Muv-Luv Altanaitibe トータル( ´艸`)クリップス 作:caose
2001年7月13日・日本帝国国防省・第壱開発局第16会議室
物資不足に追い打ちをかけるかのように部屋の広さに反して蛍光灯の本数が
明らかに足りないのだ。
最前線国家である事もあってかあらゆる物資が軍に集中的になっているため
幾ら軍であったとしても会議場に迄物資を上げる事など出来なくなっているからだ。
それに伴い只でさえ侘しい造りの地下会議室がその蛍光灯の少なさにより
悪の秘密結社の様な状況となっていた。
然もコノ字配列されているフォールディングテーブルによってさらに
その印象が際立っていた。
そんな部屋の中に於いて場違いにも甚だしい格好の人間が2人ほどいた。
下座にはラフな態度をした精悍な軍人の巌谷榮二中佐が。
そして上座にいるのは麻のサマースーツをがっちりと着こなした伊達者・・・
帝国情報省第2課長『鎧 左近』がそこにいた。
彼が所属する部署は公にも出来ないほどのスパイ組織でもあり表ざたには
出来ない情報を手に入れることが仕事である。
その中に於いて彼は無傷でその仕事をやり遂げることから裏側の人間に間では
『不死鳥』とも呼ばれる所以となっている。
そんな彼は巌谷から渡されたプリント天板に書かれている情報を見て・・・
笑いながらこう言った。
「はっはっはっはっは。・・・これは驚きましたね、いやはや無理難題を
簡単に仰られる辺り流石篁家の血筋とも言えますなあ。」
彼は芝居がかった口調と勿体ぶった言い回しをしているが
巌谷は何時もの事だからなと諦め交じりの思いでこう続けた。
「あれとて無理は承知の上だろうと私はそう思っておるのだが・・・
だからこその貴官にご足労を願った訳さ。対外交渉とその調整に於いて
お前さん以上の手合いはこの国には存在しないからな。」
大抵は死んでしまったからなと巌谷は自嘲君でそう呟いた。
戦争やスパイ行為が発覚して拷問して殺されたり自決したりとした理由で
人員不足がここでも目立っているからだ。
「それにお前さんみたいな1級の人間しかやれない仕事なのだ。・・・
この国の為に一肌脱いでほしい!」
この通りだと言って巌谷は頭を下げると鎧は・・・珍しく慌てた様子で
こう言った。
「まあ、やれるところまでやってみますが先進機密技術の塊である
試作兵器を国外に持ち出すとなると」
鎧は困った様な・・・振りをした表情を浮かべると巌谷はこう答えた。
「ああ、その通りだな。国防省は無論だが外務省も内務省もだろうな。
国防省は俺が何とか出来るが他は・・・お前さんに任すから好きに動いてくれ。」
巌谷はニヤリと笑いながらそう言いながらこう続けた。
「例のあれは『横浜の女狐』から持ち込んだ奴だ。
然も心臓部はブラックボックスと言うおまけ付きで我々は一生あの女狐に
頭を下げなければならないという皮肉な話だが
それで他の連中を黙らせることが出来るよな?」
巌谷は鎧に向けてそう聞いて・・・鎧はこう答えた。
「やれやれ、仕方ありませんね。ですが中佐。一つ聞きたいことが。」
「何だ?」
「大の政治嫌いで有名な貴方がそこまでされる覚悟を決めた理由は・・・
篁家のご息女の為だけではありませんよね?」
僭越ながらもとそう聞くと巌谷は暫くして・・・こう答えた。
「この決定は俺にとって『XFJ計画』の分岐路だと思っているんだ。
正面装備の選定程度では済まない程であるがこの選択を間違えれば帝国は
益々国粋主義と言う名の自家中毒の袋孤児に迷い込んでしまい最終的に・・・
この国は自滅するであろう。」
「これは驚きましたね。斯衛出身の陸軍高級将校とは思えないお言葉ですな。
何処かの誰かさん達にも聞かせたいですなあ。」
鎧は大げさなリアクションでそう答えると巌谷はこう続けた。
「だからこそ国際共同開発の小さな成功こそがこの自家中毒を
払拭させる事が出来る最初の一太刀にする。それで国防省を黙らせる。」
「ですがそうなると『横浜の女狐』の供物は如何様になさいますか?
半端なものでしたら痛い目を見ますが?」
「それについてはこっちは既に用意している。もう一枚の資料を読んでくれ。」
「ではでは・・・・。」
鎧は巌谷の言葉を聞いてどんなものかと確認した後に立ち上がってこう言った。
「それでは私も動くと致しましょう。ああ、それとこの資料に書かれている
供物ニついてですがそれとは別にもう2つほど。」
「何だ?
巌谷は何だと聞くと鎧はこう答えた。
「はい、一つ目は近々中佐にお願いいたしたいことがありますので
その時にはご協力をお願い致します。」
「解っているさ、その時には喜んで協力しよう。それで次は?」
「最近ですがアラスカのソ連軍事施設に於いて何者かが侵入した挙句に
逃げおおせたそうです。」
「・・・何?」
巌谷はそれを聞いて目を細めた。
あの国の軍事施設に侵入した挙句に逃げおおせたとなればこの男以外に
誰がいるんだとそう思っていると鎧は写真を渡してこう言った。
「それが下手人らしいですよ。それではまた」
そう言って鎧は音もなく・・・立ち去った。
巌谷は渡された写真を見た後にそれをマッチの火で燃やした。
写っていたのはワインレッドの装甲を身に纏った人間。
ブラッド・スターク本人であった。
次回はソ連です。