ある日俺と凰鈴音こと鈴と一緒にアリーナで練習してた時の話
「やるわね月。正直ここまで強いとは思わなかったわ。」
『いえいえ、師が良かったですから。』
「その師匠に興味が尽きないけど今はいいわ。じゃあもう一回いくわよ!」
『何発でもどうぞ?』
凰鈴音が乗っている機体 甲龍(シェンロン/こうりゅう)には空気を圧縮して放つ空気ほ…
ではなく空間に圧力をかけて放つ龍咆(りゅうほう)が付けてあり砲弾だけでなく砲身すらも見えないとても強力な物だが鈴さんには撃つときにその方向に目をやる癖があり、
今はそれを直す練習をしているのだ。
『また見てますよ!それでは当たりませんよ!』
「それはどう?」
突如機体に衝撃が走る
『くっ…!まさか。』
「そう、あえて目をやって違う場所に龍咆を撃ったのよ。」
『じゃあもうお手上げですね。さすがにそこまで応用されちゃ勝ち目がない。』
(ハイパーセンサーで空間の流れを見れば回避は出来なくは無いが。)
「良し!無事達成ね!これで…。」
『ええ、織斑一夏に負けることは無いでしょう。』
「待ってなさい一夏!いまにぼこぼこにして謝らせてやるんだから!」
(これなら、問題なさそうだな。)
だがまだ油断は出来ない、いつ何が起きてもいいように凰鈴音の精神状態には目を見張らなければならない。
なんともやっかい存在だ織斑一夏。
「そうだ!はいこれ!」
『何ですか?』
「ほら昨日言ったじゃない、酢豚よ酢豚。」
『あぁ、そういえば昼食のときに言ってましたね。』
「まっ取り敢えず食べてみなさい。久しぶりに作ったけど。」
『ではいただきます。』
(本当は織斑一夏に食べさせたかったんだもんな。)
「どう?」
『美味しいですよ、こんなに完成された酢豚は始めてです。』
「そっ、なら良かった。そんなに気に入ったのなら時々でいいならつくってあげるわ。」
『楽しみにしてますよ。鈴さん』
(これはある程度?の好感度を寄せられてるで間違いなさそうだな。吊り橋効果がいつ切れるか分からないがしばらくはこのままでもいいだろう。全ては凰鈴音本人が決めることだ。)
「ねぇ月?」
『なんですか?』
「私が壊れそうな時、側で支えてくれる?」
(なっ、なにぃ!これはどっちだ!?告白なのか?支えてほしい=貴方が好きという訳ではないが…。顔を赤らめたりしてないし、個人的には良いと言ってあげたいが織斑一夏で揺れてる今、俺も同じ轍<てつ>を踏むわけにはいかないが…)
『ええ、支えますよ。貴方が壊れそうなときは。』
「そう。ありがと…。」
そういって凰鈴音は静かに、にっこりと笑った。
凰鈴音を支える宣言をしてから2日がたちその間に織斑が
凰鈴音に接触を試みたそうだが失敗に終わり口喧嘩が始まる。
その際に彼女の気にしている胸の事に関することを口喧嘩に持ち込みもはや、織斑一夏では取り返しのつかない状況を引き起こしながらも織斑一夏はその抜群の鈍感さで「急に怒りだしたのはあっちだ、なにが原因かは分からない」と述べており誰が聞いても呆れを隠せない状況となった。
「もう本当になんなのよアイツ!あっちから接触しておいて「貧乳」呼ばわりして口喧嘩した理由は分からない!?ふざけてんのアイツ!」
とっ朝から俺の部屋に来て愚痴を吐くことから一日が始まる。
好意を寄せていた織斑一夏の事をアイツと呼んでいる時点でお察しかも知れないが既に織斑一夏に好意など、むしろアイツを好きだったことに嫌悪感すら感じ始めてるだろう。
『そうですね、向こうから一方的に絡んでおいて口喧嘩なったら途端に知らないとごねだす。子供ですね。』
「ほんっとうに子供よ!なんであんな奴に惚れてたんだろ…私…。」
『さぁ?たしか織斑一夏とは幼なじみでしたっけ?ならこうとも言えます、あなたの好きだった織斑一夏は過去の織斑一夏であり現在の織斑一夏ではないことです。』
「そういわれるとそうね、ねぇ?聞いてくれる?私の過去…。」
『私でよければ。』
「じゃあ話すね」
昔昔…といっても8年位前の話なんだけどね。
当時私は親の都合(結婚)で日本に来ることになったの。
「ハジメマシテ、凰鈴音です。ヨロシク。」
昔は今みたいに日本語がうまくなくて所々カタコトだったから虐めにあってたの、みんなからパンダパンダって言われて。
そんなとき…
「おまえら!そんなに鈴を虐めて楽しいかよ!?」
虐めから庇ってくれたのが織斑一夏だったそれをきっかけに私はアイツに好意を寄せていた。
そして小学生が終わり、親の離婚で中国に帰らなきゃ行けなくなった時に空港で告白をした。
あとは月の知っている通りよ…。
『そうですか、ありがとうございます。話していただいて。』
「別にいいわよ、私が話したかったから話しただけだし。」
『鈴さん…貴女のその好意は間違ってませんよ。』
「本当…?」
『ええ、誰しも自分を守ってくれるヒーローには憧れたり好きになったりしてもおかしくありません。今必要なのはその過去の好意に感謝して二度も同じ間違いを繰り返さないことです!』
「そう…そうね!そう考えればこれも次の糧にすればいいものね!」
(よし、凰鈴音は立ち上がった、これで精神的に折れることは無いだろう。
ただし、織斑一夏への恋は完璧に終わったがな。)
「月!ありがとう!できれば一回目の恋は貴方が良かったわ。ごめんね朝から愚痴を聞いてもらっちゃって。」
『いえ、折れそうなら支える。これが約束ですから。』
「ふふっ優しいのね月。じゃ、また学校でね。」
そう言って鈴さんは立ち上がりドアノブに手をかける
「じゃあ!また来るわね!」
此方に一瞬だけ顔を向けて言い放った彼女の顔は来るときとは全く違い、まるで快晴のような笑顔だった。
織斑一夏への恋 完