一人の女性が紅魔館にやって来た。私よりもレミィよりも背が高く、たくましい女性だった。紅白の巫女であった。
「あら、いらっしゃい。何の用?」
レミィが聞く。するとスリムで凛としたその女性はこう答えた。
「紫が紅魔館を見てこいと言ったのでね」
そのときレミィの表情は一瞬険しくなった。八雲紫の使いでこの女が来たことを知ったからであろう。
「場合によっちゃ、私怒るけど」
レミィが言った。すると
「いいや、貴方が怒るようなことはするつもりないから安心して。本当に見に来ただけだから」
そう彼女は答えた。彼女の強さは例の異変で十分知っている。もちろんレミィもである。なのにあんなに喧嘩腰になるなんて、よっぽどレミィは咲夜を愛しているんだなと思った。
「その子が咲夜?」
博麗の巫女は困惑したような不思議なものを見るような表情で咲夜を見た。ちなみに今日はちゃんと咲夜は起きている。
「そうよ」
私が答えた。
「ほら咲夜、こちらは博麗の巫女さんよ。挨拶しなさい」
「十六夜咲夜です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
博麗の巫女は笑った。
私たちは腰を椅子にかけて、ティータイムを始めた。美鈴が紅茶を淹れる。
「ありがとう」
「いえいえ、気にしないでください」
美鈴は軽く会釈した。その後レミィは咲夜に美鈴と一緒に別の部屋で遊んでいて欲しいと頼んだ。咲夜はすぐに了承した。
「あの子のことは八雲紫から聞いたの?」
「そうよ、紅魔館に女の子がいるってね。まさか本当だったとは。貴方も恐ろしいわね」
「そりゃ吸血鬼ですから」
「でもそれ以前に貴方は、彼女にとって大事な存在で、彼女が誰よりも信用してるお嬢様でしょ?」
博麗は急に声のトーンを低くして聞いた。
「今となってはそうね」
「今までだってそうじゃないの?」
「いつだってあの子は私を大切に思ってくれてるわ。それでもきっと彼女は100%私を愛してくれていたわけじゃないわ。だって私は彼女の運命を狂わしてしまったもの。しかも一回だけじゃないわ。初めて出会ったとき私は彼女を人間から吸血鬼のメイドに変えた。そして現在も私は彼女の運命を狂わし続けている。悪いと思うわ。申し訳ないと思うわ。でもそれでも私は彼女をこの手から離したくないのよ。本当に私は悪魔ね。最悪な悪魔」
レミィは絶望に似た表情をしていた。博麗が口を開く。
「咲夜はきっと貴方を100%愛してるわ」
「えっ」
レミィは困惑した表情を見せる。
「だって貴方は今長々と理屈を述べたけど、全部貴方の考えじゃない?思い込みの可能性だってあるわ。事実今咲夜は貴方を心底愛してる。私から見ても分かるわ。それだけで十分証明できると思うけどね」
レミィはしばらく複雑な表情をしたが、やがて顔を上げてこう言った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
ティータイムは終了した。博麗の巫女は神社へと帰っていった。
「私、正しいのかな?」
そうまた私に聞くなよというなことを聞いてきた。私は答える。
「悪魔が正しいかどうかを考えるなんておかしな話だわ。気にしなくていいわ。貴方が正しいと思ったものが正しいのよ。少なくとも私はそう思うわ」
「ありがとう、パチェ」
レミィは小さく透き通った声でそう言った。