火野映司/オーズが幻想入り   作:真奪還

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第006話 戦う欲とブーメランと寝床提供

『ふむ……』

 

 神子がヤミーを感知する少し前。

 本来ならそこには人里があるはず、しかし現在は慧音の能力により、隠されただの平原である。そこにあらゆる爬虫類の特徴を取り込んだかのような人型の橙色の異形が思案していた。

 

(ヤミーが何者かに倒された……どういうことだ?)

 

 グリードは自分が作ったヤミーの動向をある程度、感知することが出来る。橙色の異形がここに居るのも、自分が作ったヤミーが何者かに倒されたという事を感じ取ったからだ。

 

(幻想郷には我々とほぼ互角に渡り合う程の強者達が居るとは聞いたが……)

 

 自分と黒色の異形を復活させた男の言葉を信じれば、その強者達ならあの程度のヤミー、簡単に倒せるだろう。だが、その強者達は自分たちのテリトリーからあまり出ないとも聞く。――――まぁ、その強者達がたまたま出向いていたと言う可能性も十分考えられるのだが。

 しかし、自分の直感はヤミーは幻想郷の強者達に倒されていないと教える。

 

(……確かめてみるか)

 

 ヤミーを作り、そのヤミーが暴れればトカゲヤミーを倒した何者かは必ず現れるはず……。

 橙色の異形はそう考え、適当な欲望を持つ妖怪か妖精を探しに行動を開始した。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 走る。映司は走る。ヤミーの元へ向かうために。その時、後ろから声が掛かる。

 

「――映司ッ!!」

 

 その声の正体は神子だった。飛んでいた神子は映司との距離を縮め、横に並ぶ。

 若干、怒っているようにも見えた。二人は移動しながら会話を続ける。

 

「神子さんっ、どうして!」

「どうしてじゃないですよ! すぐに飛び出して! 大体、君はここらの道を何も知らないでしょう!」

「ああ、すいません!」

 

 先の戦いで「一人で無茶しなくても良い」と学んだ映司だが、染みついてしまった癖みたいなモノは一朝一夕で抜けるようなものではない。

 今回もついやってしまった。

 

「いやもういいです。ヤミーの居場所は分かってますから早く行きましょう!」

「大丈夫なんですか! また倒れるかもしれませんよ!」

 

 先程、ヤミーの膨大な欲を聴いてしまい気絶してしまった神子。そこが映司の懸念であった。

 

「大丈夫です! 近づかなければ気絶はしません!」

「それなら、良いんですけど!」

 

 二人は移動の速度を高める。五分くらい経っただろうか、神子が話掛けてきた。

 

「――こんな時に言うのもなんですが、君に聞きたい事があるんです!」

「なんですかっ?」

「私は君の欲は聴こえないっ、だから知りたいのです。――――君は一体どんな『欲望』の元、外の世界で戦っていたんですか!! 聞かせてください! 君の欲の声を!!」

 

 命を懸け、異形の者と戦う。それは生半可な思いでは成し遂げられない、かなりの覚悟が必要な事だ。だから、映司がどんな|欲望(おもい)の元、グリード達と戦ってきたのか知りたいのだ。こんな時に聞くべきことではないのは分かっているし、後で聞くことも考えた。――――しかし、神子は今、映司の口で映司の声で知りたいと思ったのだ。

 そんな神子の問いに映司は答えた。

 

「戦う『|欲望(りゆう)』ですかっ、――――俺はただ俺の腕が届く範囲の事を、自分が出来る事を精一杯やるだけですっ!!」

「その手が届く範囲より外はどうするんですかっ!」

「そこは神子さんや皆さんが頑張ってくれますよねっ!?」

 

 出会って数刻しか経ってないないのに随分と信頼されているようだ。神子は思わず笑ってしまう。

 

「はははっ! 君のことが少し分かりましたよ! 君は――『馬鹿』だ!」

 

 やはり、あの時感じていたがこの男は『馬鹿』だ。そうとしか言えない。

 

「ええぇっ! ば、馬鹿!?」

「褒めてるんですよ! 映司! そろそろヤミーに近づいてきましたよ!」

「なんか誤魔化された気がしますけど、分かりました!」

 

 そう言い、映司は腰にオーズドライバーを宛がう。オーズドライバーの両端からベルトが伸び、映司の体にしっかりと固定される。

 映司はオーズドライバーに三枚三色のメダル、タカ・コア、トラ・コア、バッタ・コアを嵌めオースキャナーで掛け声と共にソレをスキャンする。

 

「――変身ッ!!」

 

 ――タカ!

 ――トラ!

 ――バッタ!

 

 ――――タ・ト・バ! タトバ、タットッバ!!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 人里を抜け、魔法の森へと続く街道。

 そこでは人型のイグアナに人間の顔が付いた異形――――イグアナヤミーと二人の妖精が争っていた。……正確には怪我をした緑髪の妖精を青髪の妖精が庇いながら戦っているのだが。

 彼女らはいつも通りに遊んでいた所、「暴れたい」と言う欲望から産まれたイグアナヤミーに襲われたしまったのだ。その際に緑髪の妖精――――大妖精が怪我をしてしまった。飛んで逃げられればいいのだが、見たこともない異形を目の当たりにしたせいか体が竦んでしまい上手く飛べない。だから青髪の妖精ことチルノが彼女を守りながらイグアナヤミーと戦っているのである。

 

「こんのーっ!!」

 

 チルノの掌から氷の弾幕が放たれる。だが、その攻撃はイグアナヤミーの頑強な腕により、防がれた。イグアナヤミーはじりじりと彼女たちに歩み寄る。

 

「くっそーッ!! これでも食らえぇ!」

 

 ――――雪符「ダイアモンドブリザード」

 

『グゴォォォォ……!?』

 

 強烈な冷気と共に先程のよりも強力な弾幕がイグアナヤミーを襲う。モチーフが爬虫類ゆえか強烈な寒さに弱いらしくイグアナヤミーは大きく怯み、体が凍りつく。

 

「どーだぁ! あたいの力思い知ったかー!」

 

 ふふーんと鼻を鳴らし、得意気にチルノは言う。

 ――――しかし、イグアナヤミーは凍結しただけでまだ倒れていなかった。

 

「――チルノちゃんっ!!」

 

 大妖精の叫びと共にイグアナヤミーが氷の戒めを砕き、咆哮を上げる。

 確かに冷気には弱いがイグアナヤミーを仕留めるにはまだ威力が足りなかったのだ。イグアナヤミーは勝ち誇るように再び咆哮を上げ、二人にじりじりと近寄り仕留めんとする。

 

 ――――その時、

 

「――セイヤーッ!!」

「ハアァッ!」

『グオォォォォォッ!?』

 

 何もない虚空から突如として赤、黄、緑の三色の超人――――オーズと神子が現われ、オーズはそのままイグアナヤミーに飛び蹴りをお見舞いする。――どうやら、強い力を持つ者なら隠された里から出ることは可能なようだ――その威力は中々大きかったらしくそれなりの重量を持つイグアナヤミーが大きく吹っ飛ばされる。

 更に神子の掌から弾幕が放たれ、イグアナヤミーに追い打ちを掛ける。

 

「君たち大丈夫!?」

 

 オーズはチルノ達の方に振り向き、安否を確認する為に声を掛ける。いきなり声を掛けられびっくりしながらもチルノは答える。

 

「あ、あたいは大丈夫だけど大ちゃんがっ」

「分かった! 神子さんはこの子達を頼みますっ!!」

「分かってますよ!」

 

 神子にチルノ達を任せると、オーズはイグアナヤミーに向かって駆け戦闘を開始する。神子も自分がヤミーに近づくとまた気を失う恐れがあるため、素直にオーズの頼みを了承した。

 

「セイッ!」

 

 飛蝗の強力な脚力を宿した回し蹴りがイグアナヤミーの脇腹にヒットした。

 攻撃に呻くイグアナヤミーにオーズは間髪入れずに虎の力が込められた爪状の武器――――『トラクロー』を展開し、連続で切り付ける。イグアナヤミーの体に火花とセルメダルが舞う。

 

『グガァァァァァッ!?』

(……何かおかしいな……?)

 

 戦いながらオーズは違和感を感じていた。

 ――トカゲヤミーに比べ、イグアナヤミーは弱く感じる。

 トカゲヤミーは殴った手が痛かった程に防御力が高かったのに、イグアナヤミーは全然硬くない。現に蹴りやトラクローで着実にダメージを与えている。

 そんなオーズの疑問は神子の言葉により氷解された。

 

「――――映司! そのヤミーは脱皮をすることにより力が上がります! だから早めに倒しなさい!」

「なるほど! 分かりました!」

 

 今は脱皮をする前の状態と言う所か。そうなら早いと、オーズは地面を叩きメダガブリューを召喚する。

 

「うおー!? 何だアレ! カッケー!!」

「チ、チルノちゃん……」

「能天気ですね君は……」

 

 メダガブリューを見たチルノは彼女の琴線に触れたのか、「カッケー」と叫び大妖精と神子の二人は若干呆れている。

 チルノは知らないことだが、紫のコアメダルは『氷』の力も宿している。だから、その紫のコアメダルによって造られるメダガブリューに同じ『氷』の妖精であるチルノは無意識にソレを感じ取ったのかもしれない。

 ともかく、オーズはメダガブリューを手にイグアナヤミーに向かう。

 ――――その時、

 

『ウアァァァ……』

「これはッ!」

 

 銀色の欠片がばら撒かれかと思えば、そこから全身が包帯のような物に巻かれ、頭部にポッカリと黒い大きな穴が空いた怪物――――屑ヤミーが十数体程、産まれた。屑ヤミー達はそれぞれオーズの動きを阻害するように動いたり、イグアナヤミーを守るために取り囲んだ。

 

「ああ、もう!!」

 

 オーズは屑ヤミーの群れに向かってメダガブリューを一閃する。

 屑ヤミーはスピード、パワーと共に最低クラスだが、耐久力が高くなにより数が多いのが厄介だ。現にメダガブリューの一撃を受けてもなお屑ヤミーはオーズに纏わりつく。

 

『グオォォォォォォォォォッ!!!』

 

 そうこうしている間に、イグアナヤミーが脱皮を果たしてしまった。

 

『ガアァァァァァァァァァァッ!!!』

「ぐああぁっ!?」

 

 イグアナヤミーは脱皮前より数倍に増したスピードでオーズに向かって突進し、その勢いのまま拳のラッシュを掛ける。

 オーズの胸部から火花が散り、吹っ飛ばされてしまう。

 

「ぐっ……!」

 

 オーズは体を起こし、イグアナヤミーと屑ヤミー達を見やる。

 他のメダルがあれば対処できるかもしれないが生憎、持っているのはタカ、トラ、バッタの三枚のみ。正直、まずい状況である。

 オーズがこの場をどう切り抜けるか思考を張り巡らせていた。その時、オーズの後方から弾幕が飛んだ。

 

 ――――秘宝「斑鳩寺の天球儀」

 

 その弾幕は屑ヤミー達に当たり、屑ヤミー達はあっけなく消滅した。屑ヤミーは打撃みたいな物理的な攻撃には強いのだが『クワガタホーン』による電撃など特殊攻撃には滅法弱いのだ。

 弾幕を放った主である神子はオーズの傍に近寄る。

 

「大丈夫ですか、映司?」

「み、神子さんまた倒れたら……!」

 

 自分より他人の事を優先する映司の言動に若干笑みを零しながら神子は言う。

 

「遠距離から戦えば気絶する心配はありません。――――それに、君は『自分の手の届く範囲より外は私達がなんとかしてくれる』って言いましたよね? なら、今がその時です!」

「ははは……そう、ですねっ!」

 

 オーズは思わず笑う。神子も自分が出来る事をやろうとしているのだ。

 

「でも、あの子達は……」

 

 神子の加勢は嬉しいが、チルノ達の事が心配だ。

 

「あの氷精なら大丈夫でしょう、ほら」

 

 神子に後ろを見るように促され、オーズは後ろを見る。そこには鼻をフンフンと鳴らし、気合十分と言った様子の――恐らく神子に大妖精の事を任された――チルノが居た。まぁ、屑ヤミー程度なら遅れは取らないだろう、――――大妖精は心配そうにきょろきょろしてたが。

 とにかく反撃開始である。

 神子は弾幕でイグアナヤミーと屑ヤミーを牽制し、あの間を縫うようにオーズが駆ける。オーズが狙うのは勿論、イグアナヤミーだ。しかし、そうはさせまいと屑ヤミーがオーズに纏わりつこうとする。だが、

 

「ハッ!」

 

 バッタレッグに力を籠め、オーズは飛蝗の驚異的な脚力を利用した大跳躍を行い、屑ヤミーの群れから脱出する。

 

「隙あり、ですね」

 

 ――――眼光「十七条のレーザー」

 

 そしてオーズが脱出した事により、一瞬の隙が生まれた屑ヤミー達を神子はソレを逃さずに攻撃。屑ヤミーは全滅した。残るはイグアナヤミーだけである。

 

「ハアァッ!!」

 

 オーズはイグアナヤミーの胸部をメダガブリューとトラクローを織り交ぜ攻撃する。

 攻撃を一点に集中させ、イグアナヤミーの装甲を砕く戦法だ。しかし、そう簡単にはさせないイグアナヤミーだ。

 

『ガアァッ!!』

「ガッ……!?」

 

 イグアナヤミーはオーズの腹に剛力の拳を叩き込む。体の中の空気が抜ける感覚が襲う。

 

「セイ! ヤァッ!」

『グガッ!』

 

 だが、負けじとオーズも力を込めたメダガブリューの一撃を食らわし、オマケにトラクローで×の字に切り裂く。更に神子も弾幕で攻撃する。イグアナヤミーの頑丈な鱗の鎧は確実に壊れつつある。

 

『ウガァァ!!』

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 そのことを察したイグアナヤミーは奇声を上げながらオーズの首根っこを無理矢理掴み、軽々とぶん投げる。

 

「あいたたたた……」

「――映司」

 

 投げられた際にぶつかったと思わしき後頭部を|擦(さす)るオーズ。

 その時、空からオーズを援護していた神子が降り立つ。

 

「神子さん……どうしたんですか?」

「少し、耳を」

「?」

 

 言われるがままにオーズは神子の口に耳――オーズの状態では見えないが――を寄せる。

 そして、神子の言葉に少し驚きながらもその提案に乗った。

 

「――――出来ますか?」

「やってみます!」 

 

 オーズはそう言うと、トカゲヤミーを倒した際に念の為にと数枚拾っておいたセルメダルをメダガブリューに『食べさせる』。

 

 ――――ゴックン! タトバ!

 

 メダガブリューに三色の光が宿る。そしてオーズはそのままイグアナヤミーに切りかかるのではなく、

 

「セイヤッ!」

「なんだとーっ!?」

 

 ブーメランのように“投げた”。

 

 ――――光符「グセフラッシュ」

 

 すかさず神子はメダガブリューに向かって弾幕を放射する。

 するとどうだろうメダガブリューに弾幕のパワーが宿り、勢いが増したではないか。

 そう、先程神子がオーズに耳打ちしたのはメダガブリューに弾幕の力を上乗せ出来ないかと言う事なのだ。当然、初めての事なので一抹の不安があったがどうやら無事成功したようだ。

 

『グギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』

 

 投擲スピードと勢いが増したメダガブリューはそのままイグアナヤミーの左脇腹に直撃。イグアナヤミーの脇腹は完全に抉れ、そこからセルメダルが大量にあふれる。そしてオーズはイグアナヤミーにトドメの一撃を果たすため、再度メダルをスキャンする。

 

 ――――スキャニングチャージ!!

 

「ハアァァァァ……!」

 

 オーズは上空へ跳び、タトバキックを放つ。

 そしてイグアナヤミーの後方には主の元へ戻らんとするメダガブリュー。

 

「セイヤァァァァァーーーーーーーーーーーッッ!!」

『グ……グギャガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!?』

 

 ――――タトバキックとメダガブリュー。この二撃はほぼ同じタイミングにイグアナヤミーに炸裂。

 当然、この破壊力にイグアナヤミーは耐えきれるわけがなくセルメダルを散らばしながら爆散した…………。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 あの後、チルノがオーズに向かって「勝負しろー!」と騒いでいたが、大妖精に諭され勝負はお預けになり渋々と自分の住処に帰って行ったチルノ。大妖精はオーズと神子に丁寧にお礼を言いチルノの後を追った。このやりとりだけで二人の関係が窺いしれる。

 オーズは変身解除し、映司に戻る。

 

「映司、君はこれからどうするのですか?」

 映司の答えは決まっているだろうが、あえて聞いてみる。

 

「俺は幻想郷に残って、ヤミーと――――そしてグリードと戦います……が」

「が?」

 

 妙に歯切れが悪い。どうしたのだろうか。

 

「どこに住みましょう……!?」

「あー……」

 

 映司は野宿には慣れている。しかし、幻想郷の野宿はかなり危険だ。そこらへんの危険性は神子からちゃんと聞いている。人里の宿泊施設を利用するために職でも探そうかと映司が考えていた時、神子が口を開く。

 

「――――それなら、私の道場に住みなさい」

 

 神子からの提案に映司は目を丸くする。

 

「え……? い、良いんですか?」

「はい、一人くらいなら大丈夫ですし。それに――」

「それに?」

「現状、ヤミーを感知出来るのは私だけ。そしてヤミーが出ると言う事はグリードが居るのでしょう? なら、私は幻想郷に住むものとして、この異変を解決するため君に協力しましょう。――なにより、君には助けられましたしね」

 

 神子が映司に住居を提供した理由。トカゲヤミーに助けられたお礼をしたいのもあるが、ヤミーやグリードが居ると言うことはもうこれは異変である。それも今までの遊び半分の異変ではなく、かなりまずい方の。だからヤミーやグリードらにとって有効打であるオーズ――映司を野宿みたいな真似をさせるわけにはいかない。

 

 ――――だってなんかしそうだし。

 

 神子の提案に映司は素直に喜ぶ。

 

「あ、ありがとうございます!」

「ええ、頑張りましょう」

 

 そうすると隠されていた人里が見えた。恐らく、屠自古辺りが慧音に頼み込んで能力を解除して貰ったのだろう。

 

「――太子様っ!!」

 

 そうしていると屠自古がやってきた。

 若干、涙目な所を見るとかなり心配してたのだろう。屠自古は神子に抱きつく。

 

「太子様っ! ご無事でございますか!?」

「大丈夫ですよ、屠自古。また心配を掛けたようですね……」

「いえ……無事なら良いんです……」

(本当に仲が良いんだなぁ……)

 

 そういう事にはとことん鈍感な映司は後に非常に驚く事になるのだった……。まぁ、今はこの話は置いておこう。

 

「と、屠自古。また我を……ぜぇぜぇ」

 

 遅れて、布都もやってきた。どちらも全速力で飛んできたのだが亡霊である屠自古は疲れは存在しない、しかしそうではない布都は肩で息をしていた。そのことに気付いた屠自古は布都に謝った。

 

「あ、すまん……」

「すまん……では……ないだろ……ぜぇぜぇ」

 

 ともかく、布都と屠自古が揃ったので、映司が神子らの道場に住むことを伝えることにする。

 

「布都、屠自古。我々に新たな仲間が入りましたよ」

「「?」」

「その名は――――」

 

 若干仰々しく振る舞いながら、映司に指差す。

 

「火野映司です」

「えっ」

「なっ」

 

 その言葉に屠自古は驚愕し、布都は驚きながらも嬉しそうである。

 そんな二人の様子を見ながら映司は改めて挨拶をした。

 

「えっと……しばらくの間ですけど……よろしくお願いします」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!! か、か、歓迎するぞ映司殿ーッ!」

「うわわわわわわっ」

 

 映司の手を取り、そのままブンブンと振る布都。よほど嬉しいようだ。その一方、屠自古は訝しみながら神子に話しかける。まぁ、あれだけ怪しんでいた人物を急に引き入れると言ったのだから無理はないだろう。

 

「一体どうしたのですか? 急に」

「幻想郷に流れ着いたグリード、そしてヤミーに対抗するには映司、オーズの力が必要不可欠だからです」

「それなら博麗の巫女の所にでも預ければ良いのでは?」

 

 これはもう異変と言える。なら、博麗の巫女の所に異変解決の要である映司を預けると言う屠自古の言葉はもっともである。しかし、

 

「あの巫女の事ですからめんどくさがって断りますよ……」

「あー……確かに……」

 

 上記の理由から却下された。今代の博麗の巫女は相当な物臭なのだ。

 

「それに、彼には助けてもらいましたからね。その恩返しも兼ねて、ね」

「ふぅむ……」

「納得してもらいましたか?」

「――――いや、それが貴方の意思ならば私達はそれに従うだけです。ただ少しだけ気になっただけです」

「……ふーむ」

 

 神子は屠自古にずいっと顔を近づける。突然の事に屠自古は慌ててしまう。

 

「たたたたた太子様っ!?」

「たまにはわがままを言っても良いんですよ?」

 

 そうは言うが上司にわがままを言うのも遠慮してしまう。それよりさっきから神子の顏が近い、嫌というわけでない、むしろ嬉しい。しかし、こうも見つめられると恥ずかしい。

 屠自古は思わず顔を背けてしまう、背けた方向には――

 

「よろしく頼むぞーっ! 映司殿!」

「ちょっと布都ちゃん! 目がっ、目が回るぅぅぅ~~っっ!?」

 

 布都が映司の両手を掴み、ぶん回していた。どこからそんな力が出てきたのだろうか。

 

「なにしてるんだ布都ーっ!?」

「映司ーっ!?」

 

 驚く屠自古と神子。

 二人は慌てて布都を止めに行った。

 

 ……あのあと、布都の大回転は屠自古に一発殴られ止まったらしい。そして、布都は神子から罰としてイグアナヤミーが散らばしたセルメダル拾いを命じられたという。

 

 

 

 ◆

 

 

 

『まさか、オーズがこの幻想郷に現れるとはな……!』

 

 オーズとイグアナヤミーの戦いの一部始終をこの橙色の異形は見ていた。その顔は驚きに染まっていた。

 グリードは自分が発する欲の気をコントロールできる。だから、神子は気付かれずに済んだのだ。

 

『ともかくあの男に知らせた方が良いか……』

 

 セルメダルに関しては別に動いていた黒色の異形が稼いでいる所だろう、自分が稼いだメダルはオーズ達にを渡してやる。男にはお咎めを受けるかもしれないが。

 そう結論付け、橙色の異形はオーズのことを男に知らせるため、あの洞窟へと向かった……。

 

 

 

 

 




メダガブリュー……ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーメランッ!!!

あとこの作品はみことじです(真顔)
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