しばらくして、なんと私が外へと出てきた。呑気に星空を見上げている。
「わあ〜やっぱりきれいだ……そうだ!散歩しよう」
えっ?
「前もこの森歩いたけど、妖怪とか一切いなかったし大丈夫でしょ!」
おい、バカ!それは博麗の巫女が守ってくれていたからであって。ていうか私、こんな記憶ないぞ⁉︎どういうことだ?
「さて、出発!」
おい、待て、やめろ!
そう言って私は彼女の前に立って、道を遮ろうとしたが、彼女は私の体をすり抜けていった。
やっぱり私はこの世界に干渉できない!
しかし今の私なら分かる。そんな状態で森の中へ入って行ったら確実に死ぬ。夢だとしても私が死ぬのを黙って見ていられるもんか!とはいえ、どうすることもできない。私はただもう一人の私について行くことしかできなかった。
「ふーふーん♪ふーふー♪」
意味の分からない鼻歌を歌っている。呑気だ、呑気すぎる。頼む、博麗の巫女、早く来てくれ!すると、目の前に博麗の巫女ではなく、狼のような妖怪が現れた。お前は呼んでねぇよ!
「ひっ⁉︎」
もう一人の私は急に地面に倒れこみ、動かない。よく見ると体が震えている。
「ラッキ〜だな。こんな丁度よく飯にありつけるとは。神様っているのかもな」
いるのなら私はこんな状況になっていない。ああ、分かる。死に時だ。
「じゃあいただきま〜す」
目の前の私も、この私も、諦めて目を瞑ったとき、ふとまた目を開けると、そこには一人の女性がいた。
「悪いけど貴方には神様の恩恵はないわ。偶然私のいる前で絶好の餌とやらに出会ってしまったのだから」
「お、お前、誰だ?」
「言う必要ある?」
私は驚いた。そして思わず叫んだ。
「アリス!」
しかし聞こえるはずもない。するともう一人の少女は目を開き口を開いた。
「……あれ?私死んでない?」
するとアリスは強く私を睨みつけて言った。
「早く逃げなさい!邪魔よ!」
するとようやく体に血が戻ってきたのか、その少女はやっと立ち上がった。
「でも、お姉ちゃんは?」
「貴方に関係ないでしょ!邪魔よ!」
また睨みつけた。そして私はダッシュで家へと戻っていった。しかしこの私はまだこの状況を見守っていた。
「お前も妖怪だろ?何故俺を邪魔する」
「私は一応妖怪の部類ではないのだけれど。まあこの際それはいいわ。さて、貴方を止めた理由だけど……それは簡単よ。私の前で貴方が彼女を殺そうとしたから」
「理由になってないぞ」
「要するに、私は血を見るのが嫌いなのよ。いや、というよりも、私は醜いことが嫌いなのよ。やるならオシャレに殺しなさい」
「何を言って……」
その瞬間その妖怪は倒れた。どうやら人形が後ろから一突きらしい。
「妖怪が人間を食う、それは確かに自然の摂理だけれど、私はなるべくそれに逆らいたい。その第一の被害者が貴方だったというだけよ。さようなら」
そしてアリスは後ろを振り向き、私が逃げた方向へと歩いていった。