艦これ×暗殺教室「青春を潮と血に染めて」   作:みかんバーグ

7 / 8
やっと烏間さんを出せた…
実はタイミング悪くアニメの暗殺教室をほとんど見てないんですよね
見ている間でもかなり苦慮して端を折っているのは見て分かったんですが
竹林の話は番外編みたいにDアニメストアで公開しましたが、地味に終盤の話に繋がっていたし、やって欲しかったなぁ…


暗殺教室×艦これ第六話「マレー半島の戦い」プロローグ後編

 獰猛な犬と本当はあっけらかんと笑いたい犬、その犬に仕える犬。私には今、大会議室の前で3匹の犬が話し始めていた。獰猛の犬は我らが「担任」の烏間さんであった。

「諸君らを軍人として迎えた事を私は恥じたい。先の太平洋戦争においての学徒動員と同じものである。総力戦であろうとも、本来は未来を担うべく学生にその術をやらすべきでは無かった。…だが私は軍人じゃないあなた達に国の命運を任せることになる」

 獰猛な犬はどこまでも悲しい表情をしていた。私達はこの人のこの顔が悲しみに暮れる顔を一度だけ見たことがある。

「烏間室長…」

 誰か呟いたかが分からない。そしてその話しの中で烏間さんの左目の瞳孔が開ききったまま全く動いていない。更に車椅子に乗っていたのが、この言葉の重さであった。

「イリーナにクアラルンプールに潜入捜査を命じたのは3月の始めだった」

 普通に喋っているはずなのに凄い重みを感じる。もう何が来るかが分かっているからだ。

「去年の春以降、クアラルンプールは避難してきた人間たちが大きな塀をつくり、そこに籠もるようになった。そして深海棲艦に消極的に協力をするように成り始めていた」

 烏間さんは尚も過去を話し始める。

「昨年の冬に海上職員たちによりフィリピン周辺の掃討に成功した為、私達統合情報部は将来の禍根となるクアラルンプールに偵察兼指導者の暗殺を試み、イリーナを送り込んだ。だが、この試みは失敗であった。彼女は2.3日程で指導者側に手に落ちたか殺害されたか、いずれにしても私は最強のカードを失い、あまりにも呆気なく裏切り者のレッテルを貼られた」

 裏切り者…。そのレッテルは学業成績の不良より重く、そしてその結果の持たされた罰の大きさを知った。

 左目の視力はとうに失っている。車椅子に座ったまま立てない。もう軍人の責務を負える身体では無くなっている。

「これが戦争…」

 頭の中で理解はしていたが、あまりにも重い事実である。殺し殺されるだけじゃない、こうやって味方に疑わられ、この先の人生を誰かの介護無しには生きられなくなる、柳沢と同じになるという事実が私達の心に鉛のようにのしかかった。カルマくんですら一言も発しない。それはこの場の静寂を意味した。

「君たちを巻き込むつもりは無かったが私にはもう味方が居ない」

 だが、烏間さんはそんな現実を越えていく、更に厳しい現実を話していく。

「そしてこうやって私を直接的に君たちへと話すこと、それ自体が誰かの作為に違いない。だが、だが、妻の生死を見つけるにはこの手段しかない」

 そう言い、息を吐く。涙は流していない。だが私には烏間さんが無理をしているように見える。

「烏間先生…少し聞きたいんだけど、どうしてここに来ることができたのですか?」

 敬語がまだ使い分けられないのか、寺坂くんはぎこちない言い方であった。

「それは防衛大臣のおかげだ」

 烏間先生は首だけを寺坂くんの方を向いた。見えない、動かせないはずの左目が真摯という形を作っているように見えた。

「防衛大臣は事前に他の官僚が俺を「命令」をする前に横からかっさらった。だから俺は今の防衛大臣に助けられたと言っていい」

 私のこころに不穏さが一気に陰っていった。命令という言葉に悪意を感じた。それは嫌疑不十分という言葉の効力を無くすものであった。

「そんな…!」

 私は声を上げた。

 彼は防衛省に入った。

 彼は最強を保ち続けた。

 彼は困難であった椚ヶ丘学園E組の任務を完遂した自衛隊員だった。

 彼は日本が誇る自衛隊員であった。

 …そして私が欲しいと思った人であった。

―――なのに彼は命を棄てられようとしている。

「…私もここまでとは思わなかった」

 宇田川提督も絞り出すように言葉を話す。この事態を

「もう賽は投げられている。羅針盤も時間が無いことを示している。イリーナ氏は生きているか死んでいるか分からない。だが、防衛大臣がここに来ることを許したということは眼の前にあるのは兵士としての殺し合いの道を行けということだ」

 堂々と言葉を発する。殺し合いの言葉が重い。

「君たちの強さは落ちこぼれという共通認識を成り立っていた。だが、今回は違う。そこから生まれた友情や愛情、この状態に追いやった誰かに対する反発心だけで繋がっている。恩義のみだけでイリーナ救出に動くとしても、死は間違いなく近いところにある。…俺は、そういう事をさせたくなかった」

 同じことを何度も話している気がする。それほどまでに彼にとってありえないことなのであろう。

「正直、もう話し合える時間も無い。イリーナ氏の奪還をしたい人間だけ手を挙げろ。挙げなかったとしても私は適正に扱う」

…提督はそう言い切った。

 あぁ、どこまでも彼の理想はまっさらだ。例え誰か汚そうとも絶対にそのまっさらな旗を立て続ける。どういう人生を送ってきたのだろう、現実という汚れは自分から被っていく。死ぬまでそうするのであろう。殺せんせーみたいに現実に合わせて道の形をつくるタイプではない。優秀な人なのであろう。そして自分から泥にかかることを厭わない。それでも自分の理想を貫くのだ。その身体に残る傷跡と共に。

 そしてその隠しきれない苦悩が私達を前へと動かす。

「…良いのか?」

 提督は全員が手を挙げた全員を見回した。誰かが死ぬかもしれない。でも後悔することはきっと無いだろう。

「だとしたら、今まで教えなかったことも教えなければならない」

 と提督は隣の大和さんと大淀さんに目配せをした。

「…ついてきて下さい」

 何を見せようとしているのか。私達は緊張したままついて行くことになる。

 

 

 …いつも事務作業を行っている執務室。非常口なのか、と思っていた扉は地下に続いていた。不自然に隆起しながらもそれ以上にえぐれている大地は東京空襲を思い出す。コンクリートでその地面のえぐれに張り付くような空間があった。夕闇が近づくがここから見えるのは南東の空だけであり、夜の空が見える。

 …27人と大和さんと霧島さんがこの部屋に居る。

「まず、こんなこともあろうかと、捕まえておいたモノが居ます」

 霧島さんはメガネをかけ直しながらもノートパソコンを開いた。画面の中には見覚えがある「人」が居た。

「律!」

 その場に居るE組が全員驚いた。

 かつて3年E組において殺せんせーを殺すために導入された自律思考固定砲台。その砲台は殺せんせーの手入れにより、人格を有した強力なAIとなっていた。

 その名は律という。コンピューターとコンピューターの間に流れる回線とパソコンという頭脳の中で永遠の命を得ようとしているAIであった。彼女は殺せんせーが死んだことにより、固定砲台から脱出したのである。

 身体の無い生命であるということはどこにあるか、存在する場所すら流動的な命なので分からなかったはずである。

 どういう技術で律の捕獲を果たしたのか。27人に驚愕の感情が広がる。

「マジかよ、すげーじゃん」

 岡島くんは興奮気味に三村くんと話している。

と、同時に律が口を開いた。

「…私はあくまで最悪の時を考えての準備でした」

 それは今の状況が「最悪」であることを示していた。

「本来彼女は、あなた達がバラバラになった時、私達の軍が壊滅した上で提督や多くの艦娘が沈んだ時などあなた達の力が十全に発揮出来なくなった時の補助でした」

 霧島さんが冷静に話す。

(今に至るまで一人も沈めなかったのに…)

 提督はずっと最悪の事態を考えていたのか。レイテ沖の戦いが心残りだったのか。

「私の前職はシステムエンジニア兼でした。AIはこれからの世界のキャスティングボートになりうる」

 その言葉は僕らが浮かれた一時の熱気を冷ますような一言であった。霧島さんの言葉には何かの力が入っていた。自分たちの力がキャスティングボートであるかの様に。

「霧島さんのおかげで彼女はいろいろと強化しておきました。貸与のスマホにダウンロードする準備は出来ています。ただ一つ注意としてはGPSで現在位置が分かる装置は相手にも居場所が割れる場合があります。作戦によっては電源を切ったほうが良いでしょう」

 大和さんはそう言いながら床に手を付いた。よく見るとその床は溝が1m程度の円形を描いてあり、円形の何かを蓋をしているのがわかった。

 蓋が開き、黄色の光が放たれる。目が潰れるほどの眩しさのはずなのに何故かそれは目を見開いていられた。

――――羅針盤?

蓋が完全に開ききり、黄金の光の中に羅針盤が割って入ってきた。

「あの、これは…?」

 ただの羅針盤では無いことは出てきた時の光で分かる。それに、羅針盤というものは大きな方位磁石である時点で船に置いていないというのは不可解である。

「…これは我が艦隊の行く先を決めるものです」

 大和さんは冷静に答える。

「普通の羅針盤では無いことは分かりました。行き先というのは…?」

 眼の前の風景に困惑した磯貝くんが尋ねる。その羅針盤は明らかに南西を示していた。

「…これは深海棲艦の大凡の未来が見える羅針盤です」

 なんだそれは…。

「どうして分かるんですか?」

 片岡さんが聞き返す。今まで散々ファンタジーを見せられていたが、今回は輪にかけてファンタジーであった。

「…今回の理解してもらいたい話はこの鎮守府が秘密にしている深海棲艦との戦い方になります」

 なるほど。羅針盤は深海棲艦と戦う手段なんだな。…そう言えば普通に受け入れていたけど、艦娘は機械の記憶を人間が受け入れているんだっけ。

「深海棲艦が魂を機械に宿して、っていうのは教えられました。艦娘が海で沈んだ場合、深海棲艦の素になる可能性があるって」

 片岡さんが口を開く。艦娘の死は悲しいだけでは無い。利敵行為になってしまうのだ。

「…その辺りの仕組みが正しい証拠でもあるのよ」

 霧島さんが口を開く。

「地球にある全ての元素には放射性崩壊があります」

 高校の理科科目で習う現象だ。

「深海棲艦は放射性崩壊であるアルファ崩壊を少量ながら絶え間なく続けられていて、中性子線を流し続けているのです」

 なるほど、その中性子が流れて続けているとするとある程度の動きがって、ちょっと待てよ…?

「その場合だと放射線の量も段違いになりますね。深海棲艦の放射線で海が放射能汚染してしまうのでは…?」

 奥田さんが疑問を投げかけた。中性子線は放射線の中でもあらゆる物を貫通してしまう強い放射線である。それが絶え間なく続く時点で人間はおろか、海の生きものにも影響を与え死んでしまう魚も居るであろう。

「それが、深海棲艦から出る放射線にはこの地球上とは全く違う性質を持っているみたいなのです」

 霧島さんが困惑の顔に変わる。未だにその事象を飲み込めていないのがありありと分かるようになった。

「…世界がそれを気付けたのは、深海棲艦達の奇襲である関東大空襲でした」

 関東大空襲。深海棲艦の発生により、島国である本邦の物流の終焉を示した攻撃であった。複数回にわたる人類と深海棲艦の戦いによってフィリピンは陥落。日本、台湾、中国への道が完全に開けたのであった。それでも、北海道やアラスカ州を経由し、北アメリカ大陸に貼り付くように船団で輸出入をする綱渡りのような運航だ。実際にこの輸出入は自衛隊、アメリカ軍、韓国軍の体力を著しく奪っていた。

 だが、辞めてしまったら反撃の機会を作れない。提督は消耗した船団護衛の船の船長を担うことになったのだ。

 ここまでが関東大空襲の前史である。提督は東京湾に殴り込みに来た深海棲艦の空母部隊と遭遇。死闘を繰り広げ、深海棲艦を倒した身体から出たものが女の子にくっついて艦娘に…。

「あっ」

 そういう事か。お互いはお互いを求め合っている。人間と機械と結びついた在り方が違うだけだ。放射線もまた求め合うための手段しかないのだ。大和さんはそう気付いた僕を薄目だけで追っている。

「…おそらく襲撃した深海棲艦たちはその構造を用いて、艦娘になる人間を知ることが出来る方法を編み出せていました。艦娘になる前の段階の人間もその放射線を吸収出来ることを発見したのです」

 大和さんは目を閉じながら言った。日本は太平洋戦争で活躍した艦が多いこともあり、艦娘が出来上がる懸念をしたのであろう。関東への奇襲という奇策に見える軍事活動は日本の経済的打撃と艦娘になれる人間を発見されることを恐れたのであろう。

 ―自分でも驚くほど推察が綺麗に出た。そしてその羅針盤は、深海棲艦が出して艦娘へ渡っていく放射線を深海棲艦以上に感じることが出来るのだ。ただ、だとすると放射線の威力の強さが並外れている。フィリピンへの進出が日本の襲撃を決心した理由ならば、その特殊な放射線はフィリピンにも伝わっていたのであろう。

「…で、この羅針盤は関東大空襲で倒した深海棲艦が持っていた、ということですか」

 竹林くんは色々な感情が交わったのが分かる。現実の世界への愛着か、もしくはその摩訶不思議な物をどうやって自分で飲み込めるか。

「そうです。私達艦娘は深海棲艦から奪ったこの羅針盤を信じて戦ってきました」

 そう言って、光が仄かになった羅針盤はある一つの方向を指していた。その針から何故か日本語が浮かんでいて文字をなしていた。昭南と吉隆坡を奪えと書いてある。

「陸上の拠点を奪うことを今まで羅針盤を示したことがありませんでした」

 霧島さんは困惑を隠しきれていないながらも目を逸らさず、僕の目を見てきた。

「『暗殺教室』という新しい艦娘では無い仲間たち。あなた達が居ることで運命が変わったとしたら、あなた達を戦いから逃げさせたいという提督の気持ちは叶わなかったのでしょう。だけど私達もあなた達を死なせたくない。それなのに事態は次々とあなた達の意思へと収束していく。私は嘘であると」

 霧島さんはそう言った。

「霧島さん」

 神崎さんが口を開いた。

「守られている自分ではありたくないです。軍隊に参加した以上、この事態に臆したく無いんです」

「みんなもそんな感じなんですね。一応まだ子供の扱いなんですけどねぇ…」

 そう言いながら大和さんへ寄っていく。

「戦いたくないって弱気を言える状況では無いのを分かっているからこその言葉でしょう。心配以上の配慮は必要無いでしょう」

 大和さんは自分としての結論を出した。僕たちの覚悟を受け入れていた。

「では、出撃まで時間がありません。明々後日の朝までに用意してください。提督も顔は出すでしょうが、陸上自衛隊である岡林一尉とあきつ丸さんがサポートに回ります」

 こうして僕たちは初めて出撃にすることになった。

 

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