ニホ「纏うは願い、信仰の衣…!」
ニホンオオカミは白い光に包まれた。
光太郎「ウォッ眩しッ…!」
ルペラ「!? 光太郎様!」
光に引き寄せられるように、空から数匹のセルリアンが光太郎達へ向かっていった。
光太郎「ッ!速い!!」
ルペラが羽根で撃ち落とそうとするも、攻撃されながらも一直線に向かってくるセルリアン。
ルペラ「速いだけでなく硬い!? このままじゃ間に合わないッ…!」
セルリアンが目の前まで迫った瞬間、その侵攻が何かに妨げられた。
光太郎「……壁…?」
ハニカム模様が刻まれたそれは、橙色の光を放っていた。
ニホ「…させないよ…私達の戦いは、まだ終わってないからァ!」
その声に応えるかのように、壁はより強く光り、セルリアンを弾き飛ばした。
弾かれたセルリアン達はそれ以上襲おうとせず、空へ戻っていった。
光太郎「ニホニホ…」
白い光が次第に消え、赤と白の衣を纏ったニホンオオカミが中から現れた。
ニホ「ふぅ……間に合って良かったよ…」
光太郎「ありがとう……ん…巫女装束…?」
ニホ「…これのこと?」
ニホンオオカミは袖を掴み、その場で回ってみせた。
厳密に言えば巫女装束とは異なる箇所があるだろうが、イメージはそんな感じだろう。
光太郎「それそれ……似合ってるよ」
ニホ「本当!? やったぁ!」
ルペラ「……?」
ニホ「ルペラ、どうしたの?」
ルペラ「そっちの草むらから、誰かの気配が…」
?「…流石ですね、ルペラさん…」
草むらから、3人の見知ったフレンズが出て来た。
光太郎「ハシブトガラスさん!? どうしてここに…」
ハシブトガラス「あなた方の様子が、ボスから映し出されていたので。何かお手伝い出来る事がないかと思いましてね。」
ルペラ「そうでしたか……映し出され…え…?」
?「ナカベの皆さんが避難しているバイパス内でー、ボスさんがあなた達の事を映してたんですよー。もう上映会ですー」
光太郎「えぇ…ってコアラさん!?」
コアラ「どうもー、私も来ちゃってますー。 そうそう、あなた達の映像…今は私達もですが、きっとパーク中で映されてますよー」
ルペラ「ですが一体何のために……」
ニホ「ボス…盗撮はダメだよッ!」
ボス「盗撮はしてないヨ!」
ハシブト「…それにしても、あのセルリアンを相手取るのですか…」
ニホ「うん…けど、戦い方は分かってるの」
光太郎「…そうなの?」
ニホ「うん、この服に変わった時に…こう……バァーッていうか…ブワァーッていうか……とにかく何をしたら良いかわかったの!」
ルペラ「因みに、何をするのですか?」
ニホ「えっとね…私がセルリアンの動きを止めるから、その間に光太郎とルペラがスザクさんの輝きを取り戻す」
ハシブト「色々と待ってください…ニホンオオカミさん1人では、あのセルリアンの動きを封じるのは困難です…それに、スザクさんの輝きを取り戻すって、一体どうやって…」
ニホ「それはね…ルペラ、あの小刀、鞘から抜いてみて?」
ルペラ「良いですけど…確か前に抜こうとした時は、錆び付いてて抜けなかった筈でしたが…」
ニホ「そう、あの時は抜けなかった…けどね…」
ルペラが鞘から小刀を引き抜いた。あの時とは違い、錆が剥がれながら、その刃は鞘から抜けた。
ルペラ「これは…!」
鞘から抜けて、初めて知った。
刃の付け根に、薄く赤みがかった勾玉が埋め込まれていた。
ニホ「…これを使えば、あのセルリアンからスザクさんの力を取り返す事が出来る。」
光太郎「凄い…けど、どうして今になった抜けるように?」
ニホ「多分、使うべき時が来たから…かな。」
ルペラ「……そういえば、先程セルリアンの動きを封じると言っていましたが…一体どうやって?」
ニホ「何かね、結界の応用?みたいなので、あのセルリアンを抑え込めるみたい。」
光太郎「結界!? それじゃニホニホが…」
ニホ「…大丈夫! 危なくなる前に、光太郎達がズバッと解決してくれる…そうでしょ?」
光太郎「けど……もし間に合わなかったら…」
ニホ「…もし、あのセルリアンが"ここ"を支配したら、私達は生きていけない。 どっちにしろ命に関わるなら、私は少しでもみんなの被害を抑えたい。守りたいの。」
ルペラ「………光太郎様、応えましょう。ニホンオオカミさんの期待に。」
光太郎「…そうだね。 折角の期待と覚悟を、無視なんて出来ないよね。」
ニホ「ありがとう、ルペラ、光太郎。 私もできる限りサポートするから!」
ハシブト「…私が光太郎さんを、セルリアンの元へ送り届ける事は…」
ボス「ソレは難しいネ。あのセルリアンの周囲にハ、高濃度のセルリウムが空気中に漂ってイテ、恐らく何の対策もしていないフレンズが触れるト、即刻フレンズ化が解除、元の動物の姿に戻ってしまうヨ。」
ハシブト「ならどうして、光太郎さん達はセルリアンの元へ…?」
ボス「光太郎、ニホンオオカミ、グアダルーペカラカラは、ゲンブと接触した事、御守りに輝きガ込められている事、コレらの事が重なっテ、ある種のセルリウムに対する抗体が出来ているんダ。 それでも、有害な事に変わりはないかラ、長時間セルリウムに晒される事は命の危機に繋がるヨ。」
光太郎「なんだ…ニホニホと俺達、危険はトントンって訳か。 ニホニホだけに危険を背負わせる訳じゃないなら…安心したよ。」
ボス「ハシブトガラスとコアラは、ニホンオオカミの護衛にあたってくれるかナ? もし何か危ない事が起きたら、山の麓に建物があるかラ、そこに避難しよう。 光太郎達も、スザクの輝きを取り戻し次第、すぐに戻って来てネ。」
作戦が始まった。俺はルペラに抱えられ邪神セルリアンの元へ、ニホニホは祠で邪神セルリアンの動きを封じる準備を進めていた。
-上空-
ルペラ「光太郎様、怖いですか?」
光太郎「…唐突だね。 でもまぁ…正直怖いよ。」
ルペラ「奇遇ですね、私もです。」
その言葉に嘘偽りは無い。ルペラの手が小さく震えていることが、それを物語っている。
ルペラ「まさか、あなたがヒトだからこそ出来る作戦だったとは思いませんでしたよ……出来る事なら、私があなたの代わりになりたいですよ…」
ヒトだから出来る作戦…かつてかばんさんが黒セルリアンから救出された際、フレンズ化が殆ど解けていたにも関わらず、記憶を保っていた。
この事から、ヒトである自分なら、ルペラよりも長い時間セルリアンの体表に居ても影響は少ないと考えた。 少なくとも、フレンズ化が解けたらとしても自分は自分でいられる。
ルペラ「…! 来ます!」
邪神セルリアンが動き始めた。
-山腹、祠-
ニホ「セルリアンが…!」
ハシブト「始めますか?」
ニホ「勿論! 少しの間、私の体は頼んだよ。」
コアラ「任せてくださいー、頑張って守りますよー!」
邪神セルリアンの動きを封じている間、ニホンオオカミは無防備になる。少しでも心が乱れれば、邪神セルリアンを抑える力が弱まってしまうからだ。
ニホンオオカミは両腕を胸の前で交差させ、呼吸を整えた。
勾玉が光りはじめ、辺りを明るく照らし始めた。
-邪神セルリアン付近、上空-
触手に追われる光太郎とルペラ、羽根で牽制しようとするも、いまいち効果が見られない。
ルペラ「このままじゃ埒が明かない…!」
しかし、だんだんと触手の動きが鈍くなっていった。
光太郎「…ニホニホか…!」
突然邪神セルリアンは視線を光太郎達に向けた。
ルペラ「…あとは頼みましたよ、光太郎様!! 必ず迎えに行きますから!」
ルペラは光太郎を邪神セルリアンの身体に取り付かせ、邪神セルリアンの気を引くべく、その周りを飛び回った。
光太郎は、ルペラから託された小刀を、邪神セルリアンの身体に突き立てた。
光太郎「ニホニホの言葉通りなら、これで…!」
次第に小刀は赤い光りを纏いはじめ、勾玉が色付く。
…邪神セルリアンの顔の先端が紫色に光り始めた。
光太郎「何…あの光…」
すると、邪神セルリアンは唐突にその視線をニホンオオカミに向けた。
ルペラ「しまっ…!」
本能的に感じた、その紫色の光への恐怖。
一筋の光が、邪神セルリアンから放たれた。
-山腹、祠-
ニホ「!?」
ニホンオオカミは両腕を突き出し、目の前に結界を張った。 光の筋が結界に当たり、その衝撃が伝わる。
弾かれた一部の光が辺りに飛び散る。辺りの草木は枯れ、灰の様に崩れていった。
ニホ(こんなのが
ニホ「ハシブトガラス!コアラ! 早くどこかに隠れて!」
ハシブト「ですが、それではニホンオオカミさんが!」
ニホ「私は…大丈夫!! それに……」
結界はより大きく、分厚く、強い光を放っていた。 それを支えるかのように、勾玉もまた、より強く光り輝いていた。
ニホ「私は……みんなを守りたいからぁぁァァァッ!!!!」
尚も途切れない紫の光。
次第に結界に亀裂が入り、欠ける。 その影響がニホンオオカミに現れ、頬が傷つき、血が滲む。
地は抉れ、砂塵が舞う。
ニホ「こんなところで…諦めてたまるかァ…!!」
結界を穿つ一部の紫の光が、ニホンオオカミを掠める。 掠めた場所は血すら流れず、石化していった。
邪神セルリアンの放つ光が、より一層強く、太くなった。
ニホンオオカミの元へ、一体のラッキービーストが近寄る。液晶部分は赤黒く変色し、挙動もおかしい。
光の威力に耐えきれなくなった結界は砕け、ニホンオオカミは紫の光に包まれた。
-アンインエリア、バイパス兼シェルター内-
アルバニーアダー「……おい…ウソ……だよな…?」
膝から崩れ落ちるアルバニーアダー。 視線の先には、ニホンオオカミが紫の光に包まれる映像が映し出された壁があった。
Ep.EX「送り、送られる狼」
作戦決行前、彼女が私と2人きりで話したいと言った。
他のフレンズたちには一体この場を離れてもらい、少しの時間だが、2人だけの時間を作った。
「…まさか、こんなことになるとは思わなかったよ…」
私は彼女へ、旅に出た事を後悔しているか。そう聞いてみた。
「そんな事ないよ。沢山の気になるものを見つけられたし、こうして昔のヒト達の想いにも触れられた。」
「ただ、最初の出逢いから、こんな大きな規模の戦いに挑む事になるなんて、全く想像できなかったからさ。」
「…光太郎と、ルペラと、ボス…みんなに会えて、本当に良かった。」
彼女は、本当に楽しそうに話す。 話が途切れないように、沢山話す。
「あっ…ごめん、つい一方的に話しちゃった…」
特に問題は無いが、いつにも増して良く話すのは何故か。少し聞いてみた。
「……もしかしたら、これが最後のお話になるかもしれないと思うと…話が終わったら、戦いに行くと思うと…」
「…こんなワガママ、良くないよね。 けど、ここで別れたら、ずっとそのままになる気がしちゃって…」
今回ばかりは、相手が相手だ。 正直、前向きで居続けろだなんて言える状況ではない。 私とて、いつも以上に、この戦いに恐怖を感じている。 恐らく、ルペラも…
「…ねぇ、もう少しだけ、私のワガママに付き合ってくれない…?」
そう言うと彼女は私へ抱きついた。
「………やっぱり……怖いよ…」
その声は震え、息遣いは荒くなっていた。
「今更こんな事言ってる場合じゃないのは分かってる……だけど…!」
「…だけど……」
私は、彼女の頭を撫でた。 今の私には、それくらいしか出来ない。
「…やっぱり……光太郎は優しいなぁ……」
「………私、覚悟決めたよ…」
「私は守る…光太郎も、ルペラも…このパークも……」
「だから約束して? 絶対、無事に帰ってきて。」
私は頷いた。 その姿をみて、彼女は安堵の表情を見せた。
「…よし…光太郎、一緒に頑張ろッ!」
彼女は私に、サムズアップをしてみせた。
〜数十分後、邪神セルリアン体表〜
ニホンオオカミは、紫色の光に包まれた。
私は、恨んだ。 彼女が背負わされたもの、彼女に背負わせてしまったものを。
私は、憎んだ。 正義、悪など関係無い。 今、目の前に居る悪魔を、直ぐにでも殺めたい。
私は、後悔した。 彼女を送り出した事を。
私は…