新約 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか? 作:虚無の魔術師
何ヵ月もの間、お待たせしました。
この話を読んいただけることを心から感謝いたします。
ヘスティアとの話を打ち切り、部屋から出てきたキョウはベルに色々と聞かれたが、聞かれたくないこともあったのではぐらかした。
「なぁ、ベル。ここなのか?」
「はい、そうだと思うんですけど…………」
二人が立っているのは酒場らしき店の前。好奇心を含んだベルに対し、キョウはひきつった笑みを浮かべ、まさかなと呟く。
そんなキョウに看板を見たベルがハッキリと告げた。
「んーと、『豊穣の女主人』っていうそうですよ」
豊穣の女主人
宮都市オラリオに存在する、主に冒険者向けの酒場であり上級冒険者から木端冒険者が毎日のようにたくさん訪れる人気店だ。
出される料理や酒が美味しいのは勿論のこと、働いてる従業員がみな女性であり容姿のレベルも高いのが人気の理由の一つでもある。そして、キョウの知り合いが働いている場所だ。
「あっ、ベルさんにキョウさん。来てくれたんですね!」
銀髪のウェイトレスの少女がにこやかな笑顔で二人のもとに走ってくる。
「こんばんは、シルさん!………………どうしたんですか?」
「……………………やっぱりか、ハァ」
全てを理解したキョウは呆れ果てるくが、諦めたのか深いため息を漏らす。その様子にベルは不安そうな視線を投げ掛ける。
語ることもないと沈黙を通すキョウと急に不安になり始めたベルを他所にシルは二人を案内した。
「はい!お待ちしていました お客様二名入りまーす!」
「そこの坊や!なんでもアタシ達を泣かせるほどの大食漢なんだってねえ! 期待してるよ!」
「…………………え?」
豪快に笑い声をあげる大柄の女性にベルは呆然となる。この女性 ミアさんは『豊穣の女主人』の女将なんだが、大抵の人は冒険者みたいだなぁという印象を抱く。
まぁ、昔はそうだったのだが、今は今。そんなことはどうでもいい。
「あぁ、知ってたよ。お前もそうだったのか………俺がいればこんな事にならなかったのになぁ、チクショウが!!」
そんなベルの隣でキョウは頭を抱える。我に戻ったベルはどういう事かとシルを問い詰めようとする。彼女は可愛らしい仕草をして誤魔化そうとするが、生憎ベルは惑わされなかった。
………実を言うと、このキョウも犠牲者1号である。ルーキーだった頃道端で出会った彼女にお店に誘われ、今この状況と同じことになっていたのだ。
「………なるほど、貴方の仲間ですか」
「おっ、誰かと思えばリューか」
そんなベルを他所にエルフの少女から話しかけられたキョウは気さくに振る舞う。
彼女はリュー・リオン。『豊穣の女主人』の店員の金髪のエルフ。基本的に無表情で必要のないことは話そうとしないが、一部を除く者たちへの態度は柔らかくなるという。
多少の間、最近はどうかという世間話をしていたけどキョウとリューの二人だが、チラリと厨房の方を見たリューが会釈する。
「では私は戻ります。早く仕事をしないと怒られるので」
「おう、それじゃあ。頑張れよ」
奥へと行くリューに手を振り別れたキョウは店の中を歩き回り、ベルのいる机へと向かった。
食事が来るのを待つ間、周りを見て緊張してるのか背筋が伸びているベル。まあ、冒険者に成り立てだからと当然かと納得したキョウは少し思い悩んだ。
───アイズに惚れてる………………ねぇ?
「そうだ、ベル。ちょっといいか」
水を飲み干し、ニヤリと笑ったキョウ。料理を待っていたベルの肩にガシッ!と腕を掛けた。
突然のことに驚くベルにキョウはソッと耳打ちする。
「内緒にしてくれるんなら、明日ちょっとだけ下に行くけど、どうする?」ヒソヒソ
「え!?…………さ、流石に怒られるんじゃ」ヒソヒソ
「おいおい、俺の同伴だぞ?それに六階から七階だし、居る時間も少なめだ。張りつめずに気を抜けよ、後輩。アイズに近づく為にも、強くなりたいんじゃないのか?(悪ぃ、ヘスティア様。やっぱ、ベルの恋に手助けするわ)」ヒソヒソ
うっ………と困り果てたベルが首を縦に降るのは数秒後の話だった。よし、交渉成立!そんじゃ、飯にしようぜ!と申し立てるキョウは凄く楽しそうだった。
パスタや揚げ物など色々な料理がどんどん運ばれる中、それを見た二人はいただきますと料理を食べ始めた。
(キョウさんって、アイズさんの知り合いなんだよね?…………………会えることとか出来ないのかなぁ)
(アイズに恋してる、かぁ。俺的には応援するが…………………『あのファミリア』の連中が黙ってるとは思えないからなぁ)
一目惚れしているアイズ・ヴァレンシュタインの事を考え、羞恥に顔を染めるベル。
その事を理解していながら、不穏な事を考えているキョウ。
他の客たちの喧騒の声が響き渡る中、店員の猫人が高らかと叫ぶ。
「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」
その言葉にキョウは耳を貸さなかった。飲み物をイッキ飲みしながら、彼は周りに視線を向ける。
その視線の先にある入口から複数の団体が入ってきた。他のファミリアかと思ったキョウは直後に、うげぇと嫌そうな顔をする。
彼らが掲げているのは道化のエンブレム。そう、キョウが先程まで考えてきた『あのファミリア』。オラリア最高峰のロキ・ファミリアだった。
キョウさんのファミリーネームがまだ出てないのには理由があります。後何話かでそれが明らかになります。