されど太陽は幾度も登る   作:ファ○通の攻略本

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深淵を覗き込む者


転がり落ちるように

終わりのないような長い夢を見ていたようだ。机に突っ伏し、眠りについていた事を認識して起き上がった。寝癖のついた髪をかきながら、シワをつけてしまった紙のしわを伸ばした。

 

あの後、自分は彼が残していったオンボロ小屋でただひたすらに彼らの研究結果である本らを読み耽っていた。家にはたまに戻ったり、畑の様子を見たりしてはいるが青い部屋、ベルベットルームへ行くような暇はない。

細胞と悪魔及びペルソナの回復魔法の関係、悪魔の肉体の出所、悪魔及びペルソナの顕現に必要なエネルギーたる生体磁気と人間の無意識集合体の関係性。そういった、悪魔に関する興味深い資料から『科学者流悪魔血抜き術~生体マグネタイトはフォークで抜ける!~』などの生活の向上のために書いたのであろう、と思えるような資料が発掘され、一通りを確認しなければならなかったからだ。

ご丁寧に表紙が作られていた、無駄に豪華なこの科学者流悪魔血抜き(MAG)術に関する資料は……複雑なことに、なんだかんだで参考になってしまった。今ではリュックの中にはいつでもフォークが常備されている。

本当に、さまざまな資料があった。どれも皆、戦うだけで悪魔について、ペルソナについてあまり理解しようとしてこなかった身としてはとても興味深い事である。

悪魔召喚と認識による観測の関係、という題目の資料を閉じる。

 

悪魔召喚と、ペルソナ。その両者は似ているようで原理が大きく異なるとされた。

悪魔召喚は悪魔が偏在する場所、つまり人の無意識から人があらゆる現象を観測し、かつてソレに名前や形をつけたものを自然現象のエネルギーに観測という皮を被せて生体マグネタイトを対価に具現化させるもの。誰でも形作る為のその人間が位置付けた形を図に描いたソレと対価さえ有れば呼び出せる。

 

此方は悪魔自体に意思があり、今この町にいる悪魔はおおよそ悪魔召喚の原理で喚び出されたソレらだそうだ。ニャルラトホテプの影響で、ニャルラトホテプという存在が召喚式となり、人間が存在していれば喚び出されるようにされている、らしい。あいつが、自然現象に紐付けられた想像を釣り上げる悪魔召喚の陣の役割を果たしているそうだ。他には魔界という観測という概念から産まれた別世界から汲みあげるように召喚を、という例がかつてあったらしい。

 

………どうやら、あいつの定義によるとイデアリアンになった人だった者らは一応人間に部類されるらしい。

あの様な形で、在り方で、尚も人であると定義される、とは。

 

………話を、戻そう。

 

対してペルソナはと言うと、自然現象に紐付けられた想像を、個人の心理に被せている。

その心の一部から生み出される生体マグネタイトを掻き集めて自然に具現されたもの、それがペルソナ。

 

ペルソナには相性がある、というのはその人間が観測したものと、心のありようがうまく噛み合うか否かによるものらしい。自然というものは変幻自在だが、人は自由に変われはしない。

ただ、例外的に基本的に誰にでも相性がいいケルベロスなんかは、無意識の方を観測して見たところ、ケルベロスという概念そのものの観測に物理的ななにかが混じっていた、などと書かれていた。

 

物理的な何か、というのは物質として存在していた生物であろうという考察が書き込まれていた。

 

ソレは、うまく観測は出来ず朧げなものであったらしいが………不思議なことに青い一匹のシベリアンハスキーが青年と思われる、誰かに擦り寄っていく姿が見られたらしい。だが、見る者によってソレは、ただの犬だったり白い影、ケルベロスの姿だったり、あるいは本来の犬からかけ離れた硬い装甲を身に纏う三眼の猛犬だったりした。

……悪魔召喚は、悪魔の概念を混ぜる事でまた異なる悪魔を呼び出せる事が可能であると記述があった。それは……、生きているもの、無機物のものでも同じように混ぜる事が出来たらしい。それこそ人であれ、最後には悪魔側に寄り悪魔の概念に食われてしまうそうだが、その経験、その証は受け継げられる。

誰か、悪魔召喚に頼るデビルサマナーが悪魔を合体させる時にその犬と悪魔を合体させ…奇跡的な程、その犬とケルベロスの波長が合い今もその名残が遺されてるのだろう、という考察の域を出ない話であったが、なんとなく思い浮かぶ事もあった。悪魔召喚士で、かつては人だったらしい、とある悪魔との再会を願い戦う探偵事務所の女性がいたな、と。

……紙をめくる。

 

ああ、何よりもペルソナと悪魔召喚の違う点があるらしい。

ペルソナには、悪魔召喚によって喚び出された悪魔とは違い意識が無い、とはっきり明記されていた。

………確かに、何かしらの返事や反応は見せる。だが、それは設定された通りに返事をしているのみの、生きた誰かとは異なる哲学的ゾンビであると定義付けられていた。

もし、ペルソナと会話をしていたりするのならばそれはあくまで一人で行う三文芝居。機械相手にそのような受け答え、馬鹿馬鹿しい行為であるという記述に顔がこわばる。ペルソナと掛け合いをして、モノマネやらしていたリサや自分達とは。いや、悪かったな。本当に。

……しかし、ペルソナがもし意識に目覚めたなら。それは、誰かの心の形そのものであり、文字通りの誰かのドッペルゲンガーであるだろうと言われていた。……きっと、あのペルソナらはそういうタイプだ。それぞれの人物限定で顕現可能なタイプのペルソナらは。ならアレは三文芝居などではないだろう、きっと。風呂場でペルソナを洗いっこしていたのも、そんなものではないはずだ。ヴォルカヌスの炎を消されて力が抜けたりもしたし。

 

……ニャルラトホテプ。人類の悪性そのものの意識集合体。

無意識から生まれた存在でありながら、奴は意識というものを持って此方を見据え、自分達を試し続けていた。奴はそのドッペルゲンガーなのだろうか。だとすれば……奴が被る誰かとは、一体誰の事を指し示すのだろうか。

人から生まれるのがペルソナなら、誰の、どのような面からできたのか。そも、奴は一体、何時ごろから人類に這い寄っていた?その悪意は何時から芽生えた?

 

「_________」

 

壁に掛けられた時計を見た。

今が何年なのかなども書かれたそのデジタル時計に目を通す。見下ろした下の事を思い出しながら、漸く片付けに乗り出した。

行くべき場所に、するべき事が決まった。

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