「…前から思ってたんだけどさティア」
「何よ?」
「ティアってなんでかこさんに優しいの?」
「なっ!?」
ミッドチルダでのパトロール中、ティアナはスバルに言われたことに動揺する。
「そ、そんなの、かこさんたちが協力関係だからであんたみたいなのに素でしゃべる相手でもないし!
それに、特別かこさんに優しいとかじゃないわよ!」
「でもティア、前にかこさんがお墓参りに行ってるって聞いた時、真っ先に行ったじゃん。
そそくさにさ。
この前のクリスマス会とかでもかこさんと話をしててもあまり怒らないし。」
「うぐっ…、そ、それは…!」
スバルの言葉に言い返せないティアナ。
実際ティアナはかこの墓参りに行ったことがあるし、それ以前にもお見舞いにも行ったことがある。
それでよく、話をしたことがあるし、会話も弾んだ。
そもそものきっかけは、かつて暴走した転生者をどうにかするために二人で行動したことがあったからだ。
それからかことは仲が良くなった。
だが、ティアナがかこに優しいのは、ティアナ自身も心当たりはある。
そのことを思い出そうとした瞬間だった。
「「っ!?」」
空から、何かが落ちてきた。
それはまさに、隕石のように。
「スバル!」
「わかってるよ!」
スバルは懐からあるものを取り出した。
それは以前、バンたちと一緒に集めた四つのキュータマの内の一つだった。
『タテキュータマ!
セイザアタック!!』
スバルは青色のキュータマ、タテキュータマを発動し、二人の前に不可視の巨大な盾を召喚した。
その直後、小規模ではあるが凄まじい衝撃が走った。
「うぅ!」
「くっ!」
二人は衝撃に耐えながら目の前を見る。
そこにいたのは、サソリの足を思わせる髪に赤い仮面、背中には黒いサソリの尻尾を生やした怪人だった。。
その仮面の片目は、二人をにらみつけていた。
「こいつ、転生者!?」
「セイザブラスターでも、ジャークマターの転生者の反応が出てる…!」
「…貴様らがキュウレンジャー、か」
「だったら何よ」
「俺の名はスコルピオ。
ジャークマターの転生者として、貴様らを始末する…!」
「スコルピオ!?
確か、バンさんたちの資料にも、そういう名前の怪人が!」
「とにかく、ここで食い止めるわよ!」
『マワスライド!』
『サソリキュータマ!』
『オオカミキュータマ!』
『セイザチェンジ!』
『スターチェンジ!!』
ティアナとスバルはサソリオレンジとオオカミブルーに変身して、スコルピオに立ち向かう。
一方スコルピオも、歪な形の槍で二人に攻撃を仕掛ける。
スバルは爪で槍の刃先を弾き飛ばして、即座にキュークローで応戦する。
ティアナもクロスミラージュとキューショットでスバルの後方から射撃する。
だが、スコルピオはその槍さばきでティアナの弾丸を弾き返し、スバルの攻撃も軽く捌いてしまう。
「…どうした、その程度なのか?」
「くっ、こいつ…!」
「ティアっ!」
『キュースラッシャー!』
スコルピオの挑発に頭が来たティアナはクロスミラージュをダガーモードに、キューショットをキュースラッシャーに切り替えて突撃する。
しかしそのその攻撃も、受け止められてしまう。
その時だった。
『ぐっ、くっ、苦しい…!』
「え?」
ティアナはスコルピオから聞こえた謎の声に動揺する。
それは、どこか聞き覚えのある声で懐かしいものだったから。
「どうした、今頭に来たと思ったら今度は驚きの顔か。
くくっ、面白いな?」
『だ、誰か…!』
「な、何なの!?
この声、は…!」
ティアナはさらに動揺してしまう。
その声は、今ここで聞いてはいけないはずの、いやもうとっくの昔にいなくなったはずのものなのに。
『ティア、ナ…?』
「…!」
ティアナはその声に耐えきれなくて、思わず距離を離してしまう。
「何なのよ、何者よあんたは!?」
「ティア!」
「…こいつから、聞き覚えのある声が聞こえるのよ。
あんたには聞こえない?」
「…っ!?
そ、そう言えばさっき、何かあいつとは別の声が、聞こえてくるような」
「…だったら、あんたはあいつを取り押さえて!
私はセイザブラスターの反応を確認するから!」
「わかった!
ウイングロード!」
スバルはウイングロードで道を作って駆け抜けていき、ティアナはすぐにセイザブラスターでのスコルピオの反応を調べた。
「どういうことなの…?
何で、だってあの人は、もう…!」
動揺が隠せないものの、よく反応を調べると、あることが分かった。
「スバルっ!!
そいつ、特典が暴走してるわ!
今すぐ無力化させるわよ!」
「わかったよ!」
「くくっ、何を考えてるかは知らないが、終わらせてやる!」
そう言うとスコルピオは自身の尻尾を右足に巻き付け変形させて勢いよくキックを仕掛ける。
「行くわよ!」
「うん!
プロテクション!」
スバルの周りに強固なバリアが張られて、その状態で受け止める。
当たってる箇所から徐々に溶けてきているが、その間にティアナの周りに光弾が出現し、キューショットにはキュータマがセットする。
『ギャラクシー!!』
「くらいなさい!
クロスファイアシュート&アンタレスインパクト!!」
「なっ、ぐおあ!!!」
スバルの後ろから飛んできたエネルギー弾の雨に、スコルピオは耐えきれずダメージを受ける。
そこから追い討ちをかけるように、スバルも右腕にリボルバーナックルを装備し、キュークローにキュータマをセットする。
『ギャラクシー!!』
「これで終わりだぁ!
ディバインバスター&ルプスインパクト!!』
「がはっ…!
こ、これ程とは…!」
スバルの攻撃で壁に激突し、そのまま地面に倒れて動けなくなるスコルピオ。
「…」
「ティア、こいつどうするの?
暴走してるとはいえ、あたしたちにできることって、怪盗と違って転生者を更正するだけだし…」
「わかってるわよそんなこと。
でも、かと言ってこのままするわけにもいかないわ。
それに、もうすぐしたらバンさんたちも来ると思うし」
そこでティアナは考えた、このスコルピオをどうすべきか。
正直な話、本来ならこんな危険なやつは更正するのが良い。
管理局や機動六課に、縛った状態で連れ込んでも暴れだすだろう。
だが、ティアナが悩んでるのはそれではない。
スコルピオから聞こえた声だ。
明らかにスコルピオの声ではないし、演技でもなかった。
それに、その声が、どこか懐かしいものだったのだ。
だからティアナは知りたい。
この怪人の正体を。
今ここで更正すれば、もうその声を永遠に聞けなくなる気がしたから。
そんなとき、セイザブラスターが光って、同時に頭に流れ込んできたのだ。
その現象は、スバルにも起きていた。
「な、何なのこれ…!」
「…何だかよくわからないけど、やってみる価値はあるわね」
『シールドギャラクシー!!』
ティアナはセイザブラスターにセイザチェンジしたキュータマを三回後ろに倒すと、そのような音声が流れて、そのままスコルピオに目掛けて撃ち込んだ。
すると、スコルピオの体が鎖で縛られると同時に消えて、中から少年が出て来て、そのまま気を失った。
「え!?」
「中から、人が…!
それに、特典の反応も、ほとんど消えてる…。
シールドだから、これって封印ってことなのかな?
…ティア?」
スバルはティアナに視線を移すと、その少年にティアナが近付いて顔を見ていた。
「えっ、嘘…」
「どうしたの、ティア!」
スバルはティアナの動揺に驚き、近付いてスコルピオだった少年を見た。
「ティ、ティア、この人ってまさか…!」
「ぐっ、ぅあ…」
ティアナとスバルにはこの少年に見覚えがあった。
それは、すでに死んでるはずの少年。
しかも、死んだときより若い、下手すれば髪型や多少の体格や性別以外ティアナと瓜二つの姿だ。
そして…。
「…ティーダ兄さん」
ティアナは思わず口にした。
そう、そこに倒れてる少年に向けて、かつて死んだ実の兄の名前を。