ティーダがユニコーンバイオレットに変身し、ティアナと本当の意味での再会を果たしてから翌日。
あの後で色々と検査を受けて、特に異常もなく、暴走していた特典も封印されていて心配はなかった。
それに、スコルピオだった時は、暴走していて本人の意思がなかったことと、現役時代のティーダの人柄と実績から魔導師として復帰する形で機動六課に配属となった。
また、ティーダの墓についてだが、本人が『自分は一度死んだ身だから、このままにして欲しい』として、そのまま残すことにした。
それと、その後でバンたちと顔を合わせ、キュウレンジャーとして戦うことを告げた。
そして今、バンたちキュウレンジャーとなのは、フェイト、はやて、右京、亀山、霞は全員、隊舎のミーティングルームに集合していた。
「皆さん、集まってくれて、ありがとうございます。
今回皆さんに集まってもらったのは、ある場所のことでの、情報を共有したいからです」
「ある場所?
そういやティーダ、お前確か空から降ってきたよな?
それと関係してるのか?」
「あぁ、その場所の名前は、惑星エルトリア」
「エルトリア!?
確か、ユーリやディアーチェが居る星やんか!」
「一つ、質問よろしいですか?」
右京が手をあげて、ティーダに質問する。
「あなたは何故、自分がエルトリアにいたと思うのですか?
聞けばあなたは、特典が暴走した状態でほとんど意識がなかったらしいじゃないですか。
だから気になってしまうのです、何故あなたはそこにいたとわかるのか」
「…暴走する前に、ジャークマターにそこに連れてこられたからですよ」
『っ!?』
「おや?」
ティーダは自分の経歴を話した。
自分が死んだと思ったら、真っ暗闇で何も見えない場所にいた。
どこからともなく、不気味な声で何か自分に囁くように言うのだった。
世界を征服するために我らジャークマターに屈しろ、と。
冗談じゃないとティーダは吐き捨てるが、その瞬間に何か禍々しい光が自分の中に入るのを感じた。
感じた瞬間、凄まじい異物感と強烈な痛みが全身を駆け巡った。
それが、スコルピオの特典だったのだ。
だが、その段階ではまだ暴走しているとは程遠く、痛みに苛まれる程度だったので、何人かに囲まれたと思ったら目隠しされた上に腹を殴られ気を失ってしまった。
気が付いたら、目隠しを外されて、どこか別の場所に連れてこられたように感じた。
暗くて何も見えない場所だった。
そこで二人の男の声が聞こえ、照明が二人を照らした。
男であるが、二人ともバレリーナみたいな格好しているのがはっきりとわかった。
その二人が何者かはわからなかったが、ただならぬ気配を感じていた。
二人はティーダに面倒臭そうに大人しく屈するように促してきた。
ティーダは苦しみながらも断るが、その時に二人の後ろに何かが吊るされてるのが見えた。
それは長い金髪の幼い少女だった。
それでいて、ティーダが生前管理局にいたころ一度だけ資料で目を通したことがある少女と瓜二つだった。
それ故に自分がどこにいるのかも、その少女がどんな存在なのかも察した。
苦し紛れになりながらも体を起こして、少女を解放するために抵抗した。
だが、二人は互いに軽口をたたく形で攻撃を躱し、挙句の果てにはこうつぶやいて、自分に黒い何かを注入した。
消えちゃえ、と。
二人に何かを注入された途端、体の中に入っていた特典が自分を覆いつくすように体を隅々まで浸食いていった。
その二人はそんな状況を、まるで料理の下準備でもするかのように呟きながら言う。
ようこそ、私たちの新しい国、エルトリアへ。
その言葉を最後に、ティーダは意識を失ってしまった。
それが、ティーダの経緯だった。
『…』
ティーダの話を聞いたバンたちは、呆然としていた。
しかし、それを聞いた右京は冷静に話を聞いていた。
「なるほど、それが君がエルトリアへと向かうべきだと言った証言ですか」
「…証言というわけではないんですが。
ですが、このままだとあの子が!」
「ティーダさん、気持ちはわかるけど、まさかその子って…」
「…ユーリ・エーデルヴァイン、です」
「ユーリちゃんがっ!?」
「なのはさん、知ってるんですか?」
「うん、八年前にちょっとね。
でも、どうしてユーリちゃんが?
だって、エルトリアにはディアーチェちゃんたちもキリエちゃんたちもいるのに!」
「まさか、皆もその二人に!?」
「なのは、フェイト!
落ち着きなさい、それは私たちだって驚いてるわよ」
動揺が隠せないなのはとフェイトに、霞がなだめる。
なのはたちはかつて、地球でと戦ったことがある。
そしてその果てで、事件の黒幕を撃破及び捕縛し、彼女たちはエルトリアへと帰還した。
「…ユーリ・エーデルヴァイン。
確か、夜天の書のシステムの力を操る方、でしたねぇ。
そしてディアーチェさんたちで彼女の力を制御していた。
となると、そんな彼女を捕らえた二人の目的は一体…」
「とにかく、何かとても危険な雰囲気、ですよね」
「けど、ここからエルトリアに向かうまで、どうやって行く気よ?
確かエルトリアってこのミッドチルダとは別の宇宙なんでしょ?」
「…キューボイジャーでも、そこにたどり着けるかどうか、だな」
エルトリアは別の宇宙の惑星、それ故ミッドチルダから飛び立つにしても、足代わりになる手段が必要になってくる。
そんな時に、はやてが口を開いた。
「それについてなんやけどな。
一つだけ、あるにはあるねん」
「と言いますと?」
「クロノくんやリンディさんに頼んで、アースラを使わせてもらうことになってんねん」
「アースラを?」
それを聞いてバンたちは少し眉を潜めた。
別にアースラを使わせてもらうのは問題ではないし、二人からのバンたちに対する評価が悪いとかではない、むしろ交流もあって会ったら会話する程度だ。
ただし問題なのは、アースラのことだったのだ。
「ねぇはやてちゃん、アースラってこの前の事件でボロボロだよ?
それ以前にもう何年も使い込んでるから、整備しても動くかどうか…」
そう、アースラは確かに次元航行としての機能もあり宇宙を移動することも可能だ。
しかし、今となっては老朽化してた状態で、ジェイル・スカリエッティとの戦いにも使用されてボロボロになったことにより、戦艦として使えるかどうか怪しいところだ。
「いや、そうでもないですよなのはさん」
「え?」
「可能性は100とまでは行きませんが、一つだけアースラで行ける方法があります。
…バンくん」
「俺、ですか?」
いきなり話を振られて驚くバン。
「君は確か、センサーキュータマの他にも、4つのキュータマを見つけたと言いましたねぇ。
その一つが存在は知ってるけど未だに使い道がわからないと言っていましたが」
「…これのことですか?」
そう言ってバンが取り出したのは、白いキュータマだった。
「バン隊長、それって確か!」
「オリオンキュータマ、だよね…」
「でもこのキュータマ、元々バトルオリオンシップの起動に必要なキュータマだ。
長官はどうしてこれが必要だと?」
「実は以前にそのキュータマについて、霞ちゃんに調べてもらいましてねぇ。
そしたら、オリオンキュータマからとてつもないパワーがあることがわかったのです」
「それってつまり…」
「あくまでも推測の話ですが、オリオンキュータマの力を使えば、アースラの回復もできるのではと…」
「そうですか。
…はやて、確かアースラは」
「隊舎の近くの倉庫に置いてあるわ。
でも、本当に行けるんかなぁ?」
「僕の推測が正しければ、今言ったことが起きるのかあるいはそれ以上のものになります。
それに、バンくんたちと僕たちの知るキュウレンジャーとは色々勝手が違ってますので、その可能性もあるのではと思ったのです」
「…わかった、じゃあ物は試しや。
バンくん、頼むで!」
「了解!」
バンはそう言ってアースラがある倉庫に向かった。
「…それにしても、本当にこれで何とかなるだろうな?」
バンはアースラの中に入って艦橋に向かいながらオリオンキュータマを見る。
確かに未だにバトルオリオンシップは見つかっていない。
そもそもこの世界に存在するかどうかも怪しい。
でも、何もしないよりはマシだと、バンは考える。
「ここが艦橋だな。
…よし、行くぜ!」
『オリオンキュータマ!
セイザアタック!!』
艦橋についでながらすぐに、オリオンキュータマを発動する。
その瞬間だった。
「うおっ!?」
突然、地震が起こりバンは思わず近くの机の下に隠れる。
その時にセットしたオリオンキュータマが光っていることに気付いた。
「何だこれ!
まさか、これはキュータマの!?」
バンはこれはキュータマの力の影響だと察した瞬間、オリオンキュータマの光が強くなり、バンの視界を覆い尽くした。
「う、うぅ…!
お、治まった、のか…!?」
視界が回復して、揺れも治まったことを確認したバンはある異変に気付いた。
艦橋の内部が、キュウレンジャーのミーティングルームを広くしたものになっていた。
しかも操縦するところの一つにはキュータマをセットするためのセイザブラスターがパネルの上に設置されていた。
「おいおい、これってマジかよ…!」
バンは急いで通路を抜けて出口に向かった。
ここに来る途中の通路も先ほどとは変わっていて、真新しいものになっていた。
ただ、通路の作りは流石に変わっていない感じだったので、すぐに出ることができた。
「バンくん、大丈夫ですか!?」
「バン隊長!」
「バンさん!」
出口を出た所で右京たちと合流し、すぐにアースラの方に振り返ると、その姿が変わっていることがわかった。
「おやおや、僕としたことが、推測以上の現象が起きたようですねぇ…!」
「まさか、こんなことが起こるなんて!」
「すごい、アースラが…!」
「バンさん、これってまさか!」
その姿に、流石の右京も驚きが隠せない様子で、かこやアストルフォはもちろん、なのはやスバルたちも驚いていた。
「あぁ、間違いねぇこいつは…!」
アースラの姿はもはや面影がなく、それでいて新たな姿だった。
それはバンたちパトレンジャーが知ってるものだった。
「こいつは、バトルオリオンシップだ…!!」
そう、キュウレンジャーが使っていた戦艦、バトルオリオンシップそのものだった。