お断りの言葉ですが、希望を感じられないだけで希望も絶望もありますこと、どうぞご了承くださいませ。
夜。
「あ~大変だったぁ~」
「あ、お帰りなさい」
「ただいま、芳樹」
お母さんが帰ってきた。
そして妹や弟、お父さんも普段よりも早めに帰ってきたんだ。
「ずっと家に閉じこもってたけど、どうしたの?」
「え、お兄ちゃん、テレビ見てないの!?」
「寝てた」
「芳樹、お前はもっと社会を見るべきだ」
妹に呆れられ、お父さんに詰られた。
でもそれは合っているから仕方がない。ポケホの方も、新たなアプリが解放されたようで、通知アイコンや音がうるさくてたまらない。
「いいなぁ、兄貴」
「へっへっへ、窓の外が異世界だったから夢を見ているのかと思ったんだぜ」
「外のことは知ってたんだ」
「そりゃぁもう」
弟は今日休みな僕を羨み、お母さんは世間に後れを取っている僕になんか安心したかのような言葉を選ぶ。
さすがに奇々怪々な声が響けば、いやでも起きるもんさ。
そしてそこからはみんなの不幸自慢だ。
話が盛り上がっていて、比較的田舎なこの県でも結構な混乱が見て取れたのがよくわかる。自国に関する履歴が、数千万件もあればそりゃこの県で家族に影響が出るのもよくわかるよ。
しかも今少しでも情報を得ようと、テレビをつけている。
さすがに食事中のテレビ閲覧はだめだろう、と今までの方針に反したもので驚いた。
まあ重要な情報を逃せば、今後にかかわるだろうから……。
で、自国に関することだけれども、ポケモンによってインフラ系に異常が起こっていることがよく分かった。
さらに山奥で人が比較的多い県だと、アナフィラキシーショックなどで病院のベッドが満載になりほかの病院へたらいまわしにあっている現状が流されている。
政府は超法規的措置を取らざるを得なくなってしまい、外遊は中止。
早急に事態の収拾にあたっているみたいだ。
ちなみに山奥の線路がポケモンによって遮断されていて、そのまま轢いて都内まで全力で走ったことも追記されている。
しかもトンネルが崩されたりして、被害が尋常じゃない。
すぐにポケモン嫌気性物質を含んだもので、建物を建立しなければならないことを示唆されている。
この生物がUMAであることを前提にしており、周辺各国はこの生物を一瞬にして出現させたことや放したことを否定している。
また生物学会は彼らに関する緊急の研究を行うことも発表している。
医学界もUMAの毒に関する血清や薬を作ることを、いろんな分野をまたいで行うことを決定した。
今現在暴動は発生していないが、国家機能がまともに機能していないことに未曾有の危機と恐怖を感じてしまう。
もしも、このまま伝説のポケモンが出現してしまえば……。
日本終わりかもしれない。
フィリピン海プレートの流れを変えられると、日本は風雨によって削られて沈んでしまう。それだけはやめていただきたい。
「日本がこれだったら、世界は酷いことになってそうだなぁ」
「きっと暴動やテロで、国家崩壊級の災害になっているだろうな」
食事をしながら皆テレビに夢中だ。
というかTVクルーも、突然出現した怒るマンキーにけたぐりされて下半身骨折で緊急搬送されてる。
またとあるドローン空撮では、エンテイが吠えているところも確認されている。
おかげで小笠原諸島付近は、海底火山が活発になり西ノ島以外にも新しい島が形成されて行っていた。
フィリピン海プレートと太平洋プレートがせめぎあっている場所だから、作られるのは当然か。
でもこれで、日本の領海が増えるのか……。
排他的経済水域とか、大変そうだ。
停電・火災、色々と大変な場所もある。
うちはまだ安全で安定しているんだな、と変に安心してしまった。
だがライフラインは無事じゃなかったりするかもしれない。
食事が終わった後、僕はしばらくテレビを見ていた。
すると突然画面が変わった。
アナウンサーと背後のテレビ局内の雑多ぶりが、いかに混乱がひどいかわからせてくれる。
「緊急速報です! 猛烈な強さを持つ台風2号が、急速に北上してきています!
周辺住民の方々は、政府や自治体の指示に従って行動してください!」
画面が変わって、即席の説明欄が出てくる。
その気圧、790hPa。
速度は、一時間に50キロ。
進行方向は、沖縄を経過してから西北西に向かうようだ。
いろいろと聞いているとすぐに場面が切り替わり、台本?の交換がされていた。
「政府より緊急報道です!」
そういって早口と焦りの口調で、官邸の方へカメラが移動する。
そこでは官房長官が、冷静かつしっかりとした口調で正気の沙汰とは思えない発言をした。
「我々は事態収束に向けて、彼ら未確認生命体をポケットモンスター、ポケモンと名付けました。
名付けた意味として、彼らを使役する者が彼らを収容するものをポケットにしまえるほどの収容性を持つ事から来ました。
またアメリカより情報提供がありまして、ポケットモンスターを使役するポケモントレーナーは、住んでいる都道府県の市役所に申し出てください。
我々はポケモントレーナーの保護とポケモンによる被害を抑えることを急務としています。
どうか我々日本国民のため、日本存続のため申し出ていただきたい」
「長官!ポケモントレーナーとは、どんな存在なのでしょうか!?」
「その名の通り、彼らを使役し味方としてくれる救世主です」
「使役!?こんな災害を起こしている彼らをですか!?」
「アメリカの大統領が、真剣に電話対談において仰っていました。
信憑性は折り紙付きです」
そんな時、テレビ局側が証拠のビデオを、国よりもらったということで再生することになった。
そこにはポケモンを使役し、未曾有の被害を食い止めているアメリカのポケモントレーナーの映像が流された。
「俺はポケモンを操るポケモントレーナーだ!俺の命とポケモンの命、家族の命を保証してくれるなら、俺がアメリカの救世主になってやる!」
苦々しい表情で、後ろからきた黒服の奴らに説明していた。
もちろん駆け付けた軽装備なテレビクルーにもだ。
「デルビル、かみつく!」
「ガルァ!」
散乱した商品にかじりついているコラッタにかみついて、さっさと撤退させていった。
信じがたいと思うだろうが、これは真実だ。
弟は、これは何かの演出みたいなことを言っている。
でもそれはすぐにお父さんによって否定されている。
そりゃそうだ。こんなこと、嘘でも真でも流せば世界が驚愕にまみれてしまう。
そもそも大統領が証拠として、関係国家に渡しているんだ。信憑性は確実にあるだろう。
「これから大変ねぇ」
「他人事じゃないよ、お母さん。みんな大変だよ」
僕自身も含めてな。
本当にばからしい絵空事にしか思えない今の状況。
それでも真摯に立ち向かわなければならない。人命がかかっているんだから。
まあ僕はしばらく市役所にはいかない。
まだレベリングが済んでいないんだ。レベルを上げて、そしていろんな事実や証拠を手に入れないといけない。
きっと証明とかこれからポケモントレーナーを増やしていくには、説明文を作らなきゃいけない場面が出てくると思う。
えーと、プレゼンテーションだっけ。
とにかくそんな企画力なんてもってないし、そもそも研修なんて受けていないからこれからやっていかないといけない。
別に誰かに委任することもできるだろうが、情報のすり合わせが面倒だから直に任せてくるんだろうな。
そんなわけで僕は、目先の利益に取りつかれて未来の心配事を放置する超法規的措置をとるよ。
まあ、可及的速やかにレベリングして、市役所に行くさ。
さて、風呂とかも済ませて、二階へいってアイテムの確認をしようか。
ほとんどの作品では、首相がポケモンを固定名称にしましたがここでは違います。
理由は後程。
それとポケモンは法律上、通勤災害には含まれません。
通常通り、通勤通学はさせられます。