アンインエリアのバイパス内に、アルバニーアダーの慟哭が響き渡った。
ペルシュロン「アルバニー…」
アルバニーアダー「何が大丈夫だ………何が……クソォッ!!」
アルバニーアダーは、ラッキービーストを掴み上げた。
アルバニーアダー「お前ェ…デマ流してねぇだろうなぁ…」
オグロヅル「アルバニーさん、落ち着いてください…」
アルバニーアダー「落ち着いてられっか! こんなの見せられてよ…」
不意にアルバニーアダーは、バイパスの中を小走りし始めた。
ペルシュロン「どこに行くんだ、アルバニー…?」
アルバニーアダー「……そんなの…決まってんだろ…」
-同時刻、カントーエリア-
ルペラ「ニホンオオカミさん!!?」
遠くからではあったが、ルペラは確かにその瞬間を見てしまった。
ルペラ「………光太郎様! …頼みましたよ…!」
光太郎は大きく頷き、セルリアンに刺さっている小刀を、より深く力強くねじ込んだ。
光太郎「…スザクさん…! どうか…どうか帰ってきてください!!」
苦しみ始める邪神セルリアン、触手の動きも更に鈍くなり、力を失っているのが目に見えた。
-同エリア、祠-
砂塵が渦巻く中、祠の前に立ち尽くす、1人のフレンズがいた。
フレンズは血の涙を流し、服の一部は灰の様に散り、その右腕は赤黒く血塗られていた。
震える拳を交差させ、必死な形相で何かを念じていた。
ハシブト「…ニホンオオカミさん!?」
ニホンオオカミの元へ駆け寄るハシブトガラスとコアラ。
ボス「危険ダヨ! 離れテ!」
その警告の意味が分かったのは、それから数秒後の事だった。
ハシブト「痛ッ…!」
ハシブトガラスの差し伸べた手に、痺れるような痛みが走った。
ニホンオオカミの周りには、結界が張られていた。
ハシブト「……まさか…」
コアラ「…ハシブトガラスさん、大丈夫ですかー!?」
ハシブト「はい…私の方は。ただ、ニホンオオカミさんが…」
コアラ「ニホンオオカミさん…どうして…」
ハシブト「…今、ニホンオオカミさんは…あのセルリアンの動きを封じているんです… 恐らくこの場から離れれば、この集中を解いたら、あのセルリアンは…また本格的に活動を始めてしまいます。」
コアラ「ですが、今のままだと危ないですよ…」
ハシブト「えぇ、その事は彼女が一番分かっている筈です。 …彼女は、命懸けでパークを守っているんです。」
ハシブトガラスは、邪神セルリアンへ視線を向けた。
ハシブト「コアラさんも見ましたよね、あの光線… あくまでも憶測に過ぎませんが、あの光線は命を…命という輝きを奪うものだと思うんです…」
コアラ「…だから、周りの木とか草が灰みたいに…」
ハシブト「もし、あの光線がパークに直撃していたら……」
最悪の結末が、ハシブトガラスの頭を過った。
その頃、光太郎は、もがく邪神セルリアンの揺れに耐えながら、勾玉が満たされる刻を待ち続けていた。
光太郎「………!?」
小刀に埋め込まれた勾玉が、一際強い光を放った。 それと同時に、邪神セルリアンの体表が崩れ始めた。
光太郎「ルペラ!!」
ルペラ「今行きます!!」
小型のセルリアンの群や邪神セルリアンの触手を掻い潜り、光太郎の元へ向かう。
伸ばしたその手が、光太郎の手を取ろうとした瞬間、光太郎の腕に何かが巻き付いた。
ルペラ「光太郎様!?」
邪神セルリアンの身体から生えた触手は、光太郎を掲げ上げた。
光太郎「…ルペラ、コレは頼んだよ…!」
光太郎は鞘に収めた小刀を、ルペラへ投げ渡した。
小刀を受け取りながらも、尚も光太郎の元へ向かうルペラ。
ルペラ「私は…あなたの事を諦めたくありません! もう二度と…あなたを失いたくない……だか…うッ…!」
ルペラの首には、一本の触手が巻き付いていた。 その触手はルペラを、パーク本土に向けて投げ捨てると、邪神セルリアンの身体の中へ消えていった。
パーク中に戦いの様子が映し出される中、見せしめの如く掲げられた光太郎。
邪神セルリアンの頭頂部に亀裂が走り、砕ける。 砕けて空いた孔からは、無数の細い触手が溢れるように蠢き這い出る。
その触手は、一斉に光太郎に向かって伸びていった。 腕に、脚に、首に。あらゆる箇所に巻き付き、締め付け、包み込んでいく。
光太郎を拘束していた太い触手は離れ、次第に光太郎を包み込む細長い触手は、光太郎ごと邪神セルリアンの頭頂部へ入り込んでいった。
邪神セルリアンは、唸りを上げた。
-キョウシュウエリア、バイパス内-
この地でも、前線の様子が映し出されていた。
博士「…………あんなの……あんなの、デタラメなのです……」
助手「……今までの、どのセルリアンにも当て嵌まらない特徴……あの目……」
ヒグマ「まるで、俺たちを見下してるみたいだな。」
博士「……ヒグマ、来ていたんですか。」
ヒグマ「まぁ……こんな狭い場所でなら、嫌でも会話は聞こえるからな。」
博士「すみません……取り乱しました…」
ヒグマ「別に咎めたい訳じゃない。 今回は相手が相手だ……誰だって怖いさ。」
ジャック「だからって、逃げる訳にはいかない。」
ヒグマ「ジャック……」
ジャック「少なくとも、俺たちはな。 戦いに自信の無いフレンズは別だが……」
バイパスの奥から、足音が聞こえる。 2人だろうか。 足音だけで分かるほど、その足音の主は焦っていた。
かばん「皆さん! バリケードになりそうな物、ありますか!?」
博士「かばん!? 一体何が……」
サーバル「空のセルリアンが降りてきたんだよ! しかも…」
助手「しかも……?」
サーバル「私たちみたいな形になってるんだよ……!!」