火龍誕生祭
“ノーネーム”が“ペルセウス”に勝利してから約一ヶ月ほど。
早朝、外は心地よい空気に満たされているのに対し、一誠の部屋は乾いた空気に満たされていた。
『流石の相棒もお手上げか』
「ミンチになりたいか? ドライグ」
『おお、怖い怖い。そう苛立つな、相棒。これはどう見ても科学の産物だ。幾ら相棒と
ふんと、ドライグの言葉に不機嫌そうに鼻を鳴らす一誠。
その手には乾き、凝固した血塊が幾つも入っている小瓶が握られていた。
前回の十六夜との模擬戦時に、回収していた血液を調べていたのだ。
その結果、極小の機械が混じっている以外、逆廻十六夜がごく普通の一般人だという事が分かった。
「この結果が正しいなら、十六の力の源は
『純粋な技術だけであそこまでの力を持たせられた人間か。…………恐ろしいな』
人間以外の種族の血が混じっているわけでもなく、神器を宿しているわけでもない。
それなのに逆廻十六夜は、神仏も驚く程の身体能力を宿している。
その根源が、目の前にあるというのに
一誠はもどかしく思いながらも、小瓶を亜空間へと収納する。
そして、タイミングを見計らったようにコンコンと扉をたたく音がした。
「開いている」
「し、失礼します!」
緊張を含ませた幼い声が扉の向こうから聞こえてくる。
小さい背丈に合わせた、割烹着と狐耳が特徴的な少女がカートを押して入ってくる。
狐耳の少女は緊張した面持ちで朝食の載ったカートを押し、見ていて可哀想な程に緊張したまま一誠に一礼して、
「り、り、り…………りりとおんもうします!」
「は?」
「あぅ…………」
見事に撃沈した。
顔を真っ赤に染め、俯き、パタパタと二本の尻尾と狐耳を忙しなく動かす少女。
その少女を見て、一誠はああと思い出した。
「年長組のガキか。態々飯を持ってきてくれたのか?」
「は、はい」
「今度から持ってこなくていいぞ。そっちも面倒くさいだろ?」
その言葉に狐耳を萎れさせる。
若干涙目になりながらも、いそいそと朝食の準備を始める。
ハーブティーをカップに注ぎ、備え付けのテーブルに朝食を綺麗に並べようとする。が、
「そのままでいい、後でカートごと持っていく」
その言葉を聞き、ハーブティーの入ったポッドを持ったままオロオロとするリリ。
今にも涙を流しそうな少女を見て、一誠は溜息を吐きそうなのを我慢しながらお茶に手を付ける。
一口飲み、少し驚いた表情をする。
「へぇ、美味いな」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
「よかったぁ…………」
パァっと花の咲いたような笑みを浮かべ、嬉しそうに尻尾と狐耳をパタパタと動かす。
そんな少女に視線を向けながら、一誠は朝食にも手を付け始める。
(八坂の所のガキみたいだったら、問答無用で追い出すんだがなぁ)
卵と色々な野菜が挟まれているサンドイッチを食べながら、一誠は内心で溜息を吐く。
自分の目的の障害になるなら、例え赤子であろうとも容赦しない一誠だが、そのせいか善意を持って接してくる子供が苦手だった。
お互いに利用し、利用させる関係の方が楽だと思いながら、朝食を次々に胃の中へと収めていく。
そんな一誠の様子を、ニコニコと嬉しそうに見つめるリリ。
最後にもう一杯ハーブティーをもらい、それをゆっくりと呑む。
そんな一誠に、リリは突然頭を下げ、お礼を述べた。
「あの、ありがとうございます!」
「…………何がだ?」
今度はなんだと思いながら、リリに問い返す。
「その…………このハーブティーは菜園で採れた物で。本拠の裏手を切り開いた場所に、とっても小さいですけど、みんなで育てたものなんです。人も少ないですし、家畜も種も殆どありませんが、昔は土地が死んでいたので、本当に何もできませんでした。少しずつですが、農園が復興できるようになりました」
リリの言葉に、一誠は納得する。
時間操作による土地の自壊。
それによって広大な“ノーネーム”の土地は使い物にならなくなっていた。
一誠が土地を直したことは黒ウサギから聞いているのだろう。
一誠は知らないが、元々“ノーネーム”の農地は代々リリの一族によって管理されていた。
だからこそ、土地がまた使えるようになった嬉しさは一入なのだろう。
「別に感謝されるようなことじゃない。あれは“箱庭”に召喚してもらった礼みたいなものだ」
「それでもありがとうございます! 本来ならあの土地を復活させるような大規模なゲームは、凄く危険だって、黒ウサギのお姉ちゃんが言っていました。…………皆も二度と土地を耕せないだろうと諦めていたので」
三年間、保護者が黒ウサギだけで食べるものにも苦労していた“ノーネーム”。
誰も口には出さなかったが、色々と諦めていたところもあったのだろう。
しかし、一誠たちが箱庭に来てから変わった。
水にも食料にも困らず、昔の仲間であるレティシアを取り戻し、土地を元に戻してくれた。
彼らなら何時か、名と旗も取り戻せるだろうと、希望が持てるようになった。
年長組として、コミュニティの為に何もできなかった自分たちが少しでも役立てるようになった。
それがとても嬉しいのだろう。
はにかみながら嬉しそうに笑うリリに、一誠は思わず苦笑する。
(やっぱりこういうガキは苦手だ)
自分が人間としてイカレている事を一誠は自覚している。
だからこそ、こうした純粋な子供が苦手なことも自覚していた。
「ん?」
「…………?」
何とも言えない空気の中、二人は同時に首をかしげた。
ヒラヒラと窓の外から一枚の手紙が降ってきたからだ。
既視感のある投書を掴み、差出人を確認する。
封蝋には向かい合う総女神の紋、“サウザンドアイズ”の旗印が刻まれていた。
それを見て、思わずリリは叫ぶ。
「す…………凄いです! “サウザンドアイズ”の印璽が押された封蝋なんて初めて見ました!」
「白夜叉からだろうな」
一誠は封を切り、中身を取り出す。
さっと目を通した一誠は、手紙の内容に興味を持つ。
(見ろ、ドライグ。“火龍誕生祭”への招待状だとよ)
(ほう。こちらのドラゴンには会ったことが無いからな。興味があるな)
未だに見たことのない北側もそうだが、それ以上に“火龍”という言葉に胸躍らせる。
どこの世界でも“ドラゴン”という生き物は強大なのだから。
「一誠君! 起きてる!?」
一誠が北側に向かおうと決心したのと、飛鳥と耀が部屋に突撃してきたのは、ほぼ同時のことだった。
―――それから数分後、黒ウサギの絶叫が“ノーネーム”にと響くのだった。
◆
十六夜を焚きつけ、ジンを拉致し、リリに手紙を預け、二一〇五三八〇外門前にある噴水広場まで来ていた。
巨大な虎の彫像に嫌悪感を抱きながらベリベッド通りを歩き、“六本傷”の旗印を掲げるカフェに入り、今後の事を話し合う。
「それで、お祭りがある北側までどうやって行けばいいのかしら?」
真紅のドレススカートからスラリと伸びる足を組み直し、ジンに問う。
飛鳥の問いかけに、ジンは溜息を吐きながら応える。
「予想はしていましたけど…………皆さん、北側の境界壁までの距離を知らないのですか?」
「知らねえよ。けどそんなに遠いのか?」
怪訝な表情で返す十六夜。沈鬱そうに顔を手で覆うジンを見て、嫌な予感が脳裏を過る。
「この箱庭の世界の表面積は恒星級なんです。箱庭都市はその最大の都市。ここから北まで距離、98000Kmも歩くつもりですか!?」
「「「「うわお」」」」
ジンの説明に問題児四人組は声を揃えて驚愕した。
嬉々とした、唖然とした、驚愕した、平坦な声を上げた。
「幾らなんでも遠すぎるでしょう!?
カフェのテーブルを叩いて抗議する飛鳥。
それに負けじと、ジンは叫び返す。
「ええ、遠いですよ!! 箱庭の都市は遠近感が狂うようにできています。あの箱庭中心の“世界軸”までの距離は、実際に見えているより遥かに遠いんですよ!!」
だから止めましょうとあれほど言ったんじゃないですかーッ!! と叫ぶジン。
具合が悪そうに黙り込む飛鳥、その横に座っている耀が妙案を思いついたように話す。
「…………それなら、“ペルセウス”に向かった時みたいに、外門と外門を繋いでもらうのはどうかな?」
「…………それはもしかして、“
「…………98000Kmか。流石にちょっと遠いな。一誠、お前の魔法で行くことはできないのか?」
打つ手ない様子の十六夜は一誠にそう問いかける。
その問いかけに、飛鳥と耀は嬉しそうに、ジンは絶望したような表情をする。
問題児組の中でも特に出鱈目な一誠なら何とかできそうだと思ったのだろう。
「座標が分かれば行けるんだがな。正確にわからないと大雑把に跳ぶことになる。流石に地中に出たりはしないが、都市からどのくらいの範囲に跳ぶかは分からん。…………せめて写真でもあれば、向こうの建物をイメージして転移する事が可能なんだが」
俺個人なら飛んでいくことも不可能じゃない。と、最後にそう呟く一誠。
それを聞いて残念そうな表情をする耀と飛鳥。そしてホッとした様子のジン。
大きくため息一つ吐き、ジンは少し落ち着いた様子で四人を諭す。
「黙っていたことは謝ります。でもこういう事情があったんです。今なら笑い話で済みますから…………皆さん、もう戻りませんか?」
「断固拒否」
「右に同じ」
「以下同文」
「左に同じ」
ガクリと肩を落とすジン。元々その程度で諦めるほど可愛い性格はしていない。
さらに挑発的な手紙を黒ウサギに残してきた以上、引くに引けない。
「黒ウサギ達にあんな手紙を残して引けるものですか!」
「おうよ! こなったら主催者である“サウザンドアイズ”へ交渉に行くぞゴラァ!」
「行くぞコラ」
「おー」
ヤハハと自棄気味にハイテンションな十六夜と飛鳥に続き、その場のノリで声を出す耀と、段々面倒くさくなりローテンションな一誠。
ダボダボなジンのローブを引っ張り、四人は“サウザンドアイズ”へと向かうのだった。
◆
桜に似た並木道の街道に建つ店前で、竹箒で掃除していた割烹着の女性店員は、十六夜たちを見かけると嫌そうな表情を作りながら、一礼する。
「…………お待ちしておりました。オーナーが中でお待ちです」
「あら、珍しいわね?」
ギフトゲームで手にした金品はこの店で換金してもらっているのだが、その度にこの女性店員に絡まれていた。
今日みたいに素直に店に入れようとしてくれるのは非常に珍しい。
「…………オーナーの命令ですから」
本当に嫌々そうにそう答える女性店員。
十六夜、耀、飛鳥、ジンの四人には嫌そうな表情を向けるが、一誠の方には視線を向けることもしない。
その態度にムッとする飛鳥だったが、一誠自信が特に気にした様子もなく店内へと入っていったので、黙って後に続くことにした。
◆
「よいぞ」
十六夜たちの路銀を支払うことに快く承諾する白夜叉。
そのあまりの呆気なさに、肩透かしを食らう十六夜、飛鳥、耀の問題児組。
「……随分気前がいいな。何が狙いだ?」
「鋭いの。その話をする前にまず」
白夜叉は視線を一誠の方へと向けて話す。
「例の件だが、承諾された。“階層支配者”の仕事を優先するという条件付きでだがな。勿論、後任が見つかるまでの話だがの。それと、“ペルセウス”からの報酬は私の方が一旦預かっておる。後々おんしに引き渡そう」
一誠以外の全員が頭にクエスチョンマークを浮かべる。
特に“階層支配者”の後任を探しているという話に、ジンはこれでもかと言うくらいに驚いていた。
疑問を口にする前に、白夜叉は姿勢をただし、真剣な表情でジンに向かい合う。
「“フォレス・ガロ”の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けていると聞いておるが…………ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」
「はい」
本来ならそれがどの様なリスクを負うのか忠告するつもりだった。
しかし、一誠の方を軽く一瞥し、フッと微笑んだ。
「ではその“打倒魔王”を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に依頼したい。よろしいかな、ジン殿?」
「は、はい! 謹んで承ります!」
子供を愛でるような物言ではなく、組織の長として言い改める白夜叉。
少しでも認められたことに、パッと表情を明るくして、ジンは応えた。
白夜叉の話をまとめると、
・北の“階層支配者”の一角、“サラマンドラ”の世代交代が行われる。
・後を次ぐのはジンと同い年のサンドラ。
・新しい“階層支配者”の誕生が快く思われておらず、東の“階層支配者”である白夜叉に共同の主催者を依頼してきた。
説明を受け、飛鳥の眼には強い怒りと、落胆の色が浮かんだ。
「呆れた。神仏の集う箱庭の長たちでも、思考回路は人間並みなのね」
「神仏だってそんなものだぞ? アイツ等には期待するだけ無駄だ」
「ハハハ、手厳しいのう。だが全くもってその通りだ。東のマスターである私に共同祭典の話を持ちかけてきたのも、様々な事情があってのことなのだ」
飛鳥と一誠の言葉に、冷や汗を流しながら苦笑する白夜叉。
話を続けようとする白夜叉に、十六夜はまったをかける。
「それ、長くなるか?」
「年寄り扱いはやめんか。手短に一時間程度でまとめるつもりだぞ?」
「長っ」
「十分年寄りだな」
「…………まずいかも。黒ウサギに追いつかれる」
一誠の年寄り発言に一瞬イラッとする白夜叉。
しかし、彼らからしてみればそんなこと気にしてもいられない。
一時間も悠長に話を聞いていれば、確実に黒ウサギ達に見つかるだろう。
ジンは咄嗟に立ち上がり、
「し、白夜叉様! どうかこのまま―――」
「ジンくん、黙りなさい!」
ガチン! と飛鳥の“威光”によって勢いよく口を閉じらされた。
その隙を逃さずに、十六夜が白夜叉を促す。
「白夜叉。悪いが今すぐ北側に向かってくれ!」
「それは構わんが、私の頼みごとを内容も聞かずに受けるのか?」
「かまわん。その方が面白そうだ」
白夜叉に返答したのは十六夜ではなく一誠。
しかし、その返答を聞いた白夜叉は、苦笑しながら呵呵と哄笑を上げて頷いた。
「面白いか。―――ならば、仕方ないの!」
暴れるジンを喜々として取り押さえる十六夜を後目に、パンパンと柏手打つ。
それに伴って起こった変化に、唯一一誠だけが気づいた。
「―――よし。北側に着いたぞ」
「「「―――…………は?」」」
ジンを縛り上げながら素っ頓狂な声を上げる十六夜、飛鳥、耀の三人。
それもそうだろう。なにせ、たったあれだけの動作で98000Kmの距離を超えたと言うのだから。
…………次の瞬間、一誠を含めた問題児四人組は店の外へと踊り出す。
◆
「赤壁と炎と…………硝子の街…………!?」
飛鳥は大きく息を呑み、胸を躍らせるように簡単の声を上げた。
東と北を区切る、天を衝くかというほどに巨大な境界壁。
そこから掘り出される功績で彫像されたモニュメントに、外壁に聳える二つの外門が一体となった巨大な凱旋門。
遠目からでも分かるほどに色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊や歩くキャンドルスタンドに瞳を輝かせる飛鳥。
「へえ、東側とは文化様式が違うな。流石に98000Kmも離れているだけあるな。見るからに東側より面白そうだ」
「…………むっ? それは聞き捨てならんぞ小僧。東側にだっていいものは沢山あってだな―――」
「ねえ! あのガラスの歩廊に行ってみたいわ! いいでしょう白夜叉?」
「構わんよ。続きは夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加するといい」
着物の袖から取り出したゲームのチラシ。
それを
「見ぃつけた―――のですよおおおおおおおおおおおお!」
ドップラー効果の聞いた絶叫と共に、爆撃のような着地と粉塵をまき散らしながら降り立つ人影。
その声と声の持ち主を確認して跳ね上がる一同。
「ふ、ふふフフフフ…………! ようぉぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方―――ッ!!!」
緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまくりながら叫ぶ黒ウサギ。
怒り狂ったその姿は帝釈天の眷属というよりは、もはや悪鬼羅刹に近い。
真っ先に動いたのは十六夜だった。
隣に居たあすかを抱き抱え、耀と一誠に声を掛けようとして、
「春日部、一誠! 二人共逃げる…………ぞ?」
珍しく、本当に珍しく。十六夜は間抜け顔を晒していた。
視線を耀と一誠の方へと向けて、―――そこで初めて一誠が居なくなっていたことに気がついた。
そしてこれまた珍しいことに、十六夜はイラつきをそのまま天へと叫んだ。
「あの野郎! 一人だけ先に逃げやがった!!?」
どこ行きやがったぁぁぁ! と叫びながら展望台から飛び降りる十六夜。
耀は捕まり、黒ウサギは十六夜と飛鳥を追って爆走する。
「気がつかない方が間抜けなんだよ、十六夜」
一人先に街へと降りていた一誠は、今頃黒ウサギに追われているだろう十六夜達に対して失笑を浮かべていた。
◆
一誠はそこら辺を歩いているキャンドルランプを一体、無造作に捕まえると繁繁と観察する。
じっと見られているのが恥ずかしいのか、キャンドルランプは火の着いた両手で顔を隠す。
(面白い作りだな。一体一体専用にキャンドルランプを作り上げているのか。人口精霊を作った方が早いだろうに。手間と言えばそこまでだが、此処まで来れば立派な職人魂だな)
所々、精霊を定着させるには不都合なところが目につくが、それでも面白いと一誠は思う。
自分が知りえない未知の文化、技術。
火龍以外に対して期待していなかったが、思っていた以上に楽しめそうである。
一誠がそう思った、その時である。
「すげえ! あれが月の兎の力か?」
「だが、追っている方も尋常じゃないぞ!」
そんな周りの声と、ビュンビュンと風を切る音が聞こえてきた。
気配を捉えていた一誠は、そちらの方へと視線を向ける。
そこには、黒ウサギと十六夜が、相手の手を弾きながら、お互いに掴みかかっていた。
一旦離れ、後退する黒ウサギ。それを真後ろから追走する十六夜。
両者の走力はほぼ互角。
それを見て、面白い見世物だと笑う一誠。
(ふむ。速度では小僧が、俊敏さなら兎の方が上だな。相棒はどちらが勝つと思う?)
(ドライグはどっちだと思うんだ?)
(小僧だな)
(じゃあ黒ウサギ)
内心でドライグとどちらが勝つか予想する一誠。
黒ウサギと十六夜にバレないように家屋へと上り、戦況を見守る。
十六夜がアホな事を叫び黒ウサギがそれに叫び返す。
両者はそんな事をしながら時計塔へと跳躍し、瞬く間に駆け上がり、尖塔の頂上までたどり着く。
それを見て、一誠とドライグは内心で十六夜に対し、酷評していた。
(あ、バカめ。黒ウサギの耳を考えれば、それは悪手だろうが)
(やはり経験不足が目立つな)
黒ウサギが歩廊めがけて、跳躍したのを確認して、一誠とドライグは黒ウサギの勝ちだと判断した。
しかし、十六夜はそんな二人の予想を覆した。
力を溜め込み、鞭のような靭やかさで足場の時計塔を蹴り飛ばした。
その、あまりに力尽くなゲームメイクに、一誠とドライグは爆笑していた。
(あっはははははは、クククク。やべぇ、笑い過ぎて腹痛ぇ。幾ら俺でもたかが鬼ごっこで、そこまでやらねえぞ)
(クックック。初々しくていいではないか。)
奇想天外な発想で状況を一転させる。
大人が子供の予想外な行動に対する様な驚きと微笑ましさをもって、二人はゲームを見守る。
倒壊し、倒れてきた建物が十六夜と黒ウサギの頭上を襲う。
十六夜は拳を、黒ウサギは金剛杵を握り締めて、同時に倒壊した建物めがけて振り上げた。
吹き飛ばされた建物には眼もくれず、同時にお互いに掴みかかった。
「「あっ」」
二人のそんな抜けた声が一誠にはきちんと聞こえた。
しかし、予想外の結果にドライグと一誠は苦笑するしかなかった。
(流石に引き分けは予想していなかったな)
(ああ。兎の方が能力上有利だったからな。あの小僧ならそれが活かせない所に追い込んで捕まえるとおもったんだが)
(俺としては土地勘がないから黒ウサギが勝つと予想したんだが。それよりも金剛杵の方は問題なしか。今度、出力を上げるか、壊れないように改造するのも面白いかもしれない)
二人は内心で話し合いながらも、黒ウサギと十六夜を観察する。
あれだけ騒ぎを起こしたせいだろう。
黒ウサギと十六夜の二人は、蜥蜴の鱗を肌に持つ亜人と、ワイバーンのような飛竜に完全に囲まれていた。
(…………あれが“火龍”か)
箱庭に来て、初めて目にした龍種を見て、目を細める。
新しい玩具を見つけたような表情をし、一誠はまるで品定めをするかの様に、視線を“サラマンドラ”へと向けた。
すまぬ、自分にはこれが精一杯だったよ。
非力な私を許してください(震え声)
たぶん、二巻の終わり辺りから作者の暴走が始まるから。
たぶん、原作がある程度無茶苦茶になると思いますけど、
それでも大丈夫だ、問題ない。
という方だけお付き合いください。
それにしてもハイスクールD×Dの最新話、面白かったです。
フリードも当然ながら、一誠が特に。
やっぱり『赤龍帝の鎧』はチートですね。
次回の覇龍が楽しみすぎて、一日一日が長く感じてしまいます(笑)
もうすぐラストエンブリオも販売ですし、早く日にちが経って欲しいと思う今日この頃。
次の更新も未定ですが、それではまた次回。