新約 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?   作:虚無の魔術師

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早く投稿できて………良かった。これからも少しずつ投稿していきたいと思います………。


因みにキョウさんの情報は後書きに。


魔を滅ぼす血

意識が少しずつ覚醒する。キョウは瞼を開くと、見知らない天井がそこにはあった。一瞬首を傾げながら身体を起こし、肩を動かそうとる。

 

 

ズキッ、と。

 

 

「─────っ」

 

思わず顔をしかめて肩に目線をやる。白い包帯に巻かれたそこには赤いものが僅かに滲んでいた。それだけで何があったのかを思い出す。

 

 

(………あの時、俺はレフィーヤを庇って──)

 

魔王を、逃がした。

一族の宿命を果たす好機を逃してしまった事にキョウは何も複雑な感情だった。奴を殺せばキョウのLvは格段と上がっていた筈、魔王とはそういう存在なのだから。だが、今のままでは確実に勝てるとは言えない。

 

 

「…………無力だ、俺は」

 

嘆くしかなかった、自分の力の無さを。あと少し強ければレギオンを縛りつける宿業を終わらせることが出来たのに。

 

 

雑念を振り払うようにキョウはベッドから降りようとして気づいた。ベッドの隣に座っていた人物に。

 

 

 

「………レフィーヤ?」

 

『剣姫』 アイズに憧れるエルフの少女 レフィーヤ。彼女が何故か椅子に腰を掛けて静かに眠りこけていた。その状態から何がどうなのかは判断できるが、意外だったので呆然としていた。

 

 

 

………俺を見てくれていたのか?

 

 

 

「──────ん、ぁ」

 

すると、ちょうどいいタイミングでレフィーヤが目を覚ました。寝惚けているのか目の前にいるキョウに気づかず目元を擦っている。

 

 

しかし、眠気に誘われてる目がキョウの姿を捉えた。一瞬、とろーんとしていた彼女も徐々に何も言わなくなる。

 

 

「……………」

「…………えーと、おはよう?」

 

何というかそんな言葉しか出なかった。直後に激しい怒りなのか顔を真っ赤に染めたレフィーヤは顔を隠して全力で部屋から出ていった。

 

 

ポツン、と。一人残されたキョウは頭を抱えた。何を間違えたのか検討が付かない青年は少しの間、悩み続けていた。

 

 

 

 

 

それから数分後。ようやく落ち着いたキョウは現状を確認することにした。

 

 

部屋からして自分達のホームではない。こんな立派な部屋を《ヘスティア・ファミリア》になってから見たこともない。ならばつまり、

 

 

「───失礼するよ、キョウ・レギオン」

 

外から聞こえる声に続き扉が開けられる。普通の冒険者よりも小柄な金髪の少年らしき人物────正確には小人族(パルゥム)の男性が現れたのだ。

 

 

初対面ではない、少し前にこの人物に出会っている。

 

 

「────フィン・ディムナ、いえフィン団長」

「そう畏まらなくてもいい、君には借りがあるからね」

 

丁寧な言い方に変えられたフィンは手を挙げるようにして止めていた。それなら仕方ないとキョウは平伏しかねない態度をすぐに解く。

 

 

「怪物祭でレフィーヤを庇ってくれた件だよ。《ロキ・ファミリア》の団長として君には礼を言いたい」

「…………身体が勝手に動いただけだ」

「それでも、だ。君は事実上彼女を助けてくれたんだからね」

 

余裕を崩さないLv6の冒険者にキョウは凄いなと思う。僅かに感じられる強さからして、やはりファミリアを束ねる団長は伊達ではない。

 

 

 

コンコン、と扉を叩く音が響く。

 

 

「───失礼するぞ」

 

部屋の中に入って来たのはキョウも知る有名人だった。翡翠の色をした髪を伸ばしたエルフの女性。確か、《ロキ・ファミリア》の幹部である彼女はこう呼ばれていた筈だ。

 

 

「………『九魔姫(ナイン・ヘル)』、リヴェリアさんか」

「私を知っていたのか、会ったことは無い気がするが」

「アンタ程の有名人を知らない奴はオラリアにはいないだろうさ」

 

何せ《ロキ・ファミリア》にしてエルフの王族、ハイエルフ出の人物なのだから、と付け足すとリヴェリアは悩ましいという風な顔をしていた。

 

コンプレックスでもあるのかと思うが、あくまで口にはしない。他人の個人情報を知りたがるような人間ではないからだ。

 

 

「ま、話を変えるけど………君も少し聞きたいことがあるんじゃないのかな?」

「…………例えば?」

「グロウス・レギオン。僕たちと同じ《ロキ・ファミリア》の一員だった君の父親について、とか」

 

 

キョウの父親、彼が幼いの頃に『一族の宿願』の為にオラリアへ向かった人物。キョウが覚えてるだけでも、物静かな人と聞いていた。

 

 

そして、

 

「…………親父の訃報は前に聞いた。数年前にダンジョン内でモンスターに殺されたってな」

 

父親の訃報を知ったのは十歳の頃だった。故郷が焼かれる数日前、その報せに母親が泣き崩れながら教えてくれたのだ。

 

 

しかしフィン達の反応はキョウの予想とは少しおかしかった。リヴェリアと名乗っていたエルフの女性は一瞬だけ悲しそうに顔を歪め、フィンも表面上は変わっていないが拳を握り締めた。

 

 

何かあるのか、とキョウは僅かに推察する。しかし問い質そうとは思えなかった。背中を預け戦ってきた彼が隠さなければならない事情ならば、キョウはそれを受け入れる。例え、自らが憧れていた父親の本当の死因を話さなかったとしても。

 

 

 

 

「────キョウ・レギオン、すまないが包帯を取ってみてくれ」

 

突然、リヴェリアから声をかけられてキョウは少し戸惑う。が、此方を見つめる芯とした眼にすぐさま肩に巻かれた包帯を巻き取った。

 

 

「…………」

「やはりな」

 

それを見たフィンは目を見開き、リヴェリアは目を細めて観察し始める。そしてキョウが目を向けると、

 

 

 

 

 

 

「───治ってる?」

 

傷口は塞がっていた。包帯に染み付いた血の痕からして穴が空いていたのは事実だ。しかしまるで内側から急速的に再生したかのような痕が残っている。

 

 

「………不本意だったが、君の『神の恩恵(ファルナ)』を確認した。このようなものがあってな」

 

自分で語っていて本当に不本意なのか顔をしかめるリヴェリアはある事が書かれた紙をキョウに手渡す。その内容は、

 

 

 

《スキル》

【滅魔の血】

・器の血の濃さに比例し早熟する。

・魔法や魔王に対する超高補正及び肉体の一時的強化。

・肉体の破損を再生させる。死亡してなければ発動可能。

・解析不可能。

 

 

 

「……………ッ」

 

改めて目にしたキョウは息を呑み干す。このスキルはキョウも認知してなかったもの、つまり新しく発現したものだ。ある意味ではデタラメなスキルであるというのに………。

 

 

「解析不可能…………」

「それ以上は無理だった。神聖文字(ヒエログリフ)が文字化けして、本来ある言葉とは別のものになっていた」

 

努力して調べてみたが読み解けるものではなかった。多分ロキでも無理だろう、とリヴェリアは付け足した。女神であるロキすらも不可能なら、この世界にこれを読み解ける神は少数程度な筈だ。

 

 

話を聞いてたフィンは難しい事を考えながら、口を開く。

 

「ファミリアの情報をあまり話す気はないんだけど…………グロウスや君の祖父、曾祖父もオラリアに来て同じスキルを発現していたらしい」

「………」

 

では、これがレギオン固有のスキルか。

キョウは最早ベルが手に入れたスキルと同じくらいに高性能のスキルに驚愕を抑えきれなかったが、同時に僅かな疑問も湧いた。

 

これ程凄まじいスキルを持つ父達が何故魔王を倒せなかった─────?

 

 

「……………君のスキルについては秘匿する。もし外に漏れた場合、僕たちが責任を取ることを約束するよ」

「あぁ、分かった」

 

キョウは立ち上がり、丁寧に添えられていた自分の服に着替える。肩を鳴らすと少し痛むがそれだけで、あの時より和らいでいた。

 

 

「それじゃあ、世話になりました。主神や後輩が心配なんで帰ります」

「そうかい、なら気をつけた方がいいよ。また魔王に襲われるかもしれないからね」

 

軽口を言い、キョウは《ロキ・ファミリア》のホームから去った。途中、酔っ払ってるらしきロキに「キョ~~ウ、ウチのファミリアに入ってや~~~っ!!」と絡まれたが、すぐにリヴェリア達に回収されてった。曰く禁酒にするとか……………いと哀れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、ただいま?」

「───な、何をしてたんだ君はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「神様!?落ち着いてください!」

 

ホームに帰った途端、自分を心配していた女神から雷を落とされたキョウ。白髪の少年が引き留めようとするが、手遅れだったので本気の説教を食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼時、オラリアだけではなく世界中に魔王の復活が伝えられた。太古から語られてきた恐ろしい厄災の再臨を。

 

 

 

 

 

 

迷宮十九層。

安全階層(セーフティポイント)十八階層、別名『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』のすぐ真下の階層。

 

 

広場の中でフレウルスはスタスタと歩いていた。迷宮から生み出されたモンスター達は怯えているのか姿を見せようともしない。

魔王という、上位種の存在を本能で分かるのだろう。

 

 

 

しかし、フレウルスが突如顔をしかめた。理由は単純、自身の目の前に複数の人影が列を為すように並んでいたのだ。

 

 

「……………お待ちしていました、『守護』の魔王 フレウルス様」

 

黒と白、二つの色の装束を纏う者達の中から白髪の男が歩いてくる。ニヤリと笑みを隠そうとしない男が膝をつくと、後方の装束も同じように敬意を表し跪く。

 

 

魔王フレウルスは眼球だけを動かして見下ろす。見定めるように細めた視線が白髪の男へと戻った。

 

 

「お前たちは?ただの人間ではあるまい」

「私はオリヴァス、闇派閥(イヴィルス)の使者として貴方様を迎え入れようとの話です」

 

 

本来、オリヴァスと名乗る男の口調はこんなものではない。彼自身、目の前の相手の事をよく理解しているのだ。

 

 

下手に機嫌を悪くすれば容赦なく襲いかかるかもしれないから。オリヴァスは魔王を怒らせないように、勧誘しようとする。

 

 

「世界を混乱と破壊に導く九神魔王の一柱。オラリアと全面的に挑むのに貴方様を誘わない訳にはいきません!」

 

ふむ、とフレウルスは顎を擦る。

 

 

「所でオリヴァス」

「………?何でしょう────」

「────魔王が人間如きの話を聞くと思うのか?」

 

 

直後、グチャッ!! と肉を喰らうような生々しい音が迷宮の広場に轟き響く。

 

 

そもそもの話、魔王は人の話など聞く訳がない。彼等にとって人間は害虫同然。力を入れて排除はするが、彼等の声に耳を貸す事はあっても聞くなどは決して有り得ない。

 

 

悲鳴と戦闘音、木霊する様々な悲劇はすぐに鳴りを潜めた。時間はたった数秒、一分もかかることは無かったのだ。

 

 

 

 

 

「……………」

 

そこは地獄よりもおぞましい所だった。床に壁や天井、全てが血という赤に染め上げられている。真上から滴る血は生々しく、肉片が残っていた。

 

 

そして、無数の肉塊を黙々と喰らう怪物。フレウルスと名乗る男の背中や腹から伸びた異形の竜たちは味わうように死骸を貪り喰っていた。中には一つの死体を奪い合い、引きちぎって食すモノもいる。

 

 

それらを眺めながら、フレウルスは両手を見た。彼等も神の恩恵を宿す人間、僅かであろうとも少しずつ力が増幅する感覚が溢れてくる。

 

しかし、

 

 

「………………足りない」

 

だがそれでも満足し得るものではなかった。少し前、地上で会った冒険者たち、彼等みたいなものが欲しいが、我が儘は言えない。

 

 

「───しかし、手足が欲しいな。私の言う通りに動ける手駒が」

 

魔王とは言え、あくまでも全能ではない。圧倒的な力があろうと手を出す必要もない小事を進んで片付ける配下が欲しいと彼は思っていた。

 

 

だからこそ、考えを改めた。

 

 

「近くの冒険者とやらでも探すか、手駒になれる者を」

 

普通の雑魚ではない、その他の冒険者を圧倒できる強さの人間を。

 

 

『守護』の魔王は今度こそ迷宮の闇の中へ消えていった。同時に血塗れの部屋は一瞬で綺麗に戻る。まるで証拠を跡形もなくかき消すように。




データ:1

キョウ・レギオン

《ヘスティア・ファミリア》所属の冒険者。17歳。二つ名『氷刃剣(アイスエッジ)』。

とにかく冷静な人物であるが、二つの側面を有している。通常のように冷静さもありながら優しさもある側面と、冷酷な程冷たくなり合理的に物事を進める側面。


魔王殺しの一族 レギオンの末裔で、全ての魔王を滅ぼすという一族の宿願の為に冒険者になった。幼い頃、レギオンが原因で両親と故郷を失った事から、何が何でも使命を終わらせる事を望む。



『ステータス』

力 D 509
 

耐久 E 482


器用 E 460


敏捷 F 354

 
魔力 D 546


《魔法》

【──刻印】

【──降臨】


《スキル》

氷結使い(アイス・マスター)
・氷属性の技を使う時の補正。
・氷属性の威力と耐性が上昇し、魔力消費量を減少させる。

【滅魔の血】
・器の血の濃さに比例し早熟する。
・魔法や魔王に対する超高補正及び肉体の一時的強化。
・肉体の破損を再生させる。死亡してなければ発動可能。
・解析不可能。



《人間関係》

▪ベル
自分の後輩。アイズへの恋心を知り、純粋に応援している(理由は他にもある)

▪ヘスティア
自分を勧誘した女神としてだけではなく、心から認めている。しかしぐうたらな性格などに呆れ、説教した事もあったらしい。

▪アイズ
キョウがLv2になった直後に出会った事から交流がある。どちらかというと知り合いや、友人に等しい仲らしい。

▪ロキ
オラリアに来る前から彼女に勧誘されていた。しかし手違いによりファミリアに入れず、《ヘスティア・ファミリア》に所属することになる。

元々所属していたキョウの父、グロウス・レギオンのこともあり、キョウを本心から気にしている。



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