Modern Pokemon   作:名無しの権左衛門

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19:久しぶり、僕のポケモンたち

 

 初夏の日が頂点から少し過ぎた時間。

お昼はちゃんと食べて、一時間程度のお昼寝も済ませた。

食後に寝ると太るらしいが、あいにく午後にはポケモンたちの顔合わせと

実力を図るための近隣へ出立し戦力を向上させるレベリングがある。

 

 よってこの程度の内臓脂肪は、すぐに消化されるのだあ!

 

 そんなに気合を入れる場所でもなかったが、これからはカロリーを必要とされる。

時代の流れにそぐわない最悪なものではあるけれど、インフラ関係が死んでいる以上足となるポケモンに乗馬できるほど鍛えておかないと何事も果たせなくなろう。

 そう思案していると、僕のおなかの上にツチニンが乗ってきた。

 彼らポケモンは恒温動物なのか、虫だろうが剣だろうがほのかなぬくもりがある。

不注意にも接触して、肉体が凍らされるとか考えたくもない。

だがしかしレジアイスとかアマルコ等の氷タイプのポケモンは、例外にかなり冷たい生命体になるんだろうなぁ。

 

「気持ちいいかー?」

「ニィィィイン♪」

 

 おなかにずっしりとした感覚。

それでも重すぎない重量で、両手で抱えられるくらいのもの。

そんなツチニンをなでては、反応をうかがいつつなでまくる。

彼は目を細めて、非常に気持ちよさそうに喉?を転がしている。

 最初の未進化ポケモンは、ミニマムでかわいらしい。

これが進化していって凶悪・強暴・強面[こわもて]、そして強烈な進化ポケモンに変態する。

 

 ツチニンの場合、しのびポケモンのテッカニンとぬけがらポケモンのヌケニンに進化する。強暴で凶悪で強面ではないけれど、知っている限りこの二匹は非常にはた迷惑な存在になる。

ただポケモンのほぼすべてが、彼らポケモンの飼い主である人間が愛情を注いでいればそんな悪影響など皆無になって、普通の人畜無害な生命体になる……なんて甘い現実があるわけないだろう。

 だから今のうちに彼と仲良くなり早急に進化させて、結果を見なくちゃならない。

もしも悪影響があるならば……。

ずっとボールの中で待機しててもらうつもりだ。

 

 そしてこれからのポケモン育成も、図鑑にあるような気難しい性格のポケモンを育てることはいったんやめようと思う。

あの人からのポケモンであるヒトカゲのように、進化すれば性格が変化する可能性があるんだ。

だからピカチュウのように、進化をその段階で止めておき最高の状態を引き出せるようにしたい。

進化こそが、ポケモンの可能性とは思いたくはないんだ。

 

 また突発的で予想外な進化が発生してしまった場合、身を守るために手持ちのポケモンたちと親交をしておかないといけない。

何故なら心を開いてもらっていないと、友人や仲間だとか思ってくれない。

これは人間を手助けするという本能を刺激するためでもある。

 これらの条件を満たしていれば、万が一の時ボールからポケモンたちが自発的に出てきて攻撃等の被害を防いでくれるようになるはず。

 

 よし、休憩というか癒しの時間を切り上げて、体を起こす。

ツチニンを抱き上げてそのまま地面に降ろして、部屋の外へ出ていく。

勿論ツチニンもついてくるように指示しておく。

そうしないといつまでたっても下に降りてこないだろう。きっと。

 ああ、僕がいたのは二階の自室さ。

 だから今いるのは一階のリビング。

 

「お母さん、ちょっと外行ってくるね」

「気を付けていってらっしゃい」

「芳樹、暗くなる前に帰ってくるんだぞ?」

「わかってるって」

 

 お父さんとお母さんに断ってから、外出するようにした。

このご時世だからこそ、こういう許可申請はすべきだと思う。

 今日は平日だけど、みんな休日みたいだ。

 妹と弟は自室で友人と遊んでいるようだな。

妹は友人と電子メールや撮影した写真をデコレートし、弟はsteamのゲームで友人とオンラインプレイをしているようだ。

やることは大概一緒だけど、僕は違う。

 

 ネットはネットでも、ポケホの機能で全世界と会話できる。

更に外出してポケモンを発見しなければならないので、普通のネットよりも健康的だとおもうぞ。

 そういえばポケモンが出現しだしてからは、PCをいじる機会がなくなってしまったなぁ。でも現状のポケモンを育てるほうが楽しいし、別にいいかなと思っている。

 

 玄関に来て靴を履いていると、ツチニンは縁側に通じる障子の隙間に爪をはめ込み隙間を作って両爪で開け、そのまま庭の方に出ていった。

なんて奔放なっておもったけれど、なんで鍵しめてないんですかねぇ。

 

 

 

 さて、気を取り直して、ポケモンたちを出していこう。

まあすでに出しているポケモンは省こう。ツチニンだけしかいないけどな!

 

ツチニン

技:ひっかく・きゅうけつ・にほんばれ・ソーラービーム・こらえる・れんぞくぎり。

特性:複眼。

 

 結構戦闘したと思うんだけど、ほとんど変化がない。

ポケホのあずかりシステムから閲覧すればわかるんだけど、レベルがすごく上がっている。

あのタネボー大量撃破時は、素で彼らの経験値が少なかっただけみたいだ。

原発での掃討戦以降、レベルがちゃんと上昇している。

 それを考えるとあの公渕公園のポケモンのレベルも、かなり低かったと見えるよ。

 場所によって、レベル差があるらしい。

これは些細なことではない。重要な情報だ。これからのレベ上げもあるけれど、彼ら野生ポケモンのレベルが徐々に上昇していき最終的に野生のポケモンに最終進化ポケモンが出現するようになるんだ。

 

 もしもギャラドスやほかのあくタイプ・ドラゴンタイプが、最終進化まで行ってしまったら……。

少なくともギャラドスとバンギラスで一つの国が消えるな。

 まだ海のポケモンの調査をしていないけれど、今後やっていく必要がありそうだ。

 そして危険状態になる前に、マナフィを探して日本国を滅ぼさないよう説得しなければ……。

 

 先が長いなぁ。

 

「ニン?」

 

 ツチニンはそんな僕のため息姿を見て、不思議そうに首をかしげている。

 

「なんでもないよ。ほら、みんな出てきてっ!」

 

 僕はみんなの状態が、あまり変化ないため一気に出てきてもらうことにした。

変化があったら、一匹ずつ入念にいじくりまわそうと思っていたんだけど、今思い返すと

そんなに戦闘してないんだよね。

だからレベルもそんなに上がっていない。

 まあ、公渕公園・JR電車外・伊方原発・帰宅中・移送中という、数少ない戦闘で

確実にレベルを上げているから、不満足というわけでもない。

それに今後戦闘機会も増えるだろうし、嘆く理由もない。

 

 僕の投げた5つのボールが空中で止まり、その封を開いてボールエフェクトを瞬かせて

眼前にポケモンたちが出現する。

庭先に収まる小さなポケモンたち。

 

 

「キリッ!」

 

 カリキリ:マスターボール

技:れんぞくぎり・ウェザーボール・ギガドレイン・どくづき・ソーラービーム・ダブルチョップ

特性:リーフガード 

 

 公渕公園で捕らえた。

 

「ツキッ!」

 

 ヒトツキ:プレシャスボール

技:たいあたり・つるぎのまい・でんげきは・みちづれ・ラスターカノン・かげぶんしん

特性:ノーガード

 

 高松東高等学校の道場で捕まえた。

 

「ヤコッ!」

 

 ヤヤコマ:ウルトラボール

技:たいあたり なきごえ はねやすめ いばる つるぎのまい とんぼがえり 

特性:はやてのつばさ

 

 伊方原発から帰るとき、特性の有用性を見て捕まえた。

 

「ガル!」

 

 ガルーラ:GSボール

技:れんぞくパンチ にらみつける かいりき かみなり ドレインパンチ カウンター

特性:きもったま

 

 捕まえないとお互いにひどい目に合うため、今後のために捕まえた。

 

「皆、時間が取れなくてごめんね。今日本は未曾有の危機に陥ってる。

僕とここにいるみんなが、この国を救うことになる。

だから今ここで、自己紹介していこうか」

 

 そういうとみんなそれぞれうなずいてくれた。

言い出しっぺの僕から紹介していく。

そしてそこから捕まえた順に、ポケモン語で紹介してもらった。

 

「これで全員かな? じゃ、少し遊んでて。あ、でも、家とか木とか壊したらだめだよ?」

 

 庭でやることがあるから、ポケモンたちには少しの間遊んでいてもらうことにした。

念のためにくぎを刺しておいたから、最低限のことは遵守してくれるだろう。

その間に僕はナゾのみとスターのみが生えている、庭の端っこに来る。

 きのみの湧き水のおかげか、きのみを収穫しても、灰になって崩れ落ちることはなかった。

しかし果実になっているものがかなり少ない。

 

 あ、そうだ。香川県知事に脅しという名のお願いで、土地を格安で売ってもらおうかな?

圧倒的な越権と職権乱用だ。そもそも香川県は過疎化が進んでいるし、そこらの山間とか放置田畑を使えばなんとでもなるか。

後顧の憂いは、府知事に提案して対処してもらおう。

 で、何をしようとしたのか。

 僕は古代のタネを埋めようとしたんだ。

一つしかないけれど、ポケモンのように復活の遺伝子たっぷりだろうから、

このきのみの湧き水があれば勝手に分解されて萌え木となるだろう。

 

「キリ?」

 

 カリキリが僕の隣に来て、古代のタネを植えようとするところを見る。

 

「これを植えるんだよ。奇跡のタネじゃないから、持たせられないんだ」

 

 説明を見る限り、ただのタネっぽい。

残念ながら、おなかを5回復させる効果もない。

そういうわけで、普通に植えることにした。

 手持ちスコップをもって、木の実の湧き水の効果範囲内に植えこむ。

 効果範囲は意外と広いから、庭の中であればどこでもいいんだけどお母さんたちが入り込まないように、柵で囲ってある中じゃないといけない。

白い柵の内側でタネを植えようとすると、いきなり化石のような米粒の形をした古代のタネが周辺から生気っぽいものを吸い取っていく。

 そして吸い取ったと思ったら、灰色の外郭をポロポロはがれ落として緑の生気に満ち溢れたタネになり、地面に水の波紋を広げてポチャンという音を鳴らしてしみ込んだ。

 

 わけのわからなさに、僕は茫然とするだけだった。

 

「……Oh」

 

 地面に空けたはずの穴はいつの間にか埋まっていて、どこに植えたのかさえもわからなくなってしまった。

仕方ないとあきらめつつ、白い柵で囲った領域から出る。

勿論出る前に、ナゾのみとスターのみを採取し、カイスのみ・ブーカのみ・トポのみ・イバンのみを植えた。

 こいつら普通の実は視認できるのに、タネはわからない。

まったく、困った植物だ。

 

 

 

 さて……ポケモンたちと少し遊んでから、ボールに戻ってもらった。

この後僕は海にすむポケモンたちを見に行くため、みどりのプレートをカリキリに持たせることにした。

こうすることで、カリキリの能力が1.2倍になる。

更に僕のトレーナースキルのおかげで、合計1.44倍に上昇する。

上昇能力の小数点以下は切り捨てだろうか?

 どんな結果であろうと、1.5倍に近くなるんだ。

 そう考えると、破格の能力上昇なんだろう。

普通のポケモンじゃ絶対に味わえない、絶対的な強さと安定感を手に入れることになる。

しかしこれが本当の安寧ではない。

 これからが真の地獄の始まりだよ。

そしてその地獄が始まる前に僕は、このポケモンたちとともにもっと前に進んでいなくちゃいけない。

最低でも30匹は、レベルを50にしていないと伝説のポケモンと張り合えないと思うんだ。

 

 そのためには外国との協定とポケモンの捕獲、そしてポケモンについて色々広報しないといけない。

でなければ、善悪関係なく人が死んでしまい、日本は滅んでしまう。

簡単に亡びるか!だなんて思うかもしれないけれど、日本の地政学的な立ち位置を見れば

ポーランド以上の地獄だぞ?

 あそこは内地だし、もっと周囲を見ればオーストリアやルーマニアと同盟できた。

 まあ欧州情勢複雑怪奇だから仕方ないし、島国と内陸国じゃ融通に格差があるから、

一辺倒にこれだ、とかなんとかいいがかりで処理することはできない。

ただ日本はプレートテクトニクスを無視できるほど、強靭な地盤でできちゃいない。

 

 今後ポケモンが地球に影響を与えるような存在になれば、処理できるようになっておかないと……。

 

 僕は心持を一新して、自転車にまたがる。

午後2時ぐらいに埋立地の港湾公園に向かう。

 途中でポケモンたちの行動を見たが、野生動物のなりをするだけで別段問題を発生させることはなくなっているみたいだ。以前みたいに、ケムッソ等の虫ポケモンが道路を闊歩して、一般市民に危害を加えるなんてことは、移動中全くなかった。

人がいないというものあると思う。

 でも本当にそれが理由なんだろうか?

 こう……唐突に鎮静化すると、何が発生したのか知りたくなってしまう。

そしてそこから最悪な事態が進行中なんてこともあるから、早めに理由を知りたい。

ただポケホの履歴を見ても、ある程度関係ない物ばかり。

 

 今のうちにポケモントレーナーたちと親睦を深めておくべきと思ったけれど、

ポケモンや各都道府県の長によって特別措置の権力とともに増長しているトレーナーがいるはず。

そんな人と会話なんてすれば、簡単なすれ違いで地域紛争が勃発するかもしれない。

そんな面倒なことが起きてしまうのならば、ポケモントレーナーがいないところで

県知事らによる話し合いやら会合やらで、けりをつけてしまえばいいこと。

 ポケモントレーナーとは言っても、ちょっとした一般人でしかない。

 だから政争能力なんてないから、その能力に長けた人に任せるほうがいいだろう。

僕もあの体育館で力関係を理解したし、お互いの立場っていうものも判明した。

 

 まあ、これ以上かかわりたくはないけれど。

 

 でもポケモントレーナーという、外交においての発言権の上昇は政治家にとって最高の道具だろうなあ。

 

 いろいろと思案していると、港湾公園に自然と到着する。

意図しない行動で公園に来れるほど、ポケモンの人への妨害はなかった。

 

 

 で、公園に来たんだけど……。

 

「ポウ……」

「なーんで水揚げされてんですかねー?」

 

 ウデッポウが、水たまりに水揚げされてた。

 この港湾公園の北側外周部分は、トッピングがある歩道と松や休憩所が設けられている。

また内陸部分はちょっとした広場があり、サッカーゴールや防球網が設置されている。

南側の外周部分は漁船の停泊場になっており、カキの養殖用の物品やブイ・その他磯臭いものが放置されている。

 で問題の水たまりは、内陸の東側だ。ここはまだ砂利山がたまっておりその根元には、広大な水たまり区域がある。

 ミズゴケや蚊の幼虫・ヤゴの繁殖区域になっていて、最近降水量が多い香川県では水が存在している期間が、かなり長期になってしまっている。

 

 で、このウデッポウがいるのは、この水たまりがある部分。

 

 僕はこの若干衰弱したかのように見えるウデッポウをどうするのか。

まあ捕まえるよな。こんな機会、わざわざ逃す理由なんざないからね。

リュックサックに手を突っ込んで、適当にボールを手に持つ。

そのボールの名前は、パークボールだ。

 弱っているからか、簡単に捕獲することができた。

 

ボォン

 

「よし。家に帰ったら診てやる」

 

 ウデッポウが入ったモンスターボールをもって、縮小させたあとに上着のポケットに突っ込む。

 

 残念ながら今日は水ポケモンを見たいだけだったから、かいふくのくすりなんて持っていないんだ。

さらにいうと木の実類も、ドーピング確定判定をくらうものだけなんだよな。

謎の実なんて回復するが、味がなぁ。激辛だから食わすのも、ちょっとまずいかなって思ったんだ。

 とりあえずポケモンの今を見なければならない。

 現状のレベルを見れば、どれだけ猶予があるかどうかわかるし瀬戸内海に、どんなポケモンがいるかわかる。

まあ眼前にあるのは相引川の河口部分なんだけどな。残念ながら汽水域じゃないから、生態系の差はわからん。

 

 僕は北側に移動して、護岸の岩に乗って海を望む。

 

 

 しばらく陽気の中で潮風を浴びて思考をリセットしていた。

 で、何か眼下で光ったような気がしたから、足元に見える海原を見てみた。

するとそこだけ墨汁を落としたかのように黒かった。

 

 ……ここ、そんなに海底に海藻生えてたっけな?

 

 干潮の時を思い返してみたが、そうでもないような気がする。

色々していると海中で赤い光が揺らめいだ。

これを視認したら何か嫌な予感しかしなかったので、後ずさらず全力で後退してやった。

 

 ゴッ ドッシャアアアアン

 

「ひっ」

 

 土を踏みしめた瞬間巨大な海水の柱が出現した。

また、その水柱が発生した余波で、周囲にあった護岸用の岩も爆散して吹き飛ばされた。

 

ドッ ゴッ ダッパアァン

 

 すぐに上を見て吹き飛んだ岩の軌跡を見たけれど、僕に影響を及ぼすようなものはなかった。

でも着弾後の軌道が怖いから、なるべく水柱に近いところに移動した。

これがいい判断かどうかっていわれたら、いいわけじゃないんだろうけどさ。

 整然と並べられていた護岸の岩が、4割ほどえぐり取られていた。

 そして岩が吹っ飛んだあとに振ってくるのは、海水だ。

僕の服は水しぶきでずぶぬれになる。もちろん勢いある水が痛いんだけど、回避しようがない!

 

 歯を食いしばって我慢しながら、モンスターボールからカリキリを出す。

 

「キリッ!」

 

 水柱から何者が出現するかわからないけれど、きっと高レベルのポケモンだろう。

 

 カリキリは緑プレートからエネルギーをもらって、覇気のようなものを身にまとっている。

本人のやる気もいっぱいみたいだ。両手の鎌を挙げて威嚇している。

ツチニンも出して、日本晴れでもしておこうか?

よし、ツチニンも……

 

 

「ギャオオオオオオ!!!!」

 

 ツチニンが入っているボールを取り出そうとすると、水柱から雄たけびが聞こえ空間を震わせた。

腹にその重低音が響き、鼓膜も震え甲高い音も頭に入ってくる。あまりにもうるさいから、両手で耳をふさいだ。

 しかしそれと同時に、どこから来るか視線を張り巡らす。

勿論上空から降ってくるに一票。

そういうわけでさっさとカリキリを抱えて、この場から逃げ出してやった!

 

シュッ

 

 嫌な音が背後から聞こえた瞬間、後方から爆発音。

そしてわき腹に鈍痛。

 

「キィィィリイイイ!!」

 

 カリキリが僕を跳ね飛ばしたのと同時に、ソーラービームを打ち出した。

 

「ぐ……ふっ……」

 

 で弾き飛ばされた僕は、とっさに受け身が取れずに上着やズボン、皮膚をトッピングで削ってしまう。

ガリガリザザザとゴムと砂利で、体が痛めつけられて地面にうつぶせになったままだ。

痛すぎて起き上がれない。起き上がろうとしても、膝や腕が痛すぎて起き上がれないんだ。

それにわき腹を殴られたから、呼吸するのもつらい。

 首だけは動かせたから見てみたけれど、雄たけびを上げていたのはギャラドスだった。

 もうね、ここだけでも驚けるんだけれど、奴は足元の土台を破壊して水を確保していた。

さらにその作られた穴から一直線上に走る破壊痕がある。

あれを回避させるために、カリキリに突き飛ばされたみたいだ。

 

「……」

 

 四の五の言ってられねえ!

 

 左腕が痛くないからこっちを動かして、ポケット内に入れてあるボールを放って全員を出してやった。

ただしウデッポウ、お前だけはだめだ。

 

「ニンッ!」

「ッキ!」

「ヤコッ!」

「ルラアッ!」

 

「ガルーラ、僕を抱えて遠くまで逃げて! ツチニン、ソーラービーム! ヒトツキ、でんげきは!ヤヤコマ、いばってから鳴き声! カリキリはどくづき!」

 

 

 みんなうなずいて行動を開始する。

 

「ギャアアアアアア!!!」

 

 ギャラドスの……アクアテールとりゅうのいかりか?、とにかくそれを使って周囲を攻撃している。

僕はその被害から逃れるべく遠くまで離れたけれど、奴はそんなのおかまいなしに強襲しにきそうだ。

 

「ツキッ!」

 

 ヒトツキがでんげきはを放つ。一直線に放たれた雷撃は、逃れようと体躯を曲げるギャラドスに直撃する。

だが効果がないのか全く叫び声をあげず、行動を鈍らせることすらできないで反撃の手を許してしまう。

 ギャラドスは雄たけびをあげて、海中よりしっぽを海上に出してその巨躯ごとしっぽを回し飛ばしてきた。

回し蹴りの要領なのか、威力が著しく上昇したそのしっぽの攻撃は近くにいたカリキリに当たらず、かなり後方に当たった。

攻撃を加えられた場所は、水を爆散させて地面を陥没させたりアスファルト等を粉々に砕いていった。

 

「ギャアアアア!!」

 

 今度は何かと観察していると、草木が風に揺られ最終的には折れそうなくらいに揺らいでいく。

何をしているのか、まったく不可視で不明だったのが、瞬きを挟んだ瞬間巨大な竜巻として襲ってきたんだ。

 

「ルァガ……ラアッ!!」

 

 僕を両腕で抱えるガルーラは、気合を入れて片足を地面にたたきつける。

渾身の踏み込みは、ふみつけという技を覚えていないガルーラにとってどんな技になるのか。興味はあったけど、どんな技なのかすぐに分かった。

 ガルーラが踏みつけると地面が割れ、一気に隆起しギャラドスが放った竜巻を減衰させたんだ。

 かなり大きな岩塊で、4Mはあると思う。これほど大きいと、岩塊ができたその場所は大規模な補修工事が必要になるだろうなぁ。

ああ、また県の予算が削れる……。

 

 まあ、知ったこっちゃないけどな!

 

「ガルゥゥウラァアア!!」

 

 ガルーラはそのまま意気を込めて、片足を眼前の岩塊にぶつけてサッカーボールのように飛ばした。

その岩塊はみんなの支援の中、確実にギャラドスにぶつけられる。

酷く鈍い音が鳴ってそのままギャラドスの長躯を、海中に沈めこんでいく。

 青い竜は痛みに苦しみ叫びながら、海面下に没したようだ。

 だからと言って、油断はしないよ。

 

 しばらく待機していると、水面に赤いものが浮かんできて海原を朱に染めていく。

 

 死んだか。

 

 別に罪悪感は湧かない。

むしろ日常茶飯事だ。

 人間がゴキブリや不快害虫を殺したり、ネズミやブラックバス等指定外来生物を殺処分するのと同じさ。

 だから僕は何も思わない。

 

「ごめんガルーラ。歩けないから、家まで負ぶっていってもらえるかな?」

「ガルッ」

 

 なぜか笑顔なガルーラ。

そういえば雌固定だ。ということは、これがガルーラの甲斐性! 

女性だったら惚れたんだろうか? 申し訳ないけど、萌えモンとか擬人化は興味対象外です。

 

 僕は皆を外に出したまま、帰路につくことにした。

帰ったら黄金の実を使って、体中の痛みを取ってから家に入ろうと思う。

 しかしまあ、この公園は酷いことになったもんだ。

 そこら中に岩塊があるし、破壊痕だったり地盤から覆されていたりしている。

停泊中の船舶も、奇跡的に一隻だけ爆破炎上しているだけだ。

周囲への延焼問題もあるから、沈めておこうかな。

 

 いや、もしもこの場面を誰かに見られたら、確実に賠償問題に発展する。

だからここは見なかったことにしよう。

そうしないと第三者にすらなれない。

 

 このまま僕は家まで安全にたどり着くことができた。

 そして庭に生えている黄金の実の木から、黄金の実を採取して体の擦り傷や裂傷に果汁をかけてやった。

効果は即効性で段階的に見る見るうちに回復していった。

この効果は圧倒的で、やはり医療関係に革命を与える可能性がある。

さらにこの効能を研究し、いつでも治療可能な麻薬すら作れてしまえそうだ。

 そう、廃人にならず段階を決定できる快楽を追及する麻薬とかさ……。

今はまだ作られていないけれど、皆無ということはないだろうと思う。

 

 そういえばこれらきのみに、中毒になる摂取量ってどれくらいなんだろうか?

技マシンも併せて、ここら辺の解明をすべきだと思う。

そうしないときのみ治療も、確信をもって治療行為に用いることができない。

水中毒のような理論上可能でも、実際問題不可能な中毒現象ならいいんだけどさ。

 

 さて……と、ウデッポウを回復させないと。

 

 家に入る前に服に付いている砂ぼこりをできる限り払い落として入る。

また、若干べたつくけど我慢しよう。

 

「ただいまー」

 

 って言っても、今日はお母さんたちは買い出しに行ってる。

リビングにあるマルナカ・マルヨシ・ムーミー・エブリィ・ラムー・キムラのチラシをペラペラめくってみたけれど、キャベツ一玉198円は高いよなぁ。

これがお買い得なんだから、世も末だ。

 一応自給自足はできているようだけれど、この約一億二千万人の食欲を確保できるほどの余剰はないと思う。

JAや市場の倉庫や冷凍食品の在庫を切り崩して、約半年が目途かな。

 

 ああ、こんなことなら水ポケモンを大量に捕獲して、アメリカ合衆国と話をつければよかった……。

いや、ここは茨城のトレーナーに望みを託したい。

もしもダメだったら、水産資源に頼るしかないな。

 もちろん食料の話さ。

一級河川の米どころ岡山も、大阪の大人口を維持するためのリソースにされるだろうしな。

それか県主導の大規模開墾と農家抜擢で、不必要になった会社や駐車場・耕地を田畑にして、安定的な二毛作や二期作を行えばいいんじゃないだろうか。

 でもそうすると土地がやせてしまって、一年ごとに畑を放置しなければいけないし、レンゲやスタンガン等で窒素固定もしなければならない。

キノコ類も体積なら生物中最大なのに、見てくれは小さいんだよなぁ。

 

 

 そういえばニュースもそうだけど、神様は畜産等人間や既存の生物がいきなり絶滅しないよう、生物全体のバランスは整えてくれていることを思い出した。

これならば、牛・羊・イノシシ・鳥・豚等が、畜産業として残っているはず。

そこにケンタロスやミルタンクが加われば、必須たんぱく質は安定して取得できると思う。

 うーん、懸念すべき事項がありすぎて、一般市民の僕の知識じゃここが限界だ。

後は任せるしかないし、何かあれば提案もしてもらわないといけないな……。

 

 僕は手洗いうがいをして尿素を捨ててから、自室に戻ってなんでも直しやげんきのかたまり等をリュックに詰めて近くにある防波堤の向こうにある護岸の岩のところに行く。

 なんで風呂場で行わないのかわかるか?

 まあ不測の事態もそうだけど、風呂場がもしも壊されたらたまらないからだよ。

それにこの時刻だとちょうど岩の隙間に、塩水が入ってきて疑似的なタイドプールが発生するんだ。

そこにウデッポウを出して、元気の塊をあてがう。

 

 元気の塊はウデッポウに接触した瞬間、本体とともに輝きウデッポウの肉体へ溶けていった。

 

「ウ……」

 

「おーい、無事かい?」

 

「デッポー」

 

 目が半分しか開いていないけれど、これは体力とは別のスタミナの概念かな?

今のポケモンにそんな機能はないけれど、現実に即した生物の動きをしているから不自然に思えない。

いい塩梅だと思うよ。

 

「君が心配だったから一度保護させてもらったけど、元気がでたなら解放するけど……。

どうするー?」

 

 若干深い穴を岩に座ってからのぞき込んで、ウデッポウの出方を見る。

するとウデッポウはしばらく俯いてから、僕に両腕を伸ばす。

 

「デーデッポウ!」

 

 元気があるわけではないけれど、やる気はあるみたいだ。

よし、君を仲間に加えよう。

 

「よろしく、ウデッポウ。僕は佐藤芳樹だよ、よろしくね」

「デッポ!」

 

 

 

 

 ザパァン

 

 

 僕はウデッポウに両腕を伸ばした時、不自然な水の音を聞いた。

だから僕は顔を少し上げて、視界に水色が見えた瞬間西に向かって走り出したんだ。

 

「ウデッポウ、逃げろ!」

「ッポ!?」

 

 

 直後僕がいた場所の護岸の岩と防波堤のコンクリート・土台の土と防風林を、

ギャラドスのアクアテールが粉砕した。

頭や背中に石や砂、葉っぱなどが当たるけれど気にしていられない。

ここで戦えば、宅地に被害が出てしまう。

すぐに戦場を変更して、あの港湾公園で戦闘しないといけない。

 僕はヤヤコマが入ったボールを手に取り、空中に放り投げる。

 

「援護してくれ、ヤヤコマ!」

「ヤコッ! ヤーコッ!」

 

 ボールエフェクトを巻き上げながら剣の舞を踊り、体当たりをギャラドスに仕掛けにいく。背後を気にしていられない。

すぐに漁船が停泊している場所に来てしまった。

このうん千万もする固定資産を破壊させるわけにはいかない。

 すぐに防波堤に仕掛けられロープで頑丈に固定されている脚立のはしごを駆け上がって、道路から防波堤に出るための防風林の分け目に入った。

そして防風林へ入ることを禁止する黄色い看板をわき目に、金属の柵を左足の土ふまずで踏み越しながらリュックサックからマッハ自転車を取り出す。

 

 緑地公園と化した港湾公園に行く途中、片手運転しながらポケホの預かりシステムでウデッポウの情報を閲覧する。

 

 

ウデッポウ:パークボール

技:あまごい いやしのはどう あくのはどう みずのはどう りゅうのはどう 

  はどうだん

特性:メガランチャー

 

 なるほどと納得した。この戦闘は勝利することが可能だと確信する。

 万が一のため、大量の回復アイテムや回復きのみを持ってきておいて正解だった。

天変地異が起きても、僕が無事だったら基本的に大丈夫になる。

 

 緑地公園に向かう途中、ギャラドスが幾度となく竜巻を放ってきたがリュックサックから頭を出すツチニンの日本晴れと前かごに出したカリキリのウェザーボールで、竜巻に上昇気流を与え不安定にさせて崩壊させた。

またこっちにりゅうのいかりを放ってくる前に、ウデッポウの波動技やヤヤコマのいばる→鳴き声コンボで、混乱させて妨害してもらっている。

 

「再戦だ、ギャラドス!!」

「ルァギャアアアア!!!」

 

「行け、ガルーラ! 地面を引っぺがして、かいりきだ!」

 

「ガルーラ!」

 

 ガルーラをすぐに出して、マッハ自転車で逃げる。

 別にガルーラを置いてけぼりにしたわけじゃない。

奴の攻撃予備動作を見たからに過ぎない。

すぐに緑地公園の道路を走って、竜巻やアクアテールの水圧から逃げる。

 あの一撃一撃が人間の命を容易に奪い取るものだと理解しているさ。

 だから足がすくむことがある……わけがない。

どんなに危険であっても、結局は戦闘でしかないからなぁ。

 

 ギャラドスは南側の海辺から動いていない。

 

「ここからやるか、カリキリ・ツチニン。ソーラービーム!」

「ニン!」

「キリィッ!」

 

 二つの太陽光線がまとめて、ギャラドスに向かう。

そして奴に当たるのと同時に、ガルーラが怪力で破損した電柱を抜いて投擲する。

ソーラービーム二本と悪の波動、電柱で攻撃されてはさすがのギャラドスもお手上げか?

 警戒はしているけれど、このまま終わればいい。

そうでなければ最後の切り札で終わらせてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

「ギャアアアアア!!!!」

 

 

 

 それは悲鳴。苦痛と怒りが伴った逆鱗の叫び。

 

 

 ギャラドスは赤い稲妻と暗黒の怒気に包まれ、そのまま上空に飛び立つ。

僕はその光景に呆然としてしまって、行動が遅れてしまった。

奴はそのまま西側の海へ落ち、大きな水しぶきをあげながら着水。

すぐに頭をこちらに向けて、大きな口から何かが放たれた。

 

「い、ゴボッ」

 

 

 いつの間にか、僕は後方にあった柵に当たっていた。

後頭部や背中に鈍痛が響き、背中が圧迫されて肺の空気が強制放出させられ、呼吸ができなくなる。

そして喉かどこかに傷が入ったのか、口中に広がる血の味。

眼下には血に染まる自分の服がある。

 そういえばなぜか視界の左側に鼻が見え、右の耳だけ音が聞こえる。

なぜ左側の五感がなくて、右の五感だけが正常なんだ……?

 

 

 まさか……。

僕は頭の左側が徐々に炎にあぶられるがごとくの痛みを味わいながら、意識が遠くなっていった。

 

 




途中から指示だしを忘れ、上司に相談しない青二才。
こいつはそこまでの人間だったというわけだ。
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