幻想郷の小さな異変たち   作:絶望先生と東方と涼宮が好きな人

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霧雨魔理沙。彼女は強い賢い純粋だ。しかし、どんな人間にも弱いところはあり、隠したいことはあり……。そんな一人の魔女の、忘れたいようで忘れたくない、些細な昔話……。


遠い日の夢
第1話(投稿順は第4話)


遠い日の夢を見た。

私が家から出て行こうとした、あの夜のことである。

 

「本当に出ていくの?」

「ごめんね、お母さん。でも私は本気で魔法使いになりたいの!でもあいつは絶対それを許してくれない。だからあいつが寝ている今の間に家出をするのよ」

「……分かったわ。大丈夫よ、私は止めないわ。どんな貴方でも貴方は私の子ですもの、応援してるわ」

「……ありがとう」

 

私はこれ以上話してたら決意が揺らぐ気がした。だからその一言だけを言って私は、後ろを振り向かないでその場を去った……あれ?

 

「貴方、行ったわよ」

「行ったか」

「良かったの止めなくて?」

「止めても行くだろう?あの子は」

「それはそうだけど、だからって一言ぐらいなんか言ってあげればいいのに。もう二度と会えないかもしれないのよ?」

「本当に二度と会えないと思ってるのか?」

「……いいえ。あの子は良い子だもの。いつかまた一段と大人になって私たちに会いに来てくれるわ。信じてるわ」

「俺も一緒さ。俺も信じてるよ、あの子のことを。だからこそ何も言わなかったんだ。分かるだろ?」

「……分かったわ、貴方。野暮なことを聞いてごめんなさいね」

「いいや、いいさ。正直俺も不安はあるし、少し後悔もしてる。親ってめんどくさい生き物だな……」

「そうね、貴方……」

「とりあえずもう夜も遅い、寝よう」

「ええ、そうしましょう」

 

そして母さんは家の中へと入っていった。まだあいつは外の月を眺めている。そして一言ぼそっと言った。私は一生忘れないだろう。

 

「魔理沙……頑張ってこい!」

 

私はこんなこと知らない。私は母さんに別れを告げた後、すぐ香霖のところへ向かったはずだ。

 

何故?

 

理由は明白だ。これが私の夢だからだ。今目の前で見ているのに全く私に気づいてないあいつのことは、あれからもうずっと会っていないが、それでもちゃんと覚えている。こんなことを言うような人間ではなかった。

 

私が魔法使いになろうとすることを決して許さず、応援なんてもってのほかである。だから要するにこの映像は私にとって都合のいい夢にしか過ぎないということだ。驚きだが、私は無意識にあいつに自分を認めてもらいたかったらしい。だから多少現実に願望が付け加えられた状態で夢を見ているということだ。

 

そのとき急に周りの風景が変わった。どうやら此処は香霖の家であろうか。夢の私が香霖の元へ辿り着いたらしい。

 

 

「おい、香霖!来たぜ」

「……やあ、魔理沙。本当に出て来てしまったということだね?」

「そうだぜ、それより頼んだやつは出来たか?」

「ああ、出来てるよ。君のオーダー通りに作れたかは分からないが……」

 

そして香霖は机の引き出しから例の物を出した、ミニ八卦路だ。

 

「これで魔法の光線が出せるのか?」

「ああ、ただし相当の魔力が必要だけどね」

「それに関しては大丈夫だぜ、どうにかする」

「君ならどうにかできると思ってるから僕はこれを作ったんだ。信頼してるよ」

「じゃあ、私はそろそろあそこに行かせてもらうぜ。せっかく必死に探して見つかった場所だからな」

「魔理沙」

「ん?何だ、香霖?」

「ここら辺は普通に危険だからね。気を付けて行くんだよ」

「もちろんだぜ……じゃあな、香霖。本当に感謝してるぜ、ありがとな」

「いいや大丈夫さ」

 

そして私こと霧雨魔理沙は香霖の元を去って私の新住居へと向かって行くのだが……。やはり私が去った後も、まだその映像は続いてた。

 

「君にも感謝するよ」

 

一人しか居ないはずなのに、香霖は誰かに喋りかけた。すると誰も居ないはずなのに、返事が聞こえた。

 

「いや、気にしなくていい。誰でもないお前の頼みだしな」

「とはいえ君は忙しいだろう?だからより一層申し訳ないし、感謝するよ」

「堅苦しいんだよ、お前は。私たちは親友だろ?」

「まあ、それもそうか」

 

一人の女性が急に現れた。その人物を私はなんとなく覚えていた。博麗の、霊夢の前、先代の巫女だった。名前は知らない。

 

「香霖、どうだった?あの子の様子は……。家出をしたんだ、とても辛いだろう。無理してる様子はあったか?」

「いいや、僕が見た感じではいつもの魔理沙だったよ。ただあの子はとても賢いし良い子だから、僕に気を使わせないようにいつも通りを装っているだけかもしれない。少なくとも鈍感な僕には分からない」

「お前の目は、あらゆる道具の用途は分かるのに、一人の人間の心すら分からないのだな」

「面目無い」

 

まだ今より少し若い香霖は、先代の博麗と非常に仲良しそうに話していた。内容が私の話でなければ嫉妬していただろう。

 

「申し訳ないのだが、また頼めるかい?」

「もちろんだ、これは博麗の使命でもある。幼い少女一人すら救えないのに、この幻想郷を守ることなどできないさ」

「……感謝するよ。本当に多くを頼って申し訳ない。あの子は行動力が非常にある。それは素晴らしいことなのだが、なんといっても行動が日々危険すぎる。君に見守ってもらわないといつ妖怪に襲われてもおかしくない。頼れるのが君しかいないからこうも頼ってしまっているが、本当に……感謝してる」

「いいさ、それに私だけが頑張っているわけじゃない。お前だってあの子のため頑張っているじゃないか?知ってるぞ。あの子が今向かってる魔法の森の中にあったというあの家、用意したのは君だろ?なのに、元々あったという体にして彼女にその噂を流し、わざわざ彼女自身に空き家を見つけさせたのだから。私より何倍も遠回しに注意深く、時間をかけて彼女に協力してるじゃないか。お人好しにもほどがあるぞ」

 

知らなかった。あの家がまさか元々私のために用意されていたものだったなんて。それに私は知らないうちに博麗の巫女に守られていたのか?まさかあの家を見つけたときや魔法の森に初めて行ったとき、妖怪に一切出会わなかったのは、偶然じゃなくて、博麗の巫女が私の見えないところで妖怪を退治してたからなのか?

 

いいや、そんなわけない。これは夢なのだから。

 

でもあの先代巫女は、霊夢と私がまだ小さいときに出会って、それからほんの少し経ってすぐに居なくなってしまった。要するにあまり記憶に残っていないし、そもそもその記憶も量はかなり少ない。なのに、現在見てる博麗像は、あまりに細かくリアルだ。曖昧な記憶から作られた存在にしてはあまりにリアルなのだ。

 

本当にこれは夢なのか?

 

「さて……雑談は終了だ。そろそろ彼女を見守ってあげなければな」

「感謝するよ、本当に」

「いいや、構わないさ。また会おう、香霖」

「ああ、もちろんだ」

 

博麗の巫女はまた姿を消した。おそらく私の元に向かったのであろう。香霖は寂しそうな表情をしていた。そして私は確かに見た。博麗の巫女も、去り際に香霖を見て名残惜しい表情をしたのを。私はこの後、この博麗が急にいなくなることも、香霖が悲しい表情を時々見せるのに私に気をつかい無理に微笑むことも、知っている。そしてその訳を今ここで知ったような気がした。元々勝ち目などなかったのだ。

 

まあ、それは今はどうでもいいことである。するとまた風景が変わり始めた。

 

 

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