「まずはコアメダルの説明からですね」
慧音の家で開かれたコアメダルに関する説明。 それには元からコアメダルを知っている映司と欲を聴きだした神子がすることになる。
コアメダルは八百年前、錬金術師達がとある国の王の協力の元、研究し造り出したモノだ。なぜ王がコアメダルの研究の援助をしたかと言うと簡単な話、利害の一致である。王はコアメダルの強大な力を欲していたし、錬金術師達は人造生命体を造ることが最大の目的だったからだ。
コアメダルは生物の力を極限にまで凝縮し純化させたモノである。コアメダルは全部で五種類、十枚ずつありその内の一枚を抜くことにより『10』と言う完全な数から『9』と言う欠けた数になり、メダルから『欠けた数を埋めたい』と言う欲望が生まれその結果――――人造生命体、グリードが誕生する。
コアメダルは五種類存在するのだから必然的にグリードは五体居ることになる。
昆虫系グリード、『ウヴァ』。
猫系グリード、『カザリ』。
重量動物系グリード、『ガメル』。
水棲動物系グリード、『メズール』。
――そして鳥系グリード、『アンク』。――この時の映司の顔が哀愁を帯びたのは神子の気のせいだろうか――
グリードはそれぞれの生命の王であり、強大なパワーを持っていた。それこそ九枚揃った完全体の状態なら幻想郷の大妖怪達にも匹敵するであろうくらいの力を。更にグリードは人間の欲望を使いヤミーを生み出すことが出来る。
しかし、それでも敵わない相手が居た。それはコアメダルの力を自在に操る戦士――オーズ。
オーズはメダルを変える事によってあらゆる戦況に対応することが可能である、中でも同色のメダルを三枚揃える事により発動されるコンボは強力無比。オーズのコンボが全部で六つ。
オールマイティーなタトバコンボ。
雷と圧倒的な数で圧倒するガタキリバコンボ。
灼熱の光と俊敏性を持つラトラーターコンボ。
パワーと重力操作で敵を粉砕するサゴーゾコンボ。
その身を液体に変え水中で力を発揮するシャウタコンボ。
空を音速で飛び炎の力で敵を焼き尽くすタジャドルコンボ。
王はオーズの力を使い、瞬く間に敵国を制圧しどんどん自国の領土を広げていった。だが、王は更なる欲望があった。
それは、神に近い存在に成ることであった。そして王はグリード達から全てのコアメダルを奪い、その身に取り込んだ。――――しかし、それだけの力を受け止められるわけが無く王は暴走。グリード達を巻き込み、その体は石棺となった。それが八百年前の王の顛末――――
そして八百年後、映司はふとした事からオーズの力を手に入れ、グリードの一体であるアンクと共に復活したグリード達と戦うことになったのだ。
◆
「まぁ、大体はこんなところでしょうか」
コアメダルに関する説明を終え、喋り疲れた映司と神子の二人は出されたお茶を啜る。
「それで、それで映司殿は“おーず”に変身して復活した“ぐりーど”と戦ってたのだな?」
「う、うん。そうだよ」
布都が何故だか分からないがとても目を輝かせながら映司に聞いてくる。その様子に若干戸惑いながらも映司はちゃんと答えた。
「……お前のことだからてっきり怯えるかと思ったが……、意外だな」
屠自古が意外そうに言う。
実は布都は臆病な性格であり、妖怪は今でも怖いらしい。だから、今の様に興味津々な態度を取るのは正直意外であった。
「なにを言うか屠自古! その身を変え、敵と戦う……カッコいいではないか!!」
「……ハァッ」
布都の言い分に屠自古は嘆息する。いつからそう言ったモノが好きになったのだろうか、元からだったのだろうか。
「だけど……ちょっとおかしいんだよね……」
映司が唐突に言う。
「おかしい?」
「はい、このコアメダルって今はもう無いんですよ」
そう、コアメダルは真木清人との決戦際、その余波により発生したブラックホールに飲み込まれ全て消失――アンクの意思が入ったタカ・コアを除く――したはずなのだ。しかし、現にコアメダルは手元にある。
そんな映司の疑問に神子が答えた。
「ああ、そのメダルは君が使っていたメダルの“プロトタイプ”ですね」
「プロトタイプ……?」
「ええ、数多造られたメダルの一つです」
神子の話によると、コアメダルの完成にいくつもの試作品が造られた。しかし、殆どが力が足りなかったり物質化が出来なかったりと失敗続きであった。映司の持っているコアメダルもその試作品の一つだと言う。それらは全て処分され、永い時間の間に幻想郷に流れ着いたのだという。
だが、実際に使った映司が一番良く分かるのだがこのメダルはかつて使っていたコアメダルとなんら変わらない力を出していた。そもそもそれ以前に三枚のコアメダルはなぜ、映司の元にやってきたのだろうか?
「でも、ちゃんと変身できたし、力が足りないようには思えませんでしたが……」
「確かに試作品のコアメダルではオーズに変身するだけの力は引き出せない。だけど今は変身できるくらいの力を持っている、それは――――コアメダル同士が融合したからです」
再び神子の説明が始まる。
コアメダルの根源は『欲望』。力が足りずに廃棄されたコアメダル達にある一つの欲望が産まれたのだ。それは『力が欲しい』という欲望、その欲望によりメダル達は融合。三枚の充分な力を持ったメダルになったのだ。――――グリードが生まれなかったのは所詮は試作品だからだろうか。
そしてその三枚のコアメダルが映司の所に来たかと言う、疑問は神子の推測によるとオーズである映司の欲望に感応し、やってきたらしい。確かにあの時、映司はオーズの力を欲していた。だから、コアメダルが来たのだろう。突飛な話だが、しっくりくる。
「さて、今度はこっちの質問に答えて貰いますよ映司」
「えっとなんでしょうか……?」
「あの時はヤミーのせいで聞きそびれましたが、君の欲が聴こえない理由……教えてもらいますよ?」
「んなっ!?」
『欲が聴こえない』。その言葉に神子、映司、屠自古の三人以外が全員驚く(特に布都)。
そして布都はしばらく考え込み、見当違いな答えを出す。
「なるほど分かったぞ!! やはり映司殿は高名な――――」
「どう考えたって違うだろ。と言うか話をややこしくするなっ」
「あだっ!?」
屠自古は布都の頭に手刀を叩き込む。叩き込まれた布都はしばらくの間、唸っていた。
「しっかし、欲が聴こえないと言うのはおかしな話だよなぁ?」
「ええ本当に。初めての件ですよ」
妹紅と神子の二人――あと屠自古も――はそう言うと、早く説明しろと言わんばかりと映司を見る。
映司はその様子に苦笑いを溢しながらも説明を始めた。
「まず俺……少し前まで体にコアメダルが入ってたんですよ」
本日何度目かの衝撃発言。これについては神子も知らなかったらしく、皆と同様に驚いた。
「…………飲み込んだのか?」
「飲み込んでないですって」
つい出てしまった慧音の一言に映司がツッコむ。
「とにかく、そのコアメダル――紫のコアメダルは『無』の欲望を持ってたんです」
『紫のコアメダル』。それはコアメダルの欲を聴いた神子でも知らないことであった。
映司は説明を続ける。
「そして、欲望を無にする力もあるらしくて……だから神子さんの能力が通用しなかったんじゃないかなって」
紫のコアメダルに備わる『欲望を無にする力』。だから、神子の欲を聴く能力はそれによって阻害されていたし、コアメダルの欲を聴いても紫のコアメダルに関することは分からなかった。
「……今もその紫のコアメダルは君の体の中に?」
「いや、いまもう無いんですがまだその力が残ってるみたいで……本当になんとなくですけど。」
そう紫のコアメダルは映司の体にはもう無い。
しかし、これは映司本人しかよく分からない事なのだが、まだ紫のコアメダルの力が自分の体に残っていると言う感覚があるのだ。だからあの時、メダガブリューが顕現できたのだ。
これで全ての説明が終わった。映司は残ったお茶を全部飲み干す。
そんな中、神子は映司を――本人に気づかれないように――じっと見ていた。映司の欲が聴こえない理由は分かった。だが、それゆえに彼の欲が聴こえないのが少しもどかしい、コアメダルの欲を聴いても分かったのは映司がオーズに変身しグリード達と戦ったと言う事ぐらい。詳しいことは映司の体に入っていた紫のコアメダルの力に阻まれ、聴き取れない。――なんと言うか、彼を火野映司と言う人物もっと知りたいと思ったのだ。オーズの強大な力を扱う映司がどういった欲望の元、グリード達と戦ったかと言う好奇心……それにあれだけの力を持つ人間を放っておくわけにもいかない。
などと考えていると不意に、不快感が神子を襲う。この感覚は先程経験した――――
「ヤミー……!」
ヤミーがまた現れた事を意味するその言葉にこの場に居る全員がざわめきだす。映司は若干語気を強めながら神子に問う。
「神子さん! ヤミーは何処に!!」
「ここから東の――――」
「分かりました! 皆さんは人里を頼みます!!」
言うがいなや映司は外に飛び出し、ヤミーの元に向かった。当然だが映司はこの辺りの地理はまったく知らない。
「映司っ!? ああもうっ! 布都! 屠自古! ここで待っててください!」
「た、太子様!?」
「私は映司を追いかけます!!」
そう言って、神子も外に飛び出してしまった――――
かーなーり無茶苦茶な設定ですがご了承ください。
紫のコアメダルは映司に関わる欲を全て聴きとれなくなる力を持ってます。
紫の力がまだ残っているのは……まぁ、あれだけ凄いパワーを持った物が体の中にあったんだからすぐにはその力は無くならないだろってことでお願いします。