大満開の章でもその巧みなワイヤー捌きで素晴らしい活躍をしていましたね。さすがです。
何はともあれ、今回の話も楽しんで読んでいただくと嬉しいです。
今日も今日とて神樹館小学校4人組の勇者たちは休息日である。しかし平日であれば当然学校があり、学校があれば間に休み時間がある。
そんな休み時間中、4人は好きなものを黒板に書いてみようという話になり、思い思いにチョークを走らせていた。
「須美ちゃん、それすごいね。軍艦?」
「そうよ、樹ちゃん!これは航空母艦、通称『空母』といって洋上で飛行機を使うことができる戦略上とても重要な軍艦なの。そしてこの空母は翔鶴型二番艦、瑞鶴!」
「須美ちゃん歴史とか以外にもミリタリーとかも詳しいんだ」
「ま、いわゆるミリオタってやつだよな」
「わっしー博識〜」
洋上を雄大に航行する勇ましさと飛来する戦闘機までもが事細かく描かれていてなんとも見事なものである。……休み時間が終わったら消さなければいけない運命なのだが。
「園子ちゃんのそれは・・・・サンチョかな?」
園子の好きなぬいぐるみである『サンチョ』と同じ顔をしているのだが、足が人間のように長かったり、人間のような胴体が付いていてそのサンチョが犬のようなサンチョを連れてる実に独特の世界観満載の絵である。
「そうなんよ〜サンチョ大家族〜」
「それみんな家族なのね…」
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、妹、ペットの犬ってところかな?」
「イッつん大正解〜」
「ええ……樹、お前よくわかったな」
「案外そのっちと樹ちゃんは感性が似てるのかしらね?」
「わーい、イッつんイッつん私たち似てるって〜」
(そ、園子ちゃんに抱きつかれてっ!?)
園子にはこれまでも結構な頻度で抱きつかれてはいるがいい意味でドキドキが止まらなくなる。
(園子ちゃん、本当に可愛いから・・)
「ふふ、そうしていると本当の姉妹みたいね」
「なー」
「えへへ〜イッつんが妹だったらすっごく嬉しいなあ〜」
『樹〜ほら、お姉ちゃんと一緒に–––––––––––––』
「っ…………えっと…あ、銀ちゃんが描いてるのってもしかして弟くんたち?」
「え!?自分で描いといて言うのもなんだけど、お前これでよくわかったな」
「銀……あなたこれ、まじめに書いてるの…?」
「うっうるせーやい!大真面目だわ!…でもマジで樹よくわかったなすげ〜」
「ちょっと前に一緒に遊んだばっかだからよく覚えてただけだよ」
「イッつん–––––?」
「ほら園子ちゃん、見て見て。こっちが長男の鉄男くん。でこっちが次男の金太郎くん」
「すっすげー!そこまであってる!」
「この二つの絵にどこにそんな見分ける違いが…?」
「えーっと、こことか、あとこことかさ」
「・・・あ、本当だ〜イッつん天才だね〜それにしてもわっしーは本当に歴史が好きなんだね」
「ええ!夢は歴史学者さんだから!」
「おーさすが須美。まじめさんだぁ」
「わっしーっぽいよね」
「須美ちゃんにピッタリだよね」
「そういうそのっちは夢はあるの?」
「私は小説家なんかいいなーと思ってて時々小説とかサイトに投稿したりしてるよー」
「うん、なんかすごい納得だな」
「小説家に必要そうな発想力や想像力を多分に持ち合わせているものね」
「凄い賞とか普通に取ってそうだもんな。・・樹はなんかあるか?」
「・・・えと、どうだろ。考えたこともなかったかも」
気がついたらこの少女の姿になっていて、こうしてここまで生きてきた。
でも、ただ生きてきただけだったんだと思う。だからそもそも考えたことがなかった。
「んじゃ樹には無限大の可能性があるってことだな」
「…無限大…」
銀はなんでもないことを言うかのようにそんなことを言う。
「つまり、イッつんはまだまだこれから何にでもなれる可能性があるってことだよね、ミノさん〜」
「うんうん、そゆことそゆこと」
「そうね。それに樹ちゃんだったら、きっと立派な人になるわよ。たとえどんな夢をこれから先持とうとも」
・・・・銀、園子、須美の優しい微笑みがすごく暖かくて、すごく嬉しい。
でも、同時に–––––
すごく苦しくて辛い。
だって–––『俺は』
俺はどこの誰かも自分でわからないような得体の知れないやつだから。
かつては『犬吠埼樹』今では『上里樹』この二つの名前で今まで俺は周りの人に呼ばれてきた。
でも–––俺は違うんだ。
俺はどこかの誰かであって『犬吠埼樹』でも『上里樹』でもないんだ。きっと、違うんだ。
この体の持ち主は俺も知らないこの子自身のはずだったんだ。
俺はこの子の人生を奪ってしまった。
だから俺に夢なんて見る資格なんてないと思う。
だから…
「ありがとうみんな、うん。そうだよね…私、いっぱい考えてみるよ」
こうしてみんなと一緒にいるこの時間こそが俺にとって贅沢すぎるぐらいの夢なんだ。今俺は–––幸せな夢を見ているんだ、そう思った。そう–––思うことにした。
「–––じゃあさ、銀ちゃんはあるの?夢とかなりたいものって」
「んーアタシか?そだなー幼稚園の頃なんかはみんなや家族を守美少女戦士になりたかったなぁー」
(わ、じゃあその夢は既に叶ってるわけか。銀ちゃん美少女だし)
「わかるわ!お国を守る正義の味方!それは少女の憧れよ!」
(須美ちゃんが言うとちょっと違う意味合いに聞こえるかも…)
「それじゃあ今は?」
「んん〜?〜んへぇ〜」
「んー?なんで照れたのかな〜?」
「いやぁー家族っていいものだから、普通に家庭を持つものさ、うん。ありかなってーって。……でもそうなると将来の夢がさ・・・ぉ、ぉ嫁さん……」
あの快活な銀が珍しく手をもじもじさせながら時折小声になりつつそう言った。
普段からは想像もつかないような銀の様子だったが、園子、須美、樹の3人はそんな銀の様子に顔を見合わせ笑い合いながら銀に寄り添う、あるいは抱きつくようにする。
「ミノさんならすぐに叶うよ〜」
「白無垢が楽しみだわ〜」
(銀ちゃんって実はこの中でも一番女の子らしいのかもしれない………もちろん俺は除外だ)
「そうだそうだ〜だったら試しに行ってらっしゃいのチューしてみてほしいなーって」
「なっ!?や、やだ!」
(銀ちゃんに将来そんなふうにしてもらえる人は幸せだな)
銀ちゃんが幸せな家庭を築いている姿がありありと想像でき、自分のことでもないのに俺はなんだか幸せになったような気がした。
この子はきっといい人生を、幸せな人生を送るんだろうなと。そう思った。
今日も1日が始まる、嫌な気持ちはない。
不思議な感覚だ。少し前まで一日が始まるのがとても辛く感じた。
家も学校も、どこにいても疎外感がずっとあった。
誰とも話せなかったし、誰とも話したくなかった。
でも––––園子ちゃんと出会って会いたい人、話したい人ができた。園子ちゃんと話してる時だけはとても心が楽だった。
お役目が始まると銀、須美とも話すようになった。二人ともとても優しくてあったかい人だ。
毎日が園子ちゃんと二人だった時よりもちょっと騒がしくなった。
みんなで買い物に行ったり、ご飯を食べたり、プールにも行った。学校で園子ちゃんの夢の話、銀ちゃんの弟の話、須美ちゃんの護国思想?の話をした。
園子ちゃんの家、須美ちゃんの家、銀ちゃんの家に泊まった。俺の家にもみんなが泊まった。3人の動物パジャマがとても素敵だった。ちなみに俺も着せられてしまった…みんなが可愛いと褒めてくれたのは嬉しかった。
服の着せ替えっこをした。銀ちゃんが須美ちゃんと園子ちゃんにあれやこれやと着せ替え人形のごとく服を変えられてて新鮮な銀ちゃんがたくさん見れた。「これはもう金よっ!!」と叫んだ須美ちゃんが訳がわからなすぎてとても面白かった。
園子ちゃん宛のラブレター(女の子から)が見つかった時はびっくりしたものだったけど……それ以上に須美ちゃんの言った「羅漢蔵!?」がよくわからなすぎて頭に残ってる。
一年生を対象にしたオリエンテーションを行った。国防仮面になった須美ちゃんと園子ちゃんの国防体操は大変好評だったけど安芸先生には「やりすぎ」と叱られた。人に叱られるのは怖いはずなのにみんなとだったらなんだか怖くなかった。
お役目は怖くて辛い、やりたくない。
今でもそう思ってる。
俺には、神樹様を守るとかとか人類を守るとかそういうことは正直考えられない。
でも勇者でいれば、勇者でいなくてはあの3人とは一緒にはいられない。
だから俺は頑張るんだ。頑張りたいと思えるようになった。
頑張りたいと思うことがようやく苦痛ではなくなってきたのだ。
4人で使うぐらいがちょうどいいとお泊まり会をしてわかったぐらいいつ見てもでかいベッドから降りて簡単に身支度をする。
世間一般の小学生女子の朝の身支度時間の平均は定かではないが『上里』家に来たばかりの頃と比べたらかなり時間をかけて身支度をするようにはなっているのは事実。
特に最近手をかけているのは髪のセットと服装選び。
髪は3人に髪飾りを選んでもらって以来、ずっとポニーテールにしている。なんだか妙に気に入ってしまったのだ。しっかりくるというか、そんな感じ。
ただ、これも意外と細かい調整が必要だったりする。結び目の長さだったり角度だったり。うまく言えないが自分の中で決まったと思うポジションがあるのだ。
(ん、まあこんな感じかな)
お次は服選び。今持ってる服のほとんどが3人と見て選んだ服ばかりだ。そこまで数は多くないけれど、その分どれもお気に入りと言っていいものばかり。
自分だとよくわからないがどうやら俺には落ち着いた色合いのガーリーな感じの服がよく似合うそうだ。
園子ちゃん曰く
「森ガール風でイッつんに叶う女子はなかなかいないと思うよ〜」
とのことらしい。
(まあ園子ちゃんのいう通りだとは思う。自分で言うのもなんだけど『犬吠埼樹』はすごくこういう服が似合う女の子なんだなって)
服を選び追えれば最後は花の髪飾りをつけるだけ。これで出かける準備は完了だ。
この花の髪飾りはかつて樹が姉からプレゼントされそれ以降大切に使っているものである。
「……お姉ちゃん」
誰に聞かれるでもなくそう呟いた。
『えへへ〜イッつんが妹だったらすっごく嬉しいなあ〜』
自分でも気づかないうちに意識しないようにしてたんだと思う。
でもあの時、園子のあの一言で脳裏に姉の顔と声が浮かんだ。久しぶりに鮮明に姉の声を感じんだ。キラキラした笑顔も慈愛に満ちた微笑も。
–––––3人にお姉ちゃんの話をしたくなった。
でも、だったらなぜ俺はあの時園子ちゃんに言葉に対して誤魔化すように話題を変えてしまったのだろう。
なぜあの時お姉ちゃんのこと、前の家や環境のことを話そうとしなかったのか。
多分逃げたんだ。咄嗟に逃げてしまった。
俺の悪い癖だ。
でも、今度は逃げずに話してみようと思う。
…大丈夫…大丈夫。きっと、大丈夫だ。
「あっ…あの…さ」
「「「?」」」
時と場所は変わってここはイネスのフードコート。いつものお店でうどんを食べ、食後のデザートとしてジェラートを食べ終えたタイミング。話を切り出すならここしかないだろう。
「えっと…その……み、みんなに言いたいことが…あって…」
(言わなきゃ…言うって決めたんだから言わなきゃ…!)
自分でもよくわからない緊張感に支配されているのだけはわかる。何も緊張するようなことじゃないんだ、そんなのわかってる。
でもいざとなるとどうしてもなかなか言葉が出てこない。
「イッつん、ゆっくりでいいからね?ゆっくりでいいからイッつんの言いたいこと聞かせてほしいな」
「園子ちゃん…」
「園子の言う通りだぜ樹。のんびりな、のんびり」
「ほら、お水飲む?」
「う、うん。須美ちゃんありがとう。銀ちゃんも…」
俺は意を決して話を始めた。
無我夢中でいろんな話をしたから自分でもどれだけ長いこと話をしていたのかあまり覚えていない。とにかくたくさん話をした。
内容は多分にお姉ちゃんのことについてだったと思う。かつての学校で友達もいなかった俺にはお姉ちゃんが心の拠り所だった。お姉ちゃんは俺よりずっと運動も勉強もできて、人当たりも良くて人によく話しかけられていた、そんな人だった。
そんなすごいお姉ちゃんが自分にはいたことを、今もいることを話した。
上里の家に養女として来ることになった前後の話もした。お姉ちゃんとあんな別れ方をしてしまったことも、両親がどんなことを言って俺を上里の家に出したのかも。
俺がどれだけ傷ついたのかも。
話を終えると、やはりと言うかなんというかその場は静まり返っていた。
当然だと思う。こんな話をされてもどう反応すればいいのかわかるわけがない。
「ね、イッつん?」
園子がおもむろに口を開く。その表情は穏やかそのものでありいつも彼女が浮かべている柔らかい微笑みであった。
「何?」
「お姉さんに会いに行かない?」
「え……?」
「私イッつんのお姉さんに会ってみたいな〜って思ったんよ」
「お、お姉ちゃんに…?」
「うんうん〜イッつんのお話聞いてたらどんな素敵な人なのか気になっちゃった〜」
園子はその微笑みを絶やすことなくそんなことを言った。
「お姉ちゃんに会いに…」
想像できる。あの笑顔も笑い声も全てありありと。でも、それだけじゃない。
両親から上里の家に養子に出すことになったことを聞いた日、あの日–––両親に対して抗議するお姉ちゃんの顔や声。
全てがすでに決まっていることに、抗うことが不可能だということに気づいてしまった時のお姉ちゃんから表情が消えた顔。–––そしてついには一度も聞くことのなかったお姉ちゃんの声。
「私…ね、お姉ちゃんに別れ際合わずに家を出て行ったんだ。だから何も話さずに…自分から話すこともできなくて…つまり……………今あっても何を話さばいいのか…どんな顔して会えばいいのか…」
「どんな顔でもいいんじゃないか?」
「そうね、樹ちゃんはお姉さんのことを今でも大切に思っていて会いたいと思っている。そこが重要だと思うわ」
銀と須美が樹の目を見て言った。樹はその視線から逃れることはしない。
「会いたいと思ってるなら会えばいいんだよ。一人で会うのが不安ってならアタシたちも一緒に行くし、というかアタシも園子と一緒で樹のお姉さんに会ってみたいしさ!」
「話を聞くに樹ちゃんのお姉さんはなかなかの歴史好き。色々と深い話し合いができそうだわ!」
銀と須美は目を輝かせてまだ見ぬ樹の姉の姿を思い浮かべているのか天を見上げている。
「しかもお姉さんは料理得意なんだろ?だったらうまいご飯食べさせてくれるかもしれないしな!」
「ちょっと銀!そんな会ったこともない人に対してはしたないわよ!」
「でも私もイッつんのお姉さんのお料理食べてみたいかも〜」
「そのっちまで!?」
「でも須美だって食べてみたいだろ?」
「そ、それは…そうだけど…」
「やっぱりわっしーもそうだよね〜ねえイッつんは思わない?」
「…うん、そうだね。久しぶりにお姉ちゃんの料理食べたいな」
樹は思う。この3人は本当にいい人たちだ。何度思ったかなんてもう覚えてもいないが何度でも思ってしまう。
4人で会いに行くことに不安がないわけじゃない。–––もしかしたら姉はあの日以来自分の知っている姉ではなくなっている可能性だってある。
もしそうだとしたら姉にどんな反応をされるのか、それを考えないわけじゃないのた。
(でも、みんながいてくれれば)
きっと大丈夫。
「よーし!そうと決まれば早速樹の姉ちゃんに会いに行く計画を立てよーぜ!!」
「今度の週末に行くことを計画するとなると…これはまた栞が必要になりそうね」
「え!?あの馬鹿でかい栞また作る気なのか?」
「だって…せっかくなら色々と見て回りたいじゃない。みんなで遠出するんだから」
「わっしーいい考え〜みんなで旅行だ〜」
「旅行って…そんなに見るようなものはたぶんないよ?」
「ちっちっちっ、樹お出かけってのはなどこに行くかも大事だがそれ以上に誰と行くかが大事なんだぜぇ」
「誰と…行くか………そうだね、私もみんなで行きたい。お姉ちゃんに会いに行きたい」
樹のその言葉に3人は顔を見合わせて微笑む。聞きたかった言葉をようやく聞けた、そんなふうな安堵の微笑みをでもあるように思えた。
イネスを後にし4人は家路に着く。夕焼けの中子供たちに帰宅を促す音楽がよく聞こえる。改めてよく聞いてみるとどこか切ないメロディーのように思えた。
「また新しい楽しみが増えて嬉しいなぁでもあれか、もうすぐ休息期間も終わりになるのか」
「あーそっかぁ。残念〜」
「そしたら警戒態勢復活ね。気を引き締めないと」
「だなぁーでもその前に樹の姉ちゃんに会いに行く計画がだいぶ整ってよかったよな」
「うんうん明日もまた作戦会議しよーね〜」
「作戦会議!いい響きね…これは今夜中に栞を作り上げてしまわないと…!」
「あはは、嬉しいけど夜ふかしのしすぎは気をつけてね?」
「栄養ドリンクとかあんまし飲むなよー」
「後今度のはもう少しサイズ小さくてもいいからね〜」
「うっ……わ、わかったわ。気をつける…」
「おっと、アタシと樹はこっちの道か」
「あ、うん」
しばらく4人で同じ道を歩いていたところで分かれ道が見えた。樹と銀、園子と須美で帰り道が別れている。
銀が自らの帰り道に足を向け樹もその少し後ろをついていく。
「またね」
「またね」
銀と樹の別れの挨拶は少しだけずれた。
「あちゃーちょっとずれちゃったか。あと少しでハモれてたな」
「えへへ、惜しかったね」
そんなことを言いながら二人で笑い合う銀と樹。
そんな二人を見ながら須美は何故か少し不安そうな顔をする。横目にその顔見る園子。
須美自身何故そんな顔をしてしまっているのかわかってはいない。
そして–––園子も無意識のうちに須美と似たどこか不安そうな顔を浮かべる。
気づけば二人揃って動いていた。
須美が銀を––––園子が樹のことを手を伸ばして引き留めるような形に。
「えと……須美?」
「園子ちゃん…?」
銀と樹は困惑しつつ自分の手を掴むその人を見る。
「…あ、ごめんなさい!」
「ご、ごめんねイッつん…!」
須美と園子は二人揃って焦ったように謝罪の言葉述べる。
「いやー気持ちわかるよ。な、樹」
「うん。休みがもうすぐ終わっちゃうのは悲しいもんね」
「アタシさ、休むのは自信あるって思ってたんだけど、流石にお役目がお役目だからそこまでリラックスできるかなって。でも、4人でいればいらない心配だったよ」
「–––うん。とっても楽しかった〜!」
園子は自分が握っている樹の手も合わせて銀、須美の手に重なるようにする。
「…ええ。ええ!」
「うん…本当に、そうだね」
須美と樹は園子に同調する。
銀はそんな3人を見て少し険しい顔をした。
「バーテックスが神樹様を壊したら、いつもの楽しい日常がなくなるんだよな。…そんなことは絶対にさせない」
「うん!」
「もちろん同じ気持ちよ」
「銀ちゃんの言う通りだね」
銀と須美が残っていたもう片方の手を重ねる。これで4人の全ての手が重なった。
「みんなで頑張るんよ〜!」
「ああ!」
重なった手全てからみんなの体温が伝わってきてすごく心地が良い。まるでみんなの気持ちが一つになったようで。
「ってこれじゃ帰れないな。解散解散」
「閃いた〜いっそお泊まり会しよ〜」
「良いわね、銀の家で」
「家っ!?弟二人いるんだぞ?」
「私は、鉄男くんと金太郎くんにもまた会いたいかな」
「私も私も〜ミノさんの弟さんたちとお話ししたーい」
「小学校低学年に乳児……これは教育のしがいがありそうね!」
「おぉい!?アタシの大事なブラザーズに何を教えるつもりだっ!?」
「安心して銀。決しておかしなことを教えるつもりはないわ」
「あ、そうなのか?」
「護国思想とか〜?」
「正解よっそのっち!!」
「いや絶対ダメだわ!!」
「何でよ!」
「ちょっと…過激な感じだからじゃないかな…?」
「なっ!?」
「1ミリも『なっ!?』じゃねーよ!」
「あはは〜面白〜い〜!」
その後紆余曲折がありながらも銀ちゃんの両親が快く受け入れてくれたこともありお泊まり会は行われ、弟君たちとも一緒に遊べた。
休息期間はもうすぐ終わってしまうけど、お姉ちゃんにみんなで会いに行く計画もあるし–––––
学校の遠足ももうすぐだ。
上里樹
たくさん自分のことを話すことができて嬉しかったみたい。姉に会いに行く勇気をくれたみんなには何度目かわからない感謝をしている。
乃木園子
樹が自身のことを話してくれて嬉しい&安心したみたい。でも自分だけじゃ樹に勇気を与えられていなかったのかな、とも思ったりしてる。
三ノ輪銀
樹は色々と事情がありそうだと思っていたが、詳しい内容を聞くことができたおかげでより後輩であり妹分でもある(勝手に思ってる)樹に対する思いが深まったようだ。
鷲尾須美
正直樹の過去話に関してはとても驚いたし、自分も養子として今の家にいるからこそ思うところがあるみたい。ちなみに銀の弟たちの教育はまだ諦めていないみたい。