落ちこぼれ魔法使い少女が目指すのは魔女〜魔法はみんなを笑顔にさせる〜   作:光三

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第5話 学園の異質さ

「さて、みなさんに特別ゲストを紹介したいと思います。それでは、入って来て下さい」

 

『???』

 

 そして、扉を開けて入って来たのはとんでもない人物だった。

 

「うっそ!あの人もしかして」

 

「アクリル様?」

 

「グランセリア連合国の第三王女!?」

 

「アクリル・イル・グランセリアか………おもしれぇなマリア先生」

 

「ま、まさか。マリア先生が呼んできたのですか!??」

 

「はい、そうですよ。アリスさんのこと話したら直ぐに許可を貰えました」

 

「ふ、普通、一般人は王族には会うことが出来ない筈なのでは?」

 

「まあ、色々あるのよ……それより、自己紹介していきましょうか?」

 

「俺からでいいか?先生」

 

「はい」

 

「俺の名前は、アクロス・パーリアートといいます。よろしくお願いします」

 

「はい、アクロス君よろしくね」

 

 アクロスは、あまりのフランクさに呆気にとられてしまった。先程まで、王都の貴族、富裕層連中の傲岸不遜さに怒りが込み上げていたが、目の前の王族はむしろ俺たちの様な一般人みたいに感じた。

 

 その後順番に自己紹介していき、最後はアクリルが自己紹介を始めた。

 

「私は、アクリル・イル・グランセリアです。みんな、私のことは気軽にリルって呼んでね。これから(・・・・)よろしくね」

 

 少し疑問に感じたことがあったので、アクロスはマリア先生に質問した。

 

「マリア先生、これからと言うのは今日一日の話ですよね?」

 

「いえ、アクロス君。アクリルさんは、今日からここの学園に通うことになったから。よろしくね、アクリルさんのこと」

 

『……………………』

 

 数秒黙り込み、生徒たちは一斉に驚きの声を上げた。

 

『えー!!?』

 

「いやいや、絶対おかしいってマリア先生!?」

 

「そうですね、王族とコンタクトを取ることがすでに一般人である先生には不可能な筈……」

 

「俺よ、前々から考えてたことがあるんだ」

 

「考えていたことですか?」

 

「ここの学園って生徒だけでなく、先生も何か異質なんだ」

 

「異質ですか?」

 

「例えば、アリスは詠唱魔法が発動しない。俺は、何故か常人の5倍の魔力を持っている」

 

「その、異能ももしかして……」

 

「俺3日前までは、自分の能力のことわかってなかったんだ」

 

「そ、そういえば今日は何故?」

 

「3日前のことなんだが、みんな聞いてくれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日前の夜、アクロスは寮の自室で魔力循環と魔力操作をしていた。魔力循環をすることで体内の魔力量が増え、魔力操作で体内の魔力をコントロールすることが出来る。簡単に言うとアクセルとブレーキの働きをする。アクロスは、毎日1時間これを続けている。そして1時間後、アクロスは3日後のグランセリア魔法学園との合同授業について考え始めた。アリスは、詠唱魔法が発動しない。原因は、全くわからない。そこでアクロスは、先生たちの意見を聞いてみることにした。まずは、普通科の担任に聞いてみよう。

 

 アクロスは、学園の職員室前にいる。

 

「すみません、アクロス・パーリアートです。シーリア先生はいますか?」

 

「はい、なんでしょうか?アクロス君」

 

「アリスさんのことについてご相談があるのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」

 

「ええ、大丈夫よ。………………アリスさんか、あの子詠唱魔法が発動しないらしいわね」

 

「そうなんです、何か原因があると思うのですが……」

 

「いくつかの仮説があるのだけど、聞くかしら?」

 

「はい、お願いします」

 

「わかったわ、じゃあアクロス君は、無詠唱魔法って存在すると思う?」

 

「へ?どういうことですか?無詠唱魔法なんて存在する筈ないじゃないですか」

 

「どうしてそう言いきれるの?アクロス君は、何の根拠を持ってその発言をしたの?」

 

「だって、調べるまでもありませんよ。教科書に書いて(・・・・・・・)あったんだから(・・・・・・・)

 

「そう、そうよね。アクロス君は、まだ子供だから疑うということの大切さを知らないのね」

 

「疑うことが大切ってどういうことですか?信じるなとでも言いたいのですか?」

 

「いえ、信じるなとは言っていないわ。でもねアクロス君、信じるって難しいことなのよ?」

 

「???」

 

「アクロス君は、クラスメイトと先生を信じている?」

 

「ああ、必ずあいつらならアリスを魔女にしてくれるって信じている。この学園の生徒全員が俺たちを支えてくれるから」

 

「そう、アクロス君はどうしてそこまであの子たちを信じられるのかな?」

 

「それは、みんなアリスが詠唱魔法を発動出来るようにさまざまな分野の知識を学んだり、聞いたりしながらサポートしてくれるから」

 

「うん、見ていたらわかるわ。あの子たち必死だもん」

 

「そうなんだよ。でも、いまだに解決の方法が見つからないんだ……だから、お願いします先生。力を貸してください」

 

「うん、最初からそのつもりよ。アクロス君、教科書に書いてあることを信じるなと言っているつもりはないのよ」

 

「さっきも言ってましたがどういうことなんですか?」

 

「物事を疑うってことは、そのことを知ろうとすることなのよ」

 

 その言葉は、アクロスの胸にすんと落ちていった。そして、漸く理解してきた。なぜ、先生があんな発言をしたのか、今まで、魔法のことを学んでいるつもりだっただけで実際には思考が停止していたのだということを。本当に魔法を知りたければ、俺はもっと魔法について興味を持ち、あらゆる疑問を深く掘り下げるべきだったんだ。本当は俺も詠唱魔法があるならその逆の無詠唱魔法もある筈だと疑っていたんだ。なのに、教科書に書いてあるたったそれだけの理由で疑うことをやめてしまったのだ。まさに、思考停止というやつだ。

 

「先生、さっきの無詠唱魔法の質問の回答を変えていいですか?」

 

「ふふっ、いいわよ」

 

「無詠唱魔法が存在することを証明することは、現段階では無理です。しかし、あらゆる物事には『対』という概念があることは証明されています。なので、詠唱魔法の対が無詠唱魔法だと仮定出来ます」

 

「よく出来ました」

 

「しかし、よく考えるとあれも謎なんだよな?」

 

「あれとは、なんでしょうか?」

 

「『魔力循環・魔力操作』のことです。魔法を使うなら誰でも最初に通る道です。しかし、俺はあれこそが無詠唱魔法の原型となる魔法(・・)なんじゃないかって思って……」

 

「………………アクロス君、凄いわ!?今すぐ私の研究の助手をして欲しいぐらいだわ」

 

「け、研究?助手?どういうことですか?」

 

「私はね、魔法について研究しているのよ」

 

「シーリア先生、研究者だったんですか!?」

 

「そう、魔法とはなんなのか、魔女とはどういう存在なのか、そもそも魔法を使う為に必要な魔力はどこから出てくるのか、それを調べているわ」

 

「どうして先生は、魔法を調べようと思ったんですか?」

 

「ごめんなさいね、今は言えないわ。でも、いずれは知る時が来るから」

 

「?よくわからないけど、わかりました。それで話の続きなんですが……」

 

「そうだったわね、アリスさんは魔力循環・魔力操作はできるのかしら?」

 

「出来ると思いますよ。だって、初級魔法の練習をしてますから」

 

「じゃあ、全く魔法が使えないということではないのね……」

 

「やっぱり、シーリア先生も魔力循環・魔力操作は魔法だと思っているんですね?」

 

「そうよ、それよりも今はアリスさんのことよ。と言っても現状では、何の解決策もないけれど………あっ!もしかすると、サポート科の先生が魔法に関して異常に詳しいからその先生に聞いたら何かわかるかもしれないわ」

 

「ありがとうございます、シーリア先生。失礼しました」

 

 こうして、アクロスは職員室を出て行った。寮の部屋に戻ろうとした時、寮の前にサポート科の担任の教師と冒険科の担任の教師が何やら話をしていた。ちょうどいいタイミングだったので、2人の教師に話を聞いてもらうことにした。

 

「すみません、アグネス先生、ミネルヴァ先生。少しお話があるのですが、今大丈夫でしょうか?」

 

「ふふ、来ると思っていたわ。アクロス・パーリアート君」

 

「なんか、面白くなってきそうな気配!せっかくだから、参加させてもらうよ」

 

「アグネス君、また冒険者としての勘?」

 

ミネルヴァ様(・・・・・・)がいる時点でもうある程度……」

 

「だから、言った筈よアグネス君。今の私は、ただのミネルヴァ・サーボグラスだって」

 

「すみません、い、いや。すまん、ミネルヴァ」

 

「(……なんだ?どうして、アグネス先生は今ミネルヴァ先生に対して……)」

 

「さて、要件は何かしら?アクロス君」

 

「え、えっと、そうでした。ミネルヴァ先生、アリスさんのことなんですが………」

 

「もしかして、未だにあの子が詠唱魔法を発動出来ない理由が知りたいの?」

 

「そ、そうです。何かわかりませんか?先生」

 

「ごめんね、それに関してはアクロス君が調べなさい」

 

「へ?調べても現状ではどうにもならないので話を聞きたいのですが………」

 

「ごめん、言い方が悪かったわ。正確には、アクロス君はその理由を知ることができる力を持っている。ね」

 

「力?ですか?」

 

「そうよ、『魔法』でも、『スキル』でもない力。それは、『異能』と呼ばれる力よ」

 

「『スキル』?『異能』?何ですかそれ?」

 

「そう、この世界では『ステータス』という力を数値化できる力が無くなってしまったのね……」

 

「(さっきから、先生の言っていることがひとつも理解出来ない……『スキル』、『異能』に続いて『ステータス』か……俺は、まだまだ何も知らないんだな本当に。でも、だからこそこの学園でやりたいことができた!俺は、わからないことをわかるようになりたい!多分、この先生は色々なことを知っている)」

 

「先生、俺の異能は何なのでしょうか?」

 

「それは、[魔力探査]よ」

 

「魔力探査ですか、どういった異能なのでしょうか?」

 

「魔力を視ることができる力ですね」

 

「魔力を視る?そんなことが出来るのですか?普通は、不可能ですよね。………そうか、そうだったのか!?だから、『異能』なのですね先生」

 

「気づいたか……そうよアクロス君。『異能』とは、『スキル』や『魔法』を使っても出来ないことが出来る力よ。『スキル』というのは、いわゆる技能のことで『魔力』を使わないことが特徴ね」

 

「ということは、魔力を使う技は全て『魔法』?」

 

「でも、そんなに単純じゃないのよ。まあ、今は知らなくてもいいけど」

 

「今は、ですか。ということは、いずれは知らなければならないのですね?」

 

「そうよ、だから頼んだわよ。アクロス(・・・・)今度こそ(・・・・)アリスを幸せ(・・・・・・)にしてあげて(・・・・・・)信じてるから(・・・・・・)

 

「やれやれ、ミネルヴァも不器用だな……って俺らもか」

 

「(やっぱり、先生たち何か隠してる……)」

 

「わかりました。任せてください」

 

「頼んだわよ、アクロス君。それから、アリスさんのことだけど……断言するわ。どれだけ練習をしたところで彼女が詠唱魔法を発動させることは出来ない。でも、魔力操作と魔力循環は続けさせなさい」

 

 これが、3日前の出来事である。




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