艦これ×暗殺教室「青春を潮と血に染めて」   作:みかんバーグ

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存在自体は考えていた提督の弟という切り札を思ったより切ることになるほど、かなりの難産でした。


第四話マレー半島の戦い①

ガガガガ…

 友軍の機関銃の音が鳴り響く。

「ったく、なんで攻めるための拠点が先に敵に奪われているんだよ!」

 前原が悪態を着きながら小銃を撃っている。隣に居る彼女である岡野に話かけているのであろう。

「私に言われても!というか話ししている暇有ったら、前に集中して!」

 それを岡野は否定して、集中力のなさを叱咤する。

「その通りだ、タイ王国軍とここで集合になっている、到着してから反撃しよう」

 今回の「先生」である大石一等陸尉は抵抗の先の無さを見抜いていた。クアラルンプールを攻めるための拠点にするために一番近い山岳地帯の合間にある街の周辺へ進出したが、クアラルンプールの住民は都市の外に出ようとしていない状況下で身分不明の軍隊がベントンを占拠していた。

「無線封鎖していないから援軍が来ることが向こうだって分かっているのに、なんであんなに必死なんだよ!」

 毒づく寺坂。この戦闘の説明が一つで済んだ。何故この軍隊は場所を封鎖しているのだ。兵器諸々は相当古い上にあまりメンテナンスされていないので、全て盾の餌食である。

 変だ。やはり何かがおかしい。まるで「抵抗をした」というアリバイが欲しいみたいだ。

(だが、初戦闘のE組は流石にリスクありの突撃は無理がある)

 他の部隊にやって欲しいが、この直感だけでは根拠が薄い。先頭の部隊もこの違和感を持っていて欲しかった。

 と思った瞬間、轟音が響いた。

「バンカーバスターか!?」

 と、自分で言ったが、バンカーバスターを発射するような飛行機はこの辺りを飛んでいない。その上で地面ごと吹っ飛ばすレベルである兵器を使ってしまうとこの先の町を前線基地とする予定が狂ってしまう。…なら今の轟音はなんであろう。

「あっ、隊長!上の軍隊が逃げ出しました」

 まずい。

「兵を捕まえろ!」

 それを聞いて防御姿勢であったE組が磯貝と堀部、三村を残して一気に散開していく。

「堀部陸士!ドローンの準備は出来ているか!?」

 機械担当である堀部糸成一等陸士に声をかける。

「はい、抜かり無く」

 普段は口が悪いが戦いの時はしっかり準備を怠っていない。

「発射して敵がどこに逃げていくかを探れ!」

「はい!」

 よし、一人でも良い。無駄に熟れている軍隊の謎を知りたい。

「ここに残っている隊員たちは見方と共に市街地へ行くぞ」

「はっ!」

 そうやって友軍が都市への進行している中に加わった。

 

 

 

 

 

(森に迷いなく入っていた…)

 僕は茅野と一緒にその兵士を追いかけて山の麓の森の中へ入っていく。兵士の走りは早く、間を縮めるようなことは出来ない。

(撤退するスピードじゃない)

僕と茅野の足の速さは僕が勝っている。常時鍛えてきた茅野であっても僕が鍛えた足の速さに敵わない。だが、それでも距離が縮まらない。

(…森としてはかなり明るいな)

 マレーシアは木材の輸出が盛んに行われているので、環境破壊をしているという情報を思い出す。日本も木材の過剰利用を禁じた江戸時代までは城の周りはほとんどが切り拓かれていたらしい。となるともうすぐ正午になる今、森でやり過ごすために目的とは思えないのだ。

―――だとすると逃げている兵士達は何を狙っている?

 暗殺者としての本能が記憶を呼び覚ます。

「るろうに剣心」のあるエピソードだった。

 幕末の志士は一旦逃げて、追いつく差を利用して反撃する。そうする事で集団対一の戦いを一対一にさせる。この場合、防備自体がフェイクで最初からこの形にしようとして確実に被害を与えようとしている。

(最初からその作戦だったのか)

 そう気付いた瞬間に無線が入り、大石隊長が叫んだ。

「止まれー!」

 その言葉を聞いた瞬間、逃げていた兵士が踵を返すように反転した。

(日本語の言葉を理解している)

 そしてその刹那、兵士は手榴弾を手に取った。

 

 E組のほとんどに兵隊を追いかけさせたのは、この高層にある都市から一望したかったからだ。ドローンこそ存在するが、人の眼という補助が無いとドローンは十全な力を出せない。

「よし、全方位見わたせる!」

…!やはり全ての兵がバラバラに整って逃げている。E組が中心ながら、他の小隊も追いかけている。

「最初から罠にかけるつもりだったのか…」

 傍の磯貝一等陸士が呟いた。

「止まれー!」と、私は無線で叫んだ。

 同時に炸裂音が聞こえる。やはり狙いがあったか。

(…と言う事は)

「磯貝!三村!おそらくこの山頂は爆弾が仕込んである!至急残っている建物を壊せ!」

 偽装撤退であり、分散策である。後ろから来た戦友とともに、狭い土地ながら石で出来た家屋を捜索し始める。

 ここを自分たちごと吹き飛ばされてしまうと前線基地としての機能を喪ってしまう。時間との

「待て!これを押してから探せ!」

 そう叫んだのは褐色の女性であった。女性としてはかなり大柄である。旧日本軍の軍服を着崩していて、豊満な胸を隠すためのさらしが見える。

(顔は日本人っぽいが、それ以外は外国人だ)

 東南アジアの作戦は初めてでは無いが、大柄な人はあまり多くない。ましては日本人との混血であったら尚更だ。そう叫んだ瞬間横から日本人の男が出てきた。そして手にしたリモコン式の何かのボタンを押した。

「起爆装置をジャミングしたのか…!」

 今まで聞こえていた通信が一気に乱れる。かなり広範囲をジャミングするものみたいだ。

「いや、そんなデカいの放つなら教えないとこっちの損害も…!」

 通信が甲高い音を放ち中断される。そうして大柄の女性と日本人の男が近づいてきた。男の戦場なのにスーツ姿である。そして、見覚えがある顔だ。

「宇田川海将の弟さんでは無いですか!」

 提督の弟、宇田川清貫(きよつら)は内閣官房の、官僚のホープである。何故ここに居るのかが訳が分からない。

「内閣が日本から出るにはかなりのハードモードだからね。代わりにボクのような下っ端が命を賭けるんですよ」と、謙遜するもそもそも兄である信悟もマレー半島攻略に

 顔と身長は兄とは似ていない。父親似である兄信悟と、母親似の弟清貫らしい。だが、国に対して身を捧げる覚悟は同じである。

「この巨体の女性は何者なんですか?」

 日本人の顔つきをしているが身体が全く日本人では無い女性を私は意思の外に出すことが出来なかった。清貫さんは特に驚きもせずに口を開く。

「彼女は戦艦武蔵だ」

 …!

「隊長!砦内を捜索した結果、これが全ての爆弾かと」

 驚きも束の間に、磯貝が種類の違う爆弾をいくつか持ってきた。

「ご苦労、やはり手の内が察知されることも予想していたな」

 そう言い、先ほど合流してきた爆発物処理に全てを渡す。数分でこの数を見つけ出すのは彼らの能力はやはり高い。

「あっ、君、磯貝くんだよね?」

 清貫さんが磯貝に話しかけた。立場上提督と清貫さんは連絡をあまり取っていない。その上で彼の居場所が戦線である事をおそらく提督は知らされていない。そしてE組も提督の性格上、おそらく提督の家族構成を知りはしていないだろう。

「えぇと、どちら様で…?」

 困惑する磯貝。

「提督の弟だそうだ」

 話に入ってくる堀部。その手に持っているのはドローンだった。強力なジャミングで操作不能になっても無事に手元へと戻る仕掛けを作っていたようだ。

「…いきなりにしてはそのジャミングは強力過ぎる。お前の存在については耳に入れていたが、立ち位置には興味は無い。だが、ジャミング兵器がどこからお前の手にあるのは知りたい」

 清貫さんに恨み言を言うのかと思ったら、堀部は率直にジャミング兵器の素晴らしさに目をつけたようだ。

「堀部くんか、君も知っているよ。あの触手を宿らせた数少ない人間の一人」

 清貫さんは何故この話を振ったのであろう。ここに居るE組が警戒心を顕にしたのが分かった。

「うーん…やっぱりE組を引き取ると言いはじめた兄をもうちょっと強く止めた方が良かったのかもしれない。その警戒心に虐げられた過去が滲み出ているよ」

と言ってため息をついた。性格や考えることは違うが、兄と価値観が大きく変わってないのを感じる。

「あっそうだそうだ。そういう事を言いたいわけじゃなかったんだ。プイに悪いことしちゃったなー…」

 プイ…?

「えっ、プイ来ているんですか?」

 磯貝は困惑しつつも嬉しさを押し殺すことが出来ていない。

「誰だ、そいつは?」

 と、言っているうちに何人かのE組が戻ってきた。

「隊長、なぜ回線にジャミングが…?」

 前線に居る少ない女子、片岡メグが確認する。

「この御仁、宇田川海将の弟君の仕業だ」

俺は手で宇田川清貫さんを案内する。

「え!?宇田川海将の弟がいらっしゃっているんですか!?」

 彼女は驚きで高い声になる。

「ところで、まだ占領は終わってないし、逃げた人間も全員追えてないでしょ」

 清貫さんが興味で弛緩した空気を咎める。

「どうせ色々と話をしないといけないんだ、最後まで気を抜かないで欲しい」

 清貫さんにこれを言わせてしまった。

「申し訳ない、E組は友軍をここに引き込むように!あとまだ戦闘状態の隊員のフォローを!」

 清貫さん、あなたが何故ここに居るのか。それを聞きたいのは私も同じである。

 

 

 黒板を爪で引っ掛けた音より不快なジャミングの音が互いの通信機から聞こえる。僕はその音を予測していたこともあり耐えることが出来、そのままナイフを持って、相手へ近接攻撃に持ち込もうとジャンプしていった。だが、相手はジャミングで出た音に悶絶した。先程まで見せた機動力が一気に下がった。地面に落ち、伏せながら左へと転がって逃げた。

 僕は相手の拘束をするため、左に向かって追いかける。

「渚!後ろ!」

 茅野が小銃で狙いを定めたまま叫ぶ。それは思ってもいない方向からの奇襲であった。そしてその奇襲の「匂い」はかつて知ったものであった。

「Ahhhhhhhhhhh!!」

 吶喊の声を上げる褐色の青年。手に持つのはテーザー銃であった。僕を無視して敵に向けてテーザー銃で電撃を放つ青年。

それはE組で短い期間を共にしたプイの成長した姿であった。彼は絶縁体で保護しにくい肩の関節を手慣れた手つきで狙い、即座に相手に銃剣に切り替え近づき確保した。

「ナギサとカヤノ、だったな。久しぶりだ」

 手錠を繋げて逃げ出さないようにすると彼は一瞥した。安堵の表情を浮かべて流暢な日本語で話し始めた。それは英語でのコミュニケーションに難があり、殺せんせーに「手入れ」された時より更に成長を見せた姿であった。

 

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