犬吠埼樹(憑依)は勇者である   作:夏目ユウリ

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犬吠埼姉妹はこの世の摂理(暴論)


日常の始まり

一日の疲れを取るのはお風呂なんてよく?言うと思うんだけどそれはあながち間違いでもない。

 

 

「ふぅ…………」

 

湯船に浸かりながら今日一日で起きたことと得た情報をなんとなくかな整理していく。

 

ちなみにちゃんと体を洗ってから入っているぞ。え?よくできたなって?

 

恥ずかしかったですよ?

 

もちろん。

 

…頑張ってんだよ。

 

でももういいんだ。こんなのそのうち慣れていって当たり前のものになってくるんだから。…たぶんトイレとかも。個人的に着替えとかお風呂とかよりもトイレがなんか一番恥ずかしい。……やってはいけないことをやってしまっている背徳感がすごいからね…

 

 

閑話休題。

 

 

話を切り替えることにしよう。

 

何やかんやで今日1日で色々な情報を手に入れた。

 

それは例えば俺の名字が『犬吠埼』というのもだったとか、ここは四国は香川県讃州市という場所だったとか、そんなことがどうでもよく思えてしまうほどのものがあった。

 

 

 

 

曰くこの世界はもう四国の外は謎のウィルスで壊滅しており、海の沖にある巨大な壁によって四国のみが守られているらしい。

 

その壁は『神樹』という名のいくつかの神様の集合体によってつくられているとのこと。

 

そしてそんな神樹を崇め奉っている組織『大赦』が実質この四国を治めているということだった。

 

さらにどうやらそんな終末世界になってしまったのはここ数年とかの話ではなく約三百年前から。その時に元号も『西暦』から『神世紀』

へと変わった。

 

そして我が犬吠埼家の両親はその大赦に勤めているとのことだった。仕事で色々と忙しいらしく両親ともに家にいない時間も結構多いみたいだった。

 

だからあの姉はなにかと世話を焼いてくれるのだろうか?

 

小さな妹のためにしっかりしなきゃ、と考えているのかもしれない。

 

 

「樹ー着替え置いとくからねー」

 

「ありがとー」

 

こんな感じで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう樹?気持ちいい?」

 

「うん、気持ちいい〜」

 

お風呂上がりに俺はお姉ちゃんに髪を乾かしてもらっていた。

 

別に自分でやっても良かったのだが、お姉ちゃん曰く

 

『こういうのは適当にやっちゃダメ!髪は女の命なんだから!』

 

と力説された。全くどこでそんな言葉覚えてきたのやら、あんたもまだ小3でしょうに。

 

「お客様〜お加減方はいかがですか〜?」

 

「大丈夫で〜す〜」

 

「お客様の髪はサラサラでツヤツヤでもふもふですね〜」

 

「美容師さんも髪綺麗だと思いますよー私も長くした方がいいですかね?」

 

「もちろんロングも似合うと思いますよ!でもショートはショートでとってもお似合いですよね!」

 

「あ、じゃあもうしばらくこれで〜」

 

短い方が洗うの楽だしな。女の子っぽくはないけど…そこはご愛嬌で。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみ樹。あとこれ入学祝いだよー」

 

可愛い柄がついた消しゴムだった。嬉しい。

 

「ありがとうお姉ちゃん♪」

 

思わずにっこり。大切にとっておこう。…でも消しゴムを使わずとっておくのもちょっとおかしいかな?

 

 

 

 

 

小さな豆電球だけが付いている部屋の中で布団をかぶって天井を眺める。

 

気づいたら小さな女の子になってた上になんだか世界観が俺の中にある常識と所々異なっていて本当に不思議な気分だ。

 

気づいた直後はもちろん意味不明で焦ったし取り乱した。トイレも着替えもお風呂も大変だった。

 

話すこと、歩くこと、食べること、飲むこと

 

当たり前のことに逐一新鮮なものを感じた。

 

『神樹』と『大赦』そして四国以外何も残っていない崩壊した世界。『神世紀』という聞きなれない元号、俺–––『犬吠埼樹』という一個人としてでは到底収まりきらない大きすぎる世界の現状。

 

でも–––––それでも何より今の俺の頭の中にあるのは、あの明るいお姉ちゃんの笑顔だった。

 

文房具屋さんに行った後に商店街でお母さんからのお使いに一緒に行ったのだが、お姉ちゃんは商店街の人と話すときは俺と話すときとは違う目上の人に対する言葉遣いをしていた。

 

当たり前のことだ、と言えばそれで済む話だが小学三年生でそれがすでにできているのは結構すごいんじゃないかなぁと俺は思った。

 

家に帰ってからも、母親の帰りが遅いというのもあって炊事洗濯を子供ながらに頑張ってやっているのを目にした。ちなみに手伝おうとしたら断られてしまう。なんでや。(なんとなく想像はつく)

 

「お姉ちゃん…」

 

素直に尊敬してしまう。もし誰かにそんな一日で何を言ってるんだと思われてもいい。率直にそう思ったのだからきっとそれが本心なんだから。

 

今日1日を何だかんだ平和に特に問題もなく(トイレには金輪際ついてこないでほしい後お風呂一緒もまだもうちょい時間をください…)

 

……まぁそんな感じで過ごせたのはあのお姉ちゃんのおかげだった。

 

えーっと後は・・・小学生頑張ってやっていこうかなって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の午後

 

入学式が無事終わった。式には可愛いスーツを着て参列した。

 

後お姉ちゃんがなぜかついてきててなぜか泣いてた。

 

うん、卒業式じゃないんだから。

 

 

「樹ぃぃ……あんなに……あんなにしっかり座ってちゃんと校長先生の話聞いて偉いよあんたはぁ……っぐす」

 

泣くとこそこかよ。話はたしかに長かったけどね。

 

後あれだよ、あれ。

 

『神樹様に拝』って親も教師も子供もみんな目をつぶって手を合わせてたあれ。マジで宗教じみたことしてるんだ、ちょっと驚いた。

 

 

 

新しくピカピカの一年生として編成されたクラスでは早速一人ずつ自己紹介をしていくことになった。自分の名前と好きなものを何かなんでもいいから一つとのことだ。

 

造作もないことだ。

 

「ぃ、い、犬吠埼…樹…です………」

 

前言撤回。俺こと犬吠埼樹はあがり症だったようです。

 

ちなみに好きな食べ物の圧倒的うどん率、さすが香川。

 

 

んでもって現在下校中。結局あまりクラスの人と会話することもなく終わってしまった。挨拶は会話に含まれますか?(涙目)

 

真新しいランドセルが変に重く感じる。

 

隣では何かを察したのかようなお姉ちゃんの顔。校門で待っていてくれてたのだ。やっぱり心配だったらしい。

 

「だいじょぶ?なんかあったの?」

 

家に向かう足を止めて目線を俺の高さにまで合わせて優しく問いかけるお姉ちゃん。その目は少々不安げだった。

 

「…ううん」

 

首を小さく降って否定の意を示す。ほんとは結構落ち込んでいる。

 

でも何か嫌なこととか悪いことがあったわけじゃないのは事実。だから別に嘘はついていない。

 

……なのに、なんか胸がチクチクする。

 

「樹…」

 

呟くようにして俺の名前を呼ぶお姉ちゃん。

 

そして俺の小さな手をそっと包み込むようにして握った。お姉ちゃんはそれ以上何をいうでもなくするでもなかった。

 

胸が暖かくなって少し肩の力が落ちか気がする。

 

俺たちはそのまま手を繋いで帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客様、今日もとても可愛いですよ〜」

 

「えへへ〜」

 

晩御飯を食べてお風呂に入って髪を乾かしてもらってるところで今日も美容院ごっこ。結構楽しい。

 

それと今家には俺とお姉ちゃんの二人しかいない。お母さんは入学式の後慌ただしく仕事に行ってしまった。今も家にはいない。

 

んでお風呂は二人で入った。………正確には一人だったけどお姉ちゃんが乗り込んできやがった。びびったわ!!!

 

まだまだ子供とはいえ流石に自分よりは発達している体な訳でさ…なかなか視線のやり場に困った…

 

体全身洗われるし髪も洗われるしで顔が真っ赤。お姉ちゃんはのぼせたと勘違いしてたみたいだけど…

 

「ねぇ樹」

 

「んー?」

 

「あんたにはお姉ちゃんがついてるんだからね?何にも心配はいらないからね?」

 

「––––うん」

 

 

 

 

 

 

一週間も経つとある程度生活にも慣れてきた、と思う。

 

学校でのクラスメイトとの生活はやっぱりまだ慣れないけど…それでも全然会話もしないみたいなことはない。挨拶はもちろん遊びとかおもちゃとかそういう他愛もない話をしたりもする。

 

ただ内心ビクビクしてるってだけ。

 

授業が始まり、給食も始まった。俺はサラダが苦手で鼻をつまみながら食べるのが精一杯だった。お姉ちゃんに相談したほうがいいかもしれない。

 

 

発育測定というものもあった。

 

身長体重は案の定平均より小さく軽かった。

 

「あ…体重増えちゃってる…」

 

「風はちょっと食べ過ぎなのかもね」

 

「がーーん…」

 

「でもお姉ちゃん身長は結構伸びてるよ?」

 

「あ、そっか!身長が伸びたから体重もその分増えただけか!ありがと樹!」

 

「それ違うと思う」

 

「絶対食べ過ぎね」

 

「がーーん…」

 

 

自分の身長に関してはこれからに期待することにした。お姉ちゃんほどではなくてもよく食べることは大事かもしれない。でもお姉ちゃん!あんまり野菜使わないでほしいなって…

 

 

「ねぇねぇお花見行こうよ、お母さん」

 

この生活が始まって二週間か三週間が過ぎた頃だったかにお姉ちゃんが突然そんなことを言い出した。

 

「あらいいわね。楽しそうじゃない」

 

「でしょ!樹はどう?」

 

「うん、楽しそうだね」

 

俺としてはお姉ちゃんの笑顔が見られるのが楽しいけどね。

 

「お父さんに相談してみましょうか」

 

「やったー!」

 

お父さん……かぁ。

 

実は我が父親を俺は少し苦手だったりする。

 

というのも…

 

 

 

 

 

「樹」

 

「な、なに?」

 

「学校はどうだ」

 

「う、うん。大丈夫」

「楽しいか?」

 

「は…はい」

 

「そうか」

 

 

時々家にいるときにする会話は大体こんな感じ。遠回しに心配してくれるのはなんとなくわかるけど口調がね…ちょっと怖い。

 

ちなみにお姉ちゃんは

 

 

「風」

 

「んー?」

 

「学校はどうだ?」

 

「楽しいよー。今度遠足もあるしね」

 

「遠足か。どこに行くんだ?」

 

「運動公園だよ。あのおっきい遊具とかいっぱいあるところ」

 

「あそこか……樹とはどうだ?」

 

「可愛くてたまりません!」

 

「そうか」

 

「あとあとお父さん!今度みんなでお花見行こうよ!まだギリギリ桜咲いてるし。ね?ね?」

 

「……考えておこう」

 

「よろしくねー!」

 

 

やっぱりお姉ちゃんすげーや。

 

ついでながらお花見はお父さんの仕事の都合でお蔵入りになってしまった。残念。




原作に入るまでどうか気長にお願いします。…入ってからもお願いします。
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