けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。   作:ヒトアマゾン

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「けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。」3周年記念作品


外伝「耀きの飛蝗」
Splendor


 勇敢に戦った者がいた。ただ、美しいものを護るために。

 命を燃やして戦った者がいた。ただ、自由を護るために。

 己が結末を知りながら、その悲しみを噛み締めて、されど仲間と共に戦う者が……

 

 

〜光太郎の目覚める、数ヶ月前。キョウシュウエリア〜

 

 

 満月の下、それは穏やかな時間が過ぎていた森林。ある者は眠りにつき、またある者は暗闇をものともせずに活動を開始していた。

 

 ……そんな中、か細い叫びが響き渡った。

 

 息を切らし、今にも躓きそうな足取りで何かから逃げる一人のフレンズ。その表情は怯えきり、今にも泣き出しそうであった。

 

 その背後には、4対の細い脚を持つ黒い塊が、その巨体に見合わぬ程の小さな足音を上げながらフレンズを追っていた。月光に照らされた8つの目は、真っ直ぐにフレンズを見据えている。

 

 急に、その足が何かに躓き倒れ込んでしまった。……地面を見ると、そこには薄く広く、糸が張り巡らされていた。足掻けば足掻くほど糸は絡まり身体の自由を奪う。

 

 木や地面を伝い、そのフレンズに迫る黒い影。

 

 震え怖じ、がむしゃらに腕を振るうフレンズ。しかし、その抵抗を踏み躙り、影はフレンズに覆い被さろうとした。目前には、鈍く光る毒牙。フレンズは自身の最期を覚悟した。

 

 不意に、影の動きが止まる。

 

?「最近多いんだよな……お前みたいなセルリアン……」

 

 影……セルリアンの頭上から聞こえた声は、妙な落ち着きの中に深い怒りを感じさせるものであった。

 

 頭上の木から、誰かが飛び降りて来た。ボロ布を纏ったその者は、前脚を挙げて威嚇するセルリアンに動じる素振りを見せず、むしろセルリアンに向かって歩みを進めていた。

 

 足元の糸を鞭のような物で蹴散らしながらセルリアンに迫る。

 

?「俺の縄張りで好き勝手しやがってよぉ……」

 

 遂にセルリアンは、ボロ布の者に飛び掛かった。……しかし、そのセルリアンの牙が貫いたのは、ただのボロ布一枚だけであった。

 

 セルリアンが獲物の方を振り向くと、そこには獲物の姿が無い。そればかりか、敷き詰めていた筈の糸が細切れにされていた。

 

?「次は、お前の番だ。」

 

 声のする方を向くセルリアン。その視線の先には、糸から助け出されたフレンズを庇うようにして立つ、赤い姿をしたもう一人のフレンズがいた。3本の角を戴いたそのフレンズは、深紅の瞳でセルリアンの姿を捉えていた。

 

 再び飛び掛かるセルリアン。そのおっ立てられた牙は赤いフレンズは鷲掴みにされた。その手に力が加えられるほど、牙は軋み、次第に小さなヒビが入る。

 

 赤いフレンズの前蹴りが、セルリアンの胴へ突き刺さる。その勢いにより、限界を迎えた牙は粉々に砕け散った。セルリアンは身の危険を感じ取り、闇夜に消えた。

 

?「……逃げられたか。次こそは必ず息の根を……」

 

 そう呟く赤いフレンズの体色は、見る見るうちに緑色へと変わっていった。

 

「……J……?」

 

?「……は?」

 

「あなたがJなのね! フレンズ刑事J!!」

 

 助けられたフレンズは、安堵の涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、輝く眼差しでJ?を見つめていた。

 

J「……まぁ……何でもいいか。 取り敢えず、今日のところはフレンズの集まる所で過ごしな。最近は変わったセルリアンが多い。気を付けろ。」

 

 そう言い残すと、Jはボロ布の砂埃をはたき落とし、それを被りながらそそくさと立ち去った。

 

 その日を境に、あっという間にフレンズ刑事Jの噂は広まった。そもそも、フレンズ刑事Jはタイリクオオカミの描くマンガに登場した、新しいキャラクター……らしい。感情が表情に出ないが、その代わりに体色で感情を表すのだとか。

 その色が変わる様と、ボロ布……本家はトレンチコートを戦闘時に脱ぐところから、俺とJとを重ねたらしい。それに、どうやら向こう"も"カメレオンのフレンズらしいが……

 

 人違いも甚だしいと思う一方、情報収集にもってこいの状況であると思ってしまった。

 

 そんな時だ。アイツと出会ったのは……

 

-キョウシュウエリア、ジャパリ図書館付近、林-

 

 それは、あの腹立たしいセルリアンを屠るべく、その情報収集のために図書館へ向かっている時の話だった。

 

 あのセルリアンを含め、最近のセルリアンは妙に厄介であった。やり口が普段以上に計画的、或いは卑怯なのだ。それ故に、ハンターが定期的に見回っている。何がキッカケなのかは知らないが、セルリアンが厄介な知恵を持ってしまった以上、こちらも知識を蓄えるしかない……

 

 図書館への道中は、いつも以上に静かで何だか不気味だった。

 ただそれ以上に、誰かから付け回されている気がしてならなかった。

 

 いつも歩く道を逸れ、入り組んだ場所を進むも執拗に追われる気配が。鞭を握り、臨戦態勢を整える。狭い場所では戦いにくく、更に死角を突かれやすいと思い、開けた場所へ移動した。

 

 しかし……

 

J「……しまった……誰かいるな……?」

 

 そこには人影が。面倒な事になる前に、また別の場所へ移動しようとした刹那、背後から何かに突き飛ばされ、その広場に投げ出されてしまった。

 

J「クソ……そこのお前! 早く逃げろ!!」

 

 人影に向かって叫ぶJ。その影は慌てた様子で立ち去った。

 

 その一方、林の中から出てきたのは、この間退けたクモ型のセルリアンであった。

 

 態勢を立て直そうとするも、立ち上がれない。辺りを見回すと、あの時のように糸が張り巡らされていた。

 

J「始めからこれが狙いか!」

 

 ゆっくりとJに覆い被さるセルリアン。目の前には折り砕いた筈の牙が。

 

 咄嗟の判断で貼りついたボロ布を脱ぎ捨て、何とか脱出はできたものの……

 

J「……面倒な事を……!」

 

 より強度の増した糸により、両足は未だ拘束されたままであった。

 

 セルリアンは、Jへの興味を失ったかの様にマフラーのフレンズが逃げた方へ向かった。

 

J「俺はもう無力ってか……舐めたマネしてくれる!」

 

 セルリアンの胴へ、思い切り鞭を振るう。その鞭は胴へ巻きつき、セルリアンの進行を阻む。

 

J「せっかくだ、もう少し遊んでいこうぜ……ん……?」

 

 正面、裏、背後……そして、あの時樹上から見た背。その何処にも"石"が見当たらない。

 

 弱点が見当たらない以上、今は足止めが最善策であろう。少しでも時間を稼ごうと鞭に込める力を強めたその時、セルリアンは後脚を素早く動かした。次の瞬間、Jの目に激痛が走る。

 

 痛みに悶えながらも、鞭を掴んで離さないJ。

 

 ふと、鞭を引く力が消える。力尽くで目を見開くと、セルリアンが自身に飛びかかっていた。しかし、回避するにはあまりにも距離が詰められ過ぎていた。

 

J「……度し難い。」

 

 牙が肩を掠めた。鈍い痛みを感じる……が、それだけであった。

 

 緑の一閃が視界を染め上げ、身体か何かに包まれる。

 

 気付いた時には、広場の真ん中で寝かされていた……

 

J「お前……どうして戻ってきた!」

 

 Jを庇うようにして立つ、マフラーのフレンズ。

 

 若草色の肘当てや膝当て、そしてボディアーマーを着込んだその姿は、まるで戦場(いくさば)に立つ武士(もののふ)のようでもあった。

 

?「……ごめんなさい。どうしても……」

 

 葉擦れが聞こえる。マフラーが靡き、頭部に携えた黒いゴーグルが光る。

 

?「どうしても、助けたいんです。」




〜次回予告〜

 我らのJ達を狙う、セルリアンが送った次の使者は……怪奇クモセルリアン。

 恐るべき毒牙を光らせて迫るクモセルリアン。森林に火花を散らすマフラーのフレンズの活躍は。

 次回、耀きの飛蝗。「Hero」にご期待ください。
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