第1話(投稿順は第1話)
吸血鬼異変からかなり過ぎた頃のある日の紅魔館。
「ねぇ、レミィ。その子いったいどうするつもり?」
「どうするも何も、育てて行くつもりよ。私の愛しい咲夜だもの」
現在レミィの膝で気持ちよく寝ている小さい女の子の名前は咲夜。十六夜咲夜である。なんとも言えない気持ちであるが、親友の言うことには逆らえない。ふと、なにか怪しい気配を感じた。この胡散臭い雰囲気、あいつか。
「はぁい、元気にしてる?」
「八雲紫か」
この急に現れた女は八雲紫。この幻想郷を支配、管理してる女である。吸血鬼異変において、完璧だったはずの吸血鬼による幻想郷支配計画。それを台無しにされてしまったのは全てこの女のせいである。認めたくないが、彼女は天才である。また彼女側には博麗の巫女もいた。あの女も化け物である。
「あれ、その子は……」
八雲紫は咲夜を見て一瞬驚き悩んだ表情をした。おそらくこう考えているのだろう。
「この子は一体どこから……人里から?それとも外で忘れ去られてしまいやって来たのか?それとも……」と。
レミィはそんな八雲紫の目線に気づいたのか、表情を険しくしてこう言い放った。
「八雲紫。もしもこの子に何かするつもりだったら許さないわよ。私がこの子を育てるのだから。そして手を出すと言うのなら、もう一度吸血鬼異変を起こすくらいの覚悟がこちらにはあるわ」
八雲紫は一秒さらに険しい表情になった後、パッといつも通りの胡散臭い顔に戻った。
「別に何もするつもりはないわよ。少し気になっただけ。貴方がその子を育てていくの?」
「ああ、もちろん」「全てをかけて」
少しの沈黙。そして八雲紫は口を開く。
「そう、じゃあ私は何もしないわ。その子のことは貴方に任せるわ、だから安心して」
そう彼女が喋った時、小さい声、しかしちゃんと通る声でレミィは一言言った。
「……感謝する」
八雲紫はまたもや驚いたような顔をした。しかし先ほどと比べ、顔が緩んでていた。何が面白いのかは全然わからないがニヤニヤと笑っていた。そして口を開いた。
「驚いたわ。プライドの塊のような貴方がお礼を言うなんてね。やっぱり人って変わるのかしら」
「私は吸血鬼だ」
バカにされたと思ったのか少し怒り口調でレミィは答えた。
「ふふっ、違うわよ。人って周りを変えるのかしらと言っているのよ。そう例えば厳格な吸血鬼を緩々にしてしまうみたいに。やっぱり人って興味深いわ。そんな人間と私たち妖怪が共存できる場所、それがこの幻想郷だと思うと、本当にここを作ってよかったと思うわ」
相変わらず八雲紫はニヤニヤしてる。
「そんなにニヤニヤして満足?」
私は嫌味のつもりでそう言った。
「もちろん満足だわ。さてと、喋り過ぎたわね。そろそろ帰らせてもらうわ。やらなくちゃいけないことも山ほどあるし。ふふっ、ではまたいつか」
私は出来れば二度と会いたくない。そんな私の心を見透かしたように八雲紫はまたニヤニヤしていた。そしてレミィは早く帰れと言わんばかりに目つきを鋭くしている。彼女は手を振りながらスキマへと入っていった。
「疲れたわ」
「私もよ、レミィ」
少しの沈黙。しばらくして
「……パチェはどう思う?あの女。未だにイマイチ分からないのよね、何考えてるのか。本当に彼女は咲夜に手を出さないと言えるかしら?」
そんなこと私に聞くなとも思ったが私はその質問に答えた。
「確かにあの女は何を考えてるかも分からないし、信用もできない。でももしあの女が咲夜に何かしようとしたって、貴方はそれを止めるでしょ?」
「もちろんよ」
「じゃあ大丈夫よ」