規格外が異世界から来るそうですよ?   作:れいとん

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本当はクリスマスに一誠とルフェイの話を投稿しようかと思ったけど……書けなかったよ。

なんでかって?

それはね、作者がクリスマスを恋人と過ごしたことなんて一度もないからさ。


問題児

ゲーム盤から白夜叉の私室へと戻った一同は、白夜叉が用意したお茶と菓子を片手に一誠の話しを聞こうとしていた。

ちなみに、フェンリルは大きすぎるので中庭で大人しくしている。

 

「んで、お前等は何を聞きたんだ?」

 

一誠は茶を啜りながらそう問いかける。

最初に一誠に質問をしたのは十六夜だった。

 

「一誠が居た世界ってどんな処だった?」

「世界中に何十億って人間が存在して、環境だの国家だの政治だので騒いでるクソつまらねぇ世界だったよ。んで、神話とか宗教とか色々あって、実際にそう言ったのに出てくる存在が居た。まぁ、大多数の人間は神とか悪魔とかが存在しているなんてしらねぇけどな」

 

その言葉を聞いて、全員が驚く。

人類が科学を発展させ、超常の現象としているモノを解明している世界で神仏などが存在しているなど、箱庭の常識からしたら在りえない。

十六夜、飛鳥、耀からしたら、殆ど自分の居た世界と変わらないというのに、おとぎ話に出てくるような存在が居るというのだ。

今度は耀が瞳を輝かせながら一誠に問いかける。

 

「どんな生物がいたの?」

 

耀だけではなく、十六夜や飛鳥も瞳を輝かせながら一誠を見つめる。

まるでこれから始まる紙芝居を楽しみにしている子供の様である。

 

「いろんなのが居たな。妖怪に魔物、魔獣に神獣。悪魔に天使に堕天使。吸血鬼や人狼。後はドラゴンなんかだな」

「ドラゴンはどんなのが存在していた?」

 

真剣な表情でそう訊く白夜叉。

この箱庭で龍は最強種の一つだ。そんなモノがゴロゴロしているなんて考えたくもない。

 

「お前等が知っているようなのばかりだと思うぞ? 俺と十六夜達が居た世界はだいぶ違うらしいが、それだって神や魔王が存在していたかどうかって違いだけだろうしな」

 

一誠がそう言うが、全員が視線で言うように促す。

一誠は面倒くさそうな表情をしながら答える。

 

「種類が多いから大雑把にしか言わねぇぞ? 『黒蛇の龍王』ヴリトラ、『黄金龍君』ファーブニル、『天魔の業龍』ティアマット、『西海龍童』ウーロン、『終末の大龍』ミドガルズオルム。いまあげた五匹が五大龍王って言われている。これに『魔龍聖』タンニーンを含めて昔は六大龍王って言われていたらしい」

 

一誠がそこまで言うと、黒ウサギと白夜叉の頬が引きつっている。

それはそうだろう。一誠が今言ったドラゴンは、箱庭では三桁クラス以上の強さを所持している魔王に等しいのだから。

一誠は茶を一口飲み、さらに続ける。

 

「次に邪龍だな。これは各神話群で危険視され、討伐、封印されたドラゴンなんかだ。これもソコソコ多いから筆頭格しかいわねぇぞ。『三日月の暗黒龍』クロウ・クルワッハ、『原初なる晦冥龍』アポプス、『魔源の禁龍』アジ・ダハーカ」

 

一誠がそう言った瞬間、黒ウサギと白夜叉の表情が変わった。

そして、問い詰める様に一誠に問いかける。

 

「アジ・ダハーカだと!? 馬鹿な! あ奴は封印されているはずだ!」

「実際には封印に近い形で滅ぼされたらしいな。まぁ、だから聖杯の力で生き返ったんだろうが……」

「なに……?」

 

最後の呟きを聞き、眉を寄せる白夜叉を無視して一誠は話しを続ける。

 

「後は二天龍だな」

「二天龍?」

 

神話などに詳しい黒ウサギや白夜叉、十六夜ですら聞いた事のない名前である。少なくとも心当たりのあるドラゴンは三人の中には存在しない。

 

「二天龍ってのは名前の通り、世界でも二匹しか居ない天龍の事だ」

「天って名前を付けられるくらいだから相当強いのか?」

 

一誠の説明に、十六夜はそう質問する。

各神話や伝承などでも共通するが、天とは天上、人の及ばないモノ、或いは神聖な存在を示す言葉である。

 

「強い。なんせ、神や魔王すら凌駕する最強のドラゴンだからな」

「……っな!?」

 

一誠の言葉に、白夜叉と黒ウサギは絶句する。

修羅神仏魔王は、それこそ人外の存在である。この箱庭の創始者である帝釈天などは黒ウサギを眷属として子飼いにできるほどの力を有する。そんな存在を凌駕するドラゴンなど悪夢も良いところである。

 

「ただ、この二体はとんでもない馬鹿でな。大昔にケンカして周囲に尋常じゃない被害を出し、挙句には聖書の神に魂を『神器』に封印された」

「それはなんつーか、アホだな。ってか、セイクリッド・ギアってなんだ?」

 

十六夜がそう訊く。一誠はそれも説明しないといけないのかと思いながら口を開く。

 

「『神器』ってのは、聖書の神が残した人間にのみ宿る異能、奇跡だ。多種多様の神器が存在し、どれだけの神器が存在しているのかは誰も知らない」

「その神器を創り上げた聖書の神様だったら知っているんじゃないのか?」

「それは後で説明してやる。……さっきも説明したが神器ってのは、本当にいろんなモノが存在する。触れただけであらゆる傷を回復させるモノ、視界に納めたモノの時間を停止させるモノ、聖剣や魔剣を思い通りに造り出すってのも存在する。まぁ、『神器』ってのは全てが神造の″ギフト″って思えば分かりやすかもしれねぇな」

 

一誠は一旦そこで話しを区切り、茶を啜り菓子を齧る。

黒ウサギと白夜叉は衝撃的だった。修羅神仏魔王、さらにドラゴンや聖書の神が残したギフトを宿す人々が存在する世界。彼女等からして見れば、一誠の元いた世界は箱庭に負けず劣らずの人外魔境に思えた。

 

「その神器の中でも特に強力なのが存在し、それを『神滅具』と言う。現在では十三種類、候補を含めると十四種類存在する」

「ロンギヌスってイエス・キリストのあれか?」

「それも含まれる。神滅具ってのは極めれば神や魔王も屠れる規格外の神器を指す言葉だ。神の子であるイエスを貫いた絶対の槍、始まりの神滅具と言われる『黄昏の聖槍』、天候を自由自在に操り、支配する『煌天雷獄』、結界系神器最強の『絶霧』、創造系神器最強の『魔獣創造』。後はさっき説明した二天龍を封じた神器なんかも『神滅具』だ」

 

もはや黒ウサギや白夜叉は驚いていない。というより驚きすぎて疲れている。

そんな二人を無視して、一誠はさらに話しを続ける。

 

「十六夜の質問に答えるぞ。聖書の神なら全てを把握しているんじゃないかって話しだが……たぶん、把握していたんだろうな。なんせ製作者なんだし。ただ、聖書の神からそれを聞きだすのは不可能だ」

「なぜだ?」

「大昔に神、堕天使、悪魔は冥界……地獄の覇権を巡って戦争をしていたんだよ。んで、その時に聖書の神と悪魔の王である四大魔王は死亡した。それで悪魔は最も力のある悪魔四体にそれぞれの魔王の名を受け継がせた」

 

その場にいる全員が絶句する。宗教に詳しくない人間でも、聖書の神を知っている人は大勢いるだろう。信仰とは神の力だ。名だたる神仏の中でも最も強力な神が死んでいると言うのだ。神が死ぬなど並大抵の事ではない。

白夜叉が愕然としながら、一誠に問いかける。

 

「聖書の神が死ねば世界に影響が出るのではないか?」

「ああ、聖を司っていた聖書の神と魔を司っていた四大魔王が死亡したからな。聖と魔のバランスが崩れて聖魔剣なんて特異な物が生まれたくらいだ」

 

一誠がそこまで言うと、白夜叉はどっと疲れたように肩を落とす。

一誠がいた世界は異世界とは言え、修羅神仏魔王が存在していたのだ。それも箱庭と違い、文字通りの存在が。

白夜叉は、色々と頭痛を感じながら最後の質問をする。

 

「最後に一つ問いたい。おんしが居た世界に私以上の強者はどのくらい存在した?」

 

一誠はしばし考え、……そして答える。

 

「お前と同等かそれ以上の奴なんか腐るほどいた」

「…………そうか」

 

白夜叉は確かに強い。神格を返上し、全盛期の力を十全に振るえば全力のサーゼクスと戦えるかもしれない。

しかし、それでも絶対に敵わない存在が居る。無限の龍神と夢幻の真龍には、いくら白夜叉であろうとも敵わない。

 

「ねえ。一誠もそのセイクリッド・ギアを持っているの?」

 

耀が何気なく聞くと、他の問題児二人も興味深そうに一誠を見ている。

一誠は先ほど貰ったギフトカードを取り出すと、それをその場にいる全員に見せる。

 

「これに『赤龍帝の籠手』ってのが書かれているだろ? これが俺の宿している神器だ」

「それってどんな力があるの?」

「『赤龍帝の籠手』はさっき話した二天龍、その内の一匹『赤い龍』ドライグを宿している神滅具だ」

 

その言葉を聞き、さらに白夜叉は頭を痛める。只でさえ白夜叉を凌駕する力を持っているのに、さらに神殺しの力まで宿しているというのだ。出鱈目もここまで来ると清々しい。

そこまで説明して面倒くさくなったのだろう。一誠はこれ以上説明する気は無いと言う雰囲気を醸し出す。

 

「『赤龍帝の籠手』の力は十秒ごとに所有者の力を倍にしていく。まぁ、禁手に至れば一瞬で力を増幅できるんだけど」

「バランス・ブレイカーって?」

「簡単に言うと、神器のパワーアップってところだな。正直面倒くさくなってきたからこれ以上説明はしねぇからな」

 

しかし、最後の最後に耀が一つだけ質問する。

 

「じゃあ最後に一つだけ質問。私の霜焼けをどうやって治してくれたの?」

「初歩的な治癒魔法だ」

「一誠は魔法も使えるんだね。ありがとう」

「まぁな。覚えようと思えば春日部達でも覚えられるぞ?」

「本当に? それから私は耀でいい。私も一誠のこと名前で呼んでいるし」

「ああ。魔法ってのは、悪魔の力を人間でも再現できるように作られたものだからな。誰でも習得できる」

 

一誠が元いた世界の魔法の大半は伝説の魔法使い″マーリン・アンブロジウス″が魔力を独自に解析し、人間でも扱えるようにしたものである。

 

「じゃあ、私も魔法を使えるようになるの?」

「才能の有無で時間は変わるが、久遠や十六夜も覚えようと思えば覚えられる」

「マジかよ。なら、今度教えてくれよ」

「私もお願いね。魔法使いかぁ、箒や絨毯で空を飛んでみたいわ」

 

一誠の言葉に純粋な子供の様に瞳を輝かせる飛鳥、耀、十六夜の三人。

そこでちょうど良いと判断したのだろう、白夜叉はそこでお開きとした。

六人と二匹は暖簾の下げられた店前に移動し、白夜叉に一礼をした。

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好がつかねえからな」

「今度は代理なんかじゃなくて、直接戦おうじゃねぇか」

「ふふ、よかろう。楽しみにしておく。…………ところで」

 

白夜叉は先ほどまでとは一転、真剣な瞳で黒ウサギ達を見る。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういった状況にあるか、よく理解しているか?」

「ああ、名前とか旗の話しか? それなら聞いたぜ」

「ならそれを取り戻すために、『魔王』と戦わねばならんことも?」

「聞いてるわよ」

「…………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

黒ウサギはドキリとした顔で視線をそらす。

もしコミュニティの現状を話さない不義理な真似をしていれば、飛鳥と耀は魔王とのギフトゲームで覚悟をすることすらできずに殺されたかもしれない。

騙すような形でコミュニティに入れ、魔王とのギフトゲームで命を落とすようなことがあったら、それは彼等を騙した黒ウサギが殺したも同然だ。

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

「カッコいいで済む話ではないのだがの………全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止はせんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

言いかえそうとする二人だが、東側最強の主催者である白夜叉の迫力に圧倒され、言い返せなかった。

 

「魔王と戦う前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧どもはともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームは生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれ死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」

「…………ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い」

 

笑う白夜叉と無愛想な女性店員に見送られて″サウザンド・アイズ″の支店を後にした。

 

 

「これが……滅ぼされたノ―ネームの…………」

 

黒ウサギに案内され、ノ―ネームの本拠地を見て絶句する飛鳥と耀。一誠と十六夜は目を細めて周囲を見渡す。

十六夜は木造の廃墟に歩み寄って残骸を手に取る。

それは少し握ると、乾いた音を立てて崩れ去っていった。

 

「…………黒ウサギ、魔王のギフトゲームがあったのは―――今から何百年前の話しだ?」

「僅か三年前でございます」

「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった街並みが三年前だと(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

白銀の街路は砂に埋もれ、木造の建築物は軒並み腐って倒れ落ちている。要所で使われていた鉄筋や針金は寂に虫歯我て折れ曲がり、街灯樹は石碑の様に薄白くかれて放置されていた。

三年どころか何百年と放置されて滅んだと言われた方が、まだ信じられる光景だった。

 

「………断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方はあり得ない。この木造の崩れ方なんて、膨大な時間をかけて自然崩壊したようにしか思えない」

 

あり得ないと言いながらも、十六夜は目の前の光景に心地よい冷や汗を流していた。

 

飛鳥と耀も廃屋を見て複雑そうな表情を浮かべ感想を述べた。

 

「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

「………生き物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」

「……………………」

 

耀と飛鳥の感想は十六夜の声よりも重い。

「………魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ………コミュニティから、箱庭から去って行きました」

「「…………」」

 

大がかりなギフトゲームの時に、ゲーム盤を用意する理由がコレだ。魔王と力のあるコミュニティが戦えば、勝敗に関わらずその傷跡は醜く残る。

感情を押し殺すように告げる黒ウサギに、複雑な表情を浮かべる飛鳥と耀。

しかし他2人は違った。

十六夜は不敵に笑う。目を爛々と輝かせながら。

 

「魔王───か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか………!」

 

そして一誠は―――

 

「―――つまらん」

 

失望していた(・・・・・・)

 

「つまらないとは、どういうことでしょうか?」

 

黒ウサギが怒気を含めた声でそう問いかける。

自分の家を、仲間を、名誉を。その全てを奪われ、廃墟となったノ―ネームの跡地を見てつまらないと言ったのだ。

人の不幸を見て失望しているのだ、真っ当な感情を持つ者なら誰だって一誠に対して怒りを覚える。現に飛鳥や耀は少しばかり怒りの感情を一誠に向けている。

しかし、一誠は黒ウサギ達の怒りを無視して言う。

 

「言葉通りの意味だよ。箱庭の魔王ってのは想像以上につまらないらしい。高々この程度(・・・・)の事を力の誇示と見せしめにするなんて―――実につまらない」

 

確かに魔王は強大だったのだろう。

東区画で最大のコミュニティであるノ―ネームを負かし、旗や名、人材に至るまでほぼ全てを奪っていき、更にはノ―ネームの本拠地を常識ではありえないような形で廃墟にしてみせた。

―――だから何だ。

人知の及ばない力によって造られた廃墟は、確かに悲惨なものだろう。

しかし、兵藤一誠からしたらこの程度、どうということは無い。

一誠が今まで戦ってきた者の中には、時間を司る神や時間を操る神器使いが当然のように居た。

災害ですら生温いと思える力を平然と操る神仏が居た。

存在自体が出鱈目な最強のドラゴンが居た。

数多に存在する修羅神仏、魔王ドラゴン。それら全てを忘却の彼方に送ろうとした規格外のカイブツが居た。

その全てを正面から叩きのめすような出鱈目な存在が兵藤一誠だ。

 

「期待しすぎだったか。魔王を名乗る神仏にこの箱庭の世界。そして、潰される前のノ―ネームにも」

 

兵藤一誠は世界を弱肉強食だと思っている。

ノ―ネームから全てを奪った魔王は極悪非道かもしれない。

だがそれは全てを奪った魔王ではなく、負けたノ―ネームが悪い。

全てを奪われるのが嫌なら勝てばいい、敗者が勝者に従うのは当然の事だ。

奪われ、踏みに弄りられ、弄ばれ。名誉も矜持も尊厳も、ありとあらゆるモノを貶されても文句を言う資格も権利も無い。

負けて奪われたくなければ勝てばいい、敗者でいるのが嫌なら勝者になればいい、相手より弱いのならば強くなればいい、弱者であるのならば強者に成ればいい。

一誠は本気でそう思っている。

 

「貴方になにが―――」

 

黒ウサギは一度俯き、握りこぶしを造りながら全身を震わせる。

 

「今さっき箱庭に来たばかりの貴方に、私たちの何が分かるっていんですか!! 全てを奪われた我々の屈辱を、箱庭で生きていくことの大変さを、昔の仲間に返ってきてもらおうと頑張っている私たちの何を知っていると言うのですか!!」

 

髪をピンク色にし、顔を赤く染め上げ、全身を震わせ、涙を流しながら一誠を睨む黒ウサギ。

自分の中に溜まっていた鬱憤をある程度ぶちまけたのだろうか、幾分か冷静になった黒ウサギは、失望している一誠の瞳を見て、先ほどまでの勢いを無くす。

 

「お前みたいなさ、雑魚に限って自分の不甲斐なさを人の所為にするんだよなぁ」

 

一誠は黒ウサギから興味を無くしたように視線を外す。

他の飛鳥、耀、十六夜の三人は黙って成り行きを見守っている。

 

「お前達の何を知っているかだと? 知るか。魔王に負けたノ―ネームも、コミュニティを勝たせる事が出来なかった先代のリーダーとやらも、昔の仲間の為に頑張っているお前も。俺がお前等負け犬の事なんざ知っているわけねぇだろ。―――いいか? ギフトゲームを仕掛けて全てを奪った魔王が悪いんじゃない。負けて全てを奪われたお前等が悪いんだよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「―――っ!!」

 

黒ウサギの顔が怒りに染まるが、何も言い返せない。

事実、その通りだからだ。

 

『奪われるのが嫌な腰ぬけはゲームに参加しなければいい』

 

箱庭の説明を彼らにした時、黒ウサギはそう言った。

魔王に狙われるのが嫌なら目立たなければいい。

全てを奪われる覚悟が無いのならば、頂点なんぞ目指さなければいい。

どんな些細なことであろうと、リスクが存在しないなんてあり得ないのだから。

 

「…………私たちのしてきたことは無駄だったのでしょうか?」

 

ウサ耳をへにょらせ、落ち込みながらそう言う黒ウサギ。

 

「さあな。ただ、さっきも言ったが、負けて奪われる方が悪い。だから―――」

 

そこで一誠は軽く指を振るう。

 

「俺達が魔王を負かして全てを奪おうが、それは負けた魔王が悪いってことだ」

 

その場にいた誰もが絶句した。

荒廃しきった廃墟が綺麗に元通りに成っていたのだ。

砂に埋もれていた白地の路地は美しく整備され、木造の建築物は見た目以上に頑丈に造られている。石碑の様に薄白く枯れていた街灯樹は瑞々しい葉を枝先まで付けている。

 

「確かに兵藤君の言う通りね」

 

飛鳥は腕を組みながら笑みを作りながそう言い。

 

「うん。私たちが勝って全てを奪い返せばいい」

 

耀も微笑みながらそう言う。

 

「利子も付けて、しっかりと奪い取らねえとな」

 

十六夜は面白そうに笑いながらそう言う。

 

「…………皆さま、ありがとうございます!」

 

目じりに涙を溜めながら、笑顔でお礼を言う黒ウサギ。

 

「まぁ、それはそれとして、だ」

「ええ、そうよね」

「うん」

「こればっかりは仕方ねえよな」

 

一誠、十六夜、飛鳥、耀の四人は黒ウサギを囲む。

 

「ええと、…………みなさま?」

 

先ほどとは打って変わり、頬を引き攣らせながらじりじりと後退する黒ウサギ。

そんな黒ウサギを見て、ニヤリと笑う四人。

 

「いやいや、ウサギが人様を騙そうとしたからなぁ」

「しかもごめんなさいの一言もないしねえ」

「悪い事をしたら謝るのが当然」

「つまり何を言いたいかと言うとだな―――」

「「「「俺達(私達)を騙そうとしていた黒ウサギにはお仕置きが必要だよな/よね」」」」

 

そう言って、黒ウサギのウサ耳を同時に掴む問題児四人組。

 

「ミギャーーーーーーー!!!?」

 

綺麗に治ったノ―ネームの本拠地に、黒ウサギの悲鳴と、問題児達の楽しそうな笑い声が響き渡る。

この史上最強の問題児集団に目を付けられた魔王が可哀想なのか、それともその問題児達を抑えなければならない黒ウサギが可哀想なのか…………それは神仏ですら分からない。




久々の投稿です。

次の投稿は何時になるのだろうか……(白目)
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