けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。   作:ヒトアマゾン

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Ep.20「果たしたい約束」

-ドーム外-

 

 

作戦会議は朝まで続いた。…というのも、夜に実行しようと試みたが、何せ周りが暗く、崖の下の様子がよく見えない為、結局は朝に作戦を行う事となった。

 

ニホ「…って作戦で行こう!」

 

リョコウバト「ですね。…ですが、どうしてドームに近付くと戦う気が削がれるのでしょうか?」

 

ドードー「…その事なんだけどね、私なんか分かった気がするんだぁ」

 

ニホ「なになに? 教えて?」

 

ドードー「あのセルリアン、私を襲ったセルリアンだと思うんだけど、多分私の願いを真似したのかなぁ…って思って。」

 

ニホ「願い…?」

 

ドードー「ラブ&ピース、だよ♪」

 

リョコウバト「成る程、それをセルリアンにとって都合良く利用したんですね…」

 

ニホ「そうなの? 何か許せないね…だから、絶対倒す!」

 

 

-ドーム内-

 

 

るぺら「…おはようございます、こうたろうさま。」

 

光太郎「んぅ? あ、おはよ。」

 

るぺら「今日もいい天気で……えっ…?」

 

光太郎「どうした? …は?」

 

空が、赤い。

 

朝焼けの様な、綺麗なものでは無い。それこそ、血の様な色。

 

光太郎「なんなの…?」

 

るぺら「こうたろうさま…」

 

ルペラが震えている。

 

光太郎「ルペラ、大丈夫…」

 

大丈夫…とは言ったものの、自分とて状況が把握出来ていない。

 

光太郎「…まさか…あのセルリアンが…?」

 

るぺら「もしそうだとしたら、あのセルリアンを狩らないかぎり…?」

 

光太郎「多分、ここから出られない。」

 

るぺら「そんな…わたくし、空から様子を見てきます!」

 

光太郎「た、頼んだ!」

 

ルペラは赤い空へ向かって飛び立った。

 

 

-ドーム内、上空-

 

 

るぺら(どうして…? 飛び続けている筈なのに、全然進まない…?)

 

全速力で飛ぶルペラ。しかし、ルペラの目に映る風景は何一つ変わらない。

 

足元を見てみると、既に光太郎の姿は疎か、地面すら見えない。

 

るぺら(これではまるで、ただ赤いだけの世界に放り込まれた様ではありませんか…)

 

 

 

…空が割れた。

 

 

 

あまりにも突然の出来事に動揺を隠せないルペラ。

 

 

そんなルペラの横を、ニホンオオカミが通り過ぎた。

 

 

 

-夜明け前、ドーム外-

 

 

ニホ「…これじゃァ埒が開かないよ…」

 

リョコウバト「近付けば、戦う気が失せますし…」

 

ドードー「内側からは壊せないのかな…」

 

ニホ「うぅ……折角、みんなでスカイダイビングしよって約束したのに………」

 

リョコウバト「スカイダイビングですか?」

 

ニホ「そう、あのギューンって下に落ちるの、アレやってみたかったの…」

 

ドードー「…それって、どれくらいの勢いなの?」

 

ニホ「うーん…すごい、すごい速いの。 …ん?」

 

リョコウバト「どうかしましたか?」

 

ニホ「……もしさ、私が空から落ちながら攻撃したら、あの壁壊せないかなァ…って。 だってほら、あの丸い壁の上辺り、ちょっと色が薄いし…」

 

ドードー「なるほど…確かに薄い…」

 

リョコウバト「…危険では有りませんか?」

 

ニホ「…でも、このまま光太郎とルペラを助けられないまま終わるなんて嫌だもん…」

 

リョコウバト「うぅ……それでは…やってみますか…?」

 

ニホ「いいの!?」

 

リョコウバト「えぇ、仲間を大切にしたい気持ちは分かりますから…その代わり、作戦は練りに練りますよ?」

 

ドードー「ありがとうリョコウバトちゃん!」

 

 

…………

 

 

-作戦開始直前、ドーム外上空-

 

 

 

朝日が差し込み、ニホンオオカミを抱えて飛んでいるリョコウバトを照らす。

 

 

ニホ「…うん、ちょうどこの丸い壁の真ん中に、あのセルリアンがいるね…」

 

リョコウバト「…すこしズラした場所から落としましょうか?」

 

ニホ「ううん、むしろ好都合だよ…」

 

ドードー「ニホンオオカミちゃぁん! 頑張ってねぇ!」

 

崖で待機しているドードーが手を振る。

 

ニホ「うん! 頑張る!」

 

 

 

 

 

ニホ「さ、リョコウバトちゃん、宜しくね。」

 

 

リョコウバトが、手を離した。

 

 

 

次第に速度を上げてドームに近付くニホンオオカミ。

 

 

ニホ「これが、スカイダイビング……か…」

 

 

ニホンオオカミの右手に輝きが集まる。

 

 

ニホ「けど、この風を切る感じを楽しむのは、ルペラと一緒の時って………」

 

 

右手に力が入る。

 

 

ニホ「…決めてるからァァァッ!!!」

 

 

思い切り振り下ろした右手が、ドームに刺さる。

 

ドームの上辺は砕け、ニホンオオカミはドームの中へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

るぺら「……ニホンオオカミさん!?」

 

ニホ「ルペラ! 今すぐあのセルリアンを倒してくるからァ…

 

 

るぺら「……え?」

 

 

 

 

セルリアンに向けて、真っ直ぐ落ちていくニホンオオカミ。

 

 

セルリアンがそれに気付き、アンテナをニホンオオカミに向けた頃には、ニホンオオカミはセルリアンの間際に来ていた。

 

 

ニホ「こンのぉ邪魔だよぉォ!!!」

 

 

アンテナに向かって、渾身の蹴りを喰らわせるニホンオオカミ。

 

アンテナはへし折れ、岩に突き刺さった。

 

 

ドームが崩れ、光太郎やルペラの目に、青空が映る。

 

 

光太郎「……ニホニホ!?」

 

ニホ「へへっ、お待たせ!」

 

光太郎「どうして空から…?」

 

ニホ「まぁまぁ、細かい事はいいから、まずは目の前のセルリアンに集中だよ!」

 

ニホニホは俺に向かってサムズアップをして、セルリアンに向かっていった。

 

 

光太郎「…ニホニホは元気だなぁ…」

 

 

 

ニホ「光太郎! そっちにセルリアン行った!」

 

セルリアンは転がり、光太郎に迫った。

 

光太郎「ウッソ…」

 

 

 

 

それに気付き、動き始めた時には、セルリアンは目の前に迫っていた。

 

 

 

ルペラ「させませんよッ!!」

 

光太郎を抱え、セルリアンから距離をとるルペラ。

 

 

ニホ「ありがとう、ルペラ!!」

 

 

狙いを光太郎からニホンオオカミへ変えたセルリアン、だが、行動へ移そうとした時には、既にニホンオオカミが目の前まで迫っていた。

 

 

ニホ「随分と面倒なことをしてくれたねェ!!?」

 

 

ニホンオオカミが攻撃するたび、削れて小さくなるセルリアン。

 

 

ニホ「…あっ! 石!!」

 

 

ニホンオオカミの攻撃によって石が顕になった。

 

 

ニホ「これで…終わりだよッ!!!」

 

 

 

 

ニホンオオカミか最後の一撃を繰り出そうとした瞬間…

 

 

 

ニホ「へぇっ!?」

 

 

空から、巨大なカメが落ちてきた。

 

そのカメに押しつぶされたセルリアンは粉々に砕け散り、その破片の中から、一枚の紙が出てきた。

 

ニホ「あっ……太平風土記…」

 

 

そのカメは、ニホンオオカミを見つめていた。

 

 

ニホ「えっ……なんで私…?」

 

 

その時は気付いていなかった。

 

勾玉達が、光り始めていた事に…




Ep.EX「遺された翼」

ある日の夜、私は何故か寝付けなかった。
普段なら私の隣にいる筈の者がいないからだろう。

その者はというと、外で夜空を見上げていた。
私は空を見上げている彼女の元へ、駆け寄った。


「あっ…すみません、起こしてしまいましたか?」


正直なところ、間違ってはないのだが、あくまで私が勝手に起きただけだ。
たまたま目が覚めただけと伝えると、彼女は2,3度小さく頷き、話し始めた。


「…私、毎年この日になると、こうして遠くにいる仲間の事を考えるんです。」


私は、今日の日付を確認した。
12月1日。

彼女の言う"遠くにいる仲間"。
聞いて直ぐは理解出来なかったが、今日の日付を見て、誰の事を言っていたのかが分かった。


「何年も前のこの日…私の目からは輝きが消え失せました…」


「…たまに夢を見るんです。仲間が命を奪われる夢。ある時は銃で、ある時は毒で。」


「あの生き物が来るまでは、あの島で私達を脅かす者は殆ど居ませんでした。」


「普段は思い出せないのに、この日になると、ふとかつての事を思い出す…変ですよね。」


確かに不思議だが、変ではない。そう伝えると、彼女は少しだけ微笑んだ。


「ありがとうございます……」


私は、一つの疑問が浮かんだ。
…というよりかは、今まで抱えていた疑問をぶつける時が来た。


ルペラはヒトが嫌い?


私の問いに、彼女は戸惑っていた。
私は謝り、この質問を取り下げようとした。
しかし、彼女はゆっくり、私に答えを伝えた。


「…正直、私にも分かりません。なにせヒトといっても、あまりにも振れ幅があるので…あなたの様なヒトから、私を殺したようなヒトまで…」


「ですが、私はあなたが好きです。それに、かばんさんのことも…お友達だと思っています。」


「……きっと、このパークに多くのヒトがいた頃。その時の私も、周りのヒトを好いていたのでしょう。」


私は少し言葉に詰まった。


「……ごめんなさい、これが私の出せる、精一杯の答えなんです。」


私は何も言えなかった。
ただ、彼女の側に居る事しか出来なかった。

それから、どれだけの時間が経ったのだろうか。
…実際には、大して時間は経ってないだろうが、そんな短い時間ですら、とても長く感じる。


「………もし、私がこの世からいなくなったら……あなたはどうしますか?」


何か言わなければ、伝えなければ。私はそう思った。しかし、言葉にしようとするが、何故か言う事に抵抗がある。

口にしてしまったら、本当にその時が来てしまう。そんな気がした。


「……いつか、その時は来るんですよ。」

「私は、あなたには長生きしてもらいたい、私よりも、長生きしてもらいたいんです…」


彼女の口から告げられる現実、そして願望。
いつか、この日々に終わりが来る。
その事を考えただけで、心が不安で包まれる。

いつか、彼女を看取る瞬間が…


「………安心してください、確かにいつか訪れる事ですが、今はまだその時ではありません。まだまだやり残した事がありますし、それに…」



彼女は私の目を真っ直ぐに見つめ、微笑んだ。




「…最後の一羽である以上、そう簡単には死ねませんよ。」
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