火野映司/オーズが幻想入り   作:真奪還

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更新がノロマすぎてごめんなさい。これからも更新ペースこんな感じなると思います。


第013話 怒りと守ると灼熱コンボ 後編

 オーズがラトラーターコンボになったことにより星にも変化が起きた。

 

「これは……」

 

 瞳は青く染まり、黒が混じった金の髪は金一色になり髪の量も増え、どことなくライオンの鬣を連想させる。両腕は鋭い鉤爪――トラクローが装着され、脚はチーターレッグに酷似した装甲が現れ胸部にはオーラングサークルが光輝いている。

 

「映司さん、これはなんでしょう……?」

「すいません……俺にも良く分かりません」

 

  見た目からしてコアメダルが原因であろうこの変化について当然ながら分からない星はオーズにこのことについて聞くも、オーズも知らないのだ。ただ、前見たコアメダルの力を使い半ば暴走状態であった星に似てはいるのだが。

 

「神子さん! 星さんのこの姿って一体なんですか!」

 

 星の変化について、自分が知らないのならあと知っているのは神子だけだ、と判断したオーズは神子に聞いてみた。

 

「詳しいことは後で話しますが、今の寅丸星はコンボの力が使えます!!」

「え、それって……」

「大丈夫です! 負担は遥かに少なくなっているはずです! 全力で戦いなさい!」

 

 不安はあったが、それも確信に満ち溢れた神子の言葉に掻き消される。

 二人はトラクローを展開し、腰を低く構え、そして風より速く駆けた。

 

「「ハァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!」」

 

 黄金に煌めく四つの爪がエビヤミーを次々と切り裂いていく、そして次は低く跳躍し、リボルスピンキックが炸裂した。二人はエビヤミーを蹴り潰し、セルメダルへと還元しながらながら前進していく。

 そうしていると、エビヤミーを次々と生み出している巨大なエビの怪物の全体像が見えてきた、オーズも星も巨大エビの全身をしっかり見たのはこれが初めてだ。

 

(あれはもしかして……)

 

 オーズは今までの戦いから培ってきた勘からエビヤミーを生み出す巨大エビが恐らく、エビヤミーの親玉ではないかと推測する。まぁ、そうでなくとも倒さなければいけないのは確かなのだが。

 

「星さん! あの大きなのを倒しましょう!」

「はい!」

 

 オーズと星は巨大エビヤミーに急接近し、全身から灼熱の光――ライオディアスを放射した。灼熱の光が巨大エビヤミーに襲いかかる。

 

 ――キシャアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッッ!?

 

 全身を焼かれ、巨大エビヤミーはたまらず怯む。そこにすかさずトラクローで甲殻ごと刺し貫いた。

 

 ――ギシャアアアアァァァァァァァァ!!

 

 巨大エビヤミーはハサミを振るい抵抗するも、ことごとく素早いオーズたちに回避され虚しく空振りするだけであった。

 そしてその隙を突き、『リボルスピンキック』で畳み掛ける。巨大エビヤミーの甲殻にヒビが入り始めた。二人に圧倒されこのままでは倒されると判断したのか、巨大エビヤミーは大量のエビヤミーを産み出す。そしてそのままハサミを器用に使い、地中へと潜っていく。エビヤミーを足止めに使って逃走するつもりだ。

 

「セイヤァッ!!」

「デヤァッ!!」

 

 二人は群がるエビヤミーに向かってトラクローを勢い良く振るい、衝撃波を起こしてエビヤミーの群れを蹴散らした。しかし、巨大エビヤミーはもう地中へ潜り逃げて行った後だ。すでにそれなりの距離を移動しているだろう。

 

「神子さんッ! 追えますか?」

「ええ、なんとかできます」

 

 今にも消え入りそうな弱弱しい、だがあり得ないほどに歪んだ忙しなく移動する欲を神子は聴き取る。

 

「分かりました、あのヤミーは命蓮寺に向かって移動しています」

 

 それを聞いて、星の表情は更に険しくなった。

 

「ッ!?」

「それなら急がないと! 早く行きましょう、星さん!」

「分かっていますッ!」

 

 チーターレッグの力をフルに使い、二人は命蓮寺へと向けて駆けていく。

 

「まったく、あの二人……私のことをすっかり忘れていますね、っと!」

 

 自身を置いて先にいったオーズたちにやや呆れながらも、ナズーリンを抱えて――見た目通りかなり軽いため抱えるのは容易だ――二人の後を追っていった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「ねぇ、大丈夫なの? ムラサ」

 

 一方、命蓮寺ではぬえとムラサからの話により来るかもしれないエビヤミーを迎え撃つために星とナズーリンと聖――一輪たちにより無理やり自室に押し込められた――を除く命蓮寺の面々が揃っていた。

 しかし正直な所、ナズーリンと星を救出に向かったのがあの豊聡耳神子と見知らぬ男――確か火野映司であったか――なのが非常に不安なのだ。そのことを一輪がムラサに聞いてみると、ムラサはこう返した。

 

「うーん、大丈夫だと思うよ? 見た感じ映司って人、聖並みのお人好しみたいだしね」

「聖並み、か……」

 

 「聖並み」と言う言葉に一輪は思わず苦笑してしまう、もし映司がそうならなにも心配はないのだが……。

 そう一輪が思っていると地面から何かが潜り進んでいるような音が聞こえてきた。

 

「ッ!!」

 

 その音を聞いた全員が警戒する中、音は段々と近づき地面が盛り上がった。そして――

 

 ――キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!

 

 巨大エビヤミーが地中から飛び出してきた。

 

「デ、デッカぁッ!?」

 

 小傘が巨大エビヤミーを見て率直な感想を述べる。確かに巨大なヤミーであろうこの怪物は先程戦ったエビヤミーの数倍もの大きさを誇っていた。

 皆が巨大エビヤミーの大きさに驚いていたが、すぐに構える。その時、二つの風が巨大エビヤミーに向かって駆けていった。

 

「「ハァァァァァァッ!!」」

 

 その二つの風こと、オーズと星は超速で巨大エビヤミーの懐に潜り込み、トラクローを突き刺す。そして抜くと同時に巨大エビヤミーを蹴り、その反動で後方に跳び距離を取る。

 

「みんな無事ですかッ!?」

「えっ、星。その姿は……?」

「そのことは後でお話します。とにかく、皆さんは後ろで援護をお願いします」

 

 そう言ってオーズはみんなを後方に下がらせた。それを確認すると二人は一気に走りだす、後方に居るムラサたちも弾幕を撃ち、巨大エビヤミーを牽制する。

 そして、二人はあっという間に巨大エビヤミーの懐に潜り込み、ライオディアスを放った。 

 

 ――キシャアァァァァァァァァァァッ!?

 

 巨大エビヤミーが怯んだ隙を狙ってオーズは予め召還していたメダガブリューにセルメダルを喰わせる。

 

 ――ゴックン!! ラトラーター!!

 

 メダガブリューの刃が白熱し、灼熱の刃となった。

 

「セイヤァッ!!」

 

 ――キシャアァァァァァァァァァァッ!? 

 

 オーズはメダガブリューを振るう。巨大エビヤミーの左側の脚が全て切断され、切り落とされた脚はセルメダルに還った。

 メダガブリューの一撃を受けた巨大エビヤミーは弱り果てている。二人はトドメを刺すべく、スキャニングチャージの体勢に入るが――

 

 ――キシャアァァァァァァァァァァァァァァッ!!

 

 最後の悪あがきか、巨大エビヤミーは今までの比ではないほどの量のエビヤミーを産み出す。その量は二人を押し潰さんばかりだ。

 

「ぐあッ!?」

「ぐッ!」

 

 実際に産み落とされたエビヤミーたちはオーズと星に纏わりつき、動きを封じ始めた。そして巨大エビヤミーは残った右側の脚で飛びかかる。

 だが、巨大エビヤミーは二人に到達する前に何者かに殴り飛ばされた。

 

 ――「スターソードの護法」

 

 その次に光の剣がオーズと星に群がっていたエビヤミーたちに突き刺さった。

 

「――大丈夫ですか! 映司さん、星ッ!」

 

 巨大エビヤミーを殴り飛ばした本人、聖は二人にそう声をかける。

 

「大丈夫です!」

「ありがとうございます、聖!」

 

 そしてオーズと星は巨大エビヤミーを見やった。

 巨大エビヤミーは聖に殴り飛ばされ、ひっくり返っている。起き上がるまでは時間がかかるだろう。トドメを刺すならは今しかない。二人は駆け、挟み撃ちの体勢を取る。

 

 ――スキャニングチャージ!!

 

 そして、スキャニングチャージを行った。オーズから強大な力が溢れ、星も同じような状態だ。

 

「「ハアァァァァァァァァァァッ!!」」

 

 前方に灼熱の光の輪が現れ、二人はトップスピードで走り抜く。光の輪をくぐるたびに灼熱の光がオーズと星の体に強く宿る。

 

「セイヤァァァァァァァァァーーーーーーッ!!」

「デヤァァァァァァァァァァッ!!」

 

 ――キシャァァァァァァァァァァァァァァァーーーーッ!?

 

 巨大エビヤミーの前後からラトラーターコンボの必殺技、『ガッシュクロス』がオーズと星の二発分炸裂した。当たり前だがその威力に巨大エビヤミーが耐えられるわけが無く、爆散し全てセルメダルへと還っていく。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 神子が帰ってきた頃には巨大エビヤミーは倒され、ナズーリンの他の欲を掻き消す肥大化した欲望も元に戻り、正気を取り戻していた。どうやらあの異常は一時的なものらしいようだ。

 しかし、まだ厄介なことがまだ一つ残っていた。

 

「……すまない、ご主人。みんな……」

 

 それは正気を失っていた時のことを覚えていたのだ。彼女は自分がエビヤミーの親をであることを告白し――神子は既に知っていたが言うタイミングがなかった――そのことを謝罪したあとはすっかり塞ぎこんでしまった。

 それもそうだろう、自分のせいで命蓮寺のみんなに迷惑をかけてしまったのだ。特に星には一番迷惑をかけてしまった。ナズーリンは自分が酷く情けなく感じていた。

 

「――ナズーリン」

「ッ!?」

 

 星はそんな状態のナズーリンをそっと、優しく抱き寄せる。

 

「貴方は私をそれほどまでに思っていたのでしょう? ヤミーを生み出すくらいに」

「ああ……」

「それにヤミーは欲望を暴走させるんだ。例えそれが人を思っての欲望だとしてもね、だから――」

 

 映司に続いて、星も微笑みながら言う。

 

「ナズーリンはなにも悪くはありません、と言うことです」

「そうか……」

「それに私はナズーリンを守ると誓ったんです、例え誰かが貴方を悪く言おうと絶対に守ってみせます!」

「ははは……頼もしいな、これで物忘れ癖がなければ完璧なんだがな」

「うぐっ、善処します……」

「でも……ありがとう、ご主人。貴方のその言葉でだいぶ楽になったよ、だから……」

「?」

「いい加減、離してくれないか……? 流石に恥ずかしいぞご主人……」

 

 ナズーリンが顔を赤らませながらそう言った。つい、勢いで抱き締めてしまった、そのことに今更気づいた星は慌てて彼女を離す。

 

「うわわわわわわ、ご、ごめんなさいっ」

「まったく……」

 

 星のそのおっちょこちょいぷりにナズーリンは呆れながらも、そういった所を含めて自分は星を好いているのだと再確認し、思わず笑みが零れてしまう。

 

「――ナズーリンがまた元気になって良かったですね、神子さん」

「……まぁ、あのまま落ち込んでいるよりはマシですね」

 

 神子に対してそう語りかける聖であったが、彼女は冷たく言い返す。やはり、神子が聖に気を許すのはまだまだ先のようだ……と映司は思った。

 

「あ、そう言えばあの星さんの姿は一体なんだったんですか?」

「それは私も気になっていました」

 

 これ以上、神子が毒を吐く前にと映司は気になっていた、ラトラーターに似た姿――今は元に戻ったが――の星について問いかけてみる。

 

「ああ、あれですか。推察混じりの説明になりますが、あれは――」

 

 神子の説明――推測混じりのだが――によると、あの姿はコンボの過剰な力を生きたオーズドライバーとも言える星がその力を使い、『変身』した姿だと言う。

 

「――現にコンボを使っても疲労が少ないでしょう? 映司」

「そういえば、確かに……」

 

 コンボにはとてつもない力がある、しかしそれゆえに過剰な力に蝕まれコンボは体力を酷く消耗するのだ。映司も初めてコンボを使った時には倒れたものだし、段々とコンボに慣れてきてもかなりの疲労感はあった。

 しかし、今回はコンボによる疲れが殆どない。それは星も同じことで、多少の疲れはあるものの最初程の疲れはない。

 

「寅丸星に関してもコアメダルの力全てを使っていた先程と違い、余った力を使っていますからね。映司と同様に寅丸星にかかる負担も遥かに軽くなっています……まぁ、恐らくその分能力は下がってしまうでしょうが。とりあえず、あの姿についてはこんなところでしょうか」

 

 神子の説明が終わり、今までお礼を言うのを言いそびれていた星は映司の前へ寄った。

 

「ありがとうございました、火野さん。貴方のおかげで寺は無事で済みました」

「いえ、俺たちも聖さんに助けてもらったのでお互い様ですよ」

 

 

 もちろんヤミーと戦うことは自分のやるべきことなのだが、それだけではない、もし、あの時聖が居なかったら確実にコアメダルを奪われていただろう、だからこれは恩返しでもあるのだ。

 そして、映司に礼を言った星は今度は神子の方へと向いた。

 

「そして、豊郷耳さんもありがとうございました」

「んなぁッ!?」

 

 星は神子にもお礼を言うが、当の神子はそんなことを言われるとは思ってもみなかったようで、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「な、なぜ私まで……ッ!?」

「あの時、貴方は私を叱咤してくれたではありませんか。あの言葉が無ければ私はあのまま、塞ぎ込んだままだったでしょう」

「~~ッ!!」

 

 あれは神子が怒りのあまり、言ってしまったことである。正直、触れてほしくない事柄で、だから星のそれに対する純粋な感謝の気持ちはプライドの高い神子にとってかなり堪えるものであった。

 

「あぁぁぁッ!! 映司ッ、帰るぞッ!!」

「え、ちょっ、神子さん!?」

 

 耐え切れなくなった神子は術でを使って仙界に帰るのも忘れ映司の首襟を掴み、映司を引きずったまま、走り去ってしまった。

 

「神子さん、まだ聖さんにちゃんとお礼言ってな――」

「知るか、そんなことぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 ちなみにこのゴタゴタのせいで人里に忘れてしまった夕飯の買い物を思い出したのは、もう少し後のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エビヤミーを倒した時のセルメダルは全て回収しています。あと、この作品の神子さんはキレるとアンクみたいな口調になります。

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