会議が発動されるのとともに、照明が明るくされた。
プロジェクターも移動されたけれど、報道を流し続けるままだ。
報道内容に気が向けられがちだが、手元に資料を置く役員を見てすぐに視線を戻す。
「短時間で仕上げましたので、少々荒がありますがご了承ください」
そう耳打ちしてくる。
ご了承とか言っているけど、むしろどこで書類をまとめていたのか聞きたいよ。
「さて、お手元の資料を順次見ていただきたい。
基本的な進行もあるが、大阪府より危機管理監の大江さんから報告を」
そういって視線が向けられるのは、大阪府の災害・危機管理・治安維持に関する安定と安全その維持を担う危機管理の長、大江 桂子氏。
彼女は毅然とした態度で手元の資料を一瞥し、その場に立ち上がる。
「率直に申し上げますと、異例の事態によりマニュアルが役に立っていません。
現状役に立っていますのは、渇水・断水時の行動等でしょうか。
とにかく、ポケモンによる被害は大なり小なり、幅広いので手を付けるにも一度被害を総括しなければなりません」
「どんな被害がある?」
そういうと彼女は胸元から手帳を取り出す。
それを見たかと思うと、言葉を羅列し始める。
「電気の収奪、金属製物品の浸蝕、路面液状化・インフラ断絶・ビル倒壊・ライフライン断絶、ポケモンによる死傷者・漁業や農業等食料自給率の一時的ゼロ・一級河川へのダム建築・石油資源や輸入製品の高騰・トンネル崩落・高速自動車道崩壊・身体異常者の急増・帰宅困難者の増加等。ほかにも多数あります」
うへぇ。
これだけでもかなり来るのに、消防・治安維持・健康医療・インフラ・ライフライン・鉄道・教育・都市整備・商工労働等、いろんな課や部より報告が相次ぐ。
この情報が大阪府だけのことだというと、かなりきついんだけど。
「次にポケモン対策として、ポケモン対策課を立ち上げそれぞれの問題に立ち向かうわけですが……。
このポケモンに関して、意見のある方お願いします」
そういうと全員の目が、僕に向けられてくる。
ビクッと体が強張ってしまって、心臓の鼓動が跳ね上がる。
何を使用にも、緊張してしまって立ち上がることも、何か言おうとしてもつぶやくだけで
全然できない。
すると左肩に何か暖かいものが置かれた。
手だ。
「大丈夫。私語でいいし、目を閉じて独り言でもいい。私たちに、君のポケモンへの夢を、教えてほしいんだ」
「……っ、わかりました……」
僕は深呼吸して目を閉じる。
「ポケットモンスター。ちぢめて、ポケモン。
この不思議な生物は、世界に100、200、300、それ以上が出現しています。
森に、野原に、海に、噴煙たなびく火の山にも。さらに、大都会や土の中にもいます。
彼らはとても賢く、とても無垢です。善悪関係なく、人を助けようとする本能があります。
彼ら一匹一匹は、とても弱いですが結託されると、天変地異を巻き起こします。
しかも感情や心もあるので、取り扱いには十分注意が必要です。ペットではありません。
人生を共にするパートナーです。
私たちが未曾有の危機に陥っているのは、ポケモンたちが地球に慣れていないからであり、この地球になじんでもらうには人がポケモンと手を取り合い、寄り添っていかなければなりません。
もしも現状維持を貫くならば、文明は大きく後退し地球生物は絶滅の憂き目を見るでしょう―――」
僕は色々話した後、”最後にポケモンとともに歩めば、現代社会は次の段階に行けます。
そしてなにより、人手不足が解消します。”と言った。
そしたら商工労働関係者が、唸り考えるそぶりを見せた。
「彼の言うことを真実だとうのみにして、研究は独自に行いましょう。
さて、次にポケモンをどのようにして利用するのか。
教えてくれるかな?」
「……加賀さん、僕の荷物どこですか?」
「持ってきます」
僕の右手後方に控えている加賀さんが、僕のリュックサックが持ってきてくれる。
「ありがとうございます」
受け取ったら中を開けて、そこから偶然拾ったモンスターボールを取り出す。
「この紅白のボール。モンスターボールと言いまして、ポケモンを捕まえる道具です」
釦を押して、収縮状態から通常状態へ戻す。
するとおおっ、と会議場の皆さんが声をあげた。
まあ、気持ちはわからなくもないよ。
「オーバーテクノロジーなのは、この際無視していただけるとありがたいです」
一度話すと緊張が取れて、驚くぐらい饒舌になっちゃった。
雰囲気に馴染んだっていうのかな?
でも表情筋は死んだままで話す。
たまに噛んでしまったり、お医者さんをお医者しゃんと読んでしまったりするのは許して。
「さて、この中にポケモンが入る機構を、簡単にご説明します」
モンスターボールを開いて、中の機構が見えるようにする。
遠くの人は申し訳ない。
プロジェクターを使えば行けるけど、そんなカメラと配線を持ってきている人はいないようだ。
しかたないね。
「といっても大半が企業秘密らしいので、詳しくは言えませんが。
まずこのボールは、第三世代のボールです。
初代はポケモンのネットを使ったもの。
そして二世代はガンテツと言うボール職人がつくった球体状のものに、ネットを張り付けたガンテツボール。
最後の三世代目は、ポケモンの特性を生かしそれを突いて収納可能にした電子ボールです。
ポケットモンスターは、いわば情報生物です。
いや、既存の生命体は遺伝子情報でできた生物ですが、ポケモンたちはそのはるか上位にいます。
実はポケモンたちは、大昔人が馬を飼育するような方法で管理されてきました。
そして一部の資産家は、マイクロ波を放つ宝玉をもってポケモンを所有していました。
大昔は群雄割拠による戦争が相次いでいたので、その飼育方法でよかったのですが
時代が移り変わってくるとコストパフォーマンス等が問題になってきます。
敷地の問題や地価の問題もありますし、時代の流れ的に当然の風潮でした。
これらの動きによってポケモンをどうにかして、狭い土地で有効活用したいとして発見されたのが、ポケモンの収縮性です。
研究者は彼らを狭い空間、そう人間なら発狂する狭い空間に閉じ込めそこからさらに狭めたのです。
物理的に。
そうするとどうでしょう、彼らは体を丸めちいさくなったではありませんか。
これでお分かりだと思いますが、ポケモンにはポケモンの素材というわけで、
ポケモンから取得した木材にポケモンの粘着性の高いネットを使って、
高速度の拘束で狭い空間にポケモンを押し込めました。
ポケモンはネットに引っかかると、手のひらに収まるくらいに収縮し、小さくなります。
勿論出すときは、ネットからはじき出すのです。
するとポケモンは大きくなります。
そんなこんなで時代は変化し、ポケモンのネットは電子光線に変化しました」
話を締めくくるとネットから光線になったことに、頭を抱える人がいた。
実際赤い光線を見せると、喜怒哀楽する大人たちが見えた。
「うっそだろ……?」
「ポケモンすごいな……」
観点が違う気がするけど、まあいっか。
「これは面白い。ポケモンの制御方法の一つが分かったが、そのボールはどこにあるんだい?」
浜田恵造氏が興味津々に声を弾ませて聞いてくる。
まあ当然といや当然の疑問だよなぁ。
「既存のものでいくらか持っていますが、絶対数が足りません。
後日ポケモントレーナーとやり取りできないか、探ってみます」
じつはポケホの機能を全く使っていないんだ。
使ったのは日本に関する世界情勢や履歴、ポケモン図書館の項目・ダウジングアプリくらい。
電話は僕のスマホでもできるし、ポケモン図鑑のかわりとして機能するはずのポケホを使っていないことは、当然のごとく大問題だった。
ほかにも機能が解禁されていたらいいな。
「次にポケモンの有用性について、話してもらいたい」
「はい」
まず羅列するのは……。
「最初に労働者の埋め合わせについてです。
やっちゃいけないこともここで暴露しますので、ご了承ください」
「む……」
ここだけ笑顔にできた。
そのおかげで、わくわくしていた人たちに緊張の色が出た。
「ポケモンのことについては、そのままうのみしてください。
質疑応答はこの後受け付けますので。いいですよね、大阪府知事松井さん?」
すんごい無礼者だよな、僕。
驕る愚か者にしか見えないから、今後は戒めておきます。
「構わん。たっぷりと言ってくれ」
「では。ウルトラホールを使って、異世界の物品を輸出入しほか惑星との異文化交流を図れます。
これによりワームホールも光量子宇宙船もいらないので、簡単に移民や危機回避を行うことができます」
真顔でいうと、周囲の方は”は?”という表情だ。
「次にエスパータイプのポケモンの中で限定的に覚える、テレポートという技を使えば、
一度見たところへ何度でも転移できます。そう、一瞬で。
これにより、宅配業者は勿論、移動インフラへの革命が発生します。
またこのテレポートを科学的に解明できれば、人の時代はゼロ距離革命が発生し
きっとテロも増えるでしょう」
「体温一万度のポケモンもいますが、大気や周辺物質による冷却で周辺気温が低下していますが、そのものを集め地熱発電や火力発電を行えば、ごみ問題やエネルギー問題が簡単に解決します」
「飛行タイプは風おこしから暴風を発生させられます。風力発電が捗りますね」
「ポケモンは雨・あられ・砂嵐・日照り・一斉発芽・一帯の電子発生・台風等天変地異を起こせます」
「ポケモンはたまごグループという、子孫を残せるくくりがあります。
例えば空を飛んでいる燕と北海道にいる鶴は、どちらかが雄か雌であるなら、
雌の子を卵として産めます。明らかに人っぽいポケモンも、すべて卵生です。
胎生ではありません」
「ポケモンは、タイプというもので分けられます。
ノーマル・ほのお・みず・くさ・でんき・こおり・かくとう・どく・じめん・ひこう・エスパー・むし・いわ・ゴースト・ドラゴン・あく・はがね・フェアリーです。彼らは単一のタイプか、二種のタイプを持つ複合種がいます」
「ポケモンは成長し進化します。生物の万年単位の進化とは違いますが、意味合いとしては進化が相応しいかと。
この進化のほかにも、ある一定の条件下で肉体や能力の一部が変化します。
またポケモンも一般のものから、伝説のポケモン・幻のポケモンというものが存在します。
さらに異世界のポケモンも存在します。
異世界のポケモンもそうですが、彼ら別分類のポケモンは惑星全体へなんらかの影響を及ぼすことが確認されています。
たとえばグラードンというポケモン。
高さは3.5M、重さは約1トン。タイプは地面で、特性はひでりです。
分類は伝説のポケモンです。
そのものは、大雨に苦しむ地方に出現し雲を追い払ったり、大地よりまぐまを呼び寄せ大陸を増やしたりしました。
またグラードンが齎す日照りは、数時間で旱魃になるほどの日射量になります。
長袖が必要ですね。
ただ彼はそれだけにとどまらず、ゲンシカイキという状態になると海を蒸発させ、すべてのものを水蒸気化させます。
かなり優しめに申しましたが、もしもそのものが出現するとなると緊急事態宣言をしなければならないでしょう」
いろいろと知っている事を羅列して、人にとって有害なこと利益になることを交互に言っていく。
そして10分ほど喋ったら、ストップをかけさせられる。
「わかったわかった。もういい……頭が痛くなる」
総評。
ポケモンと共存しよう、です。
緊急の議会だが、ここにいる人たちは偉い人ばかり。
一般ではなくクレムリンが知っている事こそが重要と言っていた。
つまり政策を行う人が知っていると、解決策を見出せ公務員を動かせるので
迅速な対応が可能になるということだ。
「……次に行うのは、佐藤芳樹君の配属先だ。君はどこがいい?」
いきなり話を振られた。
僕は思案する。
普通に香川県がいいよね。
だってほかの県もそうだし。
でもそうするとほかの県のことも放っておくことになってしまう。
そうすると経済危機もあるし、ネットがあるとは言っても対応できるのは相当先になってしまう。
そんなことをすると経済力が低下してしまうし、貯金していない人は真っ先に金欠になってしまう。
だから香川県だけにいるのは、僕のわがままでしかない。
さらに言うとこの先香川県が、経済的優位になれるとは思わない。
だから大阪を中心にして、いろんなところに行けたらと思う。
そうすれば明石大橋や新幹線・在来線を使って、周辺区域にいける。
「あの……ポケモントレーナーは各県にいないので、有事は私が向かうことになるのは、
承知しています。ですが、すべてを回ると、過労死します。
今はポケモン対策のマニュアルを、これから作られるであろう同盟か何かの
サイトに作っていただけないかと……」
「ほう、君は同盟をお望みか?」
岡山県知事がにらみつけてくる。
「あのですね、各県のホームページにポケモンマニュアルなんて作ってみたら、整合性に欠けます!逐次更新するよう努めますが、現状ポケモントレーナーは北東と南西に固まっているんです!言っておきますけど、ポケモンの力を舐めないで下さい!
沖縄は琉球・北海道はアイヌとして共和国を建国し独立できる可能性があるんですよ!?」
「我が高知県では、黄色い象が子供を多数さらう事件がありました。
救出しようにも頑なに固辞され、剰え警官にかみつく子供もいました。
つまりそういうことでは?」
高知県や愛媛県の知事は、四国の統治者として自称する岡山県知事をにらみつける。
それを香川県知事は心配そうにしている。
徳島県は大阪と近いからか、そんなに気にしてないみたいだ。
力関係がよくわかるなぁ。しかも愛媛は広島と近いし、そこからもあるんだろうなぁ。
僕は啖呵を切ってしまってそれに便乗した三県の動きに、あたふたしてしまった。
「まあ座りなさい、佐藤君。皆様もお手元の綾鷹を飲むことをお勧めします」
「選ばれたのは綾鷹か……」
「液体なら同等の力を分配できる。ならば、同盟という入れ物を作り、同じ力を分配できるようにすればいいのです」
そこからは大阪府知事が、のちの根回しも含めて今はこの6県で同盟を組もうと話を切り出すことにした。
この同盟は基本的にポケモン対策のため、ポケモン災害への迅速な対応をするためのものとして、ここに設立される。
岡山県や香川県の関係者は、苦々しい表情を作る。
だが岡山県は四国から人口を吸うための瀬戸大橋の復旧、香川県は
地盤が緩い三角州に経済圏が集中していることからこの同盟に入らなければ、
恩恵を受けることはほぼ不可能であることを知っている。
そもそも県民が許さないだろう。
というわけで、署名することにはしたんだけれども……。
「まずはポケモントレーナーを増やすことを急務とする。
これは佐藤君と大阪府等各都道府県の企画課に任せればいいだろう。
そして各分野にポケモントレーナーを、最低10人は各県で充足することだ」
「モンスターボールは、早めに準備させていただきます」
そんなこんなで話がまとまるが、重要な奴を決めていない。
「名前は?」
「ああ、名前か。君が付けるかい?」
「関西広域連合」
全員の目が驚愕の目で、僕を見てくる。
さすがに何度も緊張してたら、脳が麻痺したのかあまり緊張しなくなった。
その目は猜疑とともに敵愾心もあるのかな。
でも、最終的には、地方分権もしてほしいよね。
いつかは来る、地震テロのためにも……。
「たしか今、総理はアラブ首長国連邦にいるんですよね?
まあ、物理的に帰ってこれないですし、電子メールも無理ですね。
ヤフーとか国内の一部にしかつながりませんし……。
国の連絡手段がどうなっているかは不明ですが、一週間は無理でしょう。
そういうわけで国が動いていない中、私たちで国の代わりに動かなくてはなりません。
官房長官もいらっしゃるようですが、東京ほど外国人がいる場所はそうそうありません。
茨城のポケモントレーナーは大変でしょうね。
そういうわけで、大阪府による道州制と地方分権で管理の単純化とポケモンテロへの対策として、これをお勧めします」
僕が自分のポケモンの意見を申し立てた時以外、会議は踊ったがあんまり進まなかった。
みんな政党が中道。だからこそどうにかなるかと思えば、自分が持つ改革のせいで、全然進まなかった。
多分一番ポケモンに対して真摯なのは、高知県だと思う。
流石は薩長土肥の国。政治への取り組み方が違うと感じた。
「佐藤君。君はどこまで広げたいんだい?」
「山口は佐賀と福岡でつながると思いますので、広島州と大阪州で分けましょう。
茨城は名古屋州を。佐渡は仙台州。北海道はそのままで、福岡州は佐賀と鹿児島が、
沖縄は沖縄でいいでしょう。どうです?」
「……ずいぶんと肝が据わったな。いいだろう。君のポケモン連合に、
関西広域連合を組み込もうじゃないか」
大阪府知事がそう口約束をすると、大阪府の役人たちが頭を抱えた。
企画課の人や総務部は机に突っ伏した。
が、頑張れ~。
「さて……帰ろうにも帰れないからなぁ。府県知事以外で、意見のあるものは手を挙げてください」
「……」
「ではあなた」
「はい。愛媛県の地域活性化委員会の森田です。現在日本はシーレーンがやられていますが、畜産農業等資材や食糧等今後どうするのでしょうか」
「つまりそれは、ポケモンを飲食に適用できるかどうか……ということですね」
府知事が取り仕切る。
そして意見を周囲の人に聞きながら、ほかの県知事は自分の領域の人と話して話をまとめている。
発言権が高い僕らの話に、まだついてこれていないからいったん周囲の人へ話を向け、
時間を稼ぎつつ手持ち無沙汰をごまかす方法だ。
その意見の中には、当然のごとくポケモンを飲食に転用できるかというものだった。
この世界にいるポケモントレーナーの絶対数は、限りなく少ない。
すでに戦争とかで死んでいる可能性もある。
だから今でも減っていると考えられる。
しかもこの地球において、ポケモンの知識がある人はポケモントレーナーとその周囲だけ。
だから元の世界に存在するポケモンプレイヤーたちによる忌避感は、
ほとんど存在しないといっていい。
彼らは不思議な形をしていれど、ただの生物なのだから。
「食料ですね?まず、闘牛はケンタロス、乳牛のミルタンク、
ミツバチはミツハニーやビークイン、クジラ肉はホエルコとホエルオー、
花粉団子を作るアブリー、魚肉であるヨワシとバスラオ、卵そのもののタマタマ、
バナナなトロピウス、種によるが果実栽培のドダイトス、サクランボはチェリンボ、
甘味料なヤドンのしっぽ、クラブのはさみ、ラッキーやハピナスの卵、
果物であるアマカジ、甘い蜜を集めるクサイハナ、
氷菓子を実らせるユキカブリ、マケンカニ・ウデッポウ・ブロスターのはさみ、
育ちで臭みが変わるコイキング、サメハダーのフカヒレ等ですね」
「ポケモンの総数は?」
「確認されている中で800はいきますね」
「うむ……少ないな……」
やはりそこか。
800という数を誇るけれど、そこまで食用のポケモンはいない。
ほとんどが複合タイプで、毒を持っている生物が多くいる。
さらに現実の生命体では考えもしないような器官を、ポケモンは当然のように保有している。
例えば電気袋。
デンキナマズや電気ウナギ……有名どころだとこんな感じ。
他は超音波を発生したり静電気とか高圧縮ガスとかもあるだろう。
それでもポケモンたちにはかなわない。
とあるポケモンなんざ、自前のジェットエンジンもってるからな。
おかげで周辺にEMP被害が多発する事態に陥ってしまうだろう。
うん……こりゃ大変だ。
……
「時刻は17時を回りました。今日のところは……」
そのように大阪府知事が締めくくろうとしたとき、迷彩服を着た人が音を立てて
体育館の中に入ってくる。
「何事か!」
「会議中失礼いたします! 本日15時にて、北朝鮮にクーデターが発生しました!
彼らは金総書記や先軍政治を取り仕切る者を逮捕。
また処刑は18時に行い、新たな国を建国する旨を発表しました!」
「何だと!?」
僕は今トイレ休憩から帰ってきたんだけど、ものすごいことになってしまった。
ポケホでも見てみたんだけど、クーデターの朝鮮人民軍が韓国や中国など全世界に向けて終戦宣言をした。
また此度の世界アルマゲドン計画、ICBM乱射についての責任は総書記が負う。
そのため最も苦しい処罰を与え、無期限強制労働刑に処し、一生その肉体と命で
世界の安寧を償ってもらうことになった。
宣戦布告から半日も経過していないけれど、米国を含めた遠い国々はそれを了承した。
理由はポケモンによってそっちにいけないのと、核兵器以上にポケモン被害が深刻化していること。
よって北朝鮮に関しては、ほぼ放置されることになる。
まあアメリカに関して言えば、日本の第七艦隊や韓国にいる在韓米軍に指揮を任せようとしたが、北朝鮮の宣戦布告同時攻撃のせいで70%以上が壊滅し、バンカーバスターや穴を掘るで地下指揮所も破壊された。
結果韓国は北朝鮮が優位のまま終戦することになった。
さらにこの戦争は、初めて人間がポケモンを使った戦争として記憶されることになる。
そう、最前線にはてきおうりょくを持っていると思われるポリゴンZが、
破壊光線を無反動で乱射していたんだ。
しかも頭にはこだわりハチマキだ。
戦争の様子をポケホの中継機能でみていたが、ミサイルや銃弾・マイクロ波による熱波をリフレクターで防ぎ、破壊光線等で連鎖爆破する様は巨神兵を思わせる。
というか、まじで”薙ぎ払え!”だ。
たった一匹のポケモンが、電磁浮遊で上空を闊歩し電撃波で空中兵器を爆散させ、
破壊光線で市街地を無慈悲に破壊の限りを尽くし、サイコキネシスでビルの残骸を投げつけた。
さらにこのポリゴンZは、ポケモントレーナーのものと判明した。
理由は、自己再生をつかったからだ。
つまり、スキルか生き様で、技を拡張しているということだ。
世界はまだこの情報を知ることはできないだろう。
それでもポケホを持った人物が、周知してしまえば世界は……。
相互確証破壊が、無効化されてしまう危険性もある。
テレポートからの地震・暴風・大爆発・波乗り・雷・噴火等は、危険極まりない。
勿論マグニチュード9なんて起こしてみろ。国が亡びるわ!
さらにこれをポケモントレーナーや伝説のポケモンが、相乗して事に当たれば
僕たちは対処のしようがない。
そして数分後……この終戦宣言とともに、生き残っている偵察衛星によって北朝鮮によるミサイル攻撃等、全ての戦闘行為が終結したことが判明したんだ。
これにより各府県知事は、それぞれの持ち場に帰ることになった。
僕はというと、加賀さん等護衛の人やあの高官の人と共に、自宅に送られることになったんだ。
警察車両は勿論、自衛隊のジープっぽい機械化歩兵の方々もついてきた。
道は閑散としているけれど、ところどころ轍やへこみ・液状化現象が垣間見える。
また道中で背中側に”く”の字に折れ曲がっている死体もあったりして、帰宅するのが非常に遅れた。
偶然救急車両が後ろにいてよかった。
「脈拍は!?」
「ダメです、もう体が……」
失禁していることから、だいぶ経っているんだと思う。
とりあえず合掌だけして、この場を去ることにした。
後片付けは警察に任せることになる。
そして僕の乗る護送車は、自宅の前に停車した。
加賀さんが外に出て周囲を見て安全を確認するのを見届けて、僕もドアを開けようとした。
だけど高官の人がそれを拒んだ。
「佐藤君。君は要人保護の観点から、扱いは重要人物になった。
だから君は周囲の安全を護衛の者に任せておけばいい」
「え、はい。 ん? 家までついてくるのですか?」
「君の処遇について、ご両親に話をつける必要があります」
そういって手提げバッグを見せてくる。
ああ、なるほど。
書類を見せるのね。
ああ、と納得していると加賀さんが、外から車のドアを開けてくれた。
会釈して外に出る。
「どうもすみません」
「いえ、仕事ですので」
身の丈に合わない待遇に顔が引きつってしまうけれど、これからの日本のためにも
絶対にケガ等させないという意気込みが伝わってくる。
そして僕はインターホンを押して、お父さんたちに帰ってきたことを知らせる。
するとどたばたと家の中がうるさくなって、玄関がガラガラと開いた。
「芳樹!」
「は、はい」
敷地に入っているから、お父さんが直で来た。
後ろの人たちのことなんて気にせず、一直線だ。
しかも予想外の剣幕に、僕はたじろぐしかない。
だって、こんな声色は初めてなんだもん。
「どこに行っていたんだ! なんで電話に出ないんだ!」
「電池切れてたから……」
「じゃあなぜすぐに帰ってこない!」
「電気がないと困るし」
「何故一人で行ったんだ!」
「だって停電で避難してるだなんて思ってもなかったし」
がみがみと心にもないことを言われ、だんだん頭にくる。
自分のことが一番のくせに、僕に対して何か言えるもんでもないだろうに。
「……芳樹。そんなにお父さんたちのことが嫌いか?」
「え、そんなわけないでしょ! 生活インフラがないと困るから、原因を排除しに行ってたんだよ!
まさかこんなことになるとは思わなかったけどさ」
「そうか。とにかく、芳樹が無事でよかった。次からはお父さんたちを頼りなさい」
「うん」
僕は心や感情を空っぽにして対応した。
気を遣ってみんなの家族の輪が壊れないように、言葉を選んだ。
「次から気を付けるよ。それとね、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」
僕はこの話題を終わらせて、本題に入る。
さすがにこれを捨ておくのは不可能だから。
でも高官の人が話していくと、厚い封筒を取り出してお父さんに渡したんだ。
は?って思ったけど、お父さんもそれを見て目を白黒させていた。
中身は……結構大金っぽいよね。
「お子さんの情報提供料の前払いです。
のちに国より納めますが、佐藤君のおかげで関西がまとまり一筋の光明が雲間から差し込んできました。
この道をすがって、多くの人が彼のもとに集まるでしょう。
その経済効果等を考えるととてもとても、支払えるような金額ではありません。
そこで分割して徐々に払わせていただきます。
ぜひとも、今後関西広域連合をよろしくお願いを申し上げるとともに、佐藤芳樹君を
支えてください。彼は今後、なくてはならない存在です」
お父さんは渡された札束を強く握りしめ、僕を見てきた。
僕もお父さんに対して、ちゃんと成し遂げる旨を伝える。
「やり遂げるよ」
「そうか」
お父さんは僕の方を見て納得したのか、今度は高官の方を見て強く言う。
「息子を、どうかよろしくお願いします」
「はい。お任せください!」
お父さんがお辞儀をして、高官の方や後ろの加賀さんら護衛の方、そして周辺を警戒している警官の方も……。
お父さんに向かって返礼をする。
それぞれの役職に則った、最大の敬意の払い方をしたんだ。
「今日と明日、佐藤君には身支度をしっかりしてほしい。
そして、あさっての早朝6時に、要人保護プログラムに則り君を迎えに来るよ。
我々は公務員であり、一致団結して事に当たらなければならない。
だからといって格式に拘れば、有事の際間に合わないことがあるかもしれない。
我々は垣根を超えた友人であり、隣人でもあるんだ。
臆さず言葉に出してほしい。それが、我々の君への願いだ」
そして高官の人は、僕にGPSや発信機等の機能がついた腕輪を渡した。
この二日間行方不明にならないように、しっかりとした予防対策を立ててくれたみたいだ。
「では、失礼いたします」
「お疲れ様です」
僕はそう言って、公務員の方々を見送ったんだ。
そして僕は、お父さんより先に家に入る。
靴は靴箱に置いて、長い廊下を歩いてリビングへ。
「ただいまー」
「「「おかえりー」」」
家族のみんなが、僕に返答してくれた。
もう、足の裏が痛いし、色々気疲れしてしまった。
さっさとご飯を食べて、風呂に入って寝よう。
僕は今日の出来事を頭の中で思い出して、今後どうするかあいまいに構成してみた。
でもこんな疲れた脳に、優秀な結果を期待できない。
今夜は満月の光でも浴びながら、ゆったりしようじゃないか。