犬吠埼樹(憑依)は勇者である   作:夏目ユウリ

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お久しぶりです。

とりあえず続きをどうぞ。


今日の日はさようなら

今日もどこからとも無くメロディーが流れる。子供に家路につくように促す音楽だ。

 

 

毎日のように聞いているはずなのに、そのたびにどこか哀愁を感じてしまう。あれだけ楽しかった一日が終わるんだなというのがなんとなくわかって気持ちが静かになるのだ。

 

 

 

 

「ふんふんふん〜楽しかったなー」

 

 

「転ぶわよ、そのっち」

 

 

園子が鼻歌混じりに歩き、隣で須美が諌めるようにしながら続く。

 

 

 

「毎日遠足ならいいのになー」

 

 

二人の少し後ろを銀と樹が並んで歩く。

 

 

「そしたらすっごく楽しそうだね」

 

 

「だろー!」

 

 

「それ賛成〜」

 

 

 

空を見上げる。なんの鳥だろうか?夕暮れの空を自由に飛び交っている二羽の鳥が見えた。

 

 

ふと思った、この鳥たちは神樹様の結界に覆われているこの世界において、自由なのだろうか。

 

 

 

 

そんなことを考えていると唐突に鳥が飛ばなくなっ–––いや、おかしい。鳥だけじゃない。他にも––––全ての生活音が聞こえない。

 

 

 

この感覚には覚えがあった。

 

 

 

 

「っ……」

 

 

「これ…」

 

 

全員が顔を見合わせる。皆瞬時に状況を理解した。

 

 

 

「……きた」

 

 

樹はそう呟く。

 

 

すると、それが引き金であったかのように樹海化が始まった。

 

 

「もーせっかく楽しい遠足だったのに〜」

 

 

園子は文句を言いながらもランドセルから端末を取り出し、三人もそれに続いた。

 

 

 

変身を終えた四人は樹海に降り立つ。

 

 

 

 

(何度見てもおかしな世界だ……)

 

 

この樹海に来るのも既にこれが四回目ではあるが、一生慣れる物ではないなと思わざるを得ない。

 

 

「イッつん大丈夫ー?久しぶりの樹海だけど」

 

 

俺があたりをキョロキョロしてるのに気づいたのか園子ちゃんが俺の肩を揉むようにしながら心配してくれる。

 

 

「うん、平気だよ。何でもないから」

 

 

「そうー?」

 

 

「ま、この三ノ輪銀様がいるんだから心配すんなって!アタシはもうだいぶ慣れたからさ」

 

 

「もう、そういう時が–––」

 

 

「一番危ないんだろ?」

 

 

「ん……正解…」

 

 

「よっしゃー!」

 

 

銀ちゃんと須美ちゃんのこうしたやりとりを見るているとなんだか樹海の中だったいうのに安心する。

 

 

 

 

「ミノさんとわっしーはほんとに仲良しだね〜」

 

 

「ね、なんだか銀ちゃんは須美ちゃんに注意されるのも楽しんでるみたいに見えるよ」

 

 

「あ、それ私も思ってたんよ〜っ…!」

 

 

樹の両肩を揉んでいた園子が何かに気づいたように視線を移した。この樹海に置いて気づくものといえば、一つしかあるまい。

 

 

 

いや、正確には一つではなかった。

 

 

 

 

「えー!二体!?」

 

 

園子が珍しく驚いたような声を上げる。その手にはいつのまにか槍が握られていた。

 

 

 

蠍座の名を冠する『スコーピオン・バーテックス』

 

 

蟹座の名を冠する『キャンサー・バーテックス』

 

 

 

 

「二体も…敵が…」

 

 

先程園子ちゃんにほぐしてもらったはずの両肩に力が入り、自分でもわかるぐらい震え出しているのがわかる。

 

 

「私たちなら大丈夫よ樹ちゃん!力を合わせましょう?」

 

 

「す、須美ちゃん……うん…そう、だよね」

 

 

拳に力を込めて無理やり震えを止める。大丈夫、みんながいるんだ、俺は大丈夫だ。

 

 

 

「よーし!私とミノさんが前衛で一体ずつ相手、イッつんは中衛、わっしーは後衛で行くよー!」

 

 

「よっしゃ!フォーメーションだな!」

 

 

「任せてそのっち!」

 

 

「うん、頑張るよ…!」

 

 

 

園子と銀が勢いよく飛び出し敵とその差を詰めていき、二人の間を追従するように樹は跳躍する。

 

 

 

先に動いたのはスコーピオンの方だった。その名の通り蠍のような巨大な針を唸らせながら突き刺そうとする。

 

 

(くそっ…早い…!)

 

 

ワイヤーで針を絡めようとするが敵の俊敏さが予想以上だ。一気に間合いをつめられる。

 

 

「はぁっ!」

 

 

園子は槍を盾に変形させ針を防ぐ。スコーピオンの針は盾に阻まれも、何度も嫌な音をたてながら園子の体を貫かんとする。

 

 

「アタシは気持ち悪い方をやる。樹は園子を援護してやってくれ!」

 

 

 

「わ、わかった…!」

 

 

銀はキャンサーの元へと向かう。樹は銀に一瞥をくれつつも園子の元へ急ぎ、勢いのままワイヤーを放った。

 

 

 

「このっ、止まれっ!」

 

 

ワイヤーは片腕からしか射出することができない。それを少しでもカバーするようにもう片方の腕を添え力を込める。

 

 

だが

 

 

「つ…ち、力が…っ」

 

 

スコーピオンの針を唸らせる力はこれまで捕まえてきたどのバーテックスよりも強く感じた。空中に体が投げ出されそうになるのを必死で耐える。

 

 

一方須美は、樹が園子の援護についたのを確認しキャンサーの方へと向かった銀を援護するため矢を放った。

 

 

「ナイス!」

 

 

銀の言葉通り狙いすまされた矢は見事命中し、隙が生まれる。

 

 

「うらぁ!」

 

 

その隙を逃さず銀は一撃を入れ敵の態勢を崩れさせた。

 

 

須美は間髪入れずにスコーピオンに対して矢を放つ。

 

 

「っそこぉ!」

 

 

須美の矢が命中した部位に対し槍で押し込むように突撃する園子、それによりスコーピオンの態勢を崩すことにも成功する。

 

 

うまく決まった連携により形勢は勇者たちの方へ傾いている。

 

 

 

「優勢だわ。このまま押し切る」

 

 

須美が離れたところからそう呟いた––––––その瞬間

 

 

 

 

「やべっ…」

 

 

「まずいっ!」

 

 

 

須美と銀がほぼ同時に反応した。–––突如として降り注ぐようにして勇者たちを抉らんとする無数の矢に対して。

 

 

 

 

(ワイヤーで盾を作っ…!?)

 

 

 

 

咄嗟にワイヤーを束ねて盾を作ろうとする樹の前に何かが見えた。

 

 

銀の双斧だ。咄嗟に樹側へと近づき双斧を頭上に重ねるようする。

 

 

(くそっ…!急げっ!)

 

 

 

しかしこの量の矢を銀の双斧だけで防ぎ切ることはできない。樹はすぐに即席の盾をワイヤーで作る。

 

 

 

 

キンキンキンキンキンキン

 

 

嫌な金属音が鳴り響く中必死に攻撃が止むのを待つ。

 

 

なんとか自分と銀をある程度カバーできる範囲で盾を作ったが即席もいいところなので少し気が抜けない。同じく無数の矢の雨を受けているであろう園子と須美はどうなっているのか、それを確認する余裕さえもないのだ。

 

 

 

 

 

「「きやあああああああ!!!!」

 

 

 

須美と園子の声––––ただの声じゃない、悲鳴がはっきりと聞こえた。

 

 

 

 

ぁ………………………

 

 

 

いつのまにか降り注ぐ雨のような矢はなくなり、代わりに須美と園子が苦悶の表情を浮かべながら宙に浮いていた。

 

 

園子の槍を傘のようにして須美と二人で矢を塞いだいた隙を狙うように

スコーピオンはその巨大な尻尾で振り払うよようにして須美と園子を襲ったのだ。

 

 

(助け……)

 

 

 

そう思った時に既に二人はその尻尾で地面に叩きつけられていた。

 

 

 

スコーピオンの尻尾の動きが早すぎて動きを追いきれない。

 

 

 

前の戦いでしたように宙に浮いた二人をワイヤーで助けることもできない。

 

 

 

「須美!!園子!!」

 

 

銀は既に叩きつけられた二人の元へと駆け寄っていた。

 

 

 

樹も少し遅れながらなんとか二人の元へと駆け寄った––––だが

 

 

 

 

 

「ぁ…ああ…そんな……」

 

 

 

「大丈夫か!?須美!!園子!!」

 

 

かろうじて二人はまだ意識があった。

 

 

 

「あいつ……が…矢を…」

 

 

 

須美は血だらけの顔を歪ませながら新たに現れた敵を睨みつける。

 

 

 

射手座の名を冠する『サジタリウス・バーテックス』

 

 

それが四人を急襲した敵の名前である。

 

 

 

銀は固まるようにして集まった三体のバーテックスに一瞥をくれながらも、すぐに視線を深手を負った二人と血の気がひいた顔している樹に視線を戻した。

 

 

「っ樹」

 

 

「え…」

 

「二人を移動させるぞ、園子を頼む」

 

 

 

「う…うん」

 

 

 

幸と言っていいのか、バーテックスの目的は神樹に辿り着くことであり、あくまでそれを邪魔しようとする勇者を排除のために攻撃するのであり背を向けるようにして神樹とは逆の方向に進めばそれ以上の追撃が来ることはなかった。

 

 

 

銀が須美を、樹が園子を担ぐようにして後方まで移動する。

 

 

 

安全地帯まで下がったところで、樹は園子の体をそっと地面に横たえた。

 

 

 

手のひらを見れば園子の血が、べったりとこべりついている。まだ温かみを持った鮮血だ。

 

 

 

「園子ちゃん…園子ちゃん…!」

 

 

樹はたまらず園子に声をかける。

 

 

しかし既に園子の意識はない。

 

 

 

 

 

 

死?

 

 

 

死死死死死死死死死死死死死死死死

 

 

 

 

「っうえ…」

 

 

樹は眼前に嘘偽りなく見える死の予感に思わず口を抑えながらえずく。

 

 

 

顔色は蒼白であり、震えが止まらない。

 

 

樹はいつのまにか自らの体を両手で抱きしめていた。

 

 

まるで少しでも体の震えを止めようとするかの如く。

 

 

 

 

しかし–––そんなことをしている間にもバーテックスはゆっくりとではあるが、確かに神樹に向かい侵攻を進めている。

 

 

 

怖い……………怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

 

(死にたくない…)

 

 

 

この目で見てしまった。須美が、園子が敵に振り払われ叩きつけられるのを。

 

 

想像せずにはいられなかった。自分がそんなふうになることを、痛くて怖くて辛くて–––––最後には死ぬだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ行かなきゃな」

 

 

 

それは気持ち悪くて、震えてしょうがないにもかかわらず確かに聞こえた声だった。

 

 

 

「銀…ちゃん」

 

 

絞り出すように隣に立つ彼女の名を呼ぶ。銀は姿勢を低くし樹と目線を合わせる。銀の目には、不安も恐怖も––––何もないように見えた。

 

 

 

 

「樹、二人のこと頼む。二人とも結構な怪我してると思うから…誰かがついてやった方がいいだろ?」

 

 

 

「…で、でも銀ちゃんは…?」

 

 

 

「アタシは、ほらあの三体をほっとくわけにもいかないからさ。なんとかしてくるよ」

 

 

銀はなんでもないことかのように、やれやれといった感じで言った。

 

 

 

「だ…だったら俺も––––––」

 

 

 

「ダメだ」

 

 

 

それは突き放すような口調だった。

 

 

 

「今のお前が来ても危ないだけだ。だから二人を頼む」

 

 

 

 

「お…俺はっ!」

 

 

樹は口調がおかしくなっているのを自分で気づかない。隠せない。

 

 

 

「樹、もう時間がない。だから何も言わず二人といてくれ。頼むよ」

 

 

 

 

「い、嫌だっ!俺は…俺は何もせずにまた大切な人をっ……そんなの嫌だ!!」

 

 

樹は震える体で無理やり立ち上がり、咄嗟に腕を突き出した。

 

 

 

 

樹の勇者服と同じ色をしたワイヤーが射出され瞬く間に銀の体に巻きつく。

 

 

 

 

 

「……樹」

 

 

銀は表情ひとつ変えず樹を見て、樹を呼ぶ。

 

 

 

「ダメだよ…銀ちゃん…絶対ダメだ……!!」

 

 

 

「樹、このままじゃみんな死んじゃうんだ。みんな–––みんな死んじゃう」

 

 

 

「そんなの関係ない!!」

 

 

 

「でもな––––」

 

 

 

「そんなの関係ないって言ってるでしょ!!!!」

 

 

 

 

「いいんだよそんなの!俺にはこの世界とか人間とかそんなのどうでもいいんだよ!そんなことより3人の方がずっと大切なんだよ!!」

 

 

 

 

「銀ちゃんがいなくなるぐらいなら…四人で一緒にいられなくなるぐらいならこんな世界無くなったっ––––!?」

 

 

 

不意に感じる違和感、あるいは喪失感というべきだろうか。

 

 

 

「そ、そんな!?なんで…!!」

 

 

樹の変身が解除されていた。それに伴い銀を拘束していたワイヤーも影も形もなくその姿を消す。

 

 

 

「くそっ…!なんだよこれ!」

 

 

樹は思わず悪態をつきながら端末を取り出す。

 

 

 

「動けよ!!動け!動け!動け!動け!」

 

 

 

何度端末のアプリを起動しようとしても反応しない。

 

 

 

「なんで…!?こんな変身が強制的に解除されることなんてないんじゃ…」

 

 

 

樹は思わず端末を手からこぼれるように落とし、その場に座り込んでしまう。

 

 

 

「なんで、俺…俺はいつも……ちくしょう…………」

 

 

 

腰が抜けて立たなくなるなんてことが本当にあることなんてはじめて知った。

 

 

 

銀ちゃんの顔が見れない。見たくない。

 

 

自分が情けなくて情けなくて役に立たなくて弱くて臆病で狡くてそれでいて、こうして結局は座り込んで動けなくなってしまう。

 

 

 

 

「なあ樹。アタシさ樹のこと好きだよ」

 

 

 

「………」

 

 

 

何も返事ができない。ついさっきまで自分の能力で拘束してまで銀のことを止めようとしていたにも関わらずもう、何も気力が湧いてこない。

 

 

 

「アタシが好きなお前だからさ。信用してこれ預けとくな。それからほら、落とし物」

 

 

銀は自らの髪を結んでいた赤いヘアゴムを解き、こぼれ落とした端末と一緒に樹の手に握らさせる。

 

 

「………」

 

 

 

「スマホは大事だからあんまり落とすなよ〜あ、そのヘアゴムは別に特に大事でもないから落としちゃってもいいけどさ。ちょっと邪魔な気分だから預けとくな」

 

 

 

「………」

 

 

「さーて、じゃあもう行くよ」

 

 

 

 

銀の姿が遠ざかっていく。一歩また一歩と遠くなっていく。

 

 

そして一気に駆け出そうとしたその直前、銀は樹の方を振り向いた。

 

 

 

 

 

「またね––––––––––––––」

 

 

 

 

 

 

 

そこには既に樹の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシにとって『上里樹』は親友だ。

 

 

大事な親友。『鷲尾須美』『乃木園子』の二人も合わせて親友。

 

 

 

少なくともアタシはそう思っている。

 

 

 

…三人もそう思ってくれてると思うんだけどな。

 

 

 

まぁ考えてみると四人とも見事に性格というかタイプが違うというかなんというか、あんまし似てる四人じゃないと思う。

 

 

 

でも不思議とこの四人でいると楽しいし嬉しいし、安心できる。

 

 

須美と園子はアタシができないことができて、知らないことを知っていてアタシに注意してくれる。同級生だけどまたーに二人を年の近いお姉ちゃんみたいに感じたことも正直あったりする。

 

 

弟がいる身としてはどうしても姉とかに憧れがあったりするんだけど……二人には恥ずかしいから言ってない。

 

 

 

けど、樹は違う。

 

 

あいつはなんていうか、妹って感じ。歳もひとつ下だしな。

 

 

弟たちのことは最高に愛してるけど、それはそれとして妹がいたらすっごく可愛かったんだろうなーなんて考えたこともあるから。

 

 

 

……アタシ姉がほしかっり妹が欲しかったりとか随分と欲張りだよな。

 

 

 

なんだか勝手に弟たちに申し訳なくなってきたな……ごめんなさいマイブラザーズ。

 

 

 

というかアタシはさっき三人のことを『親友』だと言ったがやっぱり違う。アタシは三人のことを勝手に姉妹だと–––家族だと思っていたのだ。

 

 

 

わかってる。勝手にそう思ってるだけだ。

 

 

でも…それでもアタシにとっては家族だから、守りたい。

 

 

家族だから毎日のように会って話して遊んで笑い合って時には喧嘩もして、それでもきっとずっと仲良しで–––中学生になっても高校生になっても大学生になっても大人になっても–––ずっとずっと一緒に居たい。

 

 

 

 

だから早く……

 

 

 

 

いや……

 

 

 

 

 

 

 

ぁぁ–––––––––

 

 

 

 

 

「よかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「樹くん、いつもそれ聴いてるんですね」

 

 

 

その人は俺がつけてるウォークマンを見てそう言った。

 

 

 

「うん、これ前にお姉ちゃんに貰ったものなんだ」

 

 

俺は何も疑問にも、不思議にも思わずその人の問いに答える。

 

 

 

「耳を塞ぐと心も塞がる……嫌な世界と触れ合わなくて済むんだ」

 

 

「嫌な世界?」

 

 

「そうだよ、嫌いな人たちがいる世界、怖いバーテックスがいる世界、戦わなきゃいけない勇者がいる世界、俺も友達も傷つく世界」

 

 

 

「………………………」

 

 

「いいこともあったんだ。よかったこと、嬉しかったこと…楽しみだったことも……けど結局は壊れてしまう……………嫌な世界だ」

 

 

 

「………………………」

 

 

 

「これしてるとお姉ちゃんが俺を嫌な世界から守ってくれると思ってたんだ。…俺の勝手な思い込みだよ」

 

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

「でも、もういい。…もういいんだ」

 

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

「全部捨てるんだ」

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

「何も言わないの?『また嫌なことから逃げ出してるって』…そう言わないの?」

 

 

 

 

「樹くんは、そう言ってほしいんですか?」

 

 

 

 

 

「……わからない」

 

 

 

 

「そうやって誰かに責めてもらった方が楽だから、そう言っているだけなんじゃないんですか?」

 

 

 

 

「……そうかもしれない」

 

 

 

 

「そうですよね、誰かに責めてもらえれば自分で自分を傷つけなくて済みますから」

 

 

 

 

 

「…そうだね。きっと…そうだ」

 

 

 

 

 

「樹くんのそうやって自罰的に見せかけて誰かに自分を罰してもらって楽をしようとするところあまり良いところだと思いませんよ」

 

 

 

 

 

「–––でもね。銀ちゃんはそんな俺を好きだよって言ってくれたんだ。」

 

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

 

「…好きだったんだ」

 

 

 

 

「銀ちゃんの方が…生き残るべきだった」

 

 

 

 

「俺なんかより、ずっと銀ちゃんの方がいい人だったのに」

 

 

 

 

「銀ちゃんが生き残って俺が死ぬべきだったんだ」

 

 

 

 

「違います。生き残るべきなのは生きる意志を持ったものだけです。彼女はあの時樹くんの代わりに戦って死んでも構わないと思っていました。樹くんいう希望にすがったんです。そして樹くんは死にたくないと思っていた。その時点で生き残るべきなのは樹くん、あなたです」

 

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

「樹くんは悪くありませんよ」

 

 

 

 

 

  

「…冷たいね『ひなた』ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回投稿が一月なんではや五ヶ月以上経っていたのですが…いやはや時が過ぎるのは本当に早いもので、ゆゆゆいも5周年を迎えて非常にめでたいと。


…まあご挨拶はこれぐらいにして、壊滅的な投稿ペースではありますが、なんだかんだわすゆやのわゆ、勇者史外典を振り返ると創作意欲が湧いてくるのであー自分は結局こういうのが好きなんだなーとわかります。こういう湧いてくる気持ちを大切にこれからも書いていきたいですね。…次がいつになるのかわからんけど(すっとぼけ)
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