船が壊れ出航出来ないベルベット達は船を奪うことを思いつくその為にダイルに協力を求めるのだが…?
「アンタにこれを渡すのを忘れてたわ。ラナ!」
「……これは茶色の羽織?こんなのどうしたの?ベルベット?」
ダイルの洞窟に向かう途中に必ず通ることになる
ダイルの故郷の村ビアズレイに入った辺りでベルベットに茶色の羽織を投げ渡された。
これはどうしたのか?とベルベットに聞くとこちらを見ずに素っ気ない態度で、答えた
「今の戦力的にアンタは欠かせない存在なの。
だから普通の人間であるアンタは風邪なんか引かれて戦力をダウンさせるわけにいかないだから倒した業魔の毛皮でそれを作ってみたわ。
感謝なんか良いわよ。別に。」
「ベルベット!ありがとう!」
「だから感謝するなって言ってるでしょ!」
「うん。」
「まあそう言うなよベルベット!その位の礼は受けてもバチは当たらんぞ!」
「ロクロウ!アンタは黙ってなさい!」
「へいへい分かりましたよ。」
「さ!無駄話はここまでにして着いたわよ洞窟に。」
「取り敢えずラナ、お前羽織を羽織ったらどうだ?それ位なら待つぞ。」
「ロクロウ……アンタ勝手に……まあ良いわとっとと羽織りなさい!入るわよ!」
「お前って徹底してるよなぁ。」
洞窟に入って少し歩いているとロクロウがベルベットに感心するように話しかけた。
「何が?」
「行動がだよ。ダイルを利用し、商船組合長を脅し、マギルゥを見捨てる……自覚してるだろ?」
(やっぱりベルベットはマギルゥを見捨てるつもりなんだ……)
「別に見捨ててない。気にしてないだけよ。」
「……やっぱり徹底してるな。」
「よく分からない奴だけど、マギルゥは、そう簡単には殺せないわよ。第一アイツは、こっちの手の内を全部聖寮にバラしてるはず。」
「……それはそうかもな。」
「だからアイツも知らない手札が必要なのよ。
例えば;死んだはずの業魔;……とかね。」
「後、手札といえばラナもかもなアイツの前では監獄島でしかラナはマギルゥの前じゃ戦っていない。だから手の内を全部は明かしていないと思うんだがな。」
「確かにそうね。」
(それは次の戦いはメインを張れという事かな?)
そんな会話を聞きながら前に進んでるとロクロウが二つの小太刀を磨き始めた。
「さて、刃をもうひと研ぎして、仕上げておくか。」
「………」
(ベルベット?どうかしたのかな?)
そう思ってるとロクロウがこちらを見ながら二つの小太刀を持ちながら話しかけてきた。
「二人とも武器の手入れはしてるのか?
何なら一緒に研いでやるぞ?」
「いい……命綱を気安く他人に預けるなと教わったから。」
「応、なかなかいい師匠に巡り合ったんだな。」
「……ッッッ!」
その言葉を聞くとベルベットは歯を下唇で思いっきり噛み締め明らかな怒りの表情を浮かべていた。
「俺が研ぐ必要はないが手入れは小まめにしておけよ。教えるまでもないだろうが、研いだ後は、グローブ油を塗って、羊毛で拭くようにな。」
「……それも、教わったわ。」
(……ベルベット)
それから気まずい雰囲気のまま特に強い敵も現れずに進むと前にダイルと会った場所についた。
(ダイルは?居た!)
先ほどに会ったときと同じ場所におり話しかけようとするとこちらの気配に気付いたのか振り向き気配の正体が私達と気付くと困惑しながら話しかけてきた。
「何で戻ってきやがった?」
「事情が変わった。アンタの襲撃に手を貸すわ。」
「ふん、随分と勝手言うじゃねぇか。」
「仕方ないでしょ。業魔なんだから」
「くははははっ!ちげぇねぇ!業魔になって初めて笑ったぜ。だが良いのか?自殺行為だぞ。」
「そうならない策戦がある。」
「今対魔士達は、人質をとってアタシを街に誘い込もうとしている。」
「なら、倉庫に通じる抜け道から攻め込めばー」
「多分ですけど敵はそこで待ち伏せしてるんですよ。」
「本当か?人間の嬢ちゃん!」
「アタシもそう思うわ恐らくだけども。」
「まあアンタが言うなら信じるさ
で、どう攻める?」
「だから逆を突いて正面から斬り込む。」
「そんなのが策か!?」
(確かに策戦なんかじゃない!)
「正面は囮よ。敵を正面に集めた所で別働隊が抜け道から港を襲い、船を確保する。正面から切り抜けた隊と合流して、船から脱出する。
アンタには操船を頼みたい。」
「……一つ聞かせろ。誰が正面から攻める?」
「もちろんアタシがよ。」
「いいだろう。決行は?」
「明日。それまで一休みさせてもらえる?」
「お好きなように。タールのベットの寝心地は最高だぜ!」
それから私達は明日まで束の間の休息をする事になった。
「なあ?人間の姉ちゃん聞きてぇ事があるんだがちょっと良いか?」
布団に入ろうとした時にダイルに話しかけられた。
「何でしょう?」
「いやなその……何で人間の姉ちゃんが業魔二人と旅をしてるのかが、聞きたくてよもし良かったら教えてくれるか?」
それから私はダイルさんに別の世界から来たことを旨く省いて説明した。すると高笑いをあげて笑い出した。
「な、何がおかしいんですか?」
「ハハハッ!いやな、いざというときの保存用の食糧と思ってたが無理矢理旅に連れられたのか。」
「まあでも自分の意思でここにいますからね。」
「そうなのか……まあ、あの女にこれから付いていくなら用心した方が良いぜ色々とな。」
「……ダイルさん!心配してくれてありがとうございます!」
「よせよせ!そんなの言われるガラじゃないしな
それに俺は業魔だからな。」
「そんなの関係ないですよ。それにダイルさんもロクロウもベルベットも心は人間じゃないですか。今は理解されなかったとしても必ず業魔でも心があることを理解してくれる人が現れると思いますよ。」
その言葉を聞くとダイルさんは目を開きあり得ないような顔でこちらを見てきた。
「……?何です?感に触ることでも言いましたか?そしたら謝ります!済みませんでした!」
「いいや違うんだよ嬢ちゃん俺が驚いたのは、業魔になってからずっと化け物扱いされてきたからお世辞でも人間だと言われて嬉しかっただけだ。いつかそんな人が現れると信じることにするよ。ありがとうな。」
「いえいえ。礼なんて良いですよ。」
(やっぱり…業魔も業魔で苦労してるんだな。)
「さ!何を話してるか分からんがそろそろ寝るぞ
というよりベルベットはもう寝てるがな。」
「ロクロウ!うん!お休み!ダイルさんもお休みなさい!」
そう言いベットのシーツを掛けて深い眠りに落ちた。
「は~あ!よく寝た!」
ベットから起き上がり回りを見渡すとダイルさんは見当たらず、ロクロウはもう起きていて座禅を組み瞑想していた。
(邪魔しないようにしないと…そうだベルベットは?)
ベルベットを探すとまだ寝ており声をかけようと下がベルベットの唇が微かに動いていた。
(何か言ってる?)
「……アル………ライフィ………」
(アル?ライフィ?人の名前かな?もしかしてアリトリウスていう人の?)
「ッッ!………何やってんのよ?アンタ……。」
耳を近づけているとベルベットが跳ねるように起き上がりそれにビックリして足が滑って転けてしまった。
「ビックリした~!いやねベルベットを起こそうと思って声かけようと顔を近づけたら起き上がっててビックリして転けちゃっただけ。」
「あっそう。」
「それよりもベルベット大丈夫か?酷くうなされていたぞ。」
「平気。何でもないわ。」
(ベルベットの声が何時もより弱々しい無理してるのかな?何か助けになりたいんだけど私には今はどうすることも出来ない。)
「……付き合わなくても恨まないわよ。別に」
「そうはいかん。お前が死んだら恩が返せない。」
「変わってるわね。」
(まあ確かに変わってるかな。)
「そうかな。だが、俺は;こう;なんだ。」
(誇らしく言われてもね。)
「ベルベット……アルトリウスて誰だ?」
そう思ってるとロクロウがアルトリウスにベルベットについて聞こうとしていた。
「……仇よ。弟の」
「準備はすんだ。ダイルは出口で待ってるはずだ。」
「……出発しましょう。」
(多分これ以上はベルベット本人から信頼されないと聞けないかな。)
そう思いつつ足を進めて、私達は船を奪い取りに向かった
。
早く投稿でき私が一番驚いております。
次回は約8ヶ月ぶりの戦闘になります。