今回はネタ回にしてます。
謎の鎧だけの存在、ガイソーグとの戦闘から数日が経った。
あれから半日で、操られていたシグナムが目を覚ましたが、操られた直後のことを覚えていなかった。
だがバンたちから話を聞いて自分が不甲斐なかったのか、状態が安定したら修行をすると言って、しばらく安静にすることになった。
右京達にも今回のことを伝えたが、ガイソーグとリュウソウジャーの関係が一体何なのかは、未だにわかっていない。
だが少なくとも、自らの手でリュウソウジャーを倒すと言っている辺り、リュウソウジャーの味方ではないのは確かであった。
それから休暇を取って三日後、バンたちは再びキュータマを探しに向かった。
その時は特に敵対する転生者との遭遇もなく、五つのキュータマを手にすることができた。
だが、その中の一つだけ、バンたちの知識でも、トショカンキュータマで検索しても出てこなかった赤いキュータマがあった。
念のためそのキュータマを回すと、何やらセンサーかレーダーを思わせる紋章が浮かび上がった。
何か探知に使うのかよくわからないが、少なくともバンたちの知ってるキュウレンジャーのキュータマとは違ったのだ。
そんなことを考えている時のことだった。
「キュウレンジャーへの変身の禁止?」
「えぇ、確かにあなたたちパトレンジャーや機動六課の皆様には、ジャークマターや転生者との戦いでの活躍は聞いております。
しかし、キュウレンジャーの力はとてつもなく、他の魔導師たちよりも目立ってしまう。
それ故、あなたたちにはキュウレンジャー及びデバイス使用の変身を禁止させていただきます」
交番に訪ねに来た管理局の男が、突然そのようなことを言ったのだ。
それも、キュウレンジャーになったスバルたちのことではやてと話をしていた時に。
その場にいたかこもアストルフォもそれを聞いて呆然としている。
「おい待てよ!
何でそんな理由で変身を禁止されなくちゃいけないんだよ!」
「せやで!
しかもバンくんたちだけやない、スバルたちまでデバイスを含む変身の禁止だなんて!
あの子らは魔導士なんやで!?」
「確かに彼女たちは魔導士です、しかしキュウレンジャーになって、そちらの活躍が多く聞く様子。
これでは、管理局が誇る魔導士の名も薄れるも同然。
ですので、我々でそのセイザブラスターを管理する必要があるのです」
「彼らが戦っているのは違法魔導士じゃなくて転生者や!
元々悪事を働く転生者の影響で次元が歪むのを防ぐために、彼らと協力関係を結んでるんや!
それを承認したのだって、あんたら上層部なんやろ!?」
「それに、今はそのジャークマターってのが暴れて世界が支配されようとしてんだろ?
今それをやったら、あんたら魔導士だけでどうにかできるのか?」
「…あなたは転生者に対抗できるからと、調子に乗っていませんか?
それならば、セイザブラスターをこちらで保管し、研究して量産し、転生者に対抗できるように魔導士に装備させるのが合理的ですよ」
「…ちっ」
「くっ!」
バンは思わず舌打ちした。
それははやても同じだ。
「けど、だからってこんな…」
「…わかった、それに乗ってやるよ」
「え?」
「バン隊長?」
「隊長…?」
納得がいかず、反論しようとしたはやてを、バンが止めて、承認した。
「おや、お分かりいただけましたか?」
「あぁ、認めたくなんかねぇけどな。
確かに、そっちの方が合理的だ。
効率がいいしな」
「ちょっ、何を言ってるのさ隊長…?」
「じょ、冗談、ですよね?」
「そ、そうやでバンくん、こんな時に心臓に悪い冗談はやめといてや。
だって、承認するってのは、つまり、その…」
「わかってる、俺たちはもう戦えなくなるってことだろ。
…けど、それはそれで良いかもな」
「え?」
バンは動揺するはやてたちの耳元で何かを呟き、それで納得したのか、三人とも大人しくなった。
「…はい」
「…わかったよ」
「うん、そうさせてもらうわ。
ごめんな、バンくん…」
「…悪いな、けどできるだけ荒事を起こさないようにするためにも、こうするしかないんだ。
じゃあ俺たちはこれからスバルたちにこのことを連絡してセイザブラスターとデバイスを持ってくるよう言ってくるから、そこで待ってろ」
「ふん、お利口ですね」
そう言って、バンたち四人はその場から去って、すぐにかこがお茶を持ってきて男に渡し、その場から離れた。
男は出されたお茶を飲みながら、バンたちがセイザブラスターを全員分持ってくるのを待つ。
待つこと十分。
「…遅い、まだ来ないのか!?
連携がなっとらんのか、キュウレンジャーは…!?」
男が苛立ちながら席を立ちあがった途端、急に腹部に強烈な便意を覚えた。
そのタイミングを見計らったのかバンたちが一枚の紙とペンを持ってやってきた。
その後ろではやては覗いている。
「でかしたぜかこ!」
「…トイレは、どこだ?」
「その前に、この書類にサインしてください!」
かこが紙とペンを男に突き出す。
その紙には、キュウレンジャー及びデバイスでの変身の禁止の取り消しを示唆する内容が記されていて、その下に著名欄があった。
「くそっ、お茶に何を入れた…!」
「便秘薬ですよ!
この間おなかの調子が悪いからってバン隊長が買ってきたものを!
しかも通常の十倍の量の上から、私の特典で効能を再現してさらに倍にしています!
さぁ、早くここにサインしてください!」
「さもなくば、君はここで悲惨なことになるよ!」
「できるかっ、ぐうぅ…!
…トイレの場所は大体検討が付く。
エリートを舐めるなよ…」
男は吐き捨てて、お尻を手で押さえながら足の指でチビチビと移動しようとした瞬間。
「させるかぁ!!」
バンたちがすごい形相で男を取り押さえる、それも必死に。
「バカ、やめろぉ!!」
「サインしなよ!」
「エリートにこんなことを…!
大体お前たち正義の味方がこんなことをして恥ずかしくないのか!?」
「あぁものすっげぇハズイさ!
けどなぁ…!」
「正義を貫くなら、こういうことも必要になってくるんだよ!」
「だからサインしてくださいっ!!」
「ぬぉぉぉぉっぉぉ…!?」
男がバンたちを殴ろうとした途端に便意がさらに強烈になり、再び手を抑える男。
それから後ろに下がってバンたちがバランスを崩した隙を見て別の道からトイレに向かおうとする。
しかし、すぐさまかこが起き上がって男にタックルするが、体格が違いすぎてすぐに振り払われ壁に激突する。
「きゃっ、痛っつつ!」
「かこちゃん、大丈夫なん!?」
はやてがかこを介抱してる間に男は足指を器用に動かして通路を通り、トイレを発見する。
「は、はぁぁああ…」
男はトイレを発見し、まるで砂漠の中でオアシスを見つけたかのような、幸福に満ちた顔になっていた。
「うおりゃああああああ!!!」
「てぇりゃああああああああ!!!!」
だがその隙に、バンとアストルフォは二人でタックルしてトイレから遠ざかり、男はキッチンに押される。
食器棚に当たりそうになって、男は横にそれたことにより態勢を崩した二人は食器棚に激突し、盛大に食器を割る。
だがそれでも諦めず、アストルフォが男の足にしがみついた。
「うおらあああああああああああああああ!!!!!!!」
バンは倒れた体勢からそのまま床を這いずるように接近し、必死でしがみついた。
「ぐぉおおおおおおおおお…、あっ」
「ゲッ!?」
「えぇ!?」
「…バカめ、私はエリートなんだぞ!
この程度のことでクソなど漏らすかぁ!!」
「やぁあああああ!!」
男がフェイクで二人を遠ざけた後、必死の形相でトイレに向かう。
だが復帰したかこが走ってきて足にしがみつき、それに続くようにバンとアストルフォがしがみつき、男はトイレの目の前で、前のめりになりながら勢いよく倒れた。
「ぐぅおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
腹が床に勢いよく落ちた衝撃で、もはや限界で絶叫し、トイレが遠ざかっていくような錯覚を覚えた。
そして男は最終的に屈して、書類にサインし、トイレに直行した。
中ではものすごい音と腑抜けた声が聞こえた。
「…しかし、君らってえげつないことするねんなぁ」
実は先ほどバンが言っていたことは、男にバレないようにするためのフェイクだったのだ。
三人の耳元で言ったことも、口裏を合わせるように、自分の嘘に付き合えっていう内容だったのだ。
バンは元よりセイザブラスターを渡すつもりもなく、スバルたちに連絡していない。
かこも特典込みの便秘薬入りのお茶を出したのも、書類を書かざるを得ない状況に追い込むためだった。
また、はやてが何もしなかったのは、バンに同じ管理局の職員であるはやてまで巻き込みたくなかったからと、止められていたからだ。
「いやまぁ、こうでもしねぇと、あの手のやつって、どうにもできねぇし」
「特典で何かを再現するなんて、私も久しぶりだったので緊張しました…」
「いやそれお前がやったからな!?
便秘薬入れろって言ったけど、効能を倍にしろとかいってねぇし!」
「だけどどうするの?
一応、こんな書類に無理矢理書かせたようなものだし、このまま帰らせたらボクたちただじゃ済まないよ?」
「あの、すみません」
「はい、どちら様で、しょう、か…?」
かこが交番にやって来た客を見て固まった。
それを不審に思ったバンたちもその客を見るが、そこにいたのは今現在進行形でトイレに引きこもってるはずの、管理局の上層部の職員だった。
しかもさっきとは違ってまるで別人のような、そんな穏やかで真面目そうな雰囲気だった。
「あの、どうかされましたか?
本日はキュウレンジャーのことで話があって来たのですが…」
「あ、いや、なんでも…。
かこ、とりあえず接待してくれるか?」
「わ、わかりました…。
どうぞ、お茶も出しますので、少しお待ち下さい」
かこが男を連れて別の部屋に連れていくのを確認した後、はやてが口を開いた。
「…なぁバンくん」
「…何だよ」
「そのセイザブラスターって、転生者の反応で探知できるんやんな?」
「あぁ、できるな」
「けど、中には変身やったり変装で、探知でけへんやつも、おったりする?」
「…パトレンジャー時代はそういうやつに出くわしたことはあるが、まさか、そのパターンか?」
「ねぇ隊長、試しにこれで調べてみたらどうかな?」
アストルフォが持ってきたキュータマを手に取る。
それは先ほど見た謎の赤いキュータマだった。
「…そういえばこれって、回したらセンサーとかレーダーみたいな紋章が浮かび上がってたな。
やるしかねぇ!」
『センサーキュータマ!
セイザアタック!!』
バンはそのキュータマ、センサーキュータマを使用すると、セイザブラスターの探知機能が強化されて、それを
男が入っているトイレに向けた。
その先で男の反応をキャッチした、転生者として。
しかもジャミングを兼ね備えた変身能力を備えた特典だったことがわかった。
そしてこの男がジャークマターの転生者であることも。
『…』
三人の間に沈黙があった。
それを破るように、男がトイレから出てきた。
「ふぅ~、ひどい目にあった…」
「てめぇ、やっぱり敵じゃねぇかああああああああああああああ!!!!!!!」
『ギャラクシー!!』
「ぎゃあああああああああ!!!!!????????」
その瞬間、交番に激しい衝撃と悲鳴が聞こえたのだった。
結果、男はその時の攻撃で更生することができたのだった。
それで、先ほど来た本物の職員の男の話の内容だが、ジャークマターの出現でまたしても転生者が暴れまわっているということで、パトレンジャーはともかく、もうすぐ設立の期間が切れる機動六課のことだが、事態が事態なこともあって、これまでの目的の他にも、パトレンジャー本部との合同での支援を目的も兼ねて頑張ってほしいとのことで、ジャークマターを倒すまで期間を延ばすことになった。
つまりは今後も機動六課は残り、スバルたちもそこの職員として残ることになっている、ということだ。
「…まさか機動六課の期間を延ばしてもらえるとはな」
「ほんまびっくりやで。
元々あの戦いに備えて設立した施設が、君らとの協力関係との関係で支援も変えることになってるんやから」
職員が帰った後、バンとはやては二人で話をしていた。
「そういえばはやて」
「なんやバンくん」
「お前的にはさ、その、スバルたちがキュウレンジャーになって、どんな感じなんだ?」
「え?
そりゃあ、バンくんたちみたいに、転生者を更生できる力を持てて、すごいなぁって。
それがどないしたん?」
「…いや、なぁ」
はやてから見たバンの顔はどことなく暗かった。
「俺は、正直に言って、あいつらが俺たちと同じように戦える力を持ってくれたのは、嬉しいさ。
けどな、同時に悲しい気分になるんだよ」
「…何でなん?」
「俺たちパトレンジャーはな、確かに俺たちのような犠牲者を出したくないから転生者を更生してきた、何度もな。
それで更生した転生者が幸せに暮らしくれてるって、一から出直して人生を歩んでるって、そう信じていたんだ。
あの怪盗たちと戦うまでな」
「…」
「けど、実際は違ったんだ、全くな。
この更生の力は、その人との関係を無理やり断ち切ることでもあったんだ。
はっきり言って、家族とかダチとの記憶もなくなってるからな。
こんなもん、転生者専門の人殺しなんだよ。
だから、あいつらがキュウレンジャーになったのだって、内心ショックだったんだ。
俺たちの側に来たんだって、あいつらも人殺しをしちまうんだって…」
「あのな、バンくん」
「…?」
「少なくとも、私はバンくんたちが人殺しなんて思わへんよ?
それはきっと、なのはもフェイトも、スバルたちも同じや。
そりゃあ確かに、殺しはあかんよ?
けど、君らは、その力で何度も大勢の人たちを助けてくれたやん!」
「だけど更生の力は償う機会すら奪ってるんだぞ!?
…時々思うんだよ、もし俺たちも怪盗みたいに、特典だけをどうにかできる方法があったらって。
けど俺たちは、もう何度も転生者を更生として殺してきた。
だから、あいつらには、協力はしてもらいはすれど、俺たちのようにはなって欲しくはなかったんだよ…!?」
自分の心情を吐露するバンに、はやてはビンタする。
はやてのその目には、少しの怒りがあった。
「…何でなん?
何でそこまでして自分たちを人殺しとか言えんの…?
私たちが、君らのことを殺人鬼とかそんなこと言ったことあった?
違うやろっ!」
「は、はやて…?」
「私らだって、どれくらい君らと一緒に居ったと思っての!?
君らのそういう心情くらい、読まれへんわけないやろ!?
だって、君らはこんなにも優しいんだから、わかるねん!」
「…!」
「それに、さっき幸せにしてほしいとか、記憶を消して一から出直してほしいみたいなこと言うてたやん!
なら、今でもそれでええやんか!
実際暴走した特典に振り回されて身寄りもない人もおるし、何の反省もない開き直ってるアホもおるしな!
そりゃあ、償わせるのはできへんよ?
その場から消えてなくなってるもん、よぉ分かるわ!
けど君らのその行動が、誰かを救ってるのは確かや、特典に苦しんでる人を助けてるのは確かや、違う!?」
「そ、それは…」
バンははやての言ってることに反論できずにいた。
「…なぁバンくん、君の言ってることは確かに間違ってない。
けど、私はな、スバルたちがバンくんと同じ力を持てたことを嬉しく思うねん。
だって、それって仲間として、支えあえるってことなんやろ?」
「…っ!」
「もし、今私が言ってることに納得がいかへんのやったら、今は迷っても良い。
普通の人でも特典で苦しめられてる転生者のためでも良い、誰かを助けるために動きなさい!
更正した転生者のことを覚えなさい!
そしてもう二度と自分らのことを人殺しとか言わんといて、わかった!?」
「…わぁーたよ」
「ハッキリと返事しいや!」
「はいっ!」
バンはどうにかはやての言ってることに納得した。
今は迷ってても、誰を助けるために、この力を使う。
そして、自分たちはパトレンジャーではあったが、それはかつての話。
今はキュウレンジャーで、スバルたちもいる。
だからこの力のことでくじけそうになっても、皆がいる。
大事なのは、そういうことなのだから。
バンの顔には先ほどまでの暗さはなく、少しずつだが前に突き進もうとする意志が見られて、はやてはホッとしていた。
「…ふぅ、さてここまで言うたんやし、ちょっと何か奢ってや」
「わかったよ、それでどうするんだ?
どっかの自販機で飲み物でも飲むか?」
「いや、ここ最近できたスイーツ屋のケーキや!
私、あれ食べてなくてな、せやから少なくとも二つ以上は食べるで!」
「はぁ!?
ふざけるなって、二つ以上ってどんだけ注文するとかそういう展開か!?」
「ふふっ、せやで!
私をここまで言わせたんやから、これぐらいはやってもらわな割に会わへんやろ?」
「くそっ、わかったよ!
そんなに言うならとことん付き合ってやるよ!」
そうして二人はスイーツ屋に足を運ぶのだった。