刀剣乱夢 短編3   作:紺杜

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第3話

 あれから。

 何人も刀剣男士が来た。

 顔を合わせて、お互い驚き顔のまますぐに消えてしまうこともあれば、少し話すこともあったり。

 

 

 もしかして。

 ここはこういう刀剣男士が集まる場所なのかもと、思い始めていた。

 彼らはこの家に来て、数秒だったり長くて数時間で消える。

 話ができた刀剣男士さんからの情報を集めると、ここに来た刀剣男士さんは全員別本丸の様だった。

 それは、主さんの性別が違ったり人柄が違ったりしたからだ。

 

 

 私は仮説を立ててみた。

 

 二次創作とファンタジーを詰め込んだ設定だとして。

 私も刀剣乱舞のゲームでは審神者なんだけれども。私の刀剣男士は一向に来たことがないし、主に会ったことがないという刀剣男士は今までいない。ということは、私のゲームの刀剣男士は存在していない。

 けれど、別次元では現実に、歴史修正主義者と審神者の刀剣男士が戦っている世界が確実に別次元に存在する。

 

 

 それで。

 ここは刀剣乱舞の本丸(異空間に存在する)場所に繋がりやすい場所ではないのだろうか。それは、このパソコンの音も関係してくるのかもしれない。偶然というにはおかしいくらい、このパソコンから変な音がすると、刀剣男男士がこちらの私の家のどこかにいるのだ。

 もしかして。

 この世界が樹木だとしたら。その樹木には緑の葉が生い茂っているとする。そのすべてが別世界だ。その葉が何か風のようなもので揺れる度に隣の樹木の葉が重なる。その一瞬にこの家と別本丸が繋がるのではないだろうか。そのきっかけはきっとパソコンだと思う。これが電磁的な風になって世界樹の葉を揺らす。

 チュウニ病的な考えなのは重々承知だ。

 

 

 それで、風は偶然に起こるもの(パソコンの不具合)だから、いつ、とは言えないが確実に、刀剣乱舞の世界のどこかの本丸に偶然繋がって、たまたまその空間にいた刀剣男士がこっちに現れる。

 そして、風が収まれば、刀剣男士も元の世界に戻され消えてしまう。元が別次元だけに重なること自体が奇跡みたいなものなのだ。

 彼らは、突然私の家に現れ、そして消えてしまう。

 そう思うとしっくりくる。

 

 

 けれど、不思議に思うことが一つ。

 彼らは突然別世界の私の家に来たというのに、いつも警戒しないのだ。まったくといっていいほどフレンドリーにまるで久しぶりに会ったような友達のように話しかけてくる。

 見知った相手の家に来たように台所の冷蔵庫を開けて勝手にジュース飲んでいる髭切を見た時は驚いたし、燭台切光忠さんが来た時は料理本に興味津々で、譲って欲しいというのでもちろんどうぞとあげた。古い料理本なのにと思ったら主さんがこの本持っていたが色々あって本丸を引っ越す時に誤ってなくしたらしい。すぐ同じ本を探したが絶版になってて。ずっと古本屋を探していたらしい。

 短刀達は、来てすぐ普通にお菓子やご飯を食べることもある。

 作っている間にいなくなったこともあった。それは、かなりがっかりだった。

 沢山食べてもらおうと多めの唐揚げだったから、神棚にお供えしてから三日かけて食べた。胃もたれ半端なかったのはいい思い出だ。

 そんな感じで。どういう訳か刀剣男士は見知らぬ私を警戒しない。

 それが不思議で。

 一度、訊ねた事が有る。

 蛍ちゃんが来た時だ。

「蛍ちゃん。私をどうして信頼してご飯とか食べてくれるの?」

 夕食時に来た彼と一緒のご飯を食べていた時だ。

「気づいていないの?」

「はい?」

「ここは龍脈が集まる場所なんだ。鬼も入ってこれない場所。人間なら、清らか過ぎて辛い場所。そこに住む人間。それだけで、僕らから見れば信じるに足る人間なんだ」

「龍脈?」

 何かを見つめながら蛍ちゃんが話してくれる。

 

 

「龍脈っていうのは、自然の気の流れのことだよ。自然は陽の気と陰の気があって、ここは陽の気が流れて集まる場所なんだ。かなり昔には神社があったと思う」

「私、神様の住んでた場所に住んでるの? なんて、なんておこがましい」

 ただの人間が。神様の家があったとこに住んでるんだよ?

 身分不相応だ。

 

 

「大丈夫。あなたは歓迎されてるよ。この土地に歓迎されるってことはね、この神様に歓迎されてるってことなんだ。だから、俺たちも直ぐにあなたに親戚みたいに思えるんだよ」

「そんな場所だったんだ」

「うん。それで、この神社、かなりの信仰を集めた場所だったらしい。けど、ここの神様、もういないんだ」

「いない? どこにいったの?」

「わからない。けれど、ここは神域と同位の清らかな場所のまま。そこに住み続けるあなたは信に足る。あなたはとっても美しい魂ってことなんだ」

 うつくしい魂? 私が?

「ありがとう」

「それに、同種の刀は二度とこないよ」

「どうして?」

「この龍脈の力の波長が一振りずつに影響しているみたい。だから、俺、蛍丸は俺だけだし、前来た刀も二度目に来たものはないんじゃないかな?」

 今まで来た刀は一振りだけ。ダブりはない。

「その通りだよ。もしかして、元の本体が一振りだから、一振りしかこっちに来ないってことかな?」

「そうだよ」

 そうだったのか。

 今までも、同じ刀剣男士が来たことはないけれど。

 前に来た刀剣男士は二度とこちらには来ないんだ。

 それなら。

 この蛍ちゃんに会うのは最初で最後になるんだ。

 

 

「蛍ちゃん。色々教えてもらってありがとう」

「こっちこそ。今日はいろいろ聞いてもらってありがとう」

 蛍ちゃんがはにかみながら笑う。

 彼の主はいい人なんだけれども。明石とちょっと合わないらしい。真面目な審神者さんだけに明石が不真面目に見えて許せないらしい。

「明石はやる気なさそうに見えて、やるときはやる刀剣男士なのにね。そこわかってもらえるといいね」

「あなたはよく明石のこと知ってるんだね」

「知ってるうちに入るのかわからないけれど。彼が本気になるときはかなりやばいと思ったほうがいいと思ってる。やる気ないと言ってるときが通常運転だけど。それでも、いつも仕事はきっちりしてくれるし。そんで、しっかり審神者を守ってくれる。それが、明石だと思ってるんだ。蛍ちゃんと国俊が保護者だって言われるけど、明石は実は責任感強いしいざという時は頼りになるしいい刀剣男士だと思う」

 最近読んだ二次創作の明石が本当に男前だったせいでそのイメージが強いのだ。

「ありがとう」

 蛍ちゃんも保護者を手放しで褒められて嬉しそうだった。

「そうだ。蛍ちゃんにお土産、これどうぞ。明石と国俊と一緒に食べてね。すっごい美味しいんだよ」

 これは今日帰り道の駅前で買ったやつだから霊力とかは入っていないだろう。

 彼に、名物の御座候(大判焼き)を渡してすぐに彼が私を見上げて、

「あ……」

 ありがとうと言ったんだと思う。目の前には蛍ちゃんはいなかった。

 

 

 

 

「主さんと明石、仲直りできるといいね。蛍ちゃん」

 

 

 

 

 いなくなった空間に自分の声だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 蛍ちゃんが来てから、そろそろ刀剣男士が来るかもしれないなと心待ちにすること数週間。

 

 

 

 

 久々にパソコンからぎぎぎぎ、変な音がする。

 

 

 

 

 もしかして。

 

 

 今日は。

 

 

 きっと。

 

 

 会える。

 

 

 

 

 何もの刀剣男士がたまに訪れる家。

 

 

 予感がして。

 

 

 熱帯夜にスリッパを履きつつ台所へ行き電気をつけた。

 

「ひっ!!」

 

 

 驚きに口元に手を宛てて悲鳴を飲み込んだ。

 

 

 そこにいたのは。

 

 

 血に染まった鶴丸国永だった。

 

 

 

 

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