「あああ、心配だ……」
「その心配はよくわかる。だから、いつでも出せるように」
「「はい!」」
私は救急救命士の渡辺です。
今私はこの牟礼の消防署三階の屋上西側より、とある方を迅速に救助できるよう監視しています。
本来ならばほかの方がやるのですが、今現在消防本部や警察本部より消防隊への火災対処や救命救急のため、
優先して出動しております。
そういう私たち本職である救急救命士は、いつでも専門的な機械が付属している救急車を駆って
彼を助けなければなりません。
ほかの市民よりも個人を優先して、救急車を駆り出さなければならない。
その個人の名前は、佐藤芳樹君。
彼は世界的にも注目されている初代ポケモントレーナーの一人です。
いや、初代というのは少しおかしいでしょうか。
ですが上よりポケモントレーナーには、誰でもなれるといわれていますので初代でもよろしいかも……と。
とにかく私たちは、署長と残った救命士中隊とともに緑地公園で、謎の青い竜と戦っている彼を監視し続けました。
本来ならばこんな状態はあり得ません。
常に出動できるよう防火服を身に着け、高規格救急自動車に乗れるようドアを開けてそのそばで待機しています。
私たちが出動できなければ、ほかの医師や看護師の方々に救命活動を託さなければなりません。
出動できないことを心の中で謝罪しつつ、業務に集中するだけです。
こうして数分経過。
彼は一度緑地公園から離れ、どこかへ行きました。
そして私たちはその公園の惨状を再確認します。
「……」
「これから俺たちは、生きていけるのか?」
「上は共存するみたいなことを言っているが、あのポケモンを従属させないといけないんだろ?」
「無理だって。あんな奴がうじゃうじゃいるんだぜ?」
私も救命士の中道さんと同じ考えだ。
どう考えても彼らとの友好なんて……。
少なくとも彼らが使っているボールみたいなのを手に入れなければ、私たちは共存共栄を図ることなんてできません。
せめて今月中には、彼からの指導があってほしいものです。
とても若くその身に、県民の命を預けるのはかなりの重責ですが頼らざるを得ません。
申し訳ありませんが、私たちは佐藤君を援護するしかできません。
彼を含むポケモントレーナーには、目の前のことに集中できるよう大人がしっかりと支えなければ……。
そう思っていると、巨大な水柱が沿岸部に出現。
更にその沿岸となっている護岸の岩の上に、佐藤君がいつの間にかいたのです。
そして海に没したはずの青い竜が出現し、佐藤君を攻撃!
私はその戦闘の様子を食いるように見ます。
あの水を発するしっぽでの攻撃で、護岸の岩が粉砕されてしまい護岸コンクリートもボロボロになっていました。
佐藤君はすぐににげたようで、水しぶきや砂埃が落ち着いた時には誰もいませんでした。
しかし青い竜が先ほどの緑地公園に移動するのを確認。これで、佐藤君が緑地公園に向かったことが分かります。
彼がなぜあの緑地公園で戦うのか、あまりよくわかりません。
高台に移動し、先ほどから見えている光線や炎の玉で攻撃すればいいのではないでしょうか?
なにせあの青い竜は、しっぽでの攻撃ばかりじゃないですか。
たまに竜巻のようなものも見えましたが、無条件化の竜巻なんてすぐに収まります。
私はポケモンが起こす事象に、科学的な根拠を当てはめていると、青い竜が突然稲光を発し始めます。
竜は海上に上半身を出現させるだけで、まったく竜らしくなかったのです。
しかしあの竜は全身を真っ黒なもやと稲光で、全身を包んだかと思うと空を飛び東から西へ移動しました。
巨大な雄たけびに耳が一時的な難聴に陥る中、署長たちと戦闘を監視し続けます。
ですがまさか、こんなことが起こるとは思いませんでした。
私は今まで思っていました。佐藤君のようなポケモンに熟知したトレーナーなら、
どんなことでもなしてしまうと。
彼がどんなことをしてきたのかは、ある程度入ってきます。
それを見ると佐藤君なら、どうとでもしてしまえるんじゃないかと思ってしまいました。
つまり、油断です。
監視はつらくありませんし、観察にもなります。
ですが青い竜の強さというもの、ポケモンの真の恐ろしさというものを垣間見ました。
きっと佐藤君も思っているでしょう。
まさか、あれが遊びだったなんて。
―――――リリリリリリリ
「――――っ!」
誰……?
「――――ろっ!――――!」
全身が痛いです……。動きたくありません……。
「わ――――きろっ! 起きろ、救急救命士渡辺隊長!」
「っ!?!!?」
私はまどろみの状態から、突発的な刺激を肩からうけ起き上がります。
そして私の視界には、絶望が広がっていました。
「しょ、署長!? いづっ……!」
「私は大丈夫だ。それよりも要救護対象者のGPS反応が消失した。至急現場に向かってほしい!
消防署はなんとかしておくっ、だから、はやく行け―――!」
私は……背中やわき腹に崩落したコンクリートがぶつけられ、打ち身になっていました。
そして私の眼前には、頭から血を流す署長がいました。
署長はこの燃え盛り屋根がなくなり空が見える消防署を捨て置き、すぐに佐藤君を救助するように命令しました。
私はほかの救命士が、消火活動や署長の手当てをし始めるのを後目に、隊員と機関士と合流。
「田尻さん、後藤さん、ご無事でしたか!」
「はい。救急車は無事です。へこんだり高輝度赤色LEDがぶっ壊れてますが、内部機器はなんともなっていません」
「わかりました。確認手順はすでに完了しているものとして、省略。すぐに緑地公園へ出動です!」
「「はい!」」
私は助手席へ、田尻隊員は護送室で待機、後藤機関士は運転席に。
手順は可能な限り省略し、救急サイレンを最大限に鳴らして出動させます。
出動させると一度西に向かって進みます。
この時何が起こったのか、ある程度予測がつきました。
何故なら消防署から南東へ一直線上に立つ民家や樹木等が、木っ端みじんに破壊されたり炎上していました。
これはあの青い竜が、佐藤君が持つポケモンと同じように何らかの光線を放ったのだと思います。
そうでなければ、五剣山の一角が崩落するだなんてありえませんし、岩肌がむき出しになっている特産品でもある牟礼の庵治石の掘削現場を崩落させることも非現実的です。
私たちは戦闘の余波のおかげで、まったくポケモンがいない中橋をわたり、だるまやを横切り北へ進路を取ります。
そこから時速100キロで走行し、緑地公園に向かいます。
そして屋島東小学校の正門で立ち止まる人たちに、長波を当て押し釦信号を通過。
ドドン――ッ ドンッ ―――パアアァァン!!
道路のアスファルトに凸凹や亀裂ができるほど、激しい戦闘を行っているようです。
あの青い竜はいまだに佐藤君のポケモンと戦闘しているようです。
私たちは緑地公園に侵入して、最後に佐藤君を見た場所まで移動します。
「つかまっていてください! ドリフトして、後部を要救護対象に向けます」
「わかりました。ドリフト後、バックドアを開けますので田尻さんはバックボードを積載した担架をもって佐藤君のところへ!」
「はい!」
本来ならばコンクリやアスファルトでドリフトはなかなか難しい。
ですが今は地面が若干傾斜していますし、地面には破砕されたコンクリや散乱した枝葉や砂利が散乱しています。
これなら不安定ながらも、地面とタイヤの隙間を利用して滑らせられるでしょう!
キキ――――ッ!
バックドア、開け!
後部より担架がレールより降ろされ、地面の砂利を踏む音が聞こえる。
私もすぐに、シートベルトを外して降ります。
その時あの青い竜と目が合ってしまいました。
そう、この場所は戦場です。少しの緊張と恐怖で……死を味わってしまう場所です。
私はあの青い竜に口を向けられてしまいました。
あのなんでも食みそうな巨大で奥が見えない口。
私は無視して走りだそうとしたとき、地面が揺れてこけてしまいます。
「ぐあっ!?」
「うわあああ!!」
「このおっ!」
佐藤君の近くに行っている田尻さんは、前のめりになってしまいます。
担架が倒れていないならよし!
更にこの時青い竜は、佐藤君のポケモン達の必死の攻撃にさらされ私たちへ攻撃をする機会を失ったようです。
すぐに向かうにも、田尻さんが地面に座ったまま動かないでいます。
私は青い竜に視線を奪われていましたが、田尻さんを確認したらすぐに佐藤君に視線を移します。
「え……」
「香川は……終わりだ……」
私の唖然とした声に、田尻さんは絶望の声を発します。
何故なら、彼は……お腹から上部、左半身が消失していました。
更に服が破れ皮膚に裂傷とともに、大量の血液が外部に出ていました。
「あ、ああ……嘘だろ、嘘だろ!!?」
後藤さんもポケモンの戦闘の余波を受けてよろめきながら、表情を絶望に満ち溢れさせ慟哭します。
「と、とにかく、遺体だけでも……たしか、ポケモンに関する木の実は……」
「死者に効果があると思いますか!?」
「搬送だ。とにかく、搬送を……!」
私たちが動こうとしたとき、何やら水がかかってきました。
何かと思って顔を上げると、そこには青い竜がいました。
「っ!?」
息が詰まり、作業が滞ってしまいます。
「ニイイイイイイイン!!」
その時雄たけびを上げながら、白く輝くポケモンが青い竜に向かっていきました。
そしてそのポケモンは青い竜に攻撃を加えた後、空中で二つに分裂しました。
白く輝いていたポケモンは、その光を納めさせます。
すると光輝いていたポケモンは、どこからどう見てもセミと抜け殻になっていました。
その二匹のポケモンのうち抜け殻は、瞬時にどこかへ消えます。
更にセミも青い竜に切りかかった後、青い竜の陰になっている部分から抜け殻が出てきて切りかかっていました。
そして最後には、上空の積雲より青い竜に落雷が何度も発生し、青い竜が黒焦げになった後セミと抜け殻が4枚卸しにしました。
竜だったものは緑地公園に倒れこみます。
この後佐藤君のポケモンたちが、炭化したポケモンを無視してこの場にやってきました。
あまりにも派手な戦闘に魅入られてしまい、救助がそっちのけでしたが振動で動けなかったので、ある程度態勢の言い訳になりましょうか。
「ガールァ」
「?」
怪獣っぽいポケモンが話しかけてきました。
私たちは困惑して、どうしようか迷っていましたがそんなことをする必要はなかったようです。
《トレーナーの安全とポケモンの安全、ほか救助者の確認ができました。
これよりポケモントレーナー救命作業を行います。
またこの行動は、特定のアイテムがないかぎり確定で失敗しますので、ご了承ください》
そんな声が佐藤君の右ポケットから聞こえました。
私たちは何事かと思って、田尻さんに取り出してもらいます。
それは上から説明のあったポケモンフォンでした。
そのポケモンフォンは、画面に情報を載せながら私たちに説明を行います。
《手順1。トレーナーのバッグの中から、『せいなるはい』を取り出してください》
「『せいなるはい』?」
佐藤君の遺体の態勢を崩さないように、背中に押しつぶされているリュックサックのチャックを開けます。
そしてそこからめぼしい物を取り出しますと、ポケモンフォンより『せいなるはい』の画像が出てきます。
通告の遅さに、私は若干苛立ちを覚えます。この作業は私がやることにしました。
《手順2。『せいなるはい』の袋を開け、灰を患部へ振りかけてください。
また『せいなるはい』は量に関係なく、周辺の患部を癒す効果があります。
よって限られた量を考えて、回復させたい場所に振ってください》
見た限りですと、この手のひらに収まる灰色の袋に白銀の灰が入っていまして、
この灰自体かなり希少かつ内容量が少ないことを確認しました。
私はこの限られた量を遺体を運ぶ際に難度が高くなる場所を中心に振りかけていきます。
このポケモンフォンの説明や『せいなるはい』の効能は、少なく見積もって流れ出る血液を凝固させる程度でしか考えていません。
もしも、本当に回復させたとして、佐藤君が生き返るだなんてありえません。
よって私は輸送中にちぎれたら困る場所を重点して、振りかけるのです。
《『せいなるはい』の使用を確認できました。
手順3。『いやしのはどう』等、他者を回復する技を持つポケモンに、トレーナーへ技を
使わせてください》
「デッポウ!」
ここは沿岸で、海に人が落ちないようにするための柵が設置してあります。
この柵に要介護対象の佐藤君がもたれかかっています。
そういえば、佐藤君の左方にある柵やコンクリ等も、えぐれるように消えています。
さらにそこから仰角低めに薙ぎ払ったのでしょうか、私たちの消防署に命中しました。
ああ、署長や皆さん、早く病院に向かわせていて下さるといいのですが……。
「ッポウ!」
マイケルジャクソンさんが大元になったゲーム並みにうるさい青いエビが、
桃色の波状光線を出します。
すると患部に振った『せいなるはい』が輝きだし、更に患部や周辺の肉体……最終的に全身を光が覆いつくしました……!
「おぉ」
「……」
後藤さんはその光景に目を奪われますが、田尻さんは死んだ目でにらみつけています。
私もこの光景は神秘的なものがありますが、過剰演出のような気もします。
その光は佐藤君の現状の形を映し出すと同時に、徐々に左半身が生えてきました。
そう、どういうわけか光は患部を治すどころか、対照的になるように肉体を……え、はあ!?
い、今、光が……光から、骨が生えてきて、そこから神経・血管・筋肉等が交互に生えてきます。
そして手を作ったと思ったら骨芽細胞や皮下脂肪、最終的に皮や毛を再生しました。
頭に至っては、脳漿が蠢き増殖し組織液で満たされたと思えば、頭蓋骨で覆われ頭皮や頭髪が生えてきました!
ほかの部分もいつのまにか黒ずんでいたところが健康的な肉体となり、そこが断面図として生々しく見えます。
そこから内部の臓器や血液が増殖し、最終的に皮や毛まで回復します。
ありえない光景に、いつの間にか涙が出てしまいました。
ですがこれはただ肉体の損傷を治しただけです。
命までは戻りません。戻ったとしても、植物人間のままでしょう……。
私は光が収まるまで待ちます。後藤さんや田尻さんも、その場に座って佐藤君の行く末を見守ります。
……45分ほどでしょうか、部分的に光が収まってきます。
空は夕焼け小焼けの時刻になってしまいました。搬送先は赤十字病院です。
今後のことも頭で整理しながら、完了を待ちます。
きっと終了の合図も、このポケモンフォンが音声を出力してくれるでしょう。
《処置が完了しました。
手順4。トレーナーを安静に安全なところまで運んでください。
これにて救命救急シークエンスを終了します。ありがとうございました》
ポケモンフォンの電源はOFFになり、画面を黒くします。
私はこれを見て、佐藤君の脈拍を図ります。
心臓は動いていますし、脈拍はいたって正常です。
しかし当の本人は、命を失ってから数分かかっています。
きっと植物状態でしょう。
ですが植物状態だとしても、私たちの任務は彼を病院につれていくことです。
どんな状態であろうと運ぶのは、私たちの仕事でもあります。
「田尻さん、ストレッチャーに乗せます! 後藤さんは、病院に連絡を!」
「「はい!」」
「ニン!」
「――!」
彼を運ぼうと近寄ると、セミと抜け殻が彼の前に仁王立ちします。
あまりの速度に驚きましたが、笑顔で対応します。
「今から彼を、人間の病院に連れていきます。任意同行してください」
二匹はうなずくと私たちに道を開けます。
そしてその二匹は、青いエビや怪獣のようなカンガルー、赤い鳥、ハナカマキリに話しかけていました。
この間に私たちは佐藤君をバックボードという固定器に固定し二次外傷を防ぎ、ストレッチャーという担架に乗せ高規格救急自動車に積みます。
「病院に一緒に行きたい方は乗ってください!」
車内処置を田尻さんに任せます。後藤さんは出発準備を完了したようで、運転席から後方を見ています。
そして私がポケモンたちに促すと、青いエビとハナカマキリが乗り込んできます。
怪獣のようなカンガルーは首を横に振り、鳥とセミと抜け殻は空中を移動し救急車の前方や上部に移動します。
なるほど、移動中のポケモン被害を考えているようですね。
私はこの意図を考え、後藤さんにバックドアを閉めさせます。
そしてすぐに助手席に乗り込み、サイレンを高らかにならして赤十字病院に向かいます!
市道から国道11号線へ。
そこから西に向かってひたすらに走っていきます。
この間にもポケモンが立ちふさがってきますが、佐藤君のポケモンたちの援護攻撃によって道が切り開かれて行きます。
交通量が少ないことも、時短の要因になります。
おかげで15分以内に病院へ搬入できたことは、佐藤君の回復したばかりの肉体の疲労を最小限にできました。
あとは回復することを願うだけです。
それと病院のスタッフに、佐藤君のポケモンのことも伝えておかなくてはなりません。
これも現場で働く私たちの使命です。
「……ふむ。事件発生時刻と搬入時刻。さらに加えて佐藤さんの容体も鑑みますと、訝しく思わざるをえない点がいくつかございますな」
「それについては私から説明いたします」
私は今回の件で主治医となった外科の一橋さんに、此度の事件のことを包み隠さずすべてお伝えしました。
ただ、やはり『せいなるはい』による死者蘇生は、医療関係者にとって無視できないものらしいです。
「左半身と頭部の三分の二が欠損し、更に多数の裂傷と失血におけるショック死からの回復……。信じられませんが、この佐藤さんの肉体の皮膚の継ぎ接ぎ感は、これが原因のようですな。
信じがたいが……信じなくてはならないようですな……」
「ん……うぅっ、ハンバーグ……押しつぶさないでくれ……」
様々な処置を部下にやらせていると、そんな呻き声ににた寝言を佐藤君が発する。
このあとポケモンたちと共に、個室へ移動しました
「「……」確か貴方は植物状態の可能性が高いと仰いましたね?」
「はい」
「『せいなるはい』というものは、すぐに手に入るものなのでしょうか?」
「それはわかりません。彼が覚醒したときに質問してみてはいかがでしょう」
一度この手の話は終わらせました。彼の搬入が済めば、私たち救急隊は救助に参加しなければなりません。
そのためすぐに消防署に戻らなければいけません。
「そうですな。では、もう一つ。これを救急隊の方々は知っていますか?」
主治医の方は私に、黄色く手のひら大の木の実を見せてきました。
何のことかわかりませんが、最近の資料にポケモンの木の実の効能や研究による結果次第で、これらの果汁をうすめたものを点滴として処置し、容体を安定させるという報告がありました。
「これはオボンのみです。つまりポケモンのきのみです」
「これが……」
この後のことを頭から追いやって、目の前にある技術的転換点を注視します。
「そしてこれのほかにも、オレンのみといったものがありますがその木の実は軽い裂傷を瞬く間に治します」
「!?」
軽い裂傷を瞬く間に治す!?
「このオボンのみは、皮を皮膚になめせばそばかす・ニキビ・ほくろ・皮膚炎が癒え、果汁を飲めば食道がんや胃炎を治し、
果実を食めば虫歯や鼻炎・肉体の大体の損傷を癒します。しかし、根本的な異常を治すことはありません。
しかし、この上位版であるラムのみやかいふくのくすりといった幻の道具を使えば、
人間は病院いらずになるでしょう。そして先ほど出てきた『せいなるはい』は、もしかすると人類の歴史を変えるかもしれません」
今はまだ主なる救急医療を行う病院にしか通知されていないと仰いましたが、もしもこの『せいなるはい』が国内……最終的に国外でも発見されてしまえば、この薬……いや、真の不老不死の薬を求め世界中で争いが起こるでしょう。
国は知っているのでしょうか?
「これは報告するのですか?」
「我々医者の悲願です、当然でしょう!!」
主治医の方は、わなわなと震えている。私も目から流れ出していた汗を腕でぬぐい取ります。
「こ、これで……あの人もあの子もあの方も……!」
話を聞いて分かったことは、ポケモンの木の実の回復性能は驚愕ばかりだけれども、根本を治し正常化しかしないことです。
しかし『せいなるはい』は、肉体欠損を治すようです。ですが肉体の欠損を治したのは、本当に『せいなるはい』なのでしょうか?
あの青いエビが放った桃色の波状光線があったからこそ、欠損を治すことができたのではないのでしょうか?
私は緊急入電があったことを後藤さんから知らされ、主治医の方に敬礼しすぐに現場に向かうことにしました。
ただ体が痛かったので、目の前で妄想に入っている主治医の隣にいた部下の人に、オレンの実がないか確認しました。
するとあったようなので、5粒の中の一つを実験の名目でいただきました。
そもそもこの果実はどこで栽培されているのでしょうか?
「新潟県佐渡市産です」
「たしかポケモントレーナーがいる場所ですね?」
「はいそうです」
「ありがとうございます、失礼します」
質問への答弁があったのでそれに関する感謝をして、私たち救急隊はこの病院から去りました。
そして渡されたオレンの実を、ハンマーで砕いて三人で食べました。
凄く複雑な味でした……。
「早く俺たちにもポケモン講習が来るといいですね」
「はい。ポケモントレーナーの方々の負担を減らし、市民の皆様を守れるようにならなければ」
「その前に佐藤さんが目覚めなければいけませんが」
後藤さんも田尻さんも佐藤君が、苦しそうな寝言をしたのを知りません。
一応変に希望を持たせてはいけないので、ここは黙っておきましょう。
それがきっと賢明な判断だと思われます。
私たちはこの道を得意としています。私たちなりに、ポケモンに関して調べておきましょう。
そのほうがきっと最終的な判断が鈍らずに済むと思いますから。
この日の深夜0時。
私たちは市から用意された仮屋であるプレハブに寝泊まりすることになりました。
消防署は残骸になっていますが、消防車は外出していましたので大きな被害はありませんでした。
ただ救急隊に軽症の者がおり、救急能力が低下してしまいました。
しかしその療養期間中に、ポケモンやポケモンの木の実に関する情報を集め、今後発生する膨大な情報をさばけるように予習復習をしておきたいと思います。
ああ、私も軽症者になりました。
ですが命に別状はありませんので、情報収集に明け暮れましょう。
まあそんな元気があるなら、出動しろって話ですが。
ただ足の骨折ですので、そんなことは不可能って話です。
そして私は今回のことを署長に話して、もっとポケモンについて知らなければならないことを伝えました。
しかし変に動いてもケガする可能性が高まり、上から文句を言われるので情報収集のみに努めるようくぎを刺されました。
「くぎをさされても、更新される報告書だけは律儀なんですよね……」
救急隊や医療に関する情報がメールで届けられます。
これを最近の新聞代わりに楽しんでいますが、その内容はちゃんと勉強をしていなければ
理解できないものばかり。だからといって、複雑でも煩雑なのは少々困ります。
書類や情報整理したら仮眠します。
幸いにもあの竜のおかげで、ポケモンの陰が高松市と牟礼町を中心に薄くなったので応援以外に駆り出されることはなくなりました。
今日は十分な睡眠をとれるでしょう……。
佐藤君が、右利きでよかったですね。