…なんだ、青葉か。
身体は大丈夫か?率直に言うならきつい。身体が燃えているような感覚だ。だがこれは…。分かっているだろ?
…ここまで続いていたものがこの状況に収束するとはな。提督も色々と頑張った。だが、はしごを外されるとは。もう我らは目の上のたんこぶ扱いだな。
そんな顔するな。戦いに勝つことにしか執着してなかった私を真に人間にしたのはお前たちじゃないか。だから最期まで戦い、運命に抗え。そして私に生きている事への良さをまた、教えてくれ。
青葉。この我らの戦いの行く末を未来に伝えてほしい。頼む。
「粗茶でございます」
浅野學峯という人物の実力はずっと聞いていたが、正直面を喰らっている。
「…頂きます」
茶道、特にわび茶の勃興は室町時代の末期に武野紹鷗とその弟子千利休の広めたものである。千利休は秀吉に重宝されたものの、自分にとって都合の悪い存在となったのか罪を問われ切腹を命じられる。
だが、利休の子供らは武士に匿われ、大半が武士であった弟子の利休七哲は罪に問われず、様々な流派に分かれて今の時代に茶の湯を伝えている。
…俺は綾や信悟みたいな教養が無い。最近浅野學峯が茶道にハマっているという噂を聞いていた為、少しは練習したが全くの門外漢のため、この接し方で合っているのか。それすらわからない。
「…で、私にどういったご要件で」
不覚にも要件を忘れていた。この浅野學峯、かつてはE組が在籍していた椚ヶ丘学園の理事長であり、殺せんせーが先生になることを許可した人物であり、殺せんせーをE組の教師以外では良く知っている者である。
「E組が誰の手によって徴兵扱いをされたのかを知りたい」
単刀直入に聞く。
「それを何故私に」
聞く、とまで言わなかった。外面用の顔を持っているのは情報で知っていたが、その顔では無く、疑問を呈した様な顔であった。
「大きな理由が一つあります」
俺は深呼吸し、言葉を絞り出す。
「今年の春、E組の副担任であった烏間惟臣陸将と烏間イリーナの両者がマレーシアのクアラルンプールを内偵していました。ですが、イリーナはそのまま失踪、陸将も利敵行為の疑いとして極秘に拘束を受けていること。私はこの事をつい先日に知ったことのです」
マレーシアはイスラム教国である。コーランの強さで激しい抵抗すると思ったが、非イスラム教の教徒の力もあり、その宗教はイスラム教を上回ったのである。教祖は今も存続している国家や国連からの干渉を拒否し、深海棲艦には港使わせているという消極的ながら深海棲艦を支持する陣営に回っていた。
「…」
浅野學峯は微動だにしない。考えていた範疇の言葉だったようだ。
「…烏間陸将が嫌疑不十分で今日日本に戻された事をご存知ですか?」
浅野學峯は口を開く。既知の言葉ではあったが、民間に既に漏れていることに俺は驚いた。
(狐め)
かつては真面目で優秀な優しい人間だったが、教え子の死に絶望して力を信奉するようになったという話を聞いていた。その中で格闘技をわずか数日でマスターしたという。立ち振舞いに全く隙がない。
「…それを先に言われるとは」
悔しいが偽ざる本音である。…おそらく、俺はこの浅野學峯という人間を超えることが出来ない。何をしゃべっても隠すことや、誤魔化すことは不可能だ。自分でも口数の多さで聞きたいことを聞き出すことが出来、威圧する人間を黙らせることは出来る。だが間違いなく彼は自分以上にそれが出来る。
「分かりました」
學峯は口を開いた。自分の心の中を覗かれたようだった。
「あなた達、意外と疎まれているのですね」
図星である。
「だから、表向きは私がE組に対して慈悲深く見せるように思わせ、様々な利用価値を提案するように見せかける、そういう事ですね」
學峯は顔色一つ変えずに言う。
「…はい。その通りです。確実な可能性は無いながらも、大臣の後ろに居て献策している人間である可能性が一番高いかと」
私はそう言い切った。
「…だが、それを調べるには政治に携わっていない門外漢で無いと禍根を産みかねない。だからこそ私である必要がある。あなたの婚約者の家族だとすぐに気付かれてしまう。だからあなたたちとは繋がりがあるが、すぐには分からない繋がり。時間稼ぎすれば逃げられるような有能な人間を選んだ」
読みが深い。正直表面上は俺等を支持している派閥に居て支持しているフリをして、頭の中では俺達を嫌っている人間の可能性は充分有り得る。そのような場合に対して俺たちは全く対策をしていない、いや、出来なかった。
「すべてその通りです。…受けてくれますか?」
そこまで頭が回る人間だから、話は早い。直球勝負するしかない。
「良いですよ」
良かった。これ以上の人材は中々居ない。こちら側に付いて来る事を心底安心した。横車ばっかり押していたのをこうやってリカバリーしないとな…。
「ですが、一つ条件があります」
…?
「何の条件でしょうか」
「それは…」
お盆が終わった。僕たちは彼女らの学びをサポートしてから一ヶ月が経っていた。
鎮守府は迫る大規模な奪還作戦を意識してかどんどんとブリーティングや戦術が増えていっている。弱音を吐く娘も居る中、僕たちの運命を大きく変えていく風が近づいてくることをまだ知らずに居た。
(…)
机に向かってひたすら問題を解いていく。陽炎型駆逐艦九番艦の天津風は真面目に勉強を怠らず、メンバーの中で最も解くスピードが早い。
(…)
だが俺は彼女がいつも着ている服に対して邪念を払われずに居た。
銀色のロングヘア、赤と白の吹き流しにどこの学校のものでもない黒いセーラー服。スカートは無く、セーラー服が身体を包んでいるが、問題は黒いセーラー服が透けていて、その上で肌着も着てないので偶に下着が見えるのである。
(こうして見ると真面目で勉強熱心な娘なんだけどなぁ)
どうしても異質、いや異常な服装である。だが、艦娘の痴女とも呼べる衣装事情はそれに留まらない。
「ねぇー!勉強終わったよ!だからかけっこをしようよ、かけっこ!」
そう言ってE組のスプリンターである木村正義(ジャスティス)を困らせている駆逐艦の艦娘は島風である。
「記述式の問題が全然書けてないよ。かけっこはそれからな」
島風は天津風さんより異常な服装である。セーラー服を改造したような服装だが上は丈が足りない格好でお腹が丸出しであり、女性器を隠すものが腰で支えている黒い紐状の見える下着である。その上で紐状の下着が見えるほどの短いスカート。
(そんな露出狂みたいな格好なのに中身は痴女どころかスピード狂で色気もへったくれも無いという)
かつて大日本帝国海軍最速の駆逐艦の艦娘であったのが色濃く影響された性格なのか、E組最速の木村と毎日走り比べたがる。艦娘だから基本的に島風の方が速いので、木村は負ける格好だ。心なしか木村の顔はやつれている。
「ほら、島風。木村さんを困らせることはしないの!」
天津風さんは注意する。
「はーい」
そう言われて元の椅子に戻った島風。
(真面目に勉強に対してきちんと取り組めば、優秀な娘なんだけどな)
その証拠に選択問題は一つも間違いがない。速さ以外に対してはかなり飽きっぽい性格であるだけで勉強が出来ない訳でもない。
「杉野さん?」
思索に耽りすぎていた。目線を下げると身長の清霜さんが目線の下に立っていた。俺は顔を下げて、なるべく圧迫にならないように話を聞く。清霜さんの目は俺が見ているだけでも、元気が無い顔をしている。
(どうするべきか)
「どうしたの?」
「この問題が良く分からなくて…」
彼女自身も普通に話しているのに今にも泣き出しそうだ。人数の都合で俺に担当が回ったが、正直渚や有希子の方が彼女にとって良さそうだ。提督や教育長の香取さんに言ったほうが良さそうだ。
「清霜さん」
夕雲さんがいつの間にか横に居た。
「ね、姉様~」
と言って彼女の胸に飛び込んだ。
「よしよし~怖かったわね」
(やっぱり怖がられていたー!)
「杉野さん、申し訳ございません」
頭を下げてお詫びをする夕雲さん。
「いや、大丈夫ですよ」
夕雲型一番艦の夕雲さんと十九番艦清霜さんという、一番上と一番下の組み合わせである。ただほぼ近い歳で構成されているらしく、長女らしく振る舞いながら年齢差は大きくても2歳しか変わらないらしい。だが夕雲さんにはどこから手に入れたのかが分からないが大人の色気と言っていいほどの貫禄があった。
(今みたいに姉妹の行動、感情を瞬時に把握している。駆逐艦のネームシップはこれくらい出来るのか)
「清霜さんはまだちょっと大きな男性は苦手みたい」
夕雲さんは優しげな表情で清霜さんの頭を撫でる。
「…やっぱり渚が向いているのかなぁ」
半分自己分析、半分弱音であった。
「今日の勉強時間が終わったら、提督と話し合いましょう」
夕雲さんは提案した。本当にしっかりした女の子である。
(有希子とは違うけど、一本芯が通っている)
その人間性は、艦娘になってから得たものなのか、元々の人間性の賜物なのか。
「わかった」
清霜 戸籍名霜田 清子
故父親はプロレスラー。母親は夫の競技中の死に精神の状態を著しく崩し、一人っ子であった彼女は母方の祖母に預けられた。祖母は清子を可愛がりながら生活の術を教えていた。だが、元々は祖母の家はプロレス団体を支援する家であった為、清子はプロレスラーが出入りする事で父親の死を思い出し、トラウマを形成してしまう。それによって重度の男性恐怖症、特に高身長の男に顕著に見られるようになった。
以上の理由を以て鎮守府生活を送るために必要なのは男性恐怖症を克服すること、すなわち精神科医の治療が必要となる。
永島先生の簡易な所見を見て、静かにため息をついた。小さな頃はやや小さめだった身長が一気に伸び、195cmに到達した時はあいつと見合う自分になれたと嬉しかった記憶がある。だが、今その身長は清霜を呪わせている物であった。
「大淀」
側に居た艦娘に声をかける。長身の男性恐怖症というなら艦娘の中で信頼している人間を選んで自分の意思を伝える他ない。
そして近日起きる戦いには参戦することが出来ない事を。
「失礼します」
夕雲さんは凄く清い声を出して提督の執務室の扉を開いた。ここは艦娘と俺等が艦娘を教えること以外に作業する部屋も兼務している。
「杉野!」
今日は事務作業が主であった渚と奥には磯貝の二人が事務作業をしていた。ふたりとも山のような資料をパソコンに入れている。艦娘は全員耐水や耐圧力であるタブレットを所持している。それはこうやって情報入力を手で書き込むことが大半だ。通信を傍受されることへの警戒心が防衛省は未だに高い。入力が終わった資料が山積みになっている。
(ふたりとも手慣れてきているな)
野球選手になる自分にパソコン操作なんか必要ないと思っていたが、こういうところで必要となるとは思っていなかった。
「渚も板についてきたなそのタイピング」
「あはは…自分でもここまで早くなるとは思わなかったよ」
いつも通りのやりとりである。
「夕雲さん、清霜さんこんにちは」
磯貝さんは夕雲さんに話しかける。
同じ様に磯貝はタイピングをする手を止めて二人に話しかけていく。
「はい、磯貝さんこんにちは」
あっ。磯貝は俺ほどじゃないが大柄だ。
その証拠に並んだ渚が小さく…あれ、
「渚、身長高くなってない?」
俺は友達の変化に気づいた。
「うん、提督から成長ホルモンを投与しろって言われて。低くて得するのは競馬とか競艇の選手だけだとも言われたよ」
「で、今少し身長伸びたわけか。そういや先生始めてから顔合わせることが無かったな」
暗殺者、それは確固たるスキルではあるが、提督はそれに変化を加えたいように見える。
「こういう身長の伸ばし方があるんだなって、もっと前にやっておけば良かったよ」
「大きくなって舐められることが無くなれば良いな」
「…って!そこに大きな男性が苦手な娘がいるじゃん!」
…あっ。しまった。なんでここに来たのか忘れていた。後ろを見ると呆れた顔をした磯貝と色んな感情を我慢している夕雲さんが引きつった笑顔の表情になっていた。
「す…すいません忘れていました」
夕雲さんはその言葉を聞いて怒りの色が消えていった。
「…謝れる人間は好きよ。それが出来ない人間がどれだけ居ることか」
夕雲さんはそう良い、清霜さんを連れて、只今無人である提督の机の前に立つ。
「提督―?いらっしゃいましたら、出てきてくださるー?」
「ガチャ」
扉を開けて出てきたのは大和さんと大淀さんだった。
「お待たせしました。提督は本部からの特命の連絡が来たので席を外しています」
(…嘘だな)
提督は自分で清霜さんのトラウマを刺激するのを避けたのである。
(まぁ、動揺して話を聞いてないと良くないし、精神的に疲労してしまったら元も子もないからな)
艦娘の長である大和さん。女性でも見たことが無いレベルの長身は見るものを圧倒させる。身長187cmはE組の男子の殆どより大きい。
(こういう場合って清霜さんはどうなるんだろう…)
清霜さんは嬉しそうな表情で大和さんに近づく。
「大和さんいつも大きいな、戦艦ってみんな大きくて良いなぁ」
そう言って清霜は大和さんにしがみついて登ろうとする。身長が高いだけあって、普通の人間では味わえない高さを味わうことが出来る。そう言えば、時津風さんも提督の頭にしがみつくのが好きだっけ。
「ほら清霜さん。話し合いをするので、しがみつかないで隣の会議室に行きますよ」
大和さんが清霜さんを手慣れたように身体から剥がし、床に立たせる。
「あーん」
名残惜しそうに清霜さんはその場にへたり込む。
「ほら、艦娘であるならちゃんと立って椅子に座るのよ」
夕雲さんがそう言って立ち上がるのを促した。貫禄が最早母親である。そう言ってテーブルに座っていく俺たち6人組。…6人組?
「か、茅野居たの!?いつの間に?」
全然気づかなかった。渚の気配消しを完全にコピーしたかのようだ。
「ふふふ…。きちんと私も渚の技術を練習して実践でしているのよ」
茅野はドヤ顔で決めている。心なしかつやつやなのは…。
「渚、あいつお前に抱かれている間になんか盗まれているぞ」
小声で渚に言う。
「僕も色々と教えてもらっているから…」
といつもの照れながらも、渚は流されている訳では無いことがわかった。
「…おまえも成長したなぁ」
ほんの数ヶ月であるが、渚は温厚なだけでは無くなっていた。
「お話は終わりましたか?始めまさせてもらいますね」
大和さんが声をかける。
「す、すいません」
「では、始めます」
大淀さんはそういった言葉を意に介さず、話し始めた。
清霜さんの生育環境、戦闘訓練での成績、学校や鎮守府での様子、トラウマ、そしてマレー半島の奪還計画。
「清霜さん、今のあなたはまだ戦いに従軍するには課題があります。戦いに出るために精神科医の治療を経る事が必要です」
大和さんはそう結論づけた。話を聞いている間、虚ろにも見えた清霜さんの表情が涙顔に変わる。
「うぇぇぇん!」
清霜さんがついに泣き出ししまった。そう。教えられたことで一番重要な部分、艦娘はどんなに子供のように居ても戦うという心が差異はあれど本能に根付いているのだ。
「みんなは戦いに行けているじゃん!なんで私だけ…」
泣きじゃくりながら話始める清霜さん。出来るなら戦いたくないと話す電ちゃんとは好対照である。
「それは、私達だけで戦っているわけでは無いからです」
大和さんは言い切った。
「まだ、ここ鎮守府の中では提督や研究所の所長、E組の人たちにしか身長の高い男の人たちには遭遇しません。だが作戦となると様々な軍の軍人と正対する時があります、軍人の中にはプロレスラーの様に身体が大きい人は当たり前のように居ます。その人達の前で我を失ってはならないのです」
大和さんはそう毅然と言った。当然の帰結であった。清霜ちゃんは不満ながらも返せる言葉は無いようだ。涙の跡は乾いており、スネたようにそっぽを向いている。
夕雲さんはその顔を愛しい自分の娘を見ているように見ていた。そこから大和さんと大淀さんに目をやり、こう話した。
「…いささか厳しいのでは。今度の戦い、恐らく今までの深海棲艦との戦いで最も大規模になると聞きます。一人でも戦える人間が欲しいと思いますが」
大和さんと大淀さんから発する冷徹さを跳ね返すべく夕雲さんが声を出す。
「だからこそ、まだ戦いの練習を教えているばかりの半人前のままで一回目で沈んでしまってはいけないのです」
完全に正論だ。だが、ここで渚が声を出した。
「僕にいい案があります」
!
「渚、いい案あるのか?」
ここに来て磯貝が口を開く。
「はい。艦娘を輸送する船、輸送艦おおすみには乗りはしますが戦いは見学するという形にします。僕と茅野が一緒なら対処出来るでしょう」
攻めた提案であった。さながら社会科見学の如く引率するという。
「ふーむ」
大和さん大淀さんが二人とも唸っている。
「多分やめた方が良いですね」
大和さんが口を開く。
「ダメなのですか?」
渚が聞きかえした。
「私が艦娘として初めて大規模な戦闘に参加したのは、アンカレッジ防衛戦でした」
「はい、その事は聞いたことがあります」
レイテ沖で敗北を喫し、大半の艦娘が傷を負った事を深海棲艦は見逃さず、現在日本の経済を支える大動脈と言っていいアラスカ航路への出撃を開始した。
「艦娘の大半、特に大型艦は病み上がりで満足な行動を取れず、苦戦は必至でした。中で採った行動はまず部隊を都市救援に部隊をギリギリまで部隊を投入しました。そしてわずかな数の私を含む大型艦と輸送艦は囮として深海棲艦に攻撃、完全に深海棲艦に包囲されるまで引き付けました。その後、都市救援に見せかけた部隊を急旋回させて包囲した軍隊を攻撃させて混乱に陥らせて、私達は勝利を掴みました。輸送艦は沈没寸前まで行った上に、船員も死者も何人か出ています。ここでわかった通り、安全そうに見える輸送艦でも危険は隣り合わせです。清霜さんは良いでしょうが、E組の皆さんはこの様な危険な目に合わせる訳にはいけないのです」
大和さんはアンカレッジの救出作戦の一連の流れを説明し、輸送艦の危険を説諭してきたが、最後の一言で清霜ちゃんより俺等の心配をしている事となる。
「清霜さんより俺等の方を心配しているのですね」
磯貝は冷静に指摘した。
「…提督とあなた達の担任であった烏間先生とは旧知の仲でした」
大淀さんが口を開いた。
「!」
「防衛大学校で教官ですら敵わない強い野球部員が居る、という噂を聞いて烏間海将は防衛大学校にアポ無しで訪れて提督と一戦し仲良くなったらしいです」
昔のヤンキー漫画みたいだな…。
「…だから提督にとってはあなた達も失いたくないのです。烏間海将は今、利敵行為したとされて拘束されているから尚更」
とんでもない爆弾が投げられた。
「な…!」
僕らは驚愕の声を出した。
「どういう事ですか!?タイに行っているのでは」
渚と茅野が動揺した言葉で返した。
「…もしかして、イリーナ先生と関連しているのでは?」
磯貝が口を開く。
「その通りだ」
と、大和さんでも大淀さんでも無い声が聞こえてきた。
「提督!」
清霜さん以外が声を出した。
「清霜の話はまた後日決めよう。烏間海将が羽田に到着し、こっちに向かっているという知らせだ」
これがE組においての初めての戦闘となり、一番大規模な戦役に多大な功績を残す「マレー半島の戦い」の開幕である。そこでE組は終生の敵との遭遇となるが、まだ彼らには知るよしも無かった。