P PP PPP PPPP PPPP PPPP PPPPPPPP……
「煩い……」
私は重い瞼の上を指でこねくり回しながら、目覚まし機能を発揮するiPhoneを止める。
まだ外は太陽すら昇っていない時刻4:00の早朝。
なんでこんな朝っぱらから私のような就労年齢に届いていない女の子が、眠気を飛ばして起き上がるのか。
いろいろ不満はあるけれど、これからこれ以上悲惨な事態に進展してしまうことを考えると、仕方のないことなのかなと思ってしまう。
だっていまは、官房長官が仰ったポケモンという存在がこの地球全体に蔓延っていて、加工貿易でなりたっている日本が窮地に立たされている。さらに言うと私は、この日本でアイドルをしていて、稽古場までかなり距離がある。
現状電車は動いていないから自動車で行こうにも、燃料は青天井を突破してしまってどうしようもできない。
露西亜から天然ガスのパイプが海中を通ってきているといっても、液体化石燃料車が多い日本において個人的な車両はほぼすべてに出禁になっている。
電気自動車という秘訣も存在しているけれど、残念ながらリソースをすべて東京のために取られていて茨城県民に使える電気はこれっぽっちもない。
今日も今日とて、計画停電だ。
で、またこの状況下。ガスで動く都市バスは運行本数を劇的に減らしての運行だ。
しかも水素で動く警察車両が周囲を固めて、だ。
後方は自衛隊の機械化兵士が、ジープに乗って周囲を警戒しながらついてくる。
もしもポケモンが近寄ってきたら、空砲などで脅かして退散させている。
こんな息が詰まるような日々、私たちが満足して生きれる空間や時間はない。
事務仕事や電気を大量に消費する加工工場は、全面的に停止。
それらすべてをインフラ維持に使われている。
上下水道・電話回線・公共電気系統・都市ガス・病院施設への供給……。
「はぁ……」
毎日のストレスでやつれた顔を化粧棚にある鏡で見る。
化粧水や保水パックで維持される不自然な私の肌は、鈍く光っている。
そもそも私はなんでこんな情報をしっているのか。
インターネットなんてできず、冷凍庫も使い物にならない。保冷パックで保存されている冷気で、冷蔵庫として使えているだけだ。
iPhoneも充電できない。それでもできる理由……。
「おはよ、ミク」
「ラル……!」
そう、私はポケモントレーナー。
日本に7人いるらしいけど、『PokeLINeK』じゃ6人までしか確認できなかった。
もしも死んでしまえば、掲示板にあるように勝手に最大人数が減るだけっていう、かなりむなしい仕様になってる。
化粧台の机の上に置かれているポケモンフォンの電源を入れて、『PokeLINeK』の最大人数を確認してみる。
きょうも7人だ。私は日本のトレーナーの数的有利が覆っていないことに安心する。
ポケホの履歴だったり掲示板を見るところ、世界中で紛争や戦争が過激になってきていて、その戦禍や立場作りに巻き込まれてしまって命を落としている人も多いという。
私も仕事柄上、立場作りのために派閥争いや勢いを付かせるために、色々活動をしていた。
でも命を懸けることまではしてない。この仕事は簡単に死ねないものだから。
勿論ポケモントレーナーということじゃなくて、本職のほうね。
さっき就労年齢だなんて言ってたけど、そんなの完全に無視できる子供を売り物にして金と飯のタネにする仕事に就職してる。
まあ年齢を取れば、自然とこんな界隈から去ることになるから今のうちに、ポケモンを使って足場づくりをしている最中だ。
まだまだ駆け出しだけど。
コンコンコンッ
「何?」
「お嬢様、時間です」
「わかった」
私はラルトスのミクが使うフラッシュに照らされる部屋で、仕事に向かう準備を行う。
派手でも清廉なものでもない。動きやすく体を軽いケガから守れる服装。
これから私は、ポケモントレーナーの一環として、漁船に乗って漁をしてくる。
そのあとは昨日のこともやらないと……。はぁ、疲れる……。
てか、小池知事もいい加減希望の党の統率をちゃんとしてほしい。
なんで民進党と一緒になって騒ぐの……?
「ラルーラ……」
「いっそ皆を催眠術で操れたらね……」
「ルラッ!?」
「冗談よ」
「……」
私は未来を掴むため、ミクと名付けた彼女の頭を撫でてからボールに戻した。
キョトンとした表情をしていたけど、私はいざ知らず。
「行きましょう」
「畏まりました」
気合を入れたんだけれど、いきなりリムジンが玄関前に鎮座しているところに遭遇。
私の気合が削がれる形になる。今から生存戦略を成し遂げに行くのに、こんなもので行く必要があるのか。
これを用意した人物であろう左手後方にいる人物を凝視する。
「国家のためです」
「家の見栄のためでしょ」
「お嬢様のためです」
「口八丁手八丁もお見事だわ」
ただお辞儀する彼を一瞥して、後部座席への道を歩む。
開けられたドアから中に入り、奥に詰めようともだれも隣に乗ろうとしない。
乗っているのは運転手と助手席にいる護衛だけ。
そしてこの車に三台の護衛がつけられている。
はあ、今日も一人か……。
私は表情を殺して心の中で、独りごちた。
信号と一部の建築物以外の証明が落ちている中、貴重な燃料で動くこの車は護衛に安全確認をさせて進んでいく。
<前方100Mの道路上に大量の火の玉が見えます>
「お嬢様、お願いします」
「わかった」
大量の火の玉。ポケホで登録したんだけれど、ヒトモシって名前だってさ。
ゴースト・ほのおタイプ。このタイプで群れるなら、同レベルで低レベルのはず。
私はこの子で対抗することにした。
「出てきて、レイ」
「ゴース!」
「前方75M先に火の玉がいるから、驚かしてきて。歯向かってきたら、ナイトヘッド」
「ゴス!」
ゴースは開けたリムジンの車窓から、闇夜に溶けていったのと同時に火の玉が揺らぐ。
三秒後には火の玉が消えて、ゴースが私の目の前に参上した。
「ゴスゴスゴース!」
愉快そうに笑顔で飛び回るゴース。きっとたくさん驚かせて、たくさんの生気を吸い取れたからうれしいんだと思う。
「おいしかった?」
「ゴース!」
「ありがと。またお願いね」
私はゴースのレイを撫で褒めてから、モンスターボールに戻す。
……撫でる手が透けた。まだゴースに触れないみたいだ。もっと信頼関係が良好になったら、触ることができるのかな?
しばらくして茨城県の東湾漁場に到着する。
雑多に車を配置するのは、護衛の関係かこの場所に訪れる車両はこれ以上ないからかもしれない。
車両から降りて、周囲を護衛の人に固められる中波止場までやってくる。
そこにはまだ健在している漁船と行灯により照らされる漁師さんたちがいた。
彼らは腕組し、談笑しつつ出港準備を完了しているようだった。
そしてそこに護衛の人が一人彼らのところに先行し、漁師さんに取りつないでいるようだ。
私は事前に電話をしてもらっていて、ともに行くことを伝えている。
このことは都庁や市役所も一枚噛んでいるから、子供の戯言ではすまない事態となってる。
だから漁師さんはこれを無視することは、社会的責任を負わせられることになるから無碍にできないはず。
しかしこの国は民意を重んじているから、彼らの心中とかまで屈服させられるわけじゃない。
だから何かしら裏取引としていると思うんだけど。
「前に話したと思うが、俺たちの仕事は重労働だ。いかに軽くったって、重油は金がかかる。ましてやこの状況じゃ受けるわけにはいかねえ。
だがこれは俺たちにとって契機なんだ。今回のポケモンの捕獲で、俺たちの今後がかかっている。
だからお前たちに協力してやっているということをわかっていてほしい」
「それは勿論です」
静かな夜。彼らの会話が聞こえてくる。
もしもあの神様がいうことが本当だったら、マグロ業やサンゴ漁に勤しむ彼らは経済的破綻が目に見えると思う。
だからその代替が必要。でも未知なる生物であるポケモンに、深い手傷を負わせられる可能性のほうが高い。
そんな無茶をするなら、別の仕事を探すことになるだろう。
今までとは違う不安定な状況だからこそ、今まで培ってきたノウハウを活かせられる仕事を存続させることが第一目標だと思ってる。
よってこの私たちのお願いを受けてくれたんだ、とそう思いたい。
「おお、巷でニュースになってるポケモントレーナーか。えらいべっぴんさんだな!」
「ありがとうございます。乗せていただくからには、ポケモンと一緒に漁を一助させていただきます」
「おう、頼むぜ。よし行くぞ、乗れ!」
「はい!」
私は力仕事ができる護衛の人を携えて、中型漁船に乗り込む。
この漁船は急速冷凍が可能な船。もしものことがあったら、この装置を使って安全に運ぶことができるようにするんだ。
ここで入手したポケモンは、つくば市の学園南に存在する草原に急遽建設されたポケモン研究所に運ばれる手筈になっている。
しばらくの間足の裏に響く重厚なエンジン音を聞きながら、沖合へ向かっていった。
今回行う漁は、網を使用しない一本釣りの方法。
もともとはカツオだったりイカに使用するものらしいけど、ポケモン世界では30M級のホエルオーですら吊り上げるのが、一般的だからポケモンを入手しやすくするために釣ることを選んだ。
残念だけどボールは使用しない。
だってご飯等にするための研究だから、ボールを使って変に期待させることはしない。
「いつもの漁ポイントに到着! そもそも遊泳するポケモンがいるかどうかすらわからんがな!」
そういえばマグロやハマチのような遊泳魚、鮭のような汽水魚なんていないなぁ。
そもそも水ポケモンは、水であれば弱酸性弱アルカリ性のどちらでもお構いなしみたいだし。
場所によって名前が変化するわけじゃないし、大きさではなくて見た目で名前が変化するから、ハマチやブリの間柄じゃない。
「一本釣り漁を始めるぞ!」
釣りあげられるポケモンは場所ごとに決まっていて、昼夜関係ない。
勿論季節ごとでもない。
でも今は現実的な状況だから、その季節や昼夜も変化するだろうし深さも関係があると思う。
たしか200M以下から深海だっけ?
深海魚であるハンテール・サクラビス・ジーランスは、海底にある海藻から出現する。
そこら辺の設定は不明瞭だから、沖合の海の海底ならどこでもいけそうだ。
つまり硫化物をえさにする海底噴出孔付近に生息する生物は、もれなく全滅しているっていうことになるのかな?
あれ、ポケモンに関係がない生物はどうなっているんだろう?
ここはしんかい6500に期待かな。
「来た、かかったぞ!」
色々思案していると、若い男性が大きくしなる釣り竿を持ち踏ん張って大声を上げた。
皆彼の方を見た。私もすぐに近寄って、ミクに出てきてもらう。
「ラルッ」
「宮本さん、釣り上げる時思いっきり上に引き上げてください!
その時ミクが攻撃しますので!」
「おう、わかった!」
地球の常識だと生物は急速冷凍すれば、鮮度が保たれる死体になる。
でもポケモンの場合、水タイプに氷タイプは効果が今一つ。
つまり急速冷凍しても、死体になる可能性は低いと思われる。
理由として絶対零度で一撃瀕死でも、冷凍ビームで芯から氷漬けになったばあい氷状態で凍傷にもならず、ただそのままの意味で凍った状態になるだけだからだ。
そう考えると現代の利器である急速冷凍庫に入れる前に、ミクが持つ十万ボルトでできる限り体力を減らして抗う力を奪ったほうがいくらか安全だ。
「来た来た……ぉぉおおおおお!!!」
ザッパアアァァ!
盛大な水しぶきを上げて空中に飛び出るポケモン。
それが何なのか確認する前に、ミクに十万ボルトを放ってもらう。
元気なままで水中に没したら、男性が水中に引きずり込まれる可能性がある。
こればかりは阻止しなければならない。
一応私は国の公務員だから。
よって失態につながる行為は慎まなければならない。ポケモンたちと無事に過ごせる時代を作れるまで、頑張らないと。
「ミク、十万ボルト!」
「ラルラル……ルゥラアアア!!」
強力な電撃が水しぶきで視界不明瞭を演出しているポケモンに直撃する。
空中に投げ出されていたポケモンは、空中で受けた十万ボルトでしびれた後甲板にボトリと落ちる。
何なのか私はミクと一緒に見た。
「―――」
ピコンピコンピコン―――
ヒトデマンだ!?
ウルトラマン三分間クッキングでお世話になる警告音!
中央の赤い結晶は、瀕死状態だということを視聴覚に訴えてくれる。
生物的に見ても瀕死なのが分かったからか、屈強な漁師が片腕で持ち上げて冷凍室に放り込んだ。
「一匹目! じゃんじゃか釣るぞ!」
「「「応!!」」」
私と護衛の方もうなずいて、この漁を手伝った。
できることはポケモンの瀕死状態化。
後は鍛えられた演技で、皆のやる気を維持するところかな。
約一時間の一本釣り漁をしたら、冷凍室がいっぱいになった。
これ以上の漁は意味のないものとして、撤退することになる。
なぜか私にも許可を求めてきたけれど、すぐに帰港してほしいと返事した。
冷凍庫がいっぱいになったとかじゃなくて、ミクの十万ボルトのPPが0になったから。
30分前から念力やマジカルリーフで、HPを削って瀕死状態にしてた。
ゲーム上ではすぐに釣れていたけど、現実では一時間以上経過してもすぐに釣れないはず。
生物なのだから、そんな人が垂らした糸に速攻でかかるわけがないだろうと思ってた。
だからPPが15しかない十万ボルトで、水産資源の確保と調査のため寄港し漁船に乗ってほしい、という市と国の要請に応えたんだ。
それがなんだ。イワシ等の魚群を作っているわけでもないのに、単体でポケモンがたくさん釣れた。
基本的に魚型。そこに甲殻類が偶に釣れた。
ヒトデマンとか軟体動物は、偶然だったようでアレ以降釣れていない。
ナマコブシは外見上気持ち悪いから、釣れなくてよかった。
もしもとびでるはらわたなんてされたら、ミクを回復する手段が見つかっていない現状
どうしようもなくなっちゃう。
「帰港したらこのポケモンどもは、ちくば市からきた研究者に引き継げばいいのか?」
船長から言伝をもらったらしい若者が私たちに言ってくる。
事前に伝えている筈だけど、これは再確認みたいなものかな。
私じゃなくて護衛の方が、彼に返答する。
「いえ、水揚げした後、研究者とともにポケモンを捌いていただきたいのです。
そこで食用ポケモンの検討をつけたいのです」
事前会議で私は、『PoKeLINeK』で食用ポケモンについて情報共有したその内容を伝えた。
会議では食用ポケモンがかぎりなく少ないことに言及された。
そこはどうしようもないことで、今からこの世界の人間にとって食用になるポケモンを探さないといけない。
色々と議論を交わした結果、陸は外国人や毒タイプのポケモン等の問題で山積しているから、周囲にある海産物に活路を見出した。
今のところ一番解決したい問題が海にある。
ポケモンのなわばりだったり、航路や交易路を交えたシーレーンの確保等。
これを解決するため海に住むポケモンを捕獲し、解剖や実験や検証を行うことで生物の特性を掴む。
現在必要な回路は中国とつなげること。
ぼったくりレートでも、ほぼすべての資源を賄える中国と貿易できれば
全国に仕事ができる可能性が出てくる。
まだ中国に関しての情報は、国に伝えていない。
ポケホで簡単に世界の情報を知ることは可能なんだけれど、今世界で発生している事態を伝えてしまうと国や市の目標や指針が変化してしまう。
主に韓国。あの国が敗北して北朝鮮に併合され、それと同時に国名を『朝鮮民主主義人民調和国』に変更。
通称は朝鮮国となり、自国の政治方針に反する者を再教育している。
またそれを行った末、朝鮮国に不利益を齎す者は一族郎党処刑したとのこと。
これを嫌ってか韓国から難民や亡命が発生し、周辺国に違法入国してでも逃亡している。
ほかにも色々あるんだけど、思慮にふけっている合間に漁港に到着した。
私と護衛の人は先に降りて、漁港にいる協力者の方々が私たちが捕獲してきたポケモンたちを水揚げしているのを観察する。
種類は様々。先ほど説明したけれど、大きさはメートル級ばかりでイワシのような数センチのものがかなり少ない。
中型漁船だったのが幸いして一時間は健闘できたし、これがポケモンの真相を追及し食料に転換できるか研究することもできる。
「オーライオーライ! ぬおっ!? でっけえな!」
「これが海のポケモンか! こりゃトロが楽しみだ!」
「いやいやコストが見合うのかよこれ!? 数万匹が数百匹だぞ! こんなの大赤字だ!」
うん。
そうなんだよ。
私も懸念してたけど、ポケモンが食べられてもコストに見合うのかということ。
今の日本の状況もそうなんだけど、もしもポケモンが食べられるとなってもその凶暴性や大きさから重油は勿論、生活費やメンテナンス等の保守コスト等固定された費用を賄えない可能性が高い。
依然としてポケモンを操れるのは、神様に選定されたポケモントレーナーだけ。
ポケモントレーナーを増員するように言われてボール探しに勤しんでいるんだけど、全然全くみつからないんだ。
砂浜を探しても山林を駆けずり回らせても、一般人である自衛隊や警察に探索させても一向に見つからなかった。
一応私がスーパーボールを持っていたから、これを警護隊の隊長に渡して一緒にポケモン育成したんだけど……。
でも私たちが持つポケホや生き様・スキルがないから、育成がかなり遅いらしく私のポケホで隊長のポケモンを照射検査してもそれほど強くならなかった。
隊長のポケモンは、警察や自衛隊の柔道の達人に指南してもらったり街中のポケモンをなぎ倒している。
結局ポケモンを倒したほうが経験値がよく入ったんだ。
「お嬢様」
私が水揚げから屋内に運び込む作業を見ていると、執事が後ろから話しかけてきた。
護衛の人は少しばかり離れる。何の話なのか分からないけれど、ポケモンの世界と融合し始めるその日からおかしな話が舞い込んできている。きっとその話かもしれない。
「何?」
「本家よりお嬢様のポケモントレーナーとしての活動を補佐したいと……」
「政治的発言力を高めたいため、ポケモントレーナーに接触を図る。良い手だけど、
すでに私には国と県がついてる。だからその湧いた親戚に、援助は今後一切必要ないって伝えて頂戴」
「畏まりました」
この話が終わったとき丁度現場に到着した数人の研究員が、漁師さんやその港湾労働者の方々に施設へ案内されているのを確認。
暗い話を切り上げて、彼らのところへ向かう。
ワンリキーを出している警ら隊のまとめ役である隊長は、すぐに護衛の方とともに私の周囲を固める。
私はこういうことを日常でされていた。
こんな堅苦しい空気が嫌だから、アイドルに入ってはっちゃけたのに、結局元に戻ってしまった。
刀は鞘に戻ることが宿命の様だ。
「藤原様、此方が水揚げしたポケモンです」
「……」
「どんな名前かどんな特徴を持っているか、知っている限りで構いませんので仰ってください」
漁港にある屋根付きの大きな広場に、大雑把に敷かれたブルーシートに死んだポケモンがある程度綺麗に置かれている。
アニメやゲームで見たポケモンが、現実世界に生物として登場してその命を奪って私たちの糧になる。
その姿に私は寒気を覚える。
若干気持ち悪くなるけれど、私を含めた日本の人たちの食糧事情を解決するためだから仕方がない。