火野映司/オーズが幻想入り   作:真奪還

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第004話 気絶と誤解と謝罪

 ◆

 

 トカゲヤミーを倒したオーズは安堵のため息を吐き、後ろに居た神子の方へ振り返る。

 

「神子さーん、終わりま――――ッ!?」

 

 なんと神子が倒れていた。オーズは変身解除も忘れ、彼女の方へ駆け寄る。慧音と妹紅も神子の異変に気付き、駆け寄った。

 

「神子さん!! しっかりしてくださいッ!!」

「おい大丈夫か!」

 

 オーズと妹紅が声を掛ける、しかし反応が無い。オーズは最悪の結果を予想してしまうが、冷静に神子の様子を見ていた慧音の言葉にそれは否定される。

 

「大丈夫、気絶しているだけだ」

「よ、良かった~……」

 本日二度目の安堵のため息を吐くオーズ。しかし、その瞬間――

 

 ――上空から蒼雷が放たれた。

 

「ぐあぁっ!?」

 

 その雷はオーズに直撃する。

 肉体的に強化されたオーズの皮膚には、この程度の雷はあまり効果は無い――ウヴァの雷の方がよっぽど堪える――が、油断しきったオーズは吹き飛んでしまう。誰もが新たな敵襲と感じ、身構える。その蒼雷の主はやはり上空に居た、しかしそれはヤミーでは無かった。

 緑の衣に足はなく幽体。そう、神子の部下の――

 

「そこの鵺擬き……太子様に何をした……!」

 

 蘇我屠自古だった。敵意と殺意を露わにし、オーズを睨んでいる。

 彼女はたまたま食料が切れたことに気付き、布都を連れて(無理矢理)人里に買い出しに来たのだ。 しかし人里はトカゲヤミーの襲来によりパニック状態、嫌な予感がした彼女は先に人里に来た神子を探しに――よほど慌ててたのか布都を置いてきぼりして――飛び出したのだ。そして神子は見つかったが倒れており、その隣には見たことの無い妖怪|(オーズ)が――そう、基本的に短気な方だが冷静な判断力を持つ彼女らしかぬ早とちりをしてしまったのだ。激情に駆られ、妹紅や慧音も見えていない。

 

「もう一度言う……太子様に何をした……!」

「ちょっと屠自古さ――」

「私の質問に答えろっ!」

 

 何とか弁解しようとするオーズだが、屠自古は聞く耳を持たず再び雷を放つ。

 

「屠自古さん! 俺ですっ! 映司です!」

「なっ……!?」

 

 オーズは誤解を解くために変身を解除する。屠自古は目を見開き、驚いた。

 しかし激情に駆られ、冷静な判断が出来ない状態である今の屠自古には火に油を注ぐことになってしまった。――結果、とんでもない勘違いをしてしまった。

 

「やはり貴様、最初から……!!」

「違います! 誤解です誤解!!」

「黙れ! 覚悟しろよ、この――――」

 

 そう屠自古は映司が最初から神子に危害を加える為に接触したと言う、考えに至ってしまった。

 彼女は目の前の不届き者を倒すべく雷を放とうとする。その時――――

「おいおい、いい加減冷静になれって亡霊さんよ」

 

 映司と屠自古の間に妹紅が立っていた。彼女は屠自古を若干睨めつけながら言う。

 

「コイツはアンタの太子様とやらに危害を加えてないよ、むしろ命を懸けて守ったんだ」

「なに……!?」

「それに、ここ|(人里)での争い事は禁止だよ」

 

 妹紅に宥められ、何とか落ち着きを取り戻した様子の屠自古。彼女は地上に降り、口を開く。

 

「だが……なぜ太子様が倒れている? それにさっきのアイツの姿はなんだ……?」

「それはコイツの口から説明してもらうさ、なっ?」

「俺は良いんですけど……まずは神子さんを休ませないと」

 そう、オーズやヤミーの説明をする前に神子を休ませなければならない。

 

「――なら、私の家を使うと良い」

 

 その時、慧音が会話に入り込む。

 

「良いんですか?」

「ああ勿論だ。元々、外来人を泊めることもしてるしな。それなりに広いぞ」

「ありがとう、流石慧音だ」

「……礼を言おう」

 

 神子を休ませる場所を慧音が提供し、映司達は慧音の家に行こうとする……が、屠自古は誰かを忘れているような気がした。

 そう、布都を忘れてしまったのだ。

 

「――うぉーい! 屠自古ーっ!!」

 

 屠自古がそんなことを考えていると、布都がやってきた。飛ぶことも忘れ走って探してたらしく、息が切れ切れだ。

 

「ぜぇぜぇ……人里は騒々しいし、屠自古は急に飛び出すし……どうしたのだ? ――――って、太子様ーっ!? 大丈夫ですか!」

 

 布都は気絶している神子に気づくと慌てて駆け寄る。

 映司はそんな布都を見ながら、微笑しながら言う。

 

「映司殿っ! 一体太子様はどうしたのだ!」

「えっと、色々説明しなきゃいけない事はあるけど……まずは神子さんを休ませなきゃね?」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 慧音の家に着いた映司達は手頃な布団を敷き、神子を休ませる。

 現在は居間に映司、妹紅、布都の三人が居た。家主の慧音は里を隠す為に出かけているらしく、屠自古は神子の付き添いだ。

 

「すまぬ! 映司殿! 屠自古を許してくれ!!」

 

 妹紅から屠自古が映司にしようとしたことを聞いた布都は土下座をしかねない勢いで頭を下げ、映司の許しを請う。二、三発打たれる覚悟であった。

 しかし布都の覚悟に反し、映司は笑いながら快く許す。

 

「いや、全然怒ってないし気にしてないから頭上げてよ布都ちゃん」

「ほ、本当か!?」

「本当だよ」

 

 布都は頭を上げる、殴られるかと思っていたのか若干涙目であった。

 

「本当すまない……屠自古は普段から短気な奴だがこうも激情に駆られるとは……」

 

 屠自古の激情。長い付き合いである彼女でも初めて知った面である。

 

「屠自古さんにとって神子さんはそれくらい大切な人ってことだよ。じゃなきゃあんなに怒らないよ」

 

 そう、屠自古の激情は言い返せばそれほど神子を大切に思っているからだ。だから普段の冷静な判断力を失ってしまった。

 

「我も太子様への愛は負けてないのだが……」

「ははは……、競うようなモノじゃないと思うけど……」

(なんか羨ましいなぁ……)

 

 そうこう話をしていると、意識を取り戻した神子が屠自古を連れ居間にやってきた。

 

「太子様! 大丈夫ですか!?」

 

 神子を見るやいなや、布都は不安気な声で叫ぶ。神子は微笑みながら大丈夫だと伝える。

「大丈夫ですよ、布都。心配してくれてありがとう。さて――」

 

 神子は映司と屠自古を見やる。

 一方の屠自古はかなり気不味そうに映司を見ていた。

 

「大体の事情は屠自古の欲を聴いて分かっています。――屠自古」

「……先程は勘違いとは言え、危うくお前を殺しそうになった……すまない」

 

 神子に言われ、屠自古は映司に歩み寄ったかと思うと頭を下げさっきの事に対してぶっきらぼうながらも謝った。

 しかし映司はその事はもう既に許している。

 

「――――全然気にしてませんし、それに屠自古さんは神子さんの事をそれだけ大切に思ってるってことですよ。次からは気をつけてください」

「……そう言われると助かる」

 

 なんとか和解した様子の二人。

 そして、映司は疑問に思っていたことを口に出す。

 

「そう言えば、なんで神子さんは倒れたんですか? ヤミーの攻撃は受けてないはずなのに……」

 

 映司が駆け付けた時、神子は何故か体調が優れなかったようだが少なくともヤミーの攻撃を受けたよう見えなかった。しかし、先程彼女は倒れ気絶したのだ。

 

「――ああ、それは欲の聴きすぎで、ね……」

 

 映司の疑問に神子はやや苦笑しながら答える。

 

「聴きすぎ……?」

「ええ、私は元から耳が良くてね。復活した後は更に良くなりまして……こんな耳当てを付けなきゃならない程に。そして欲が聴こえる能力を持っているのは知っていますよね?」

「はい、でもそれが?」

「ようするにヤミーとやらの欲が大きすぎたんです。それで調子を崩してたところに君が持っているコアメダルの欲も大きくてそれで…………」

「なるほど……――――えっ? なんで神子さんコアメダルのこと……」

 

 映司の疑問は氷解されるが、またもう一つの疑問が生まれる。

 

 ――神子にはコアメダルのことは話していないはず……。 

 

 神子はそんな映司の姿を見て笑いながら答えた。

 

「ふふふ、簡単な話ですよ。コアメダルの欲を聴いただけですよ」

「それって、人間以外にも通用する物なんですか?」

「勿論です。それにしても気絶してまで欲を聴いた甲斐がありましたよ、コアメダル……中々興味深い……」

 

 神子の欲を聴く能力は人間や妖怪だけだではなく、物にも通じる便利な力なのだ。

 

「――なぁ、二人だけで盛り上がらないでくれよ……」

 

 二人の会話に妹紅が口を挟む。

 確かにコアメダルの事を知っている映司や神子はともかく、他の三人はそんなことまったく知らないのだ。現に布都などワケが分からずに映司と神子をキョロキョロと見ている。

 

「ははは……すいません、それではあの教師が帰りしだい説明しましょう。映司も頼みましたよ」

「分かってますって」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 そして数十分後。

 里の歴史を隠した慧音が帰宅し、各々の自己紹介を済ませた後。オーズやコアメダルの説明をすることになった。だが、その前に人里の状況を把握することが先になった。

 

「慧音……どうだった?」

「ああ、あの怪物のせいで皆不安に陥っている……死人が出なかったのが幸いだな……」

 

 盟約により安全が約束された人里。その人里に突如として襲来したトカゲヤミー。そもそもトカゲヤミーは見たこともない姿をし、殺す気で襲ってきた。

 当代の博麗の巫女が生み出した「スペルカードルール」。それは、「殺し合い」を「遊び」に転換させた画期的なモノであり今まで深かった妖怪と人間の溝を埋める切っ掛け――まぁ、人間と妖怪は恐れ恐られの関係が望ましいのだろうが――にもなり、幻想郷は文字通り楽園へとなった。

 しかし何百年振りに殺意を持ち、楽園に侵入した一つの異端がもたらした今回の騒動は、いくら基本的に図太い幻想郷の人々でも不安に駆られてしまうのも無理のない話であった。

 ――――そして、その異端を倒した外来人の青年。正直分からないことだらけだが、まずは青年こと映司に礼を言うのが先だ。慧音はそう考え映司の方へ振り向く。

 

「先程はありがとう、君のおかげだ」

「俺は自分に出来る精一杯のことをやっただけですし、それに慧音さん達の協力が無ければあのヤミーは倒せませんでしたし」

「謙虚なんだな……だけど礼は言わせてくれ、私と妹紅だけではあの怪物は倒せなかったからな……」

 さて、映司。あの怪物や君が変化したあの姿、説明頼めるか?」

「はい、神子さんにも頼まれましたし。……えっとまずは」

 

 映司はそう言い、長机に三枚のメダル、タカ・コア、トラ・コア、バッタ・コアを置く。

 

「これから説明します――――」




四話でコアメダルやメダガブリューについて説明すると言ったな? あれは嘘だ。

ごめんなさいすいません五話では(多分)説明します。
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