焦凍がモネ、いや雪菜に告白して一週間が経ったが、特に変わったこともなく日々が過ぎていた。
ユーロンも階級制度がなくなったと聞き、フェルゼンやノキアとも上手く付き合いができていると聞いている。
その日は予定がなかったので騎士団の訓練を覗くことにした。
「やあっ!」
「はああっ!」
おーおーやってるなー
訓練場では木剣などをそれぞれ手に持ち諸刃さんに稽古をつけてられていた。
「あっ!陛下!」
騎士団員たちが俺に気づくと礼をしようとしたが慌てて止める。
「来てくれたんだね真司君。やっと相手になってくれるのかな?」
はあ……正直諸刃さんと戦うと疲れるんだよな……でも前の約束があるしな……しゃーない。
俺が木剣を手に取ると諸刃さんが笑みを浮かべて眼前に立つ。
「んじゃあお互いに魔法や個性の使用は禁止ってことで」
「はいはい。んじゃあ行きますよ!」
俺は木剣を握ると一気に距離を詰めると諸刃さんが鋭い突きを放ってきたので素早く一歩横に移動すると木剣が横を通り過ぎてさっきいた場所にものすごい風圧が飛んだ。
そのまま諸刃さんが返す刃で横薙ぎにする前に足払いをかけたが寸前でジャンプして躱された。
そしてジャンプした諸刃さんは刃を下に向けてそのまま叩き込もうとしたので横回りに転がって避け、下から救い上げるように諸刃さんめがけて剣を振るう。
が諸刃さんは先ほど叩き込んだ剣を素早く引っ込めて眼前に構えて俺の下段からの攻撃を防ぐ。
「ちいっ!」
「さすがだね!真司君!」
そして防いだ剣でそのまま押し込まれて俺は倒されて剣を首筋に当てられた。
「……まいった」
「いや、かなり危なかったよ。やっぱりすごいね」
「……アンタと戦っていると実感が湧かないんだけどな……」
そして俺が立ち上がると
「すげえー!」
「流石諸刃様!」
「でも陛下もすげえよな!」
騎士団員たちが褒めてくれるのを聞いた俺は多少自身がついた。
そして訓練が終わり騎士たちが持ち場につくと
「……ねえ真司君」
「なに……?」
「こ、このあと時間ある……?」
「ありますけど……」
「じゃ、じゃあ今日一日付き合ってくれる?」
「どっかいくんですか?」
「あ、ああ……ちょっと服を見たくてさ……いいかな……?」
「いいですよ」
「ホントに!ありがとう!」
そして諸刃さんと出かけることとなった。
・・・・
望月諸刃side
真司くんと出かけることができた私はなぜかウキウキしていた。
剣を振るう以外でこんな気持ちになったことは初めてだ。なんでだろう……と疑問を持ったが折角真司君に付き合ってもらってるのに考え事は失礼だと思ってその考えをすぐに引っ込めた。
そして今はベルファストの王都アレフィスにある呉服店にいる。
「どんな服が欲しいんですか?」
「そうだね……あんまり露出が高いのは好まないかな」
「んじゃあこのスカートはどうですか?」
「んん……これもいいかな……」
そして何点かの服を選んで試着室に入った。
正直こんなに悩んだことはなかった。でも真司君に見てもらうと思った以上悩まずにはいられなかった。
むむむむむむ……!
そして悩んだ挙句私は赤ドレスを選んで着た。
私が試着室のカーテンを開けると真司君がおおお~と声を漏らした。
変なのか!?変なのか!?と不安が胸をよぎったが
「すごい似合ってますよ諸刃さん!」
え……?
「ほ、ホントかい!?」
「ええ!」
「よ、よかった……」
私はその答えに安堵して胸をなでおろした。
そしてそのままその服を精算しようとしたら
「……真司君?」
「俺からプレゼントします。すごい似合っているし」
「え!?い、いいの……?」
「はい。諸刃さんがよければ」
「う、うん……ありがとう……」
私は顔が赤くなるのが止められなかった。なぜなら真司君にプレゼントされたという事実が私にとって嬉しかった。
やっぱり変だな……最近真司君のことばかり考えるようになるし……何かの病気じゃないだろうな……?でも私は神だから病気になんてならないはずだが……うう~ん……謎だな。
「やっぱり似合っています。諸刃さん。綺麗です」
真司君に褒められてその考えはどうでもよくなったが、同時に胸の鼓動がなぜか早くなった。
そして赤ドレスを着て店を出て、歩いていると
「諸刃さんって甘いものとか好きですか?」
「え?ああ、まあそれなりにね」
「んじゃあおいしいクレープ屋知ってるんで行きましょうか?」
「いいね!行こう!」
「ちょっと!引っ張らないでください!クレープ屋は逃げませんから!」
私は思わず真司君の手を引っ張ってしまった。
そしてとても嬉しいと感じ、この時間が永遠に続いてほしいと世界神様に祈らずにはいられなかった。
真司君は嫌がらずに私の我儘に付き合ってくれた。
やっぱり優しいな……真司君……こんなに気に入った人間はいなかったな……冬夜くんとはまた違った魅力があるこの子は……優しさもそうだが純粋な喜びの気持ちが……私は惹かれたのかな……
そしてクレープ屋に着くと、オススメのクレープを選んで口に頬張ると
「美味い……!」
クレープのフワッとした食感にクリームの甘みがベストマッチして美味しさを引き出していた。
「美味いでしょ!そうですよね!」
「うん……!」
そしてクレープを食べ終わると私はこの時間の終わりになぜか寂しさを感じた。
「そういえば諸刃さんって好きな人とかいるんですか?」
「え!?な、なんでかな……!?」
「いやあ~諸刃さんって美人だし優しいから」
「ええええええええええええ……!?」
不意を突かれた私は動揺を隠せなかった。真司君の顔を直視できなかった。
そして真司君に綺麗と言われたことが嬉しく私の気持ちを気づかせるのに充分だった。そうか……私は……
「し、真司君……」
「はい?」
「わっ、私は!「諸刃ちゃんは真司君のことが好きなのよ!」えっ……ちょっ花恋姉さん!?」
なぜ花恋姉さんがここにいるんだ!?ていうかユミナやレイ子、ユウキまで!?
「真司君がラブラブデートをしていると情報が入ったのよ。そんで皆でつけたら諸刃ちゃんが楽しそうだったのよ」
「そ、そんな……」
「諸刃さん……」
「諸刃さんは真司さんのことが好きなんですよね?」
「え……?う、うん……!」
「なら真司さんのお嫁さんになりませんか?」
「え……いいの!?」
「はい。真司さんもよろしいですよね?」
「うん……ユミナたちがいいなら……」
「いいの……やったー!ありがとうー!真司君ー!」
「ちょっ!急に……!」
こうして私、剣神望月諸刃は空野真司の恋人となった。
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