「おはよー」
「おはーって、珍しいことしてんね」
朝8:30。
かなり深い眠りだったと思うよ、ほんと。
で、僕は今妹に奇異の目で見られていた。
まあ仕方のないことだと思う。
今やっていることは、ここ数年間やってなかったことだからさ。
「まあ、願掛けみたいなもんさ」
「えーと、御霊に神さんに仏さんでしょ?」
「そうそう。神仏習合っていつ起こったっけ」
「すでに神仏分離してる」
「そっかぁ」
今僕がいる場所は床の間がある和室。
ひな人形のケースと台座の上に、お内裏様とお雛様の代わりにマリオとピーチ姫のamiiboを置いてある。
更にその周辺にじいちゃんが書いたり、絵で稼いで購入された高価な絵巻や風景画がある。
そしてそれらの上に、左から神道の神棚、天理教の御霊というか神様が宿る神棚、流産した子を祀る仏棚がある。
格式も左から上だ。
そして僕は天理教以外は合掌と黙祷で済ませて、天理教は三拝一礼三拝する。
ただし方向は御霊さんを奉る儀式をした場所。つまりは、教祖[おやがみ]様がいらっしゃる本尊に向かって行為を行うんだ。
因みに僕が知っているのは、讃東分教会のしきたりだけ。
他はあまり知らないや。
ちなみに僕も幼いころは、熱心な信者だったじいちゃんやじいちゃんの兄弟、息子であるおっちゃんと一緒に、お勤め参りしたんだよなぁ。
信者ではないけれど、そこの取り締まり役の人が天理教の心を教えてくれて心服したことがある。
みんな親切だったり優しかったりするのは、それが教祖様への恩返しみたいなやつらしい。
まあここに所属してる人たちみんな優しかったし、周辺住民がだいたい天理教信者だし。
過激派は見なかったけど、自分勝手というか妥協を許さず、ボランティア精神たっぷりな人がいて怖かった思い出がある。
別の宗派なのに、親切に対応や儀式の手取りをしてもらった。
まあ、お金は取られるんだけどさ。
いやぁ、感傷に浸ってしまったよ。
「お兄ちゃん、リビングいかないの? 寒いよ?」
「もちっと涼んでからいくよ」
「えー、寒いって」
妹は先にリビングに向かっていった。
僕も少ししてから、朝食のために向かった。
さて、今日はなにをするのか。
もちろん僕の手持ちのポケモンたちの顔合わせだよ。
そして探索をしたりポケホの機能を見たりしないといけない。
そもそもモンスターボールをどうにかしないと、今後の展開が拡張されないんだよね。
自室に戻ったらバッグの整理をして、いらないものは部屋に置いておく。
もう隠す必要性はないんだよなぁ。
でも何かされたら困るわけだし、一部危ないものは隠すことに決めたんだ。
それと消費物もジャンルや効能に合わせて、本棚の一部を使って色々詰め込んだんだ。
こうやってわけておくことで、僕以外の人でも何かあれば使うことができる。
ただし泥棒はお断りだ!
「出てきて、ツチニン」
「ニンッ!」
「うおー、久しぶりじゃー!」
「ニニニニニニニニニニニ――」
抱き上げて滅茶苦茶体表をなでまくった。
そして撫で終わったら、道中で大量に拾ったレア度虹のアメをツチニンに丸ごとあげる。
これはテッカニンとヌケニンに分かれる前に、すべてのステータスをカンストまであげておきたいからやってること。
理由は簡単で、手間が半分になるから。
まあ、憶測なんだけれども、ヌケニンのHPが1でなくなる可能性がある。
1に修正される可能性もあるけれど、ほかの能力は普通に上がるんだ。
だからレベル20になるまでに、あげまくる。
そうそう、アメだからって舐めるだけじゃない。
「チュー」
このアメ……なんと、ポケモンに合わせて様態を変化させるのだ。
訳が分からないよ。
さて、ツチニンがアメを吸っている間に、愛媛からこっちに帰ってくるまでに取得した
アイテムを整理してみよう。
どさーっと中身を、床にぶちまけてみた。
そしたら虹ものが大量にあるわあるわ。
こんなのみたら、普通のトレーナーは失神するんじゃないか?
そうおもえるような桃源郷が、目の前に広がっている。
【虹・青】
・ウルトラボール ・マスターボール ・パークボール ・プレシャスボール
・ハイパーボール・GSボール ・せいなるはい ・各種覚醒アメ
・古代のタネ ・とくせいカプセル ・ポイントマックス ・PPMAX
・カテキン ・みとおしメガネ ・ボールカプセル ・なんでもなおし
・まんたんのくすり ・げんきのかたまり ・ブーカのみ ・トポのみ
・イバンのみ ・かいふくのくすり
【赤・緑】
・スーパーボール ・カイスのみ ・ミックスオレ ・ゴールドスプレー
【たいせつなもの】
・ジガルデセル→ジガルデキューブ[1]
・おちゃ
相も変わらず、レア度の低いアイテムは見つからないようだ。
でもそれ以上のものが手に入っているから、文句はいえない……。
そうだとしても、戦術的な動きがなかなかできない。
ほら、こだわりハチマキとか、そういうやつのことだよ。
これらがないと戦闘を優位にできない。
こういうアイテムは、トレーナーが入手しやすいように下位のところに存在していると思うんだ。
よって僕は、このポケホに存在するアプリを利用して、今後に生かすわけなんだけれど……。
散らばったアイテムを片付けて、アメが溶けた水溶液を吸いまくるツチニンを後目にポケホを操る。
<ポケモンフォンに、新たな機能が追加されました!>
黒の背景に白字の主文。
再度クリックすると、メインメニューが解放されてその解禁されたメニューをクローズアップしたり、メインカメラが動いてそのアプリの場所まで移動する。
<世界のポケモントレーナーが一人目覚めました!>
『PokeLINeK』:国内のポケモントレーナーとコメント欄で話せます。
スマホの緑アイコンアプリのLINEとつながるLinkが混ざった感じだ。
<ポケモントレーナー五十人の手持ちがいっぱいになりました!>
『PokemonBoxx』:ポケモンの預かり管理システム。何人もこれに介入・改竄できない。100匹まで預けられる。
ポケモンは不思議いっぱいだけど、パンドラの箱は流石にないだろー。
<ポケモントレーナー同士がアイテムを物々交換しました!>
『PokeCom』:掲示板で国内外のトレーナーとアイテム等を交換する場。
条件掲示だけでなく、オークション形式から個人取引のものもあったらいいなぁ。
<ポケモントレーナー同士が会話しました!>
『LiveCaster』:電話音声やAR空間での面談が可能。電子的な妨害など決して行えない。
へぇ、UI技術とプロジェクションマッピング、Cicret Braceletの究極みたいなもんか。
NECか富士通が、壁などにスマホ画面を投射し、直感的操作や部屋全体のデジタル化をする技術を開発してたな。
そんなわけで、すぐに『PokeCom』をクリック!
他はまだいいや。
とにかく、今はモンスターボールの確保をしなければならない!
中身を見てみると、掲示板のようになっていた。
各国人が表題に、モンスターボールと何かを交換して!という文面がある。
でもさおいしい水10個を、ハイパーボール1個と交換してっていうのは……。
「お? この交換の場を開いて、約三日。やっと来てくれましたね、救世主」
開きました。だって、おいしい水ほしいもの。
問題のハイパーボールはめっちゃ持ってるから余裕だぞ。
それに会話がすべて日本語だから、日本人だろ多分。
もしも外国人であっても大丈夫だ。
なんせ文字と文字で対話するもののほかに、音声同士・実物を確認するため、『LiveCaster』へのリンクがある。
こいつを使えばどうにでもなるさ!
「おはようございます。えーと、日本で暮らしている日本人の佐藤です」
日本の佐藤は多いから探しにくい。よって、苗字は公開することにした。
まあTV放送とかTwitter等、SNSの猛威を振るわれるからこの程度で大丈夫だろう。
「おお! 原作の国の人か、それは頼もしい! お願いだ、『LiveCaster』してくれ!」
「え。すみません。いま国家関係の休憩の間を利用して、開いただけなんです」
「何ぃ!? やはり君も国家に重要参考人兼重要人物として、ポケモン対策課に保護されているのかね!」
「アッハイ」
この人会話文だけなのに、ずいぶんぐいぐいくるなあ。
そもそもあなたの名前と出身国知らないんだけど。
「えーと、あなたの名前と出身国家は?」
「ヤー忘れてたぜ! 俺はなぜか格闘王をしている、ドイツのレオン=フォン・ヴェバーレンだ!」
「よろしくお願いします」
「よろしくな!」
なんと明るいことか。
それにvonって、ドイツ人の苗字を検索してた時、名家だとかなんとか書いてたような……。
ポケモンに関する救世主だし、仕方ないのか?
「うーん。『LiveCaster』します?」
「是非お願いする!」
そして安易に『LiveCaster』をしてしまったことを、僕は盛大に後悔した。
その理由はやはり国家関係の休憩間だということだ。
彼が今いる空間をみれば、その今いる空間に重要人物を召喚できると考えたのだろう。
そうだ。
彼とARをやった瞬間のことだ。
ポケホから光がまばゆく周辺を白く染め上げ、AR空間を作り出したんだ。
僕の左右上下後方は僕が今いる空間になり、前方のすべては今レオンがいるらしき場所だ。
その場所は閉塞感満載であり、誰かに何かを気取られるとまずいと言わせるような場所だ。
いかにもきな臭いが、話しかけてしまった身。
っていうか、おいしい水案件でこんな地雷があるなんて考えられるかっつーの!
「……佐藤。君の部屋は本当は、国家機関のものじゃないね?」
「だからなんだ」
「ククク、いや? 本場だからこそこちらに引き込めると思ったんだけど。当てが外れたか」
なんか読めたぞ、こいつの安い行動。
比較的近くにあるマーク。ありゃ、難民出ていけっていうやつだな?
完全にスラブ諸国のマークだし、EU諸国は大打撃を被っているから、間違いはないと思う。
そして彼の後ろには、多くの老いた人たち。
その死んだ目から伺えるのは、政治的駆け引きを行おうという無感情のものだ。
先ほど香川県知事にその目を見せられたから、強烈な印象を抱いているよ。
とにかく大阪府程度の有力者がいる場所でなくてよかった。
こんな腹黒い集団の坩堝に放り込んだら、容易に言質を取られて日本と僕の命が危うくなってたところだ。
「―――聞いているかね?」
「視聴してますよ、レオンさん」
観衆目線に彼の表情がゆがむが、彼の言うことは荒唐無稽も甚だしい。
なんかポケモンを使い、多くを我々で導きEUをあるべき姿に戻しイタリアや周辺各国と連携し、更に原作の日本と協定を結べば経済安定・企業誘致ができ、お互いの国家を次の段階に進めるのではないか?とか。
申し訳ないが他国であっても、戦争やテロに関する準備罪があるし、そもそも決闘罪・機密保護法・第九条が存在するのでそのたくらみに参戦することは不可能だ。
「そんなことよりも、ユーゴスラビアで核戦争起きてますが鎮圧とともに、それを使ってヘイトスピーチすればいいんじゃないですか?」
「それは無論やっているさ。だがフランスがフランスであれば、我々も我々が大事だ。
あんな小国程度消えても、なんの発破にもならん」
これはひどいもんだ。
「ああ、それと。すでに日本には、我々のポケモンへの協力要請を叩き込んでおいた。
これを承諾しなければ、EU全体が日本から手を引く」
また壮言吐いてるな。今現在北朝鮮のおかげで、絶賛鎖国状態だ。
そもそもポケモンのせいで、エネルギー資源がなくて再生可能エネルギーの普及がとどまらないんだ。
おかげで徐々に外国への依存率が低下してきているんだ。
だからそれを変に加速させないでくれ、国内のレアメタルが足りなくなる。
そもそもレアメタルを含めた採算の取れない資源なら、そこら中に埋まってるけどな。
例えば人形峠然り夕張市然り。
「そんな力持ってるんですか?」
「ポケモントレーナーへの個人崇拝をなめるなよ、無神論者日本人」
「大人が作った妄想小説を現実に起こったことだと信じてるだなんて、
本当に幸せだよねクライスト」
「んだと?」
その言葉の直前日本語訳されたドイツ語が、僕の耳に大量に入ってくる。
相手がバカにしてきたことを許せないみたいだ。
でもさ、宗教布教の自由を謳っていても高校の門前で、キリスト教本を配る信者がいてクソうざかったんだよ。
信者ではなくて、どこにそんな信じる要素があるのか見てみたけど、最初の文で咳こんだわ。
こんなくだらない妄想を他人に吹き込んで何が楽しいんだ?と。
こちとら毎日勉強に勤しんでいるんだから、そんな金にもならないことを押し付けてくんな、いらねぇんだよ。
さすがに苛立ってきた。次からは警察に頼んで、相手の言葉の録音をしようと思う。
こっちの会話文も筒抜けだと思うけど、そこは仕方ないよね。
いろいろ文句の応酬があったので、このまま会話をシャットアウト。
ブラックリストにいれてやった。
勿論名前を入力して、入手した情報も付属した。
こいつの情報は、ドイツ中枢部に教えてやる。メルケル首相、覚悟しとけよ。
ついでに斜方形ジェスチャーで、盛大に皮肉ってたことも暴露してやる。
さて、次だ。
「ニンッニンッ」
「ん? ああ、体力のアメ食べたの?
じゃあ、次は攻撃のアメだよ。どうぞ、召し上がれ」
前足で僕の右足をつついてきたから何かと思えば、120もとけたアメを飲み干したとのこと。そういうわけで、次は攻撃力を上げるアメだ。これは130位ある。
今までも上げているから、そんなに上げなくていいはず。
そもそも記録取ってないからなあ。
だから次からは200たまったら上げることにしてる。
まあ、ポケホの預かりシステムで、ポケモンの能力を閲覧したとき強化値が見えるんだけどね。
面倒だから見ないってだけでさ。
気を取り直して『PokeCom』を見てみる。
あ、先ほどの人は消しているみたいだ。
よかったよかった、あいつの毒牙にかかる人がいなくなった。
まあ歯牙にもかけない人が大半だろうけどさ。
それでほかの掲示板を見直して、何かないか調べてみた。
基本的にパッとしないものばかりで、交換内容もレア度赤や緑と青や虹のアイテムと交換するものばかり。
そうでなくとも、目的がはっきりとしないものまである。
こういうのが変な勧誘等の罠掲示板なんだろうなぁ。
それでも今はモンスターボールの安定供給のための行動を起こさなくてはならない。
どこかに生き様かトレーナースキルで、モンスターボールの生産ができるような人いないかなぁ?
ずいぶんと更新したりいろんなタグで検索してみた。
最後にモンスターボールの素材である、ぼんぐりをタグ検索。
すると最後の一件が僕の理想と重なり合ったんだ。
一考することもなく、すぐにクリックして掲示板に入る。
するとすぐに相手から反応があった。
「ようやく来てくれましたね!
案件にあるように、木の実やぼんぐりをボールにすることができます。
あなたが提示するのは木の実またはぼんぐりの二つです。
一つは依頼料として私に、もう一つは依頼品納入としてあなたに、です」
「わかりました」
そういうわけで、まずは収穫しておいたナゾのみとスターの実を二つずつ渡す。
譲渡する方法は、物品をポケホに直接接触させるか転送ゾーンを指定してそこから送る。
今回はたった4つの木の実なので、接触で渡すことにした。
あ、そうだ。ボールに変化する過程を見ておきたいな。
「すみませんが、そのボールを作る過程を見せていただけませんか?」
「企業秘密ですので」
そうきたか。
ならば……。
「見せられないのでしたら、この交渉は白紙にします。では」
「ああっ、ま、待ってください! わかりました!『LiveCaster』を開きましょう!」
危なかった。
こいつが長時間誰とも契約してないおかげで、この人の焦りを引き出すことができた。
もしもそのまま引き受けていたら、木の実だけを袖の下に潜ませて、ボールは探索で拾ったやつとして、
僕に渡されるかもしれなかった。
そう一息つくと、ポケホからまばゆい光が部屋の隅々まで注がれ、相手の空間とつながる。つながった瞬間、奴がいる部屋の雰囲気が僕の部屋の品格を庶民とは思えないものになる。
なぜなら眼前にいる金髪碧眼の美男子が彼のいる部屋と調和して、雰囲気や空気を含めて上品にしたのだ。
ひな人形ならばケースと人形、それぞれが別の商品だ。
だがこの状況は、お互いがお互いを引き立て限界値を突破した産物。
「どうもすみません」
ドイツ野郎の時も思ったんだけど、日本語じゃなくて本来は外国語なんだよな?
そうかんがえると、このポケモン関連による和訳等翻訳能力が高すぎることが分かる。
いや、まあ、高くないと誰もかれもが、外国と連携できないからむしろありがたいと思うよ。
そもそもポケモンの世界自体が、一つの言語に収まっている感じがするしなぁ。
「私の名前は、アーロン=オーデン。しがないボール職人です」
アーロンさんはAR空間に具現化すると、僕と木の実の交換契約を交わしたいらしく、
生き様ボール職人についてやある程度ポケモンの情報を渡してきた。
なるほど、これが譲歩ってやつかー。
でもあいにく、その情報は既知なんだよ。
「ポケモンはモンスターボールのビームに当てることで捕獲出来ているんじゃないんです。
あのビームがポケモンを情報生物にして、二進数情報としてモンスターボール内に収めることができるんです。
そして情報の書き換えや更新が速く、安定性が保たれないとなると外に吐き出されるんですよ」
それも知ってる。ビームで一時的な圧力を加えることで、相手を一時的に縮小させられる。
「また私はポケモンを捕獲するために必要な、ネットも作ることができます。
これは今現在に於いて、私しかできない唯一無二の技術です」
お、条件とかそこらへんの露骨な提案が出てきた。
ある種の脅しみたいなもの。事実をぶつけて相手の根を折ることが目的だと思う。
だからといってそこまで言わせるのも、今後の協力関係を考えたら遠慮すべきか?
うーん、わからないなー。
ま、これからがその時だし、やってみっか。
「――です。どうか、私にボールを作らせていただけませんか?」
「アーロンさんの熱い思い、確かに受け取りました」
「では……!」
「まずはこの謎の実で試してみましょう」
謎の実を二つ送り付けた。
アーロンさんは、その木の実をなんらかの力で目に見える形で隠さず、そのまま自分の生き様を使ってボールを作り始めた。
ただたんに手のひらの上に木の実を置くだけなんだけど、その木の実が発光しその光がやんだらボールが出現するんだ。
「おお……!」
僕は言われた通りボールがモニター越しでありながらも、眼前で作られることに興奮を覚えた。
だってあの技術的によくわからないボールが、確実に使える形ででてきたんだぞ?
興奮しないわけがない。
謎の実で作られたボールが完成したら、一つを僕の方に再転送する。
これでお互い信用が取れたな。
「えーと、今後も私のところで、ボールを作らせていただけませんか?」
「はい。ぜひ作っていただきたいです。ただ少し問題がありまして」
「それはいったいなんでしょう?」
僕は木の実を育てられるアイテムで、ある一定の敷地内に木の実を植えられることを告げる。
このことにアーロンさんは、ひどく驚愕するけれどそれだけじゃ終わらない。
僕は自分の生き様を少々改悪して伝える。
それは自分が拾うアイテムがなぜか木の実はほとんどないというもの。
だからそちらで木の実を見つけていただいて、こちらに譲ってほしいという旨を伝える。
流石にそれだけだと僕に有利なため、何か有益な情報かアイテムを交換しなければならない。
そもそもポケモントレーナー以外が、ポケモン関連のアイテムを拾えるわけがないから
これも彼の行動次第だろう。
「何も私たち最初のポケモントレーナーだけが、ポケモンアイテムを拾えるわけじゃないんですよ?」
「まあ、それは、な……」
おっと相手に有益な情報であることを気取られてはならない。
同調しお互いに情報を照らし合わせる感じに、路線を協調すればおのずと相手が答えを言ってくれる。
この場合だと彼は、木の実を使ってボールをたくさん作ったろうから、ポケモントレーナーの量産に成功しているはず。
それに最初のポケモントレーナーと言った。ならば、ポケモンを捕まえて、名実ともにポケモントレーナーになれば、
生き様はともかくアイテムを拾えるほど視覚化されるんだな?
「ほかの人もポケモンを捕まえたら、アイテムが取れるんだっけ?」
「そうなんですよ! あなたの国も二代目のポケモントレーナーがいらっしゃるんですね!」
「ええ。ですがボールが全く足りないんです。そういうわけで、話をもっと拡張させたいと思ったんですが」
なんか個人別荘みたいな雰囲気だ。こう、政治的なインテリアじゃねぇや。
まあ日本と外国では美的感覚が違うから……。
そう思慮にふけっていると、彼が何やら考えるしぐさをやる。
そして僕に断りを入れて、席を一時的に立った。
どうしたのだろうと思っていると、彼が立ち去った方向からなにやら外国語が聞こえる。
聞き取りやすい……英語かこれ?
うん、これイギリス英語だ。
言葉を明瞭に判断できる位わかりやすく単語単位で、文章を紡ぎあげる。
これがイギリス英語だ。
アメリカ英語はいわば、関西弁だ。言葉と言葉のつなぎを混ぜすぎて、何を言っているのかわからないやつだ。
例を挙げれば――、
イギリス英語は、”なんということだ”という。
アメリカ英語は、”なんちゅーこっちゃ”という。
――そんな感じじゃな。
ついでにスラングがクッソ汚いことも有名。ああ、アメリカ英語ね。
画面に映らないツチニンと遊んでいると、ドアの開閉音がなる。
すぐに身だしなみを整えて、正面を向く。
すると画面に出てきたのは、アーロンさんと……誰?
すごく政治臭いけど、まあ、ありがたいんだけどさ。
「やあ、君の望む人を連れてきたよ!」
息が上がってるけど、遠くまで行ってたなこりゃ。
「へ?」
わざとらしくまぬけに振舞ってみる。
「アーロン君がいうには、君は我が国との懸け橋になるといったが本当かね?」
英語が和訳されて聞こえてくる。
僕は彼の言い分に、首を縦に振って肯定する。
とても渋い声でダンディズムにあふれているよ。
「はい。今私の国では、ボールが非常に欠乏しています。さらに言えば材料である木の実も、ほとんど手に入りません。
しかし私どもには、木の実を半永久的に育成できる生き様がございます。
上の方からもポケモントレーナーを増やしたいという願望がありまして、こうして彼と大口契約を結びたいのです」
そう伝えると雰囲気が違う男性の目の色が変わった。
獰猛な猛禽類のように、眼光が鋭くなる。といえば、どれくらいかわかると思う。
え、わからない?
うーん、政治家の取引みたら、ある程度分かると思うんだけど。
そもそも西洋はリアクションがすごいからわかりやすいんだよ。
ついでにその腹黒さもひどいんだよなぁ、欧州情勢複雑怪奇の一因でもあるんだよなぁ。
「ふむ。確かにそれは非常に魅力的だ。だが君の国の内部安定はされているのかね?」
「はい。といっても、西側部分だけですが。現状国全体では、長が直接指導できない場所にいらっしゃるので、州が別々に動いている感じですね」
「国ではないのか?」
「ポケモンに国境はありません。大なり小なりポケモンが身近にいます。
そして彼らは一匹だけでも相当な災害になります。そうとなれば、国を待っていられるほど我々も暇ではありません」
実際に余裕はないけれど、今日だけは関西広域連合で協力して事に当たってもらっているはず。
まあ岡山と香川の反応は微妙だけどな。
大阪からかなり近いのに、影響力が低くなるっておかしくないか?
今はネットとかあるから、距離はほぼゼロなんだから影響力が低下するのはおかしいと思うんだけど。
「そういえば、アーロンさんには名乗っていませんでしたね」
「あ」
少々法螺吹くか。まあ、事実無根ではないから、いけるかな?
多少の問題は明日提案して解決しよう。
アーロンさん……もっと早くに気づきましょうよ。
やっちまったみたいな微妙な表情と頭をかくしぐさ。
これは演技じゃないな。本当にやらかした感じっぽい。
というか相手がどこかわからないのに、契約結ぶなって感じだろうな。
まあこっちはこっちで、ポケモンに関してこれから言質を獲得して信用を重ねるから。
「私は、佐藤芳樹と申します。日本のフォッサマグナ以西における、関西広域連合にて
ポケモンショック対策課の総長をやっております」
実際は違うんだけど、現状の最高責任者は僕だからまあ間違いではないよね。
嘘ではない。嘘ではないんだから、仕方ない。よし、正当化完了。
「に、日本!? ポケモンの本場じゃないか!?
あ、ああ……私はなんて偉そうに……」
本場だからってポケモンに詳しいわけじゃないんだけれど、ここでは如何にポケモンに関して詳しいかまたは関係しているかで評価や全体的な優位性を高めることができるらしい。
よってこれを利用して、海外勢と協力関係を煽ることが今後可能な政治的カードだと思う。
「今本場である日本は、壊滅的状況にあります。
もともとが北は亜寒帯、南は熱帯とつながっております。おかげで、多民族性が極まり、
現在に至ってはそれが足かせになっております。
すでに各都道府県は、政府の力及ばず戦国時代並みに乱世乱世しております。
よって現状国としての日本は、まったく効力がありません。
しかしそれ以上または同等の勢力を誇っているところがあります。
それが私が所属する関西広域連合です。
日本は政治的な足かせがあり、思うように動かせません。
しかし関西広域連合はポケモントレーナーと州長がほぼ同等にあるおかげで、
全体を統括することができます。
よって我々と組んでいただけましたら、ボールに関する貿易だけでなくポケモントレーナー同士の親睦やポケモンテロへの対策としてポケモンバトルといった娯楽を提供・開催することができます」
僕は相手が示した自国の弱点とかも譲歩で言っていたので、
僕もお返しに譲歩として情報提示することにした。
これで五分みたいなところはあるけれど、相手は三枚舌で有名で世界中の紛争の元凶といわしめる、悪の帝国だ。
まあだからといって、僕が折れるわけにはいかない。
そしてこの会談を一考に値すると思わせればいい。
後はポケモントレーナーが、背中を押してくれるだろう。
もしもそれがなければ、貴国は滅びるのを待つだけになるだろう。
そもそも島国だから、島国同士仲よくしようってのもあるんだけどな?
「我が国、イングランド及びアイルランド連合王国は、貴国と同等のことが起こっていると散見できる。
ポケモントレーナーに差はあれど、現状陥っていることに関しての解決マニュアルの
応用が利くようではある。
そうだな……。
このことは議題にあげよう。
今後の英国のためには必要であり、このポケモンに関して一番の叡智を誇る日本国のポケモントレーナーと誼を結べるのであれば、悪くない同盟である。
そもそも経済の停滞はこちらも心配していた、きっとこの議論は可決の方向に向いていくと思われる。
このレオン=ベイカーの名において、『日英ポケモン同盟』を可決させることをここに誓おう」
「ベイカーさん!」
めっちゃ喜んでるよ。
よかったね、すごく偉そうな人の色眼鏡に叶ったね。
「ご無礼ながらお聞きします。レオン=ベイカーさんは、どのような役職で?」
「副首相だ」
よく捕まえられたな、こんな偉い人。
そして僕は今後についてある程度聞くことにした。
まずはお気に入り登録して、電話や『LiveCaster』ができるようにする。
次の日程を聞いて、木の実の培養やボール制作方法についてある程度研究しおえたら、
再度連絡されることになった。
木の実の培養というのは、ほかの方法がないかというのとともに多数の木の実を取得するための時間がほしいからだ。
流石にそこまで無碍にはできないし、率先して取得しづらいきのみを見つけていただけるんだ。
まあ、貸しを作ってしまうことになるけれど、EUの無許可脱退以外はうまい口で世間をだましてきたんだ。
だから彼らが味方であるうちは、此方に被害が直接飛んでくることはないだろう。
まあ、近攻遠交ともいうし、戦略的に理に適っているでしょ。
「では、よろしくお願いします」
「ああ、いい結果を伝えられるよう尽力しよう」
「佐藤君、またね!」
「はい、オーデンさん、また連絡してください」
僕は『LiveCaster』を切ったあと、ベッドに寝っ転がる。
ふいに時計を見上げた。
時刻はすでに正午を回っている。
なんか小腹がすくなあとはおもっていたけれど、本当に話し込んでいたみたいだ。
午後は何するかなぁ。
そうだ。ポケモンたちの顔合わせと木の様子を見ないと。
先ほど交渉に出した謎の実は、整理の時に判明した拾った木の実だ。
本当に通常の木の実が見られないんだよなぁ。
あ、そうだ。
あの古代のタネも育てないといけないな。
そしてポケモンたちの顔合わせもしないといけない。
僕はツチニンのアメが溶けた水溶液を更に足しながら、次の行動を考えることにした。
機会は今日しかない。やろうか。
飽きた。