火野映司/オーズが幻想入り   作:真奪還

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第012話 怒りと守ると灼熱コンボ 前編

 ――時は少々遡り。

 

「なっ……!?」

 

 ナズーリンが声を上げるも時すでに遅し、ヤミーの幼体――白ヤミーがナズーリンの体から這い出てきた。

 

『オォ~! コイツはぁ、なかなかストロォングなヤミーだNE!!』

「ッ!? お前……ッ!!」

 

 リフウの存在に気付き、なおかつリフウがヤミーを作ったという事実を確認したナズーリンはすぐさま構える。しかし、リフウは手を前にかざしナズーリンに制止を求める。

 

『ノンノンノン!! ちょっとストップストップ、小ネズミちゃん!』

「ッ!!」

 

 ――守符「ペンデュラムガード」

 

 リフウにただならぬものを感じたナズーリンはリフウの制止を無視し、スペルを発動した。弾幕は全弾リフウに直撃する、しかしリフウには傷一つなく、逆にいつの間にか真後ろに回り込んだリフウにナズーリンは捕まってしまった。

 

「なっ!? 離せ!」

『オーウ! クールになろうZE! 小ネズミちゃん! ミーのお話を聞いてちょうDAI!』

「お前と話すことなんて……!」

 

 ヤミーを作ったことからコイツは映司たちの話で聞いたグリードと言う存在だと分かったナズーリンは警戒心と敵対心剥き出しでリフウを睨む。コイツとあともう一体いるらしいグリードたちが密かに幻想郷を蝕む存在というのもあるが、なによりコイツが作ったヤミーが原因で星が倒れたのだ。

 

『も~う、しょうがないNA!☆ ミーが小ネズミちゃんを素直にさせてあげようKA!』

「……ッ!?」

 

 なおも抵抗するナズーリンを見たリフウは掌に仕込まれている毒針をナズーリンの首元に突き刺した。

 

「なにをした……!!」

『別にぃ? ただちょーっと小ネズミちゃんが自分の欲望に素直になれるようにし・た・だ・け☆』

 

 リフウがそう言った瞬間、ナズーリンの体の奥底からある一つの欲望が沸き立った。

 

『さぁ、小ネズミちゃんが望むことを……キミの欲望を解放しちゃいなぁ☆』

 

 欲望は元からナズーリンにあったもので、リフウの毒によりさらに倍増される。その欲望は――『ご主人を死なせない』。

 

「うぐ、ああああ……!!」

 

 膨れ上がった欲望はタチの悪い熱病のようにナズーリンを蝕む。だけど負けてしまったらご主人に迷惑をかけてしまう――そんな確信の元、ナズーリンはひたすらに我慢し続ける。

 

『ほら~、我慢したってなぁんにも良いことなんてないよぉ~?』

 

 リフウがそう煽りかけてくるが苦痛のためナズーリンには聞こえていない。こうしている間にもどんどん欲望が耐え難いほどの痛みを与えてくる。

 

「あああああ……あっ……」

 

 やがて痛みがナズーリンの許容量を超え、ナズーリンはそのまま意識を失ってしまった。

 

『あら~、気絶しちゃったKA。ま、良いか~♪』

 

 そう言いながら、リフウは去って行った。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

『『『キショアァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!』』』

「「うわああああああッ!?」」

 

 森の中、ムラサとぬえは必死に大量のエビヤミーから逃げていた。なぜこんなところに居るかと言うと、ナズーリンを探すためである。もちろんぬえは最初は嫌がっていたがムラサから「昨日ナズーリンのチーズ食ったのぬえでしょ?」と言われ、渋々と手伝っていた。

 二人はナズーリンを探すために歩いていたのだが、不幸にもエビヤミーの集団に遭遇。戦ったが、数の差には勝てずに追いかけっこに突入したのだ。

 

「ムラサァーッ!! 何とかしてよぉー!!」

「何とかしてって言われてもぉー!!」

 

 この状況になるまで何十体ものエビヤミーを倒してきた二人、体力も妖力も消費してあの数を相手にする余裕なんてない。

 だが、この大群に捕まったら終わりなのは分かっているのでこうやって気力で走っているのだ。

 

『『『キシャァァァァァァァァァァァァァッッ!!』』』

「あーもーっ!! しつこーい!!」

 

 ぬえがそう毒づくが、エビヤミーたちはおかまいなしである。

 やがて、二人の気力も磨り減っていき、エビヤミーたちとの距離が縮んでいく。

 

「「お、追い付かれるーッ!!」」

 

 二人がそう叫んだ時だった、

 

 ――ゴックン! タトバ!

 

「ハアァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!」

 

 奇妙な音声と咆哮とともに何かの影が二人の上を通り過ぎる。

 

「セイヤァァァァァァァァッ!!」

 

 影――オーズは三色の光が宿り、破壊力が増したメダガブリューをエビヤミーに向かって振るう!

 

『『『キシャァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!?』』』

 

 エビヤミーの群れの大半は断末魔を上げながらメダルに還り。残りは、

 

 ――秘宝「聖徳太子のオーパーツ」

 

『『キシュアァァァァァァァァァァァァッッ!?』』

 

 神子のスペルにより倒された。

 オーズは二人に駆け寄る。

 

「大丈夫?」

「う、うん……」

 

 オーズの問いかけにぬえが答えた。それを聞いたオーズは一安心し、改めてエビヤミーたちがやってきた方角を向く。

 

「それにしても、あのヤミーたちはまるで私たちを森の奥に近づけさせたくないみたいですね」

「はい、それは俺も思ってました」

 

 オーズの隣に来た神子がそう言う。

 星をさらったかと思えば、このように他人を近づけさせないように妨害する。一体どんな欲望かイマイチ分からない。分かっているのは星絡みの欲望、と言うことだけだ。

 だが、断定はできないがもし森の奥に星が居るのなら助けに行かなければならない。オーズは再びムラサとぬえの方へ向き、こう言った。

 

「ムラサさんとぬえちゃん……だっけ? 二人は命蓮寺に戻っててくれませんか? ヤミーは俺たちでなんとかしますから」

 

 オーズのその言葉にぬえはムッとする。

 

「なっ、なによソレ! 足手まといだって言いたいの!?」

「ええ、そうで――「わーっ! わーっ!」――……」

 

 神子がぬえに毒づこうとするが、寸前のところでオーズが阻止したためやや不機嫌になる。

 オーズはぬえの目の前まで行き、視線をぬえに合わせて語り始めた。

 

「そうじゃないよ、ぬえちゃんたちにはもしヤミーがまた襲ってきたときに命蓮寺を守って欲しいんだ」

「……」

「俺も神子さんもそうしないように頑張るけどもしかしたらヤミーがこっちにくるかもしれないんだ、もしそうなったら命蓮寺を守るのは一人でも多い方が良いんだ。だから、お願い!」

 

 両手を合わせ、『お願いのポーズ』を取るオーズ。その言葉を聞いたぬえはしばらく考え込み、

 

「……分かったわよ、そこの仙人よりはまだマシそうだしね」

「あははは……でも神子さんもそれほど悪い人じゃないよ?」

「いーえ! ロクでもないわよ、あの仙人は」

 

 ぬえからはとにかく嫌われている様子の神子。神子の方を見てみるとまったく歯牙にも掛けていないようで、どこ吹く風といった様子だ。それを見たオーズはもう苦笑いするしかない。

 だが、すぐに気持ちを切り替える。

 

「それじゃ、ぬえちゃんにムラサさん。よろしく頼んだよ」

「任せなさい、行くわよムラサ!」

「えっ、ぬえ!? えっとぬえのムチャを止めてくれてありがとうございました!」

 

 ぬえに引っ張られながらもムラサはオーズにお礼を言い、そのまま二人は命蓮寺へと去って行った。

 

「さて、邪魔者もいなくなりましたし行きましょうか映司」

「邪魔者って……神子さん……」

「君はともかく私があの者たちと仲良くなる道理はありませんよ、特に聖白蓮とはね」

 

 またこれである。しかし映司は神子が嫌っているのは命蓮寺の面々ではなく聖一人を嫌っているように見えた。前にも思ったがなぜ神子は商売敵と言ってもここまで聖を嫌っているのか?

 

「神子さん、どうしてそこまで聖さんを嫌うんですか?」

「別に大した理由ではありませんよ。それよりも今はヤミーを優先させましょう」

 

 神子がここまで聖を嫌う理由も気になるが、今はヤミーを優先しなければならない。オーズはその疑問を抱えながらも神子の案内の元、ヤミーが集中している場所へと駆けていった。

 その際、神子はあることを考えていた。

 

(寅丸星が倒れたのはコアメダルの力に体が耐えられなかったからだ。しかし、その力を半分にできれば――――?)

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「ん……」

 

 寅丸星は本日二度目の気絶からの目覚めを体験する。

 

「確か私は……、――ッ!?」

 

 状況を確認しようとした矢先に星はとても異様な周囲の光景を見てしまう。それは――

 

『『『キシャアアァァァァァァァァァァァァッッ!!』』』

『『『キュラァァァァァァァァァァァァァァッッ!!』』』

 

 周囲を埋め尽くすエビヤミーの群れ、群れ、群れ。ざっと見渡しただけでも百体は軽く超えている。

 

「……ッ!!」

 

 生理的嫌悪を催すこの光景に思わず鳥肌が立ってしまう。

 

『シナセナイ……ゴシュジンハシナセナイ……!』

 

 その時、エビヤミーの群れの中に一匹だけ存在する、全ての脚が人間の手のような形になっている漆黒の巨大なエビの怪物を見つけた。さらに良く見てみるとその巨大エビからエビヤミーが次々と産まれてきているではないか、もしかしたらあの巨大エビがエビヤミーの親玉なのだろうか?

 あれこれ考えていると、――不意に誰かに背後から抱きつかれた。

 

「ご主人……」

「ッ!? ナズーリン……ッ!?」

 

 この声ですぐに分かった、今星の背中に抱きついている者は星の従者――ナズーリンだ。

 このエビヤミーの群れといい、背中のナズーリンといい、衝撃的なことが極短い合間に立て続けに起こって星の頭はパンク寸前だ。だが現状を把握しなければならない星は努めて冷静に振る舞い、ナズーリンに声をかける。

 

「ナズーリン、今までどこにいたんですか……ッ!? それにこれは……!」

 

 星はナズーリンに問いかけるがナズーリンは聞こえていないのか、ぶつぶつと独り言を始めた。

 

「ご主人は死なせない……私が死なせない……私が守るんだ……」

「ナズーリン……?」

 

 ナズーリンの様子を怪しんだ星が彼女の顔を見てみると、ナズーリンの瞳の焦点が合っていなかった。明らかに正常ではない。

 星は思わず怖気が走ってしまった。

 

「ナズーリンッ!! ナズーリン!!」

 

 問いかけ、揺さぶってみるが元には戻らず、先程と同じようにぶつぶつうわ言のようにつぶやいているだけだった。

 

「どうすれば……」

 

 星はそう呟いた、その時である――

 

 ――名誉「十二階の冠位」

 ――ゴックン! タトバ!!

 

「セイヤァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッッ!!」

 

 咆哮とともに回転する光が飛んできた。光はエビヤミーたちを次々と切り裂き、やがて持ち主の所へと戻っていった。

 

「大丈夫ですか!? 星さん! ナズーリンちゃん!」

 

 回転する光ことメダガブリューの所有者オーズ――映司は星とナズーリンの姿を見ると、すぐさま安否の確認をする。

 

「私は大丈夫ですけど、ナズーリンが……!」

「ナズーリンちゃんが……?」

 

 オーズは強化された視力でナズーリンを見る。すると、……瞳の焦点が合っていない、明らかに様子がおかしい。

 

「神子さんは二人を頼みます! 俺はヤミーを!」

「……いささか不服ですが仕方ありませんね、分かりました」

 

 オーズはヤミーの所へ、神子は二人の元へ向かった。そして星とナズーリンの近くにきた神子はナズーリンにある違和感を感じた。

 

(……十欲を感じない?)

 

 生物には十欲という名前通り十の欲を持ち、神子はそれを聴き取ることにより相手の心を読みとることができ更には未来をも見通せるのだ。そしてソレは妖怪にも存在するのだが、今のナズーリンにはその十欲が聞こえない、そのかわりに一つのとても欲望があった。

 

(寅丸星を死なせない、か……)

 

 恐らくはこの欲望が肥大化し、十欲を含むその他全ての欲望を掻き消したのだろう……それがナズーリンの様子がおかしい原因だろう……神子はそう推測した。

 だが、このことを星に伝えるべきかどうか、星はナズーリンを悲しませたのは自分のせいだと思い意気消沈している。そんな状態の星にこのことを伝えたら更に塞ぎ込むだろう、神子はどうすべきか考える。神子はあれこれ考え、結果とりあえずは当たり障りのないことを聞いた。

 

「寅丸星、彼女はなにか言っていましたか?」

 

 神子がそう尋ねると星は口を開く。

 

「……さっきナズーリンが言っていました……『ご主人は死なせない、私が守るんだ』って……」

「!」

 

 なんと、星はもうこのことをナズーリンの言葉で知っていたのだ。地雷を踏んでしまった、最悪の展開である。

 映司によって回復しつつあった星の心は再び崩れ始めた。

 

「やっぱり私は彼女の主人の失格です……! なにが毘沙門天の代理ですか……! 私のせいでナズーリンが不幸になるのなら、私がなにかをすれば彼女を泣かせるなら、私は何もしないほうが、居なくなったほうが良いんです……っ!!」

「――なんだと……ッ!!」

 

 神子はその言葉を聞き、あることを思い出した。

 

 

 ――あ、ああぁぁぁ……。

 ――うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 

 

 あの忌々しい、けれど決して忘れてはいけないあの時の出来事。

 拭いきれないトラウマ。

 気付いたら神子は星に掴みかかっていた。

 

「ふざけるなァッ!!」

「えっ……?」

 

 神子の豹変に星は呆けてしまう。

 

「なにが『なにもしないほうが良い』だ!! なんで!! なんで、そんなこと言うんだよ!!」

 

 もう神子は止まらない、いや神子自身でも止められないのだ。

 

「神子さん……?」

 

 神子の変わりようにはオーズも気づいてはいるがそのことに対し気を回すことはエビヤミーの群れが許さなかった。神子の叫びは更に続いた。

 

「なんでだ! なんで、お前らはなにもしない前からそんなことを言うんだ!! ――――ッ!!」

 

 そこで、やっと神子は我に帰る。

 即座にトラウマを思い起こされただけであんなに取り乱してしまった自分が嫌になり、自己嫌悪の感情が表れるもすぐにそれを振り払った。

 

「すいません……とつぜん取り乱したりして……」

「いえ……」

「――ですけど、なにもしないのは考えものですね。私には分かりますよ、君がこの場で今やりたいことが」

「……」

 

 神子に言われたことは図星である。星の内にはこの場で今やりたいその欲望が渦巻いている、しかし星にはそれを行えるだけの力がない。

 ……いや、力はある、あの黄色のコアメダルだ――

 

「……確かに私にはナズーリンを守るというやりたいことがあります……ですけど私にはそれを成すほどの力がありません……それにもしなにかあったら彼女を泣かせてしまう……」

「だから願うんですよ、あの黄色のコアメダルに」

「メダルに……?」

「ええ」

 

 しかし、あの黄色のコアメダルは使えば星は死んでしまう恐れがある。だがそれは『星』一人ならの話だ。

 神子はある可能性に賭けてみたのだ。

 

「あのコアメダルは使えば君は死ぬかもしれません、だけど従者を生涯守るのなら多少のリスクは覚悟するべきでしょう? それにコアメダルは君を選んだんです」

「…………」

 

 あのメダルの力を使えばまた自分が倒れ、ナズーリンがまた泣いてしまう……星はそればかりに気を取られて怯えていた。しかし、多少のリスクを背負わなければナズーリンは守れない。自分が傷つかずに従者を守ることなど不可能なのだ。

 星はナズーリンを自分の前に寄せ、目と目が合うようにする。

 

「ナズーリン、これからも私は貴方を泣かせるかもしれません」

 

「――こんな不器用で不用心でダメダメな私ですから、全力で貴方を守ることしか出来ない私ですが」

 

「――――こんな主人でも生涯貴方を護らせてくれませんか?」

 

 不器用で口下手な自分にはこんなことしか言えない、だけど確かな決意とメダルへの願い。

 その時、星の欲望に反応して神子の懐から三枚の黄色のコアメダルが飛び出て星に入り込もうとするが、その前に神子がキャッチしてオーズに向けて投げた。

 

「――映司!!」

 

 エビヤミーの群れと激闘中のオーズは神子のパス能力の高さも手伝って、見事それをキャッチした。オーズはコンボチェンジを行うためバッタレッグの力で一旦距離を取る。

 星はオーズの所にまで近づいた。ナズーリンは神子に任せてある。

 

「星さん……?」

「映司さん、私も微力ながら助太刀します」

「大丈夫なんですか?」

「はい、だいぶ動けるようになりました。体の頑丈さには自信がありますから、――それに私はナズーリンを守りたいんです!」

「……分かりました! でも無理はしないでくださいね」

「はい!」

 

 会話を終えるとオーズはオーズドライバーに嵌められていたタカ・コア、トラ・コア、バッタ・コアを抜き、新たにライオン・コア、トラ・コア、チーター・コアを嵌めオースキャナーにかざした。

 

 ――ライオン!

 ――トラ!

 ――チーター!

 

 ――ラッタァ、ラッタァ!! ラトラーター!!

 

 オーズの姿は一変した、あまねく全てを照らし焼き尽くす灼熱の獅子の鬣、鋼鉄をも切り裂く虎の強爪、風すら追い抜く狩猟豹の俊足。

 スピードに特化した灼熱のコンボ――ラトラーターコンボが光臨した!

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