Modern Pokemon   作:名無しの権左衛門

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16:核攻撃

 

 北朝鮮の宣戦布告。

 

 

 は?

 

 

 わけがかわらない。

 

 放心しながら、遠方から響いた爆発音により覚醒。

すぐに建物の外に出ず、なるべく遮蔽物が多いところへ隠れる。

さらにSPや加賀さんたち、護衛の人が駆け付けてきた。

 

「落ち着いていますね」

 

 意外。

 

 とでもいうような彼らの表情と態度。

 

「心外です。それに、今僕ができることなんてないでしょう?」

「はい。NBC攻撃のために、今は物陰にいてください」

「わかりました」

 

 警報が鳴りやまぬまま、何かできないかと思う。

 

 ポケホ?

 僕はそいつが伝えてくる履歴が何を発表しているか、みたくない。

見たくない。

でも、見なければ……。

 

「テレビはありませんか?」

「こんなこともあろうかと、プロジェクターを用意させました」

 

 

 県知事の一人が聞くと、その部下が行動する。

そしてステージに白の投射幕が降ろされ、ステージ側の証明を落とす。

 プロジェクターが映像を投射し、とある番組を映す。

 そこには地獄絵図が繰り広げられていた。

簡単に言うと、弾道ミサイルによる二次被害で大規模な事故が発生していたのだ。

 

 対馬沿岸に建設されている監視望遠カメラで、韓国側を撮影していると大規模な爆発の炎や光が確認できた。

 また各所空港や航空自衛隊・在日米軍基地が空中を観察していると、

北朝鮮のミサイルが空中を飛んでいるポケモンにあたって誤爆。

大きな被害を抑えることになったが、そいつによって発生した衝撃波が地上を襲うことになった。

勿論地上軍だって何かしようとした。

 でもPACとかSAMとかで攻撃しようにも、ポケモンにあたってしまう確率が高すぎてどうにもできない。

 この攻撃を充てるには視認から急接近して、そこからQAAMのような行動をさせればいけなくもない。

 

 もっとも画像認識だろうと、撃墜できるような攻撃力を持たせられないという。

 

 

<こちら関西国際空港です。

今日も大変混雑しておりますが、ポケモンショックの影響で混乱に変わってしまっているようです>

 

 生放送のようで、いろんな視点のカメラが画面切り替えで、いろんな場面を映していく。

 

<日本を含む世界に出現したポケモンによる影響は、国民の生活に影響を与えその範囲は甚大な被害を齎してます。

ここ関西国際空港では、全ての航空便が欠航しており、外国人観光客や国内観光客に混乱が広がっています。

 また食料品にかんしてですが、まだたくわえがあり高騰化している中でも比較的安定した価格で、提供できていると関係者は仰っていました。

 ですが見通しはまったくつかず、お先真っ暗との意見も多数見られました。

ここ一週間が、政府の対応により国民の皆様の生活に左右される期間にんsちmsづ――>

 

「ん?」

 

 音声と画像が乱れる。

 ここに待機している役人が沈黙をやぶって、訝しんだり唸る。

突然画面が、というよりカメラが飛ばされて回転する。

カメラのレンズには血が一部張り付き、ガラスか何かがカメラレンズを傷つけていた。

 そしてカメラが映すのは、真昼間なのに上空が輝き地上のものをひれ伏させる何かを放った事実だ。

 周辺には多数の人が倒れている。

 

 すぐに映像が……切れなかった。

 

 なにも反応がない。

 

 突然体育館の扉に、スーツを乱して人が入って来る。

 

「き、緊急通達!」

「何事だ!」

「大阪府上空に気化弾頭! 衝撃波と熱、酸素が奪われて、急速な酸素欠乏により外出している市民が……! とにかく、事態確認とともに、応援を!」

「わかった。至急、大阪府に救援を――」

 

 僕はみんなが騒然としている間、スマホを見る。

 

「何?」

 

 ポケホを間違って見てしまったが、偶然左手の親指が触ったところが履歴だった。

その履歴はほとんど触っていないため、トップの日本関連情報の場所になっている。

 

 そこにあるのは―――

 

 

 

『北朝鮮、東京へ戦略核弾頭発射』

 

 

 

 

―――!

 

 

「け、県知事!! 東京に、核爆弾が!!」

「何! スマホはまだ機能しているのか!?」

 

 僕は焦ってしまって、大声で言ってしまった。

そして香川県知事は、僕が手にもつものをみてスマホだと勘違いしたらしい。

 

 

 カチッ

 

 軽い電子音で手のひらの中にあるポケホが震える。

何事だと思って、ポケホを見るとそこには驚愕の事実が待っていた。

 

 

 

『戦略核弾頭、レックウザにより破壊。EMP効果なし』

 

 

「え? あ……え……?」

「どうした?」

 

 みんなが訝しんだ顔を向けてくる。

僕は唐突な情報更新に唖然として、声を詰まらせてしまった。

だから返答なんて、いきなりできるわけじゃなくて。

でも言わないと混乱してしまう。

 

「ポケモンが核弾頭を破壊しました!」

「「な!?」」

 

 知事がいるため大はしゃぎできないが、小さなガッツポーズやほほを緩ませる人が数少なくいた。

 

 ただ、宣戦布告からまだ30分も経過していない。

国が戦時体制に移行する前に、どうにかなりそうな気がする。

でも、戦後元に戻るとは思わない。

 大阪があんなことになったんだ。

 きっと戦後賠償は酷いものになると思う。

 

「君。スマートフォンを持っているかね?」

「はい」

「今回の情報源は、どこのかわかるか」

「いえ。Yahooニュースや国からの緊急速報もありません」

 

 知事が配下や自衛隊の情報を扱う人と会話している。

 わかっていたことだけど、ポケホを見せるしかない。

ただその効果は、身をもって知ってもらうことになるけれど。

 

「佐藤君。君のスマホは、どこのものだね?」

「これはスマホではありません。ポケモンのスマートフォン、通称ポケホです。

申し訳ございませんが、これはポケモントレーナーしか使えません」

 

 そういうわけで譲渡もそうだが、接触させられない。

しかし僕の護衛についているSPや加賀さん以外の人が、僕のポケホを奪い取る。

 するとすぐに画面が真っ黒になって、電源も切れてしまった。

 非常に苛ついたけど、これはいい感じに仕返しできた。

 

「やはり彼が言ったことは嘘のようです。これを見てください。何も映っていません」

 

 んだと、こいつ!

 

 こいつがポケホの操作をしようとした瞬間、バチッという音が聞こえた。

するとこの男が腕全体を振動させて、ポケホを地面に落としたんだ。

きっと感電したんだろうな。

 僕はこの機会を逃さずすぐに取り戻して、電源を入れて見せる。

うん、不具合なくちゃんと起動する。

 

「私でなければ、こいつは作動しません。指紋認証・体温認証・遺伝子認証等、

ありとあらゆる情報を瞬時に取得し、最初の作動時に登録した情報と合致しなければ絶対に電源すら入りません」

 

 僕からポケホを奪った乱暴な奴は、怒った様子もなくしびれる腕をもう片手で握っている。

 

「なるほど。ならば、そのポケホを渡しなさい。四国技術研究所で解析し、下位互換のものを配給し、生活を安定させる」

「残念ですが、これ一つしかありません。ポケモントレーナーは、ポケモンと意思疎通ができるだけの一般人です。

ですので確実な情報端末が必要です」

「だが国民を救うにはそれしかないのだ。たしか7人か。ならば7人を招集し、一台を分けて使えばいいだろう。

残り6台を使えば、情報も研究も進む」

 

 こいつの目や口調が、徐々に笑みやら饒舌になり始めている。

 この香川県は、ほかの奴らを出し抜こうっていう魂胆か。

それとも開発できたら、主導権や既得権益を握るつもりなのか?

香川県知事は、自民党だ。

 派閥は違えど、党は同じ。

 非常に面倒な!

 

「ふむ……話は聞かせてもらったが、性急じゃないか香川県知事殿?」

 

 そういって僕ら香川県民の内ゲバに絡んでくる人がいた。

 その人は若干恰幅がいい人で、今までの役人よりも知的な姿をしている。

というかこの人、よくメディアで見たんだけどいつのまにか消えてたなぁ。

 お、この人が県知事に絡むと、いやな顔をよそへ向けてしたあとすぐに笑顔になって向き合った。

 

「おはようございます、松井大阪府知事。

この度は香川県のポケモントレーナーを拝見するため、ご足労遥々――」

「事態は急変しています、今は悠長なことを言っていられないのではありませんか?」

 

 あれ、大阪府長?市長はどこだろう?

 

「それもそうです。しかし体裁はございますので。そういえば、大阪市長殿はどちらに?」

「今日は忙しいとのことで、公民党大会を市役所で行うとのことです」

「なんと!? このような事態に、ポケモントレーナーと親睦を交わさないとは。

ポケモンよりも市民を考えるとは、なかなか頑強な御仁ですな」

「真に」

 

 お互いに笑いあっている。

 いやいやいや、なんという皮肉のいいあいだよ!?

たしか大阪って二重行政で……。あ、市長って大阪市内にいるんでしょ?

気化爆弾で関西国際空港周辺がやられているから、そろそろまずいんじゃないの?

さすがに核シェルターくらいは持っているかー。

 

 ちなみに香川県に気化爆弾は来てない。

 その代わり瀬戸大橋上空でポケモンに衝突し、そのままロープや鉄橋を熱と衝撃波で老朽化を進行させたんだ。

まじ、FUCK。

これで岡山県知事帰れなくなったんじゃないか?

 

「たしか……佐藤芳樹君だね?」

 

「あ、は、はい」

 

 唐突に話を振られてびっくりした。

プロジェクターが投射してあるステージ上から、いまはパイプ椅子がある程度片付けられた体育館後方にいる。

投射の光量から照明を少なくしているので、この薄暗い中で挨拶をしなければならない。

今もこのプロジェクターは、日本国内の惨状を伝えるニュースをしている。

 そして松井大阪府知事は、僕の方に来て目線を合わせてくる。

後ろの方には、護衛の方や役人・高官の方々がいらっしゃる。

すごく怖い。

 

「そう緊張しなくていいよ。これから私たちは、協力し合わないとこの未曾有の危機に立ち向かえないんだ。

私は松井一郎。大阪府知事という大阪府を導くしがないおっさんだ。

君の友人であり仲間でありたいんだ」

 

 そういって手を差し出してくる。

 

 僕はそれに視線を集中した後、周囲を見てしまった。

やってはいけないということなのに。

 もちろん周囲の視線は、ほぼ無表情の視線ばかりだ。

 この無言の圧力は、あの檀上で浴びた無責任な重責と同等の威圧感だ。

僕は彼らの無言の圧力と目に耐えられない。

 

 どんな思想や思惑を抱いていようが、僕という未知のポケモントレーナーに体裁であっても整え、仲間として引き入れる。

そんな懐の広い人物の傘下に入っていたい。

 そもそも経済力が違うし、これから大阪府は壊滅するんだ。

 だったらポケモンを流用した抜本的な改革を成せるだろうし、二重政治もなくなると思う。

 

「……」

 

「……」

 

 猜疑の視線を送るが、彼ははりついた笑顔を崩さない。

これがこの世界のプロだ。

抗えるわけがない。そもそもただの高校生に、権力者に立ち向かえるわけがない。

 

「……私は佐藤芳樹です。ご期待に副えるかどうかわかりませんが、

やるだけやって……あぁ、いや、粉骨砕身、奮励努力……します。

よろしくお願いします」

 

 希望的観測の言葉は、彼らにとって必要ないって思った。

やるしかないんだ、彼らにとって。

やらないと自分たちの命が危ないし、税金すら入ってこない。

さらに求心力は低下して、彼らの明治維新からもじったその政党名とその矜持が妥協をも許さないだろう。

 

 手?

 

 僕ごときがとれるとでも?

だからと言ってここで手を取らないと、僕が大阪府知事と結託したとは思われないだろう。

よって手を取ることにした。

 

「よろしく、佐藤君。さて、私たちはしがらみのない運営をしよう、という心持があるんだけど……。

君にはこれから、私たちに光明を見せてくれないか?」

 

 は?

 

 唐突な提案に僕の頭は、再び混乱に陥った。

あの檀上で指示されたアレと同じことじゃないか!

くっそ、めんどうな!

 

「今、この世界に存在するポケモンたちがどうなるのかは、君の言葉ですべてが決まる」

「そんな……!」

 

 あまりの重圧に耐えきれず、言葉が出てしまう。

中身のない無意味な言葉。

 

「現状そうなってしまっているんだ。

君には悪いが、ほかのポケモントレーナーを待っていられるほど我々に残された時間はないのだよ。

 ポケモントレーナーはポケモンとの共存・融和を唱えている。

しかし彼らがいない我々は、文明レベルが大正時代よりも悪化する可能性がある。

そうなると我々は、ポケモンを排除することになってしまう」

 

 排除……。

 あの放送で核放射やミサイルが効くことは、通常の生物よりも頑丈だけれども死に追い詰めることは可能だと発表されている。

そして府知事の表情は、険しいといって過言ではない。

 実際この4日間、人口が集中し多くのならず者がいる大阪府にとってこの状況は不利益しかないと思う。

 だからポケモンを早く掌握したんだろう。

わかるけど。それじゃだめなんだよ。

 

 

 

「ポケモンはただの生物じゃない」

 

 

「感情も知識もあり、思考ができる。

人間の言葉を解することができる。

彼らは人間に従えるが、従わすことはできない。

ただ彼らは本能的に、手助けをしたいだけなんだ」

 

 

「なるほど、君の言いたいことはわかった」

 

「え!?」

 

 口に出てたのか!?

 やっべ、やっべ、どうしよどうしよおおおおお!!?!?

 

 焦りで何を考えていたのかもすら忘れてしまう。

そして僕が混乱しているさなか、目の前の府知事は落ち着いていう。

 

「関西集中審議を行いたいが……よろしいかな?」

 

 僕が混乱している中、大阪府知事が周囲の意見を纏め上げていく。

彼らの様子を見て少し気を落ち着かせることができたので、周囲を視認してみんなの表情をみてみた。

皆神妙な表情をしているが、ときたま衝撃波がこの体育館まで届いている。

 この度にみんなが表情を暗くしていき、最後に高知県知事が口を開いたんだ。

 

「かまいませんが、7月27日と28日に行われる全国知事会議はいかがしましょうか?」

 

「……5月31日に、【日本創生のための将来世代応援知事同盟サミット】を仙台で行うらしいじゃないか。

現在茨城には、関東地方をまとめて面倒見ているポケモントレーナーがいる。

我々大阪はそのサミットを利用し、茨城や東京と掛け合うことにしよう」

 

「松井知事、それはなりません。市長や周囲の邪魔ものどもが、あなたを妨害してきます」

 

 側近の人がそう諫言すると。大阪府知事は腕を組んで考え、言を発する。

 

「……外は音と熱で満たされ、ある程度の核放射がある。ここで全てを決めよう」

 

 大阪府知事松井一郎氏は、集まった都道府県知事の中で一番のGDPを誇るがため司会として音頭を取る。

そして周囲にいる役員や立場上従わざるを得ない人たちが、プロジェクターはそのままに

椅子や机を倉庫やステージ下の格納庫から取り出して簡易な会議場を作り出す。

 ときたま窓の外から閃光と爆発音が聞こえる。

 そしてそのたびに県知事やその役職員の携帯バイブレーションが、今いる空間に響く。

この度に僕は恐怖と緊張で、完全に直立不動になってしまった。

 

 

「佐藤様、こちらへ」

 

 加賀さんが僕の近くによって、背中に手を回しもう片腕で席まで案内される。

 場所は大阪府知事の隣だ。

ただ僕のさらに右隣には、香川県知事の浜田恵造氏がいる。

勿論右手後方には、書記の方がいらっしゃって会話内容を独特の記号で書いていっている。

 

「加賀さん、ありがとうございます」

「仕事ですので」

 

 席に座ったら、加賀さんも後ろの方へ下がる。

 

「これより、関西圏集中審議を行う」

 

 大阪府知事が、そう切り出した。

 

 

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