Modern Pokemon   作:名無しの権左衛門

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難産でした。


15:国家権力への加担

 

「さて……我が愛媛県、しいては日本の危機が差し迫っている。

だが、この未曾有の危機に対応できるのは、老若男女合計7人。

この一億二千万人国家の重責や期待を、その双肩にかけるには重すぎる。

 そういうわけで、まずは故郷や周辺地域で活動してもらい、雑事等になれてもらう。

 幸いここ四国はJRを使えば、4県すべてに行ける。

さらに隣県への移動手段は多数ある。

そう考えると、一番行動アドバンテージを持つのが、君だ。

 

 香川県出身の佐藤芳樹君」

 

 愛媛県警察本部愛媛県警察協会のお偉いさん方に、

一番の上座に座らされて無言と視線の重責を向けてくる。

無責任な期待に、僕の心はボロボロだ。

 

「国家の未曾有の危機において、個人の人権などおがくず同然ですか」

「その通りだ。超法規的措置として、君を公務員にする。

そしてメディアでもよく報道しているように、『ポケモンショック』の名を借り、

『ポケモンショック対策委員会』を設置することになる。

 この委員会の管理権はここの協会の者にしてもらうが、実際の行動や命令権は、

君に託されることになる。

 

 また、君は香川県を中心に、活動することになる。

しかし隣の県から、どうしようもないことが発生すれば、知恵または知識を借りることになる。

さらに本当にどうしようもなければ、君に出撃してもらうことにもなる。

その際、君にはその県や故郷の香川県、君の活動や活躍により評価が上がれば、

四国すべての警察・消防・救急・医療・公共交通機関・自衛隊の出動命令権を与えられる」

 

 

 一言一言が、非常に重い。

 

 さらに立て続けに言われるのが、今までの被害だ。

 

 初日。

高校へ行った二日目。

公渕公園と原発へ行った三日目。

そして、今日の四日目。

 

 少子高齢社会にとって、痛ましい事件が多数発生していた。

病院は解毒できないアナフィラキシーショックであふれた病人がベッドを占有し、

本来必要とする患者にいきわたらなかった。

 別の公共施設を仮設病院にして、そこで処置を行うが……。

その例の毒によって、多くの死者を出している。

すでに1000人は出ている。

 

 経済被害、人的被害。

 非常に痛ましい。

 

 汽車であの乗客や初老の車掌さんの希望を見るような目。

やっと見えた光明をとらえたそれに、訝しみの表情をもって迎えられた。

 表情は晴れやかではなかったが、言葉に語気が含まれ想像以上に救世主を求めていた。

だから僕は決心したんだろう?

 

 確かに他人なんてどうでもいいし、ポケモンのレベリングのほうが好きだ。

でもそれをほかのポケモントレーナーから見たらどうなる?

 

 僕の家族だって、他人だろう?

ならば、積極的平和主義として、率先して守らなければならない。

今までお世話になっているんだ。子供として、恩人として、仇を返してはならない。

 だから、ついでとして、みんなを守ることにする。

それが個人や末端を守ることになるんだから。

 

 

 それでも怖い。

 

 

 今後のための話し合いが終わった後、僕は寝不足で護送車の中で爆睡した。

別に帰らせてもらっているわけじゃない。

この後向かうのは、香川県の総合体育館だ。

 なんでも今後の僕の処遇について、周辺県の長と話し合うらしい。

都市機能は麻痺し、都市中央は非常に危険となった今比較的集まりやすい場所……。

かつ、危険性や安全面を鑑みた結果の会議場所となった。

 坂出は工業地帯のガスタンクの爆発で壊滅・炎上中らしいし、僕の出身地としても配慮してくれたのかもしれない。

 まあ、そんなことないだろうけど。

 

 

 早朝から昼にかけて移動。

高速道路は山中のトンネルが崩落していたり、香川県と愛媛県の高速自動車道の崩落もあったりして使えない。

今はたった一本の国道が、生命線なんだ。

 この国道は愛媛県と香川県による共同再開発計画により、拡張工事を行っている。

だけどポケモンのせいで、あまり多く進まない。

 

「……ああ。……で……る。 すまないが……」

「……どうしました?」

 

 姿勢を崩してしまったことで、目が覚める。

ずいぶんと瞼が軽くなった。

でも、脚はまだ痛い。

 

「ポケモンが出現しました」

「僕が行きます」

 

 即答だ。

 

 行かなくてもいいらしいけど、試したいことがあるんだ。

実は探索中にいいアイテムをゲットしたんだ。

これを使えば、きっと作業がはかどるに違いない。

 でも、通常アイテムだから、この二本しかない。

 よって一本しか渡せないから、何かするんだったら早急にしてほしいな。

 

 隣に座っている人に、運転手へ言伝をしてもらって僕を外へ出してくれるようにする。

外に出ると濁っていた視界がクリアになる。

 ああ、やっぱりこの香りが、僕にあう。

 

 それは磯の香り。

 海のにおいと潮風が、鼻腔をつく。

意識も共に明瞭になる。

 路側帯に入って、現場に向かって走る。

また護送車の後方にいる黒い車から、スーツを着た人が出てくる。

 

「あなたは?」

 

 走りながらなので、短くしか聞けない。

 

「佐藤様の護衛を承りました、加賀と申します」

「ご存知……の通り、佐藤です……」

 

 軽く挨拶して現場に来る。

そこは酷いもんだった。

工事に使われる重機が横転していて、その上や周辺にゴローンやイシツブテがいる。

 しかも重機のほかにも乗用車があって、中には……。

 

「っ」

 

 僕は凄惨な車内を見ないように、腕で隠して動悸も過呼吸でおさめることにした。

実際吐き気がすごい。

あの破砕によるケガは、当たり所が悪いだけのものだったから、外傷はともかく

裂傷ものでほとんどが服につつまれていた。

 だが今回は違う。

服なんて意味がなくて、もろともだ。

 

「ラッシャイ、ラッシャイ!」

「ゴローン!」

 

 奴らの気性が荒いのは、ただたんに転がって移動しているときに重機にぶつかって行動を阻止されたからだろう。

そして仲間を呼んで、重機を倒しついでに周囲も巻き込んだみたいだ。

 

「やっぱり、サイホーンと同じ類か」

 

 ついでてしまう。

 単細胞だという結論。

 

 スーパーコンピュータ並みの頭脳を持つ非常に聡明な個体から、

ただの生物としていきながらも凶悪な個体。

いろんなポケモンがいるが、これは寝耳に水だ。

 もうね、色々起きてストレス超過で、苛ついてんだよな。

 

「出てこい、ガルーラ!!」

「ガルアアア!!」

 

 僕の気持ちを知ってか知らずか、ガルーラは吠える。

 

ガルーラ

技:れんぞくパンチ にらみつける かいりき かみなり ドレインパンチ カウンター

特性:きもったま

 

 また吠えたことにより、ゴローンたちはガルーラに注目する。

 

「にらみつけろ!」

「ルァ!」

 

 注目したことが仇となったな、この石野郎!

するとゴローンやイシツブテが、腕を体に巻き付けていっている。

なるほど、転がるか。

 

「ガルーラ、カウンター!」

「ガル!」

 

 そう指示すると同時に転がってくる。

 

「ラッシャイ!」

「ゴロゴローン!」

 

 道路のアスファルトをへこませ、えぐり、地ならしし肉体となっている石で轍[わだち]をつくりながら、ガルーラに向かって転がってくる。

 

「出てこい、ヒトツキ!」

「ツキ!」

「ガルーラがカウンターしたイシツブテたちに、ラスターカノンを追撃!」

「ッキ!」

 

 その瞬間、ガルーラに向かってゴローンが肉薄する。

そして隙をみて、ガルーラがカウンターをする。

 

「ガルァアア!!」

「ゴロッ!?」

 

 空中に投げ出されるゴローンやイシツブテ。

その表情はあっけらかんとしており、驚愕といったものだ。

そんな奴らに、泣きっ面のラスターカノンをヒトツキがぶつけていく。

偏差射撃がほぼ不可能なことでも、ノーガードの前では塵にも等しい。

 次々とラスターカノンがぶつかっていき、ガルーラに追撃のドレインパンチをお見舞いさせる。

 

 目を回したポケモンたちは、しばらくしてから目を開けてすぐに山へ帰っていった。

 

 戦闘に集中していたのか、すでに緊急車両が来ており道路整理とともに流れをもとに戻していた。

まあ、この場にいるのは4台程度の乗用車とそれを超える護送バスと護衛のパトカーだ。

そんなに変わらない。

ああ、それと工事をしている人たちかな。

 

「すみません、ありがとうございます」

「いえ、仕事ですので」

 

 加賀さんは僕の左後方に位置して、いつでも身を挺して守れるようにしていたみたいだ。僕が声をかけるまで、動きがなかったから声をかけた次第。

因みに確認中は、ガルーラとヒトツキをなでてお互いに紹介させてた。

 ほかにもいるけど、緊急事態だから色々ことが終わってから紹介するようにしたんだ。

 そうじゃないと、ゆっくりすることすらできない。

 

「じゃ、二人とも、ボールに戻って」

「ガルッ」

「ツキ」

 

 二匹ともボールに戻ってもらって、作業をし始める作業員のところへ行く。

 

「すみません、ちょっといいですか?」

「ん、なんだ?」

 

 語気が強くいらいらしているようだ。

当たり前だろう。仕事仲間が、重症を負って病院へ送られたんだから。

しかも今回の計画の要だったんだろうな。

 あの重機は、アスファルト上部を引っぺがす役目だったんだろう。

 今回のゴローンのせいで、全体を破壊されたから一から道路を作らざるを得なくなった。工費の増大や納期が延長になり、ここの監督官はストレスではげそうだ。

 

「今研究所で開発中のポケモン嫌気性スプレーです」

「ほう?」

「効果は750M分の行動まで、ポケモンが直径1メートルまで近寄ってきません」

 

 僕は普通のアイテムであるゴールドスプレーを使うことにした。

中身は100人分のポケモン嫌気性物質を含んだ溶液。

効果は750Mを移動するまで、ポケモンを一定範囲内に近寄らせない。

消滅条件は、100人に使うか、使って一分経過すると透明になって消える。

しかも効果消失は、使われたポケモンや人が、750M分移動するか使用から二時間経過することだ。

 

 いつ試したかって?

 

 大丈夫。この効果は、むしよけスプレーを偶然手に入れた時に検証した奴だから。

それをゴールドスプレーの効果と重ねただけ。

 いろいろ危ないけれど、端折ったから口頭に出した説明で事足りると思う。

 

「最低二時間はポケモンがやってきませんので」

「それでも二時間か」

「すみません」

 

 こころにも思ってないことを言う。

 

「いや、ありがてぇよ」

 

 そういって彼はスプレーをもって現場に戻る。

そしてそのスプレーを全員に振りまいて、最後にはスプレーが消え去る。

このことに驚いているが、まあ別に使用したから消えただけだからなぁ。

最初は驚くかもしれないけれど、処理とかそこらへんが省略されるだけなので、

環境を考えれば非常にいいことだろうと思う。

 というかゲームのアイテムが現実に残って、環境を汚染しているとか考えたくない。

 

 僕はその様子を見ながら、護衛の加賀さんとともに護送車に戻る。

現場のことは、現場慣れしているプロに任せることにした。

そうして僕らは、香川県に向かって二時間ほどかけていく。

 ただこの二時間というのは推定で、途中のこともある。

 そう、途中……信号機とか渋滞のことだったりするんだ。

残念ながら、ポケモンによるインフラ破壊で遠回りをしなければならず、二時間三十分で高松市総合体育館に到着してしまった。

 

 

「そういえば、なぜ総合体育館なんですか?

県立図書館の隣くらいに大きな駐車場や大きな施設がありますよ?」

 

 隣に座っている高官の人に聞いてみる。

すると意外な返答が帰ってきた。

 

「駐車場は今ヘリポートになっている。ポケモンに関しての研究が、迅速に周辺県や国に伝わるように、研究施設の方針を変更し拡張開発。それとともに防衛設備の増強も行っている。

そのため県立図書館や研究施設等の周辺は、立ち入り禁止になっている」

 

 いつの間にか香川県の知識人が集まる研究施設群が、四国一の重要施設として認識されるようになってた。

 

 僕にとって驚愕でしかない事実だ。

四国は四方八方を海・川・山に囲まれているせいで、帰属意識みたいなものがない。

つまりこの4県は、まとまりがないんだ。

 そのせいで中央都市みたいなものがないし、JRや国道といった物理的なインフラのつながりだけで、郷土だったり文化的・経済的な協力といったものがない。

だからこの4県が独立して、それぞれ勝手にやっている状況なんだ。

 東京の真逆と考えてもらってもいい。

 あそこは色々周辺地域に負担してもらっている。

水道・電力・住宅地・公共機関等。河川に一本かかっている電線が切れて、周辺住宅が大規模停電になるくらい。

そりゃあもう、提携しなけりゃ生きていけない。

 

 さすがにそこまで依存するわけじゃないけど、ポケモンによって4県がまとまる可能性が高まったのはいいと思う。

四国の可能性は、この見ている方向性が違うだけで今まで発揮されてきた。

 でも今回の件で、一つの方向に向かうのだとすれば、非常に大きな力を発揮できると思う。

 

「それと、突然で申し訳ないが、着任挨拶を頼む」

「……いきなりですね」

 

 すでに総合体育館の南にある無駄に勾配がきつい橋にたどり着いている。

……ありきたりな挨拶でいいかな。

 

「着任挨拶のマニュアルは用意しておいた」

「え?」

 

 高官の人が脚の上に置いてある手提げバッグから、書類を一枚出して渡してくる。

 

「変な発言をしても、混乱しかうまないのでこれを見て挨拶をしてくれ」

「……こんなに短くていいんですか?」

「一応の建前だ。それに、どこで盗聴されているかわからんからな」

 

 まだ着任というか、公務員にもなっていないから、高官の人は当然の口調で言ってくる。そして突然の盗聴疑惑。

 やっぱり内憂外患じゃないか。情報秘匿を命じていても、結局相手は人間だからなぁ。

スパイ法案をつくってくれよ。

 

 書類に書いてあるのは、本当にありきたりな挨拶だ。

 

「えーと……今日より『ポケモンショック対策委員会』に配属されました、佐藤芳樹です。奮励努力し事態の収拾に取り組む次第です。皆様、どうぞよろしくお願い致します……ね」

「なるべく大声で、はきはきと」

「はい」

 

 護送車が体育館の裏側に停車する。

ここは雨除けがあって、傘を差さなくても降りられる。

 

 心臓が高鳴ってきた。

 無性にトイレに行きたくもなるし、呼吸が荒れてくる。

胸が締め付けられる思いだ。

こんなに緊張したのは、大学入試や面接のときくらい。

 

……いやそんなレベルじゃない。

 

 周囲には愛媛・香川・徳島・高知の県知事や警察や消防といったお偉いさん方が、スーツや仕事着を着て現場に到着していた。

一瞬だけ見えたけれど、はしご車や救急車もいた。

 さらに上空にはヘリコプターが、爆音でポケモンを退避させながら飛んでいる。

 

 そして護送車の前後に着けられた車から、スーツを着用したSPが出てくる。

 

 僕は体育館の中へ案内されていく。

途中トイレに行ったんだけど、加賀さんを含めた護衛の人の一部がついてきた。

終わらせたら、喉も乾いてきたしお腹もへってきたのを実感する。

 でもそんなこと言っていられない。

 隣に座っていた高官の人が近づいてきて、僕に耳打ちする。

 

「顔を上げるんだ。せめて俯くんじゃない。ほかの奴が見ている」

「……はい」

 

 高官の人は僕から離れていく。

 そして僕は彼の背中を見送って、脚を進めながら周囲を見る。

 

 みんな表情が引き締められている。

警察官や消防官も、着の身着のまま来ているらしく格好いい。

 

 

 初夏の昼。

 ここは冷房もつけられて、比較的快適な様子だ。

 一面にはパイプ椅子……赤い直線じゅうたんが中央のステージに向かって、入り口から敷かれている。

あのロールのやつな。

 ただ座るのはここではなく、この多くのパイプ椅子と対面するように配置されている場所。つまりお偉いさんが座っているような場所だ。

 

 僕は案内役の高官というか役人に、座るべき席に導かれてそこへ座る。

ただその場所がステージ上で、一番中央に近い場所だったりする。

目の前に水がはいったペットボトルがある。

 

 空気が厳かに張りつめていき、少しの音でも発すれば極度の殺気が満ちた目を向けられるだろう。

 

 国や県の重役が、この二時間程度で集まれるなんて思っていなかった。

徳島や香川はともかく、高知県・岡山県・大阪市の重役も来ているという。

市政も大事だが、ポケモントレーナーがどれだけ重要なのかよくわかってしまう。

 

 香川県の役人が立ち上がり、今日の会議に関することを発言する。

 

「今日本は未曾有の危機に陥っています。

この危機に直面する我が国を救うことができるのは、6人のポケモントレーナーだけだと思われていました。

しかし今日の早朝、新たなポケモントレーナー……テレビ放送でも発表されていました、最後の一人を発見いたしました」

 

 そこから熱くなっていく言葉。

その言葉を聞くほどに、頭痛もそうだけどめまいがしてくる。

 冷や汗も背中に流れるのを感じながら、眼下に望む僕よりも努力している手の届かない方々を見る。

 真剣で刺してくるような視線を、僕は浴びてしまう。

頑張って視線を下げたりしないようにする。

 

「彼は今日までポケモンに関して自己研鑽を積んでおりました。

その知識や知恵は、我々では到底至らぬものでございます。

このように祖国を救うには、申し分ない人物だということが散見されます」

 

 いったん持ち上げて、僕の紹介場面に移る。

 

 自己紹介をお願いします、と隣の人から耳打ちされた。

それと同時に司会の人も、自己紹介とこれからのことについて語ってもらうと言った。

すぐに僕は不安とともに、いっている事が違うと食いついた。

 全然情報がまとまっていない!

 まさか、恥をかかせるつもりなのか!?

 

 確かに僕は愛媛県にいたし、その発見は愛媛県だ。

だからといってこれから協力する仲となるのに、発見した愛媛県が愚か者を連れてきたと思わせようとしてるのか!

 

 隣の人は困惑している。

そのことから容易にわかってしまう。

 

「自己紹介をお願いします」

 

 すがすがしいほどの司会の笑顔。

仕組んでやがったなこの野郎!

ポケモントレーナーとかいう意味不明で若輩な輩が、自分たちの頭にたつなんて許せないと思うだろうが、結局しごとだろうが! 分別つけろ!

 

 僕は重々しい腰を上げて、緊張に震える体に鞭打ってステージ中央前方に来てマイクスタンドの前に立つ。

 

 くっ、こんな前で話すのか。

こんなのを何度も繰り返している奴らと違って、僕はほぼ初めてなんだぞ!

 

 悪態をついていても、時間は進められる。

 

 周囲に味方はいない。

どいつもこいつも厳しい目ばかりで、クソが……!

 

 僕は口を開いて、さっき覚えたはずのカンペを思い出す。

でも、そんなことできなくて、この緊張のせいで頭が真っ白になってしまった。

開いたはずの口を閉じてしまう。

 

 何を言えばいいのかわからなくなってしまう。

 

 今こうしている間にも、いろんな人が被害にあっている。

そしてここにいる人がいれば、容易に片付いてしまうことが無駄に拡大し尋常じゃない被害になっているかもしれない。

考えたくないけど、考えてしまう。

 

……僕はこの場面で、一番言ってはいけないことを思いついてしまう。

でも今この一瞬、すぐにでも終わらせたい。

 

 

 

「私は―――」

 

 そう言いかけた時、突然サイレンが鳴り響いた。

 

「何だ!?」

「いったい何が起きた!」

 

 僕の決心は一瞬にして砕かれて、緊張の糸が切れたことと次に巻き起こる事件にどうすればいいかわからなくなった。

普通の住民ならば右往左往して、狂気と絶叫にまみれる。

でもここにいる人たちは、まずは状況把握といって無線やら電話やらで情報を集めていった。

 

<皆様落ち着いてください。官邸・内閣府おいては消防庁より、J-ALERTの発令です。

緊急会議は一時中断し、各持ち場へ戻ってください。

また本日14時に置きまして、北朝鮮が韓国やその同盟国に対して停戦協定を破棄、宣戦布告しました>

 




調べていくたびに飽きていく。
EU諸国の国民性格を考えないと……。
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