ぁぅ……る…るぺら…? るぺ…」

 

ふらつきながらもルペラに駆け寄り、倒れ込むかの様にルペラに抱き付いた。

感極まったのか、それ以降何を言っていたのかはさっぱりだった。

 

ルペラ「光太郎様……ごめんなさい…私…」

 

光太郎「……………俺ぁ大丈夫だから…またさ、一緒に旅しよ…」

 

ニホ「そうだよ! ルペラが居なくなったら寂しいよ…」

 

 

ルペラ「…こんな私でも…受け入れてくれるのですか…?」

 

光太郎「受け入れるも何も…初めて逢ったあの日から、ルペラを見捨てるつもりは無い。これからも……」

 

 

ルペラは、力強く光太郎を抱きしめ返した。必死に涙を堪えているのか、震えていた。微かに「ありがとう」、そう言った気がした。

 

 

 

 

 

 

-屋敷外、バス付近-

 

 

サイレン「…あ、あの…お姉ちゃん! これ…あげるでちゅ!」

 

ドワーフサイレンはルペラに、小さな赤い石を渡した。

 

ルペラ「綺麗……本当に良いのですか?」

 

サイレン「その石、なんだかあったかくて…きっとすごい力を持ってるでちゅ! だから、お姉ちゃんのことも守ってくれるでちゅよ! お礼でちゅ!」

 

ルペラ「…ありがとうございます、大切にしますね。」

 

 

ハシブト「もう行ってしまうのですね…」

 

光太郎「はい、まだ行きたい場所があるんです。」

 

コアラ「あ、そうでしたー…カントーエリアは最近、セルリアンが大量発生してるそうでー、立ち入らない方が良いらしいですよー」

 

ニホ「そうなんだ…教えてくれてありがと!」

 

 

ショウ「そういえば、ドワーフサイレンちゃんは何処にいたのー?」

 

サイレン「サイレンはね、あの川にお散歩に行ってたんでちゅ。そしたら、セルリアンに襲われて…そこをお姉ちゃんに助けて貰ったんでちゅ! それで、お姉ちゃんどっか行っちゃったから捜してたら、ここに…」

 

ショウ「そうだったの…ルペラちゃん、ありがとなのー。」

 

ルペラ「いえ、私も彼女に助けられたので…それでは。」

 

 

 

 

ルペラ達はバスに乗り込み、ナカベエリアを後にした。

 

 

光太郎「また一緒に旅できて嬉しいよ、ルペラお姉ちゃん♡」

 

ルペラ「ッ!!!?」

 

ニホ「ルペラー? 顔、紅くなってるよ?」

 

ルペラ「それはッ…あの……」

 

光太郎「…アッアッ可愛いなぁぁもぉぉぉ!!!」

 

 

 

こんな会話も、思い出になる。

きっと、この日々が支えになる時が来る。




おまけ
〜何か光ったお守り〜

ボス「解説を始めるヨ。

あの御守りが青く光った時、ルペラは野生解放状態になっていたヨ。そこから更二、経過時間に比例してサンドスターの使用量も増加しているヨ。

ある程度の使用量を超えるト、御守りが赤く点滅し始めるヨ。そのまま放っておくと、また暴走してしまうんダ。

そこまでの時間はおよそ2分40秒、多く見積もっても3分だヨ。

…けれド、今のルペラなら暴走の心配は無いかもしれないネ。」
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