「それにしてもあっという間だったわ」
私は何がよと思った。そして口に出した。
「何がよ」
「咲夜がここまで成長したのがよ」
そのとき私はしまったと思った。このパターンは何度も経験したからこそ私には分かる。今から何が始まるかということが。そして私の予想通り、そこからレミィは咲夜への愛の熱弁授業をし始めた。
「初めて会った時はこんなに小さかったのよ」
そしてレミィが手で表現したその大きさはあまりにも小さかった。誇張表現である。
「出会った日の月が十六夜で、夜に咲く花のように健気で美しかったから、十六夜咲夜という名前にしたのよね」
嬉しそうに懐かしそうにレミィは話した。
「そんなに昔のことではないじゃない」
私はついクスッと笑ってしまった。
「それもそうね」
と私の親友もクスッと笑った。そこにドタバタと廊下を駆け抜けてドアをドンと開けて誰かがやってきた。私もレミィもそれが誰かは分かり切ってる。ドアの方を見てみると、そこにはメイドの衣装をまとった一人の女性がいた。美鈴、紅美鈴である。
「どうしたのよ」
私が美鈴に尋ねる。
「小さな女の子がいると小悪魔さんに聞いたので」
おそらく咲夜のことであろう。
「美鈴、紹介するわ。十六夜咲夜よ」
ちなみに紹介されてる十六夜咲夜はまだレミィの膝の上で睡眠中である。
「十六夜咲夜……いい名前ですね。お嬢様が命名を?」
「もちろん」
「その名前には何か意味でもあるのでしょうか?」
美鈴はやけに深刻そうな表情でそう聞く。
「ええ。十六夜の夜にこの子を私は拾った。そして直感的に思ったわ。なんて美しい子だと。まるで夜に咲く花のようだと。だからこの名前にしたわ」
「いや、私が聞いてるのはそういう意味ではなくてですね」
「文句でもあるの?」
レミィは一瞬恐ろしいオーラを出した。美鈴は助けを求めるようにこちらを見る。私はとりあえず黙れとアイコンタクトで伝えた。伝わったかは分からないが。
「いや、もちろんありません。気を悪くされたのなら申し訳ありません、お嬢様。……あっ、私はそろそろ皿洗いをしなくてはいけないので」
伝わったらしい。慌てて美鈴はその場を去ろうとする。そしてレミィは一言。
「いつも悪いわね美鈴。安心して。いずれ咲夜が大人になったらメイド長は咲夜にやってもらうから。その時までは頑張ってちょうだい」
「はい、分かりました」
そう言って美鈴はドアを閉め部屋を出た。
「さて、話の続きをしましょう」
そう言ってレミィは咲夜への愛の熱弁授業を再開した。誰か助けて、つらい。