オリ主の日々シリーズ   作:スピーク

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フリーターと奴隷のティーチングな日々

 

 

──なぜこうなった?

 

そんな思いが胸のうちから沸々とわき上がってくるのを自覚しながら、俺はテーブルの向かい側に静かに座っている人物を見る。

 

見た目の年齢は15歳前後。黒と銀の中間のような色合いの髪。大きな目と長い睫毛をそなえた整った顔。大きな凹凸はないがスラリとした身体は、可憐で静かな雰囲気も合わさって手折れそうな儚さを印象付ける。

 

そして何よりも目を引くのが、顔から足先にいたるまで所々に見て取れる傷跡。火傷か何かは知らないが、負ってすぐに碌な治療をしなかっただろうことは予想できる類いのそれだ。そこだけ見れば醜さが確かにある。

 

しかし、そんな酷い傷跡があっても尚、総合的に見れば『美少女』という言葉がこれほどまでに当てはまるのは奇跡と言えるんじゃないだろうか。

 

そんな外国人ビューティフルミラクルガールが、日本の安アパートの一室にいる。

アンバランス過ぎる。

しかも向かいに座るのは自称ワイルドカッコイイ系(他称は無視)のしがない大卒フリーターの俺。

アンバランス極まってる。

 

もちろん俺は純粋な日本人であり、家計図を辿っても外国人はいないのでこのガキは親戚でもなんでもない。さらに言うと義妹でも義母でも嫁でも彼女でもない。もちろん幼女誘拐でもない。……いや、あるいはそれくらいタチの悪い過程だったともいえるが。

 

ともかく、何故こうなったのか。

 

俺はテーブルに置いてある、ガキと共に受け取った一枚の紙を見ながら思い返す。

 

──事の起こりはほんの30分前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン。

 

誰かの来訪を知らせるチャイムの音が鳴ったのは、日も中天に差し掛かった頃。

俺は昼飯の用意をしようと冷蔵庫を漁ろうとし、そもそも漁るほどの物がなかった事を思い出して仕方なくカップ麺でも作るかとポットに水を入れようとした時だった。

 

(あ?誰だ?)

 

俺のアパートに来る奴なんて限られてる。ダチかクソババアだ。しかし今は平日の昼間。ダチは仕事だろうし、ババアもわざわざ昼間っからウチに来るとも思えん。

 

(新聞屋?それとも某テレビ局の集金か?)

 

しかし、それはないかと否定。フリーターで極貧生活送ってる俺に新聞を取る余裕なんてないのは向こうも知ってるだろうし、そもそも興味がない。集金もついこの間完膚なきまでにボロクソ言って追い返した。

 

「はいはいっと」

 

取り合えず出ないことには始まらないと思い、俺は玄関へと向かう。

 

「どうも、こんにちは」

 

果たして、そこにいたのはハットを被りロングコートを羽織った見知らぬ中年のおっさんだった。

腹の前で揉み手をしながら胡散臭い笑みを湛えている。

 

「あー、訪問販売か何か?だったらお生憎。ウチに衝動買いするような金の余裕なんてねーよ?宗教関係だったら尚のことさようなら」

「いえいえ、違いますよ」

 

その風貌があまりにも怪しかったんでつっけんどんに対応したが、おっさんは湛えた笑みを一切崩さず柔らかく否定。

 

「覚えておいでではないですか?半年ほど前、あなたに助けられたものですよ」

「あん?」

 

半年前に助けた?このおっさんを?………………あ。

 

「ああ、思い出した。あん時のおっさんか」

 

半年前、バイト先の喫茶店へ行こうと外に出た時、目の前でひったくりが起こったのだ。その被害者がこのおっさん。丁度そのひったくり犯が俺の方に走ってきたので、持っていたバイクのヘルメットを相手の顔面に向けてフルスイングして捕まえた事があった。

 

「けど助けられたって、大げさじゃね?」

「とんでもない。あの鞄の中には大事な手形や証券が入っていたので、なくなったとなると大事でした」

 

ふぅん。まぁよかったねとしか言えん。正直こっちとしてはンな事忘れてたので今更礼言われてもな。気分はいいが、他人事のような感じもする。

 

「まっ、今後は用心するこったな。で、それだけ言いに来たわけ?それとも何かお礼的な金一封でもくれるわけ?」

 

慇懃無礼だが冗談半分の言葉に、しかしまさかの返答がおっさんからあった。

 

「はい。あの時はあなたも急いでいたようで禄にお礼も出来なかったので、本日参った次第です」

「マジで!?」

 

ひったくり犯を捕まえた後、俺はおっさんに鞄を返してすぐ立ち去った。バイトにも送れそうだったし、警察に行って聴取とか面倒だったからだ。

しかし、あとから「ああ、お礼せがめばよかったなぁ」と後悔していたが、ここに来てまさかの展開。

 

「いや、なんか悪いね。別にそんなつもりこれっぽっちもなかったんだけどね。まぁおっさんの心を無碍にするのもあれだし、どうしてもって言うなら受け取ろうかな。いや、ここで断っても悪いしね。わざわざウチまで来てくれたんだし」

 

言い繕いもここまでくれば本音駄々漏れな俺の言葉におっさんは変わらず胡散臭い笑みでニコニコ。

というか言ってて気づいた。

 

「おっさん、よくウチの住所分かったな」

「あなたがバイクで走り去るとき、ナンバーを覚えていましたから。それで探し当てました」

 

……え?テレビとかじゃよく見るけどマジでそんな事出来るもんなの?

 

「おっさん、もしかして警察の人?」

「いえいえ、今はもうただの商人ですよ」

 

……そっか。うん、まぁ、深くは聞かん。聞かんほうがいい気がする。てかお礼もらえるなら何でもいいや。

 

「まっ、立ち話もなんだ。上がれよ」

「いえ、時間はあまり取らせませんのでお構いなく。取り合えずこちらを」

 

そう言って鞄から取り出した分厚い封筒をこちらによこす。中身を確認すると諭吉さんの大軍団だった。

 

「…………」

 

あまりの額に一時停止な俺。頭の中では「うっそだろ」「マジで」という言葉が乱舞する。

 

「あの時鞄に入っていたものを現金化した場合の額の10%です。遠慮せず──」

「あざっす!!」

「──お受け取りいただけてよかったです」

 

受け取らないでか。こんなもん、もうね、ひゃっほーいってやつですよ。棚ボタもいいとこだ。情けは人のためならずという諺を俺は今日から信じるよ。

 

「ふむ、あなたなら……」

「ん?なによ」

「いえ、実はあともう一つ、持ってきたものがあるんですが……」

「あざっす!なんでも貰います!」

 

俺に拒否権はない。あろうはずもない。ていうかそんなもんいらない。オールウェルカム。

 

「ただ、これからお話しする事は内密に願えますか?」

「そりゃもう!ボクちゃんのお口、ディフェンスには定評ありますよ!マジ、チャック!」

 

こんな大金貰ったらどんなお願いだって聞いちゃうよ俺は。恥ずかしながら、俺の心は金で買えるからな!

 

「話が分かる方だ。───おい、こっちへ」

 

おっさんが僅かに後ろに顔を向けながらドアの裏手の方に声を掛けた。するとややあって、そこから一人のガキが姿を見せた。

いきなりの第三者の登場に、流石の俺も目を見開いて驚く。

 

「最近、とある旧家の資産家が亡くなりましてね。その人には家族がいなかったもので、役所や親族や友人が彼の財産を貪る事になりましてね。私もコネを利用しておこぼれをいくつか頂戴したのですが、その代わりに手に余る厄介物もいくつか押し付けられまして」

 

おっさんが静かに佇むガキを見下ろす。その目には何の感情も乗っておらず、さらに言うと人間を見る目でもない。

つまり、その厄介物とは……。

 

「ええ、お察しの通り、これがその一つです」

 

ガキを人間ではなく一個の物として見ている言葉に少々思うところはあったが、それよりも俺はガキの見た目で頭が一杯だった。

 

見るからに日本人じゃない容姿。整った可愛い顔立ちだが、痛んだ髪やボロボロの布のような服のせいで陰気な印象を受ける。何よりも特筆すべきは顔や手足にある火傷のような傷跡。

 

誰が見ても明らかに普通のガキじゃない。

 

「先ほども言ったように私は商人です。ただもっと正確に言うなら"なんでも"取り扱う商人です。そこでこれの扱いに白羽の矢が立ったのが私だったのですが、見た通り、肉体労働が出来るわけでもなし、キズモノなので観賞用としてもよろしくない。もちろん、どうやっても売れないという事はないのですが、強引に事を進めてしまうと私自身も不利益を被りかねない。元手も掛かっていないので下手に売らないで処分するか捨ててしまおうと思っていたところだったんですよ」

 

男は今までの様相を全く変えず、しかし今までの印象をガラリと変える言葉を次々と出してくる。

胡散臭い?怪しい?……このおっさんは、そんなもんじゃない。そしてそんなおっさんの言葉を鵜呑みにすれば、このガキは──奴隷。

 

「あんた、今自分が言ったこと理解してんのか?自分は冷酷非道な人身売買屋って自己紹介してんだぜ?はっ、冗談も休み休み言え。この日本でンな事あるわけねーだろ。外国なら兎も角よぉ」

 

俺の中の常識が目の前の事実を否定する。

なんでも取り扱う商人?ガキが売り物?小説の世界かっての……と思う反面でしかし、なぜか肯定もしている。おっさんの言葉に嘘はないと。狂言でも頭がおかしくなったのかでもなく。事実は、本当に過不足なく事実なんだと。

 

「いえいえ、冗談ではありません。確かに日本で人身売買など聞かないかもしれませんが、それは聞こえてこないだけですよ。大きな外国のだろうと小さな島国だろうと、そこにいるのは同じ人間です。人種が違おうと持っている欲望は変わりません」

 

淡々と事実を突きつけてくるおっさん。

否定は出来る。おおかたこのガキはおっさんの子供なんだろ?とか。意味の分からん芝居なんだろ?とか。ダチの仕掛けたタチの悪いドッキリ?とか。

 

……そう否定したいがおっさんとガキの顔を見たら言葉には出来なかった。くそったれ。

 

「話が逸れましたね。今あなたは私を冷酷非道と仰いましたが、否定はしません。けれどそんな私にも人並みに良心や哀れみの情はあります。面倒や不利益は御免ですが、それでも信頼できる良い引き取り先がないかと考えたのです」

「オイちょっと待て」

 

いや、ホントに待って。何か流れ変わったっぽい?え、俺、ちょっとこの後の展開読めちゃったんだけど?え、なにマジでこの流れってあれ?

 

「そんな時、ティンと思いついたのです。そう言えば半年前、心優しい青年に出会ったことを」

「待てっつってんだろぉ!」

「見たところお一人で暮らしているようですし、余計なお世話かもしれませんが少々寂しい生活をされているのではと思いまして。こいつは身寄りのない奴隷です。家の手伝いをさせるもよし、あなたはロリコ……子供好きのようなのでおもちゃにしたって誰も咎めません」

「ホントにでっけえお世話だボケ!確かにガキは好きだがロリコンじゃねえよ!」

「童貞、卒業確定おめでとうございます」

「ぶち殺すぞ!!」

 

なにこのおっさん、掴み所なさすぎじゃね?

最初は金持ちだけど胡散臭い怪しいおっさんで、次に人身売買もする人非人なおっさんで、最後にノリのいいおっさんで……ってキャラ、ブレすぎだろ。

 

「出て行け!さもねえと警察呼ぶぞ!」

「それは困りますが、ただよろしいのですか?」

「……なにがよ?」

「あなたが引き取ってくださらないのであれば、先にも言ったように私はこれを処分するか捨てる心算です。他の引き取り手も思い浮かばないので。……それでよろしいのですか?」

「てめっ…!」

 

やっぱコイツ最低だ。今度は情に訴えかけてきやがった。

 

別に俺は正義漢なやつでもなんでもない。不幸なガキなんてのは世の中には五万といる。それを全て救いたいかと言われたらンな事はない。

確かに俺はガキが好きだ。知り合いのガキや近所のガキくらいなら救いの手を差し伸べてやらん事もない。ただし裏を返せば、見ず知らずのガキが何万不幸になろうが知ったこっちゃない。せいぜい心の中で「可哀想だなぁ」と同情してやるくらいだ。

 

しかし。

 

(その不幸なガキが目の前にいるんだもんなぁ)

 

すでに『見ず知らずのガキ』ではなくなってる。まだ会話はしてないが、俺の事をずっと見ているというのは気づいてる。その目には相変わらず感情はないが、だからこそ「どうなってもいい」と思っているのが分かる。

 

(引き取るって俺が?マジで?)

 

……い、いやいや。待て。落ち着け。ペット飼うんじゃないんだ。一人のガキの生活を見るんだ。果たしてこの俺にそんな事出来るか?出来るわけがない。

 

何か理由を見つけて断るのがベストだ。可哀想だが、それ以上に俺は自分が一番可愛いんだ。

 

「勘弁だっつうの。てか何で俺なわけ?あんたとは一度しか会ってないし、助けたっつっても実質ひったくり犯をぶっ飛ばしただけ。信頼出来る引取り先に選ばれる理由が分かんねーよ」

「商売柄、今まで多種多様な人を見てきましたからね。人の見る目にはかなりの自負があります」

 

なんだそれ。適当過ぎんだろ。もうちょっと根拠のある言葉返せよ。

 

「じゃあ仮に、仮にだぞ?引き取るつってもこちとらただのフリーターだ。なんつうの、戸籍とか?不法滞在みたいなの勘弁だし。そういう手続きの事なんて一切──」

「ご安心を。必要書類などすでに準備済みですので。保険証などもこちらに」

 

おい、処分するとか何とか言ってたくせに段取り良すぎじゃね?

まぁいい。じゃあ一番現実的な反対意見を出そう。

 

「俺には金がない。さっき貰った金が全財産と言っていい。確かに大金だが、それでもガキ一人分養うのを賄えねえだろ」

 

ガキ一人の衣食住、娯楽費、学校あるいは通信教育費etc……正直、どれくらい金が飛んでくか想像もつかん。そしてそんな金を稼げる程俺は賢くない!

 

「つうわけで、悪いけど他当たってくれ。絶対、俺より好物件な引き取り先がある───」

「当面の養育費+面倒を押し付ける迷惑料として」

 

細長い紙をおっさんが出して俺に手渡した。そこには数字が書かれてあった。

1分ほど、俺は固まりながらその紙に書かれてある数字を見つめ……そして、答えは出た。

 

「お嬢さんをボクにください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、いきなりやって来たおっさんのせいでトントン拍子に話が進み、ウチに奴隷のガキ……シルヴィが住まうこととなった。

 

さて、じゃあ最初の自問に戻ろう。

 

──どうしてこうなった?

 

解。

 

──俺の心が金で買えたため。

 

 

 





このあと

シルヴィとイチャコラしたり
バイト先の奇妙な店員と一緒に仕事したり
近所の服飾店の不気味な店員にフラれたり
シルヴィとイチャコラしたり

そんな続きが読みたい
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