規格外が異世界から来るそうですよ?   作:れいとん

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前に規格外本編に投稿した話です。


没ネタ・番外編
没ネタ 魔王編


「〝審判権限〝の発動が受理されました! これよりギフトゲーム〝The PIED PIPER of HAMELIN〝は一時中断し、審議決議を執り行います。プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中断し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください! 繰り返します」

 

辺り一帯に幾度も轟く雷鳴を発しながら、帝釈天より授かったギフト〝疑似神格・金剛杵〝を掲げた黒ウサギである。

 

「プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中断し―――え?」

 

黒ウサギは最後まで言い切る事無く、呆然としながら空を見上げた。

審判権限の発動が途中で止められた事、そしてギフトゲーム中でありながらも黒く輝く〝契約書類〝が雨の様に降りそそいできたからである。

黒ウサギは慌ててその中の一枚を手に取り、内容を読み始める。

黒ウサギだけではない、十六夜や飛鳥、耀の問題児たちも、〝サラマンドラ〝の新当主であるサンドラやサラマンドラのメンバーも、黒い何かの封印が解かれた白夜叉も、そしてこの場にいる面々に理不尽なギフトゲームを仕掛けたグリモグリモワ―ル・ハーメルンの面々も驚愕し、慌てた様子でギアスロールを読み始める。

そこにはこう書かれていた。

 

『ギフトゲーム名〝最終試練―Last Embryo―〝

 

 プレイヤー一覧、現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

プレイヤー側 勝利条件

ホストマスターを戦闘不能・行動不能にする。

※生死は問わない

 

ホストマスター側 勝利条件

プレイヤー全てを戦闘不能・行動不能にする。

※生死は問わない

 

特殊条件

プレイヤー側とホストマスター側の両方が同意した場合敗者を決め、ゲームを終了させる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

《D×D》印』

 

そして町の中心にいきなり現れた旗印。

ギフトによる恩恵か、旗はそこまで大きくないのにこの場にいる誰ものがその旗を視認することができた。

端が花弁の様な形をした十字にクロスする剣、そしてそれを持ちあげる赤き龍。

その旗印とギアスロールに押された印を見て、異世界から来た問題児たち以外の全ての者が驚愕し―――恐怖した。

 

「ま、〝魔王〝だ……〝魔王〝が現れた!!」

 

忽ちパニックになる民衆。

それは先ほどのペスト達、グリムグリモワール・ハーメルンの比ではない。

封印が解けた白夜叉は、信じられないように突如現れた旗印を凝視しながら呟く。

 

「バカな……あやつが態々こんな下層に降りてきたというのか? なぜだ……!?」

「冗談でしょ……」

 

先ほどまで飛鳥に止めを刺そうとしていたラッテンも信じられないように呟く。

 

「白夜叉、これは一体どういうことなの!?」

 

飛鳥は怒鳴る様に、白夜叉に問いかける。

白夜叉は呆然としていたが、その怒鳴り声とも呼べる声を聞いて、ハッとなる。

そして飛鳥の問いかけを無視して、慌てて行動する。

 

 

 

「おいおいおい、こいつは何の冗談だ!? よりにもよって〝魔王〝がこんな下層を攻めてくるなんて!?」

 

十六夜と戦闘をしていたヴェーザ―は表情を険しくし、冷や汗を流しながらそう叫ぶ。

慌てた様子のヴェーザ―を見て、十六夜はかまえたまま訝しげに思い口を開く。

 

「お前んとこのボスとは違う魔王なのか?」

「バカ言うな! うちのボスはまだルーキーだ! こんな大物なんかと比べるんじゃねえ!!」

 

ヴェーザ―は八つ当たり気味にそう十六夜に怒鳴り散らす。

少しばかりテンパっているヴェーザ―を見て、益々疑問に思う十六夜。

 

「なっ!?」

「うお!」

 

いきなり二人とも先ほどまでとは違う場所に移動させられた。

その場には険しい表情をした白夜叉、それにノ―ネームとサラマンドラ、ペストとラッテンもいた。

 

「無事であったか。そこの笛を持った悪魔も協力せい」

 

白夜叉は十六夜が無事であったことに安堵し、ヴェーザ―にそう命令する。

不貞腐れながら白夜叉を睨むペストを見て、ヴェーザ―は武器を降ろす。

 

「おい、白夜叉。こいつはどういう事だ?」

 

十六夜は不完全燃焼な所為か、若干怒気を含ませながら白夜叉に話しかける。

十六夜だけではなく、耀と飛鳥の二人とも怪訝な表情をしながら視線で説明を促す。

十六夜達問題児組から見たら、辺りの光景は唖然である。

マンドラを除くサラマンドラの者達が子供の様に怯えているのだ、サラマンドラだけではなく、その場にいる殆どの者達が怯えている。

黒ウサギやサンドラすら顔を青白くして、恐怖で震えている。

白夜叉は少しばかり早口で説明する。

 

「この箱庭には数多の修羅神仏、魔王が存在しておる。攻めてきたのはその中でも最強最悪の魔王だ」

「最強最悪の魔王? なんだよ、それ。そんなメチャクチャ面白そうな奴がいるのか!!?」

「バカモノ!! そんな悠長なことを言える様な相手ではない!!」

 

最強最悪と聞いて、瞳を輝かせる十六夜。

そんな十六夜に怒鳴り散らす白夜叉。

白夜叉の剣幕を見て、事態が予想以上に悪いと理解する十六夜達。

 

「このゲームはクリアすることができない」

「おいおい、どういうことだ? ギアスロールを見る限り、クリア条件は確かに記されているぞ?」

「確かにそうだ。ギアスロールだけを見るのならば、だいぶ楽に見えるだろう。しかしな―――」

 

そこで一旦言葉を切り、そして一呼吸おいてから信じられない事を言う。

 

「だれにも〝魔王〝を倒すことはできない」

「どういうことだ?」

 

十六夜達は疑問に思う。

確かにジャックの様に不死の怪物は存在する。しかし、不死だから勝てるというほど箱庭という世界とギフトゲームは甘くない。

たとえ不死であろうが、今回のルールを見る限り、全身を雁字搦めにして動けないようにしても勝ちなのだ。

 

「簡単だよ、ただ単純に〝魔王〝は強い。―――それこそ修羅神仏、強大なギフトを所持するあらゆる存在が倒せないほどには」

「―――っ、それは……!?」

「そう、ギフトゲームはクリアする方法さえあれば、参加者の力不足は考慮しない」

 

ギフトゲームは攻略するために無理難題を押し付けるゲームが存在するが、参加者側の能力不足・知識不足を考慮しない。空を飛ぶ必要があるが飛べないときは、空を飛べないのが悪い。不死を殺せないときは、殺せないほうが悪い。

例え修羅神仏、魔王が手も足も出ない様な、そんな理不尽な存在であろうとも、ギフトゲームにおいては倒せない方が悪いのだ。

だからこその最終試練。

人類だけではなく、この世界に生きとし生けるもの全てに対するクリア不可能な無理難題。

それこそがこの箱庭で最強最悪と恐怖される〝魔王〝のギフトゲーム(試練)なのだ。

 

「箱庭の黎明期、〝魔王〝はあらゆる修羅神仏を含めたあらゆる強大な存在を降し、或いはその存在ごと破壊することでこの箱庭を駆け昇って行きました。クリア条件はあるのに決してクリアできないギフトゲーム。このギフトゲームで敗れて往った神仏達はいつかこう呼んだそうです。―――〝魔王〝と」

「彼奴が〝魔王〝と恐れられて以降、主催者権限を悪用する者は畏怖と恐怖を籠められて〝魔王〝と呼ばれるようになった」

 

箱庭における魔王とは天災、文字通り災害なのだ。

この箱庭に『魔王』という名を創り出し、広めた存在。それこそが今回の〝魔王〝なのだ。

だからこそ彼の魔王に二つ名はない。

何故なら魔王という名自体が彼を示す言葉なのだから。

 

「〝魔王〝は上層一桁、それも一番外門にコミュニティを構えておる」

 

その言葉を聞いて、十六夜達に緊張が奔る。

この箱庭は全部で七層の巨大なバームクーヘン状になっている。七層から六層が下層、五層が中層、そして四層から上が上層と呼ばれる。しかも、上層から上は層が一つ違うだけで別次元とも言える力の差が存在する。

例えば五層で最上級クラスの力を所持する者でも、四層には昇格することはかなり困難である。

階層支配者の様に最強種の後ろ盾でもない限り、昇格する事はほぼ不可能である。それこそ、相応の〝功績〝か大規模な〝歴史の転換期〝でも起きない限り。

一層、それも一番外門に居住を構えているという事は、それは箱庭で最強のコミュニティという事だ。

 

「しかし、なぜこんな下層に降りてきてゲームを仕掛けた? あ奴は今はもう活動していなかったはずだが―――」

「―――なぁに、ただの暇つぶしだ」

 

白夜叉の疑問に答える声。

全員が声のする方向に向くと、そこに〝魔王〝は存在した。

飛鳥と同じ黒髪黒眼、服装は普通の人間が着ているものと変わらない。

しかし、その背に羽織っているコートには突如現れた旗印と同じ紋章が刻まれていた。

 

「最近、面白い奴らが箱庭に訪れたって情報を耳にしてな」

 

つまり、魔王は十六夜達を見るために下層に降り立ち、この箱庭最難関のギフトゲームを仕掛けたのだ。

 

「白夜以外は初めてだな? 一応自己紹介しておこうか。俺は上層一桁、一番外門に居を構えるコミュニティ〝D×D〝の唯一のメンバーにして、リーダー。名前は兵藤一誠。―――そこにいる三人組と同じ〝人間〝だよ」

 

最強にして最悪の魔王は人間だ。

しかし、それは考えてみれば必然なのかもしれない。

神も魔王も善も悪も世界も存在も、この世界に在るありとあらゆるモノは全て人間により定義されたモノか、造られたモノしかない。

 

他の人間と理解し合う為に〝言葉〝は生まれた。

得物を狩るために〝武器〝は生まれた。

未知なるモノを万人が理解できるように文字や言葉による〝定義〝は生まれた。

神々の偉業、強大さ存在、それらを伝えるために神話は人間の手によって描かれた。

 

世界にはマダマダ未知なるモノは存在する。人類が見たこともない様な、想像したことのない様なモノが在る。

しかし、それも人間が見つければ、名を付け、意味を見出される。

神々の試練を乗り越えてバケモノを倒すのも、強大な力を持つカイブツに捕らわれた姫を助けるのも、何時だって人間だ。

だからこそ神仏や超常の存在は人間(一誠)には勝てない。

神話を後世に残し、それを世に広め、或いは残したのは人間。ありとあらゆるモノを定義し、意味を求め見出したのも人間。

常に世界(存在)を発見してきたのは人間だ。

どれだけ神々が天災や疫病を蔓延させようとも、人類を一人残らず殺すことはできない。

逆に人は神を殺せる。実際にそれを為せる人間(兵藤一誠)が存在するからだ。

それはどれだけ覆そうとしても覆ることのない〝歴史の転換期(パラダイムシフト)

人間の歴史だけではない、修羅神仏、魔王の歴史に記されたが故にそれは決して覆らない。

 

「―――っは、まさか人間だとは思わなかったぜ。……まあ、でも関係ねえ! 楽しませんてやんぜ、魔王さま!!」

 

十六夜は第三宇宙速度で一誠に飛び込むと、その速度のまま拳を放つ。

辺り一帯に莫大な衝撃と破壊をまき散らす十六夜。しかし―――、

 

「―――へぇ、オマエ〝原典候補者〝か……」

 

一誠には効いていなかった。

並みの神仏ですら抗えない十六夜の拳を、防御すらせずに受けきったのだ。

一誠はゆっくりと、人差し指を十六夜に向ける。

悪寒がした十六夜はその場から全力で後退する、刹那―――、

 

「……な!!?」

 

一誠の伸ばした指から極大の光線が放たれ、その射線上に在ったあらゆるモノを塵一つ残さずに破壊した。

綺麗な街並みも、町に温かさを与えていたペンダントランプも、サラマンドラの宮殿もその後ろに存在する火山も、光線の過ぎ去った後には何も残されていなかった。

 

「久々に楽しめそうだ」

 

一誠はその場にいる全員を招き入れるように両腕を広げると、その圧倒的な力の一部を解放する。

近くにいるだけで消し飛ばされそうな力の中心で、一誠は楽しそうに嗤う。




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